ビジネスでもプライベートでも、話し上手な人はあこがれの的。この記事では今日から実践できる話し上手になるための方法や、参考になる本などを紹介します。周囲から一目置かれる存在になるためにも、話し上手になるためのポイントをおさえてみましょう。
話し上手になるためのポイント1:型を使う(5W1H、PREP法)
あとから情報を追加されると話が長くなってしまい、結果的にうまく伝わらない、ということになりがちです。そこで5W1HやPREP法を使うと、話す前に要点をまとめ、不足している情報がないか確認することができます。
5W1H
会社の研修で「5W1Hを意識しよう」と言われたことはないでしょうか。これは話し上手になるためにも大切な型です。
まずは相手が状況を思い浮かべやすくなるよう、いつ(when)、どこで(where)という2点を伝えます。次に内容の核となる、誰が(who)、なにを(what)という情報を提示します。最後になぜ(why)、どのように(how)という情報を補足することで、より明確に内容を理解してもらうことができるでしょう。
PREP法
もうひとつの型が、PREP法です。結論1(point)、理由(reason)、例(example)、結論2(point)という順序で話を展開していきます。最初に結論を述べることで相手が話の核を理解しやすくなり、理由や例を挙げて話を掘り下げます。最後に発展した結論を補足すると、さらに出来事の結果を伝えやすくなります。
型を使った会話法の実践例
では試しに同じ話題について、型なしで話した場合と5W1HとPREP法を使った場合を比較してみましょう。
話題: Aさんについて知人に紹介する
型なし「Aさんはケーキが好きな人で、学校で知り合いました。私たちは料理サークルにいたんですけど。それからずっと仲良くしていて……ああ、学校というのは大学のことです。Aさんは新聞社に勤めていて、私は商社なので進路は違いますが、今でも仲良しです。この前会ったときには、Aさんがおすすめのケーキ屋さんに行きました。あのケーキ屋さんはとてもおいしかったのでおすすめです。それでAさんを紹介した理由なんですが、実はあなたと同じ高校の出身だったので、もしかしたら知っているんじゃないかと思いまして……」
5W1Hを用いた例「あなたは(who)Aさんのことを知っていますか(what)。実はAさんは、あなたと同じ高校の出身なんです(why)。」
PREP法を用いた例「Aさんのことを知っていますか(point)。あなたと同じ高校の出身なので、もしかしたらご存知なのでは、と思いまして(reason)。昔からケーキが好きで、高校では調理部に入っていたそうですよ。この前会った時は、彼女がおすすめのケーキ屋さんに行きました(example)。私とAさんは大学の料理サークルで知り合って、それ以来仲良くしています。(point)。」
型がない場合要点が見えづらく、つらつらと長い話になっています。情報の取捨選択もされていません。それに対し5W1HやPREP法では、必要な情報や話す順番が整理されているおかげでコンパクトにまとまっている印象を受けるのではないでしょうか。
話し上手になるためのポイント2:相手をよく観察する(表情、仕草、相づち)
相手に話が伝わっているかどうかを判断するためにも、聞き手を観察することは大切です。相手の表情は退屈そうに見えないか、目が泳いでいないか、相づちを打っているかという点に注目してみましょう。もし相手が集中できていないようなら、話し方に工夫が必要かもしれません。
話し上手になるためのポイント3:話の行先を考える(共感、行動)
話し上手な人は、相手の共感や行動につながりやすい話を展開しています。たとえば事実を淡々と述べるだけではなく、自分の経験を少し交えることで相手の共感を得られる場合があります。とくに失敗談は、興味や共感を抱いてもらえるネタのひとつです。自分の話したい内容だけではなく、相手が思わず「へえー、なるほど」とうなるような内容も交えてみてはいかがでしょうか。
(参考:池上彰『伝える力』PHP研究所(2007)、池上彰『伝える力 2』PHP研究所(2012)、福田健『世界一役に立つ「話し方」の授業』PHP研究所(2011))
話し上手な人の特徴
話し上手な人は、前述したポイントをおさえていることはもちろん、会話の端々に相手への配慮が見られます。ワンステップ上の話し上手になるために、次の3つのポイントも意識してみましょう。
相手にわかりやすく情報を届けている(語彙力)
話し上手な人は語彙力にも優れていると言われています。これは、難しい言葉をたくさん知っているというわけではなく、相手に正確に理解してもらうための語彙を選ぶことができる、という意味です。たとえば、仕事のことを伝える時、あまり一般的ではない専門用語を使って説明をしても、相手に理解してもらうことは難しいでしょう。逆に専門知識が豊富な人に対して、易しい言葉で説明をすると「ばかにしているのか」と思われてしまうかもしれません。そのため、相手の知識や性格に合わせて、適切な言葉を選択することがとても重要なのです。
テクニックを使っている(相づち、表情、視線、間)
話し上手な人には、聞き手に注目してもらえるようなテクニックも見られます。
・表情、視線
笑顔で適度なアイコンタクトをとって話している人に対して、聞き手は安心感を抱くと考えられています。話し方の研究者や講師でもある福田健氏は、
笑顔は相手との距離を縮め、無表情は相手への拒絶を表す出典: 福田健『世界一役に立つ「話し方」の授業』PHP研究所(2011)
と述べています。また、目は心境を正直に表すので、自分の想いをより伝えることもできます。
・間
