DJ講座&パーティー型イベント
アナログブームの再燃により盛り上がりを見せるレコードの聖地・宇田川町にて、「須永辰緒のインクレディブルdj’s Vol.2」が開催された。
このイベントはDJ須永辰緒さんが主宰するDJを目指す人や音楽好きが集うオンラインサロン「インクレディブルDJ’S *DJになりたい、興味のある方、集まれ」の定期イベントだ。
今回、会場を提供してくださったのは、カフェ&ダイニングバーとミュージックイベントスペースという2つの顔を持つお店「Cafe&Dinerスタジオ」。レコードハンティングの休憩所としても最適な場所にあるので、宇田川町に来た際は是非利用していただきたい。
今回のイベントは前半にDJ講座を行い、後半にはサロン内から選抜されたメンバーがDJをするパーティーを行うという、学びと実践が融合した珍しいイベントだ。
マンツーマンによるDJ講座
DJ講座では受講生のレベルに合わせて内容を決め、各自30分ほどのマンツーマンレッスンが行われる。まずはDJ講座初級編が始まった。
初級編の講師は、東京や仙台で自らイベントを主宰するDJであり、インクレディブルDJ’sサロンのメンバーでもあるDJ林大介さんだ。
初級編では、まだDJ経験がない人や機材の使い方が全く分からない人も対象のため、基礎から丁寧に解説してもらえる。
機材を触ったことはあるが曲が上手く繋げないという人には、講師がお手本を見せつつ、何度も曲をつなぐ練習をして感覚を掴んでいった。
もちろん、須永さんもレッスンの姿を見守り、時には場を和ませながらも的確なアドバイスをくれた。
また、このサロンには都内のイベントでプレイする現役のDJも多数参加しており、頼れる先輩が何人もいる。
実を言うと、私も前回のレコードキュレーションイベントをきっかけに機材を揃えDJを始めたのだが、1人でDJの練習をしているとどうしても立ち止まってしまうポイントが出てくる。インターネットで調べてみても解消されない疑問も少なくなかったが、今回のイベントを取材しているだけでも疑問点がいくつも解消された。まさに「百聞は一見にしかず」だ。
初級編の次は、DJ経験がある方向けのDJ講座中級編が始まった。こちらは一通りの機材知識があり、ビートマッチからの繋ぎといった基本のスキルセットを身に着けている人向けの講座だ。
そして・・・実はそれと並行し、もう一つインクレディブルDJ’sならではの企画が裏で進行していた。
機材キュレーション@Disc Jam
須永さんは初級講座を終えた受講生を引き連れ、とあるお店へと向かう。
会場を出て1分も歩かないうちに目的地に到着した。シスコ坂にある老舗DJショップ・Disc Jamだ。Disc Jamは須永さんをはじめ、MURO、DJ PREMIERなど数多くのレジェンドDJに愛されている名店で、店内には超有名アーティストの写真がずらりと並ぶ。
DJを始めたばかりの人にとっては、機材屋に足を踏み入れるのすら少しばかり勇気がいる。楽器屋をはじめ、専門店というのは得てしてそういうものだ。この企画は、まさにそういった人が対象で、須永さん自身がお店に同行し、分からないことを気軽に聞いたり、予算や音楽趣向に応じたオススメ機材、DJグッズを紹介していただくことができる。なんとも贅沢なイベントだ。
お店に入ると、人柄の良さが滲み出ている店主、阿部さんが明るく挨拶してくれた。
阿部さんは業界歴40年以上の超ベテラン。コンサート現場のPAなどで培った膨大な知識を活かし、一人一人の音楽の好みをヒアリングしながらオススメの機材を紹介してくれた。
レコード針を探している人には、実際にお店にあるターンテーブルを用いて、針を付け替えて聴き比べをさせてくれた。レコードを聴いたことがない人は「針で音が変わるの?」と思われるかもしれないが、音の違いは誰でも分かるほど明白だ。なかでも阿部さんが開発したレコード針「樽屋の赤針・白針」は群を抜いた音の良さがあった。赤針は迫力あるダイナミックレンジで、その場で演奏を聴いているかのような臨場感があった。
(純国産レコード針「樽屋」詳しくは樽屋オフィシャルサイトをご覧ください。)
そして、ここで阿部さんから機材キュレーション参加者に紙袋に入ったお土産がサプライズプレゼントとして手渡された。さらに驚くことに、阿部さんがお店で取り扱っている機材を使った即興演奏を見せてくれると言う。
まずはその場でレコード盤からサンプリングをし、KAOSSILATOR(カオシレーター)というKORG社製のシンセサイザーを使って音を重ねていく。そこにホースをくわえて人が喋っているようなニュアンスを付加するトークボックスというエフェクターを用い、更にファンキーな音楽へと仕上げていった。黒さ溢れる即興パフォーマンスに声を上げずにはいられない。
これは後からわかったことなのだが、George ClintonやRobert Glasperもこのパフォーマンスを見て感激している動画があるので是非チェックしていただきたい。
阿部さんのパフォーマンスを見て大満足し会場に戻ると、既にパーティーが始まっていた。
インクレディブルDJ
今回のイベントに出演するDJは、サロンメンバーから選出された4名とスペシャルDJのDJ Niche、須永辰緒の計6名だ。
DJ TomoyA、モヒカン、YOMEI、DJ Naz Chris、DJ Niche、須永辰緒
アナログ、CD、PCなど様々なスタイルのDJが、個性溢れる選曲でフロアを沸かす。
そしてイベントを締めくくる最後のDJは、我らがレコード番長、須永辰緒だ。
CHET BAKER、チャーリー・コーセーの「ルパン三世」、いとうせいこうトリビュートアルバム「再建設的」からMCUの「BODY BLOW」、BEASTIE BOYS vs PEGGY LEEの「Ch-Check It Out」、Esbjorn Svenssonなど意外性のある選曲でグッと須永さんの世界観に引っ張られていく。
そして極め付けはSunaga-T-Expeimenceの「DIRTY30」。会場のテンションは一気にMAX。フロアからは歓声が沸き起こる。ちなみにこのレコードのジャケットは世界で須永さんしか持っていないオリジナルのものだ。
その後もTHE PARKER BROTHERS、todd rundgrenからの森進一など意外性のある展開で会場の空気を操る姿は圧巻だった。
講座で学んだ繋ぎの方法、イコライザーの使い方、選曲術などがどう活かされるのか、その最終形を見るかのような圧倒的なパフォーマンスだった。世界で活躍する一流のDJが回す姿をこんなにも近くで見ることができる、それは何よりの学びなのだと気づく。
「イベントに呼ばれるDJは多いけれど、客呼びなど含めイベントを主催するという経験をした人はまだ少ない。このイベントを通して、DJの技術だけではなく、責任を持って自らお客さんを集めて良いプレイをすることを学んで欲しい。そして自分が好きなことを通してお金をもらう経験を多くのメンバーにして欲しい。将来的にインクレディブルDJ ‘sからスターが誕生すれば何よりだね。」
と語る須永さん。
まだ経験の浅いDJにとって、須永辰緒さんとプレイするチャンスがあるというのは、大変貴重だ。次回イベントは年明けの1月を予定している。
これからDJを始めてみたい方も、すでに経験がある方も、一度インクレディブルDJ’sを覗いてみてはいかがだろうか。DJとしてのステップアップになること間違いなしだ。