1年で200本以上の講演をこなし、日本のみならず、世界を旅するノマドな起業家の林田真一さん。インド、カンボジアでは、ボランティアで学校の支援を行うなど、活動の幅を広げています。
起業家の父の教えにより小学生で株を買い、当時不良のお子さんでも専門学校を出ていた時代に、学校の勉強に頼らず、14歳で起業した実地の仕事を通じて、人生を切り開いてきました。
林田さんが時間管理の必要性を感じたのが、25歳。自己管理のできない人だと、人助けもできないと実感したからだと言います。林田さんの時間管理術について、話を聞いてみました。
林田真一
神奈川県川崎市出身、町田育ち。株式会社シンクロニシティ 代表取締役社長
起業家の父の導きで、10歳で商社や電機メーカーの株を買い、14歳で携帯電話の流行を感じて情報通信会社を起業。実は、中学校の卒業証書をもらっていない。19歳で父が急死し、父の借金約2億円を背負った。ネットバブル期の情報通信会社とプロダンサーを並行して仕事を続け、25歳でクリエイターとクライアントのマッチングやコンサルティングを行なうIT企業を福岡で起業し、同時に起業家の著者のゴーストライターも行なっていた。31歳からノマドワーカーのスタイルにライフシフト。現在は、企業コンサルティングをメインに講演、セミナー、出版業など、幅広く活躍している。
人に会う時も仕事も、時間を管理。限られた時間の中で集中する
--年間200本以上の講演を行なっている林田さんですが、国内での一番忙しい日の一日のスケジュールを教えてください。
午前中はパソコンに向かって、メールの返信や最新企業情報のキュレーションをしています。夜に行なう講演や配信する記事のネタを管理することが多いですね。
午後は、集めた情報で記事制作をしたり、意外と筋トレをしたりしています。夕方以降は仕事のゴールデンタイムで、講演をしたり、人に会ったりしています。
僕はTwitterでメッセージをくださった人にも気軽に会うんですよ。でも、1人15分とか、最初に時間を決めて会います。実は、3分ぐらい人と話しただけで、「この人は片付けが下手なのできっと、恋愛も散らかっているに違いない」と、結構細かいところまで少し話すとわかってしまうこともあるのです(笑)。
--人と会う時に、タイマーをかけて会っていらっしゃるんですか?
会議もタイマーをつけた方が、切迫感があって効果が上がりますよ。無駄を省いて、濃い内容で話すことができますから。この記事を運営するDMMさんとも、1時間のタイマーをかけて打ち合わせしたくらいですから(笑)。
ポモドーロ・テクニックというイタリアの時間管理方法があります。ポモドーロはイタリア語でトマトの意味で、今はこの管理術のアプリもたくさん出ています。25分間を1ポモドーロとして、25分集中して、必ず5分インターバルを置く。たとえば掃除が25分で終わらなくても、必ずやめなくてはいけないんです。
--25分で仕事が終わらなかったら、どうするのですか?
その時は、もう1回タイマーを回します。たとえば、1時間ライティングするとします。たとえ集中していても、25分で書いて、5分インターバル取った方が、絶対良い記事が書けるんですよ。きちんと5分休まないと、集中力が酒気帯び運転並みに下がるので。
時間管理は暇な時間をちゃんと作ることがコツ
--林田さんの一番忙しい1日のスケジュールを伺いましたが、あまり忙しそうなスケジュールじゃないようにお見受けしました。
昔は、ここでジムに行き、ここでお風呂に入り……とスケジュール帳を真っ赤になるほど埋めていたんですよ。そうすると、朝起きてスケジュール帳を見ただけで、もう吐きそうになってしまう(笑)。お風呂は楽しい時間なのに、義務感になってしまいますよね。なので、やることをリストアップするTO DO管理にしています。
そうして決めたTO DOリストの優先順位の高いところから、順番に行なっていきます。ただ、TO DOリストに追われるだけだと、今度は新しいプロジェクトや事業がまったくひらめかず、先月と同じことを惰性でやってしまうんです。そうなると、会社を経営する者としてはまずいですよね。
--たしかに会社は倒れてしまいますね。
暇な時間をきちんとつくることが、実は時間管理のコツで、スケジュールとスケジュールの間は、詰めずにわざと空けておくのです。
マルチタスクはとにかく生産性が下がる
--林田さんは以前、「家を片付ける、仕事をする、セミナーに出るといった大きな仕事の合間に、メールの返信など、どれだけ小さな仕事がこなせたかが、時間管理のキモ」と話されていました。移動中はどう過ごされていますか?