早口でつらつらと話し続けると一本調子になってしまい、聞き手を飽きさせてしまいます。そこで間を入れて緩急をつけてみると、聞き手は「おっ」と再び話に注目する傾向にあります。
・相づち
話しを聞く場面でも、話し上手な人はテクニックを使っています。たとえば、相手が話しているときに相づちを打つ、身を乗り出して聞く仕草を見せるという行動。相づちとは、ただ単に「はい」とうなずくことだけではありません。元NHKアナウンサーである佐野剛平氏は、状況によっては「なるほど」と共感したり「それで?」と話の続きを促したりするなど、バリエーションをつけることも効果的だと述べています(※)。こうしたテクニックによって相手との距離を縮めれば、自分の話をする時も、より相手に伝わりやすくなるはずです。
(参考:佐野剛平『もう初対面でも会話に困らない!口ベタのための「話し方」「聞き方」』講談社(2018))
話し上手は聞き上手でもある(傾聴)
話し上手な人は、同時に聞き上手でもあります。相手の話をしっかりと聞いているからこそ、的確に答えを返すことができ、話が盛り上がります。相手が「この人は話をちゃんと聞いてくれる人だなあ」という安心感を抱くと、自分の話もしっかり聞いてくれるようになるはずです。
聞き上手になるためには、周囲にいる聞き上手な人をお手本にするといいでしょう。その人の話の聞き方に注目して、どんな質問を相手に振っているのか、相づちはどうか、仕草はどうか、など細部まで観察してみます。そして、上手だと思ったポイントを真似してみると、だんだんと聞き上手になることができるでしょう。もちろん話は最後まで聞く、という基本的なことも大切に。自分の話と相手の話のバランスがよくなるよう、心がけてみてください。
(参考:池上彰『伝える力』PHP研究所(2007)、池上彰『伝える力 2』PHP研究所(2012)、福田健『世界一役に立つ「話し方」の授業』PHP研究所(2011))
話し上手になるために心がけること
話し上手になろうと思っても、今までの習慣をすぐに変えることは難しいものです。地道に思える努力や心がけが、話し上手への近道。急がば回れの精神で、まずは以下のことから取り組んでみてはいかがでしょうか。
慣れるまで実践をくり返す
あまり準備をしていないプレゼン資料を使って、聞き手の目を見ながら円滑に話す、というのは容易なことではありません。これと同じように、準備や練習が不足していては話し上手になることは困難です。そのため、前述した話し上手になるためのポイントを意識して、日々の会話の中で実践してみるといいでしょう。
対人スキルに関するスペシャリストである、デール・カーネギーは
3分間のスピーチを何度もくり返して成功体験を積み重ねることで、自信が生まれる出典: D・カーネギー著、市野安雄訳『話し方入門 文庫版』創元社(2016)
と説いています。自分に自信がついてくると、だんだんと話し上手になっていけるでしょう。
振り返りをする
大事なプレゼンやスピーチのあと、「もっとこうすればよかった」と思ったことはないでしょうか。こうした振り返りは、話し上手になるためにもとても大切といえます。客観的に反省点を見つけ、次の機会に改善するためにはどうしたらいいのか考え実践してみましょう。こうした地道な積み重ねが話し上手の基盤をつくってくれるはずです。
ひとつひとつ落ち着いて情報を伝える
最初から情報をきれいにまとめて言おうとすると、緊張して話せなくなってしまうかもしれません。そこで、まずは頭の中で情報を見直して、ひとつずつ丁寧に伝えることを心がけましょう。1文が長くなりすぎると核が伝わりにくくなることもあるので、1文につき1つのことを伝えるように意識するといいかもしれません。
また、話の時間軸は、過去から未来など、一方向に流れるようにするとわかりやすくなります。
(参考:西野浩輝『仕事ができる人の5日で身につく「伝える技術」』東洋経済新報社(2012))
話し上手になるための本
最後に、話し上手になるためのヒントをくれる本を紹介します。通勤中の時間や昼休みを利用して読み、話し上手への一歩を踏み出しましょう
『大人の語彙力が使える順できちんと身につく本』(吉田裕子)
語彙には、なんとなく知っているという「認知語彙」と、使いこなすことのできる「使用語彙」の2種類があると、本書では述べています。ビジネスシーンでもプライベートでも、言葉を適切に使い分けて話すことのできる人は好印象を与えるでしょう。使用語彙を増やし、コミュニケーションを円滑にするためにはどうしたらよいか、という疑問に答えてくれる1冊です。
『話し方入門』(D・カーネギー)
『人を動かす』などビジネスでも役立つ著作の多いカーネギーは、実は話し方教室の講師をしたこともありました。その経験を活かして執筆した本が『話し方入門』です。スピーチなど大勢の前で話す場面ではどうするべきか、という方法が中心となって書かれていますが、普段の会話やビジネスシーンに通じる話し方のポイントも紹介されているので、とても参考になります。文庫版もあるので、通勤中にもぴったりの1冊です。
『1分で話せ 世界のトップが絶賛した大事なことだけシンプルに伝える技術』(伊藤羊一)
ヤフー・アカデミアの学長である伊藤羊一氏の代表作。話し上手な人は要点をまとめて1分で伝えることができる、という考えのもと、具体的なポイントやコツを紹介しています。そもそも自分が話した内容の80%は相手に伝わっていない、という冒頭の指摘からハッとする人も多いでしょう。人にわかりやすく伝える話し方、とくにプレゼンが苦手な人におすすめの1冊です。
話し上手になるためには、まず人の話をしっかり聞くことが大切です。相手の反応をよく見て、適切な言葉を選んで順序立てて話してみましょう。最初は「やっぱり話下手かも……」と思っていても、くり返し実践するうちに上達してくるはずですよ。