「自分らしいサービスの発想法〜家入一真流起業の極意〜」対談イベント

著者名木村真由美
「自分らしいサービスの発想法〜家入一真流起業の極意〜」対談イベント

今年8月29日に行われた、女性起業家サロンのイベント「自分らしいサービスの発想法 家入一真流 起業の極意」。サロン主宰・ベビーシッターサービス キッズライン代表の経沢香保子氏と、クラウドファンディングプラットフォーム CAMPFIRE代表の家入一真氏との対談が行われました。

毎回恒例となっている、女性起業家サロンからゲストへのプレゼント。今回は”やさしい革命”を起こし続ける家入一真さんに、ソフトな「NOWマシュマロ」と、ふわふわの「やさしいタオル」を贈りました。

NOWマシュマロは美味しいとお2人に好評でした!

シリアルアントレプレナー(連続起業家)、そしてエンジェル投資家としても活動する家入さん。6月にはベンチャーキャピタル「NOW」を立ち上げ話題となりました。

今回はそんな家入さんに、出資される会社・されない会社の違いや、バイアウトとIPO、どちらを目指すべきなのかなど、投資家と起業家、双方の視点からお話を伺いました。

みんながみんな起業したらいいわけではない

家入さんのエンジェル投資歴は10年以上。投資した中にはクラシルやBASEなど、今を時めく会社があります。これまでに投資したのはおよそ60社で、キッズラインにも投資されています。

そんな家入さんに、出資する・しないの基準について伺いました。

すると家入さんは、中学2年生から引きこもりだった過去を挙げ、自身のことを起業でだいぶ人生が開けた「起業してよかったと思っているタイプ」と振り返りました。

一方で「僕の人生がすべてに当てはまるかというとそうではないですし」とのこと。

家入:みんながみんな起業したらいいとは思わないですね。全然。

家入さんが最初の起業をしたのは21歳の頃。朝早く起きて会社に行く生活に馴染めず、家にいながら何か仕事ができないかと考えた結果が、インターネット事業の立ち上げだったのだそう。

家入:今いる場所から逃げたいがために起業という選択をとるのも一つあるんだとは思うんですけど。そういう気持ちで起業しても結果そちらでまた辛い想いをしてしまうこともたくさんある

ファイナンスの相談を受けた際も、そもそも起業すべきではないと判断し、「起業からもう一回見直してみたら?」と伝えるケースもあるのだそうです。

自身の過去の経験から出資するかしないかを見極める、家入さんならではの視点だと感じました。

原体験をベースにした起業家を応援したい

起業家に向いている人はどんな人?という問いの答えには、「原体験」というキーワードがありました。

現代は目新しいサービスは作り出せず、コピーも簡単にできるようになっています。その中でも起業してうまくやっていくためには、根底に強いコンプレックスや原体験が必要とのこと。

家入さんによると、そのような原体験を持っている人は、もし今やっていることがうまくいかなくても、「打席に立ち続けられる人」だといいます。苦しいことがあっても前にはいつくばって進んでいけるかは、原体験にかかっているのだそう。

女性が起業する際にも、女性として生きづらさを感じたことなどをベースにした事例がもっと出てもいいのではないか、とお話されていました。

ベビーシッターサービスであるキッズラインも、代表の経沢さん自身がお子さんを保育園に預けたくても預けられなかった原体験から生み出されたものです。

また家入さんが共同創業者となっているBASEも、元々はCEOの鶴岡さんがお母さんを喜ばせるために開発されたものなのだそう。

起業のきっかけとなる強い原体験が、人の心に響くサービスを生み出せるカギなのかもしれません。起業家も一人の人間。自分のメンタルとどう向き合うか

家入:経沢さんとかもそう見られがちだと思うんですけど。起業家って強くなければならないとか、強い人間だろって勝手に思い込まれて。石投げても大丈夫だろみたいな。でも同じ人間なんですよね。

起業家に向いている人はどのような人なのか?という質問に対して家入さんはこうお話されました。

その上で起業家に大切なことは、自分のメンタルとうまく向き合えるどうかなのだそうです。

起業家がリタイアしてしまう大半の理由は、起業家自身のメンタルが弱ってしまうからだといいます。家入さんもこれまで、大学生起業家が挫折し、就職したり実家に帰ったりする姿を見てきたのだそう。

「心が折れてしまった起業家に頑張れとか僕は言うつもりもないですし」とした上で、家入さんは以下のように話されました。

家入:「せめて駄目になるもっと前のとき、『あ、しんどそうだな』ってところから気付いてあげられたらもっと違う結果になったんじゃないかと思うところはあって。」

6月に立ち上げたベンチャーキャピタル「NOW」では、そのような起業家のメンタルケアのプログラム化も検討していると語られていました。

そしてこのイベントの後の10月、NOWはオンラインカウンセリングサービス cotreeと連携し、起業家のためのメンタルケアプログラム「escort」を発表しました。

はなからバイアウトを目指すのにはピンとこない

最近は起業から間もなくバイアウトされる事例をよく耳にします。家入さんも最初の起業から数年でバイアウトした経験をお持ちです。

そんな家入さんに、起業はバイアウトとIPO、どちらを目指すべきか?そもそもバイアウトのほうが向いているケースはあるのか?という問いを投げかけてみました。

すると「はなからバイアウトというのは正直ピンとは来ないなあ」とのこと。

家入:結果的にバイアウトという話なのか、そもそもバイアウトを目指して作ってるパターンもありますので、その違いは結構あるのかなと思っていて

家入さんによると、会社を経営する中で結果としてバイアウトの選択をする場合も、お金ではなくサービスの向上を目的とするケースがあるといいます。一概にバイアウトかIPOか?ということは言えないとのこと。