移動中は、仕事がものすごくはかどりますよ。新幹線なんて特に。よくお金がもったいないとよく言われるのですが、iPadやノートPCが開けるので、僕はタクシーに敢えて乗るようにしています。乗車中に10通でもメール返信できたら、それだけでも生産性が高くなりますよね。
皆さん、マルチタスクで仕事をされている方が多いのですが、様子を見てみると、実は書類を作成しながらLINEをしていたり、チャットワークをしていたりするものです。惰性の行動が入っているので、生産性が下がります。なので、1個1個の仕事に集中して、ポモドーロ・テクニックの時間管理方法で1日を過ごしたほうが、結局のところ生産性は高くなるのではないかと思います。
--メール以外に行なう小さな仕事は、ほかに何がありますか?
やらなくてはいけないメール返信以外にも、人に言えないような恥ずかしい小さな目標とか習慣でもいいと思います。
毎日やっていることだと、「本をまず1分読む」、「スクワットを1回する」、「布団は起きた瞬間に畳む」ですね。全部、自分の苦手なことだったんですよ。人は90日で習慣化するので、今は朝の歯磨きと同じくらい自然にできるようになりましたし、むしろやらないと怖いぐらいです。
--この3つの中で一番苦手だったことは何ですか?
スクワットですね。
--もともと、プロダンサーだったのに(笑)?
PCの前にいて、椅子から立ってスクワットするぐらいのことって、仕事の合間にできるはずですよね。でも、仕事がノッている時に立ってスクワットすることが、億劫で仕方ないんです。それくらい習慣1つにしても、人は変えられないものです。
小さな習慣ができるようになって良かったのは、自己肯定感が上がることです。小さな習慣とビジネスは密接に関わっていますので。仕事をしながらLINEはしないとか。
これが会社になると、1年、四半期とビジネス目標を立てます。1年の会社目標を大きなビスケットだとしたら、それを砕いて小さなTO DOリストに落とし込む。そのTO DOをやることが小さな達成となって、やがては大きな達成になります。なので、毎日の小さな習慣ができることは仕事においても大事ですね。
起業家が考える良い時間と無駄な時間
--林田さんが考える有益な時間は、どんな時間ですか?
一番有益な時間は、旅ですね。旅行と旅は少し違うと思っていて、旅行は観光で、旅は自分と向き合う時間があることです。国内でもいいので、1人で旅先に行って、景色をぼーっと見ながら自分と向き合っていると、非日常から日常を見つめることができます。「会社にいるのも、旅に来て遠くの景色を眺めるのも、同じ1時間だよね」と思うはずです。
あと、旅にすぐ行けない人には、映画を勧めます。映画は2時間強で、人の人生の紆余曲折を垣間見ることができます。人間の幸せは経験値が増すと高まるので、映画を10本観れば、10本分の人生を体感できる。映画もそうですが、ミュージカルやアートなど、非日常の体験をすると、有意義な時間だと思えますよね。
--逆に、無駄な時間はどんなものだと思いますか? 移動の多いデュアルライフを送るにあたって、日常で何を捨てていますか?
物事を何か始める前に、僕は自分の中でブレーンストーミングをするようにしています。やりたいことをまずバーっと書き出して、それからやらないことを決めて、残ったことをするんですね。近藤麻理恵さんが書かれた片づけの本にもありましたけど、とにかくどんどん捨てて、残ったものがより大事なものと考えるようにしています。やらないことを決めて、それを捨てることですよね。
ちょっとプロ野球のたとえになりますが、ペナントレースで勝ち上がった巨人と阪神が試合をするとしますよ。どちらのチームも、シーズンで勝ち上がっているので強いのは当たり前。でもなぜか勝敗が決まります。ミスの多いチームが負けるんですよね。
試合のミスは、人生で言うと日々の無駄です。Instagramのストーリーをそんなにやる必要ある? LINEの通知、切っても良くない? 小さなことですが、積み重なるとスマホを触っている時間ってすごいんですよ。僕は、スマホを1日何時間触っているかを計測するアプリを入れているのですが、かなり頑張って減らしても、5時間は触っています。何もしないと、おそらく10時間はいくでしょう。それくらいスマホの依存もすごいですから、やることよりもやらないことをまず決める。これが僕の時間管理のベースにありますね。
(編集後記)
年間200本以上講演をされているので、林田さんはさすがに話が上手。インタビュー後、すぐにスマホの起動時間を計測するアプリ「Moment」を入れてしまいました。
忙しいスケジュールの合間を縫って、林田さんのオンラインサロンでは、ご自身が毎朝情報収集をしている注目記事の一覧や、講演のポイントなどを話す動画が都度配信されています。
それにしても、起業家でありながら、元プロダンサーという経歴には、驚かされました。