わずか10分、されど10分。その間、いかに相手の心を掴み、自分事として捉えてもらえるか―。プレゼンテーションの上手い下手の明暗を分けるのは表現力と話すのは、毎年「全国・講師オーディション」を開催するプロデューサーであり、オンラインサロン「ビジネスタレント育成大学(BTA)」学長の大谷由里子さんです。
そのために必要なコツとはどのようなものなのでしょうか?BTA教授の大内優さん、事務局長の飯塚裕司さんの3人に、相手にきちんと伝えるための3つのポイントを聞きました。
「相手に届く伝え方」ポイント① 台本作り
―まず、プレゼンテーションにおいて心がけておくことは何ですか
大谷学長:プレゼンテーションと言っても、ビジネスと講師とでは全く異なります。ビジネスのプレゼンテーションでは、損得や利益向上などのメリットを提示しないといけません。一方、講師のプレゼンテーションでは聴衆に自分の話をいかに聞いてもらうかということが大事です。
そのためにはまず「台本作り」が必要です。私は元々吉本興業にいたのですが、漫才や落語には台本があります。プロは台本を頭に叩き込んだうえで、演出を加えていきます。プロですら、それを当然のようにしているので、素人だったらなおさら台本作りが必要になりますよね。
―まずは台本作りなんですね。コツはありますか?
大谷学長:私は最初のつかみも含めてネタ用に3~5分の話を約100本ストックとして持っています。そのために、日々のニュースやワイドショーチェックは欠かしません。プレゼンテーションでは、いかに旬の話題を入れるかがキーポイントです。相手はどのような人たちで、何を思っているのかを考てみる。知らないことを伝え、相手が「へー!」と思える”ギャップ”を作ることで心を掴むことができます。
「相手に届く伝え方」ポイント② 結論から話す
―話の進め方のコツはどのようなことでしょうか
大内教授:結論を最初に言うことですね。「今日は3点話します」とか「きょうは〇〇について話します」など、結論を最初にいって、それについて話していくと聞く方もわかりやすい。内容についても、単なる自慢話や苦労話だけではなく、相手に何か持って帰ってもらえることを織り交ぜる。上手な人は自分事に感じてもらえる話ができていますし、そういう人はたいてい練習しています。例えば自分でプレゼンテーションしている姿を撮影して、その映像を見てみる。自分が話している姿を俯瞰して見て、まずは自分自身が面白いと感じるかを確認すべきです。
「相手に届く伝え方」ポイント③ 資料に頼らない
―プレゼンテーションにおいて、これだけはしない方がいいということは何ですか
大谷学長:賢いことを言おうとすることですね。実体験ではなく、聞きかじったこと受け売りのことを話しても相手には響きません。例えば、商店街の人に向けてシリコンバレーの話を持ち掛けても印象に残らないでしょう。あとは、失敗談ばかりを話すのもよくないですね。同じく商店街の例でいうと、「〇〇では商店街でボーリングをしたら若い人が集まってきた」など、自分のところでも出来るかもしれないという可能性を伝えることも大事です。
飯塚事務局長:実は、自分がかつて”賢く言おうとするタイプ”でした。大谷先生に、「自分で言いたいことと、人が聞きたいことは違う」と言われたのですが、最初はその意味がわかりませんでした。僕は今、自動車メーカーに勤めているので、ものづくりに焦点を絞り、自動車作りの上での失敗、成功、積み重ねてきたことを伝えるようにしたら、自分の生きる道が拓けました。普通のサラリーマンでも、伝えるものがあるんです。人は皆、語るものや使命があると思います。
大谷学長:気を付けないといけないのでは、プレゼンテーションと説明は違うということ。プレゼンテーションは表現です。何を表現したいかが大事。パワーポイントは映像や数字を見せる時に使用するのは良いのですが、頼り切ってしまうと単なる説明になってしまいます。そうなると、感動は生まれないですね。
一番やめた方がいいのは、パワーポイントや配布した資料の内容と全く同じことを話すこと。上手な人は、資料は配布せずに、終了後に「資料が欲しい人はデータで送るのでこちらのメールアドレスにメールをください」としていますね。そうすると、どれだけの人が興味を持ったかわかりますし、紙代も節約できます。
自分のタレント性を知り、語ることを見つける
―話す内容を決めるポイントはありますか
大内教授:私は売れるための導線作りや商品作りが得意です。元々テレビ局の報道記者なので、テレビや新聞からの情報を活かしてビジネスを作っています。生徒によく言うのが、「やりたいこととやりたくないこと」や「出来ることと出来ないこと」で選ぶのではなく、「あなたしか出来ないか、他の人でも出来るか」で選べということです。
それがあなたの才能になります。あなたの経験談と、失敗談、クライアントの成功事例などはあなたしか話せないことであり、そこに存在意義があります。
大谷学長:そうですね。これは多くの人がわかってないんですが、バランスが大切。「自分が語りたいこと、自分が語れること、そして相手がその人から聞きたいこと」をうまく混ぜることで相手に届くプレゼンテーションになると思います。
DMMオンラインサロン「ビジネスタレント育成大学」では、オンライン上で講演スキルやプレスリリースの添削などをしています。特徴的なのは、毎月全国各地で定例会をしていること。偶数月は東京で、奇数月は地方で開催しています。参加者は多岐にわたり、会社員、旅館の女将、塾の先生など。「人のつながりがあり、顔の見えるオンラインサロン」と大谷さん。将来はメンバー一人ひとりにオンラインサロンを作ってもらいたいと話します。