格闘ゲームを作り続けて20年のベテランである『アルカナハート』のプロデューサー高屋校長。同氏が様々なゲームクリエイターと対談を行うイベント『ゲームクリエイタートーク』第4弾が行われました。
今回のゲストは『アンダーナイト インヴァース』や『メルティブラッド』を手掛けた『フランスパン』のゲームディレクター・プランナー・プログラマーの芹沢鴨音さん。
イベントではここには書けない業界裏話も飛び出しましたが、今回は「今後の格闘ゲーム」という話題にフォーカスを当ててお送りします。
現在の格闘ゲームを取り巻く現状、アーケードとコンシューマーの差
芹沢鴨音さん(以下、芹沢):格ゲーって、今がまさに変化の時期にあると思います。アーケードは店舗間ネットワーク対戦が主流になりつつあり、店舗間通信に未来を感じます。
最初はゲームセンターの通信環境に懐疑的だったけど、いざ始まってみると快適だった。
高屋校長(以下、高屋):一般の家庭回線だと海外との通信なども発生して厳しいですが、ゲーセンの店舗間の通信はあくまで国内の範囲にとどまりますからね。
芹沢:そうした環境面も含めて、ネットワーク対戦の格闘ゲームは今後どんどん流行っていくと思います。
それに対して、コンシューマーの格ゲーは、開発規模が大きくなって厳しくなってきている印象です。
マルチプラットフォーム対応がゲーム機だけでなくスマホにも対応しないといけなくなってきている。これは小さな会社には苦しい状況ですね。
高屋:ハード毎に予算用意しないとダメですからね。
芹沢:マルチプラットフォームになると、人的コストはもちろん、デバック会社に依頼する額も倍々になる。そして声優さんのコストにも二次使用料がかかってきたりしてしまうと厳しいですよね。
eSportsは日本では流行らない?
芹沢:あとは格ゲーの根本的な設計思想も変わってきましたね。操作を楽にして簡単にしながらも、ゲーム自体は奥深いものにしようという風潮が出始めている。
簡単にしていく理由としては、格ゲーユーザーの人口が減っているという心配があると思います。そこで新規のプレーヤーを獲得するには、「操作を簡単にしてわかりやすくするべきじゃないか」ということになる。
この流れが今後どうなっていくかが気になりますね。なぜなら、単純に操作を簡単にしてゲームがおもしろくなるかというと、そんなことはないと思うんです。
簡単にしながらも、いかにおもしろさを作っていくかが重要になってくるでしょうね。
小手先のテクニックでゲームを作れなくなるので、ゲームづくりは大変になると思います。あとはプロゲーマー向けの競技性も求められてくるでしょうね。いわゆるeSportsへの対応です。
高屋:カプコンさんはeSportsありきでゲーム性を詰めてますよね。
芹沢:カプコンさんからは、しっかりとコストをかけてeSportsを盛り上げていこうという強い意志を感じますね。
高屋:でも、自分としても日本国内でeSportsが流行るかどうかはかなり懐疑的です。国民性に合わないんじゃないかと思います。
芹沢:それはちょっと同意です。
高屋:ただ、世界の潮流としては格ゲーがスポーツ化しているのは間違いないと思います。その動きに合わせていくのか、それとも日本発信のものとして日本人が喜ぶべきものを作るのか。難しい段階に来ていますね。
芹沢:日本のeSportsは盛り上がってほしいですけど、どうやったら盛り上がっていくのか考えなければならないと思います。
僕としてはギャラリーがいることを意識したゲームシステムや演出をしていく必要があると思います。
今後の格闘ゲームに求められるものとは?
芹沢:キーワードは「共感」じゃないかと思います。でも、誰が観ても感じられる分かりやすさではなく、ちょっとプレイしたことがある人が共感できる「あー、あるある」みたい感覚。
そこにシフトしていかないと、競技性とギャラリー性が両立できない。
ナイター中継を見ている感じで観られるゲーム、つまりは、“お酒のつまみになるような格闘ゲーム”でないといけないと個人的には思います。広い意味でいろんなプレーヤーが触れ合って楽しめるものですね。
高屋:より観客が盛り上がることをシステムとして採用したい、と。
芹沢:サッカーでサポーターが興奮して大騒ぎしますよね。あれくらいの感覚が良いんじゃないかと思います。
格闘ゲームの未来を感じるオンラインサロン『高屋校長とチームアルカナ』
お届けした対談イベント『ゲームクリエイタートーク』はオンラインサロン『高屋校長とチームアルカナ-新作格ゲー開発室-』企画の一つ。
格闘ゲームというと、アーケードでは台を2つ並べて、そこで対戦していたのは一昔前。筐体がネットワークで繋がれている現在において、対戦している当事者だけではなく、それを観戦できるように進化するのは面白い試みだと感じました。
チームアルカナによる新作格闘ゲームの企画を立ち上げ『参加者と一緒に楽しみながら完成を目指すこと』を目的としたこのオンラインサロンでは、ゲーム制作の進捗報告のみならず、こうしたイベントも積極的に展開しています。
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