また最近は、器用な起業家が増えている印象を受けるというお話もありました。

例えば将来的にはロケットの会社を立ち上げたいけど、いきなりは無理。それなら最初の会社を23歳までにバイアウトしてそれを元にもう一回起業して……という風に、逆算思考の中でバイアウトの選択をするケースが増えているのではないか、と語られていました。

起業に壮大な夢は必要ない

家入さんは、現GMOペパボやシェアハウス リバ邸、CAMPFIREなど、数々の起業を経験した連続起業家です。

しかし当時は足元を見ながらやっていて、「またバラバラなことやってんな」とコンプレックスに感じていたといいます

40歳くらいで振り返ってみてようやく、「僕は”居場所”を作りたかったんだ」と軸が通った気がしたのだそう。

家入:僕は夢という言葉を絶対使わないようにしていて。

家入さん自身夢を持ったことはなく、ずっと足元を見てきた地味な人間なんです、と。ただ今の場所で頑張っている人に光を当てたいという想いがあるのだそうです。

経沢さんからも、最初は壮大が夢がなくても、とりあえずやりたいことをやっていくうちに共通点が見いだせるのではとのお話がありました。

わたし自身、起業には大きな目的や夢が必要だと考えていたので、お2人のこの言葉は正直意外でした。

家入:夢を持つから挫折するし、希望を持つから絶望する。だったら今あるところで粛々とやる美しさみたいなものを、もっと僕は大事にしたい

このような考えを持つ家入さんだからこそ、”現代の駆け込み寺”リバ邸のような「夢がない」「居場所がない」と悩む人のよりどころを生み出せるのでしょう。

大企業の参入が「やらない理由」にはならない

後半はサロン対談イベント恒例の質問コーナー。今回も参加者のみなさんからさまざまな質問が飛びました。

中でも印象的だったのは、「起業する上で競合をどこまで意識したらいいのか?」という質問に対する答えです。

家入さんは、起業家として競合の出現リスクを頭の片隅に置いておくことは大切、とした上で、以下のように話されました。

家入:競合がいることだったり大企業がいることが、自分たちがやるべきことをやらない理由にはならない。自分たちのことをまず自分たちが信じないと。

この言葉は今回のイベントの中でもっとも心に響きました。

また家入さんからは、戦う敵を見誤ってはいけない、というお話もありました。

競合がいたとしても、本来見るべきはお客様。ライバルの揚げ足を取ったり失敗を笑ったりするのは違う、とのこと。これは家入さん自身の会社や投資先にも伝えるメッセージなのだそうです。

競合を意識することはもちろん大切ですが、必要以上に恐れず、自らのサービスを信じて粛々とやり続けるのが重要なのですね。

「今いる場所で誰を喜ばせたいか」を考える

質問コーナーでは、「好きなことを仕事にするにはどうアプローチしたらいいのか?」という問いも出ました。

すると家入さんからは、「好きなことで生きていくという言葉は好きではなくて……」との回答が。

家入:いきなり夢を見ようとか、いきなり好きなものを見つけようと言われたって、(僕も)いまだに好きなものなんですか?と聞かれても答えられないですもんね。今誰を自分は喜ばせたいんだろうっていうところから考えてみるのが一つありなんだと思う。

そして質問者さんがサラリーマンであることを受け、いきなりサラリーマンを辞めてふりきるのはある意味愚かな行為だと指摘しました。

家入さんによると、特に日本は退路を断って自分の道を追いかけるとかが美談になりがちだけど、その中間のグラデーションのような方法もあるはず、とのこと。

具体的には、サラリーマンをやりつつ帰宅後や週末の時間を自分のやりたいことに充ててみればいいのでは、とアドバイスしてくださいました。

急にアクセルを踏むから事故るとも話されていて、ドキッとしてしまいました。

今まさに「好きなことを仕事にするにはどうしたらいい?」「好きなことが見つからないけどどうしたらいい?」と焦っている人に伝えたいメッセージですね。

投資家と起業家のエコシステムを作りたい

質問の中には、「NOW」立ち上げのきっかけを問うものもありました。

家入さん曰く、エンジェル投資は起業家が片手間でやっている側面があるとのこと。NOWではこの投資の部分をしくみ化させたいという想いがあるのだそうです。

またエコシステムのお話もありました。

家入:成功した起業家が成功したときに得た名声みたいなものであったり、お金みたいなものであったり、繋がりみたいなものを、惜しみなく下の世代に回していく。それが何世代もぐるぐるぐるぐる回って少しずつ大きくなっていくのが生態系(エコシステム)だと思っていて

家入さんによると、日本ではこの「輪」がまだ1周したかしてないかぐらいの感覚なのだそう。投資家と起業家の経済圏や場づくりに、NOWは関わっていきたいのだそうです。

このエコシステムが確立し、前述したような起業家のメンタルケアもしくみ化されれば、世の中でもっと自由に起業する人が増えていくのかもしれません。

家入さんだからこそ起こせる”やさしい革命”

起業家と投資家の両方の側面を持つ家入さん。「やさしい革命」を起こす背景には、自身の辛い過去を乗り越えてきた原体験が隠されていました。

そんな家入さんだからこそ、学校や会社に馴染めず「はみ出し者」のレッテルを貼られた人たちのための「現代の駆け込み寺」が生み出せるのでしょう。

家入さんの考える、やわらかくなめらかな輪が広がれば、日本全体がもっと幸せになれるのではないでしょうか。

これからもさまざまな人の心のよりどころを作っていってくださるのだと思います。

家入さん、今回は大きな学びをありがとうございました。

ご参加いただいたみなさま、誠にありがとうございました。

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