世界を代表する日本人ダンスアーティスト、ケント・モリ。彼が世界にその名を轟かせたのは2009年のこと、マドンナのロンドン公演にて、マイケル・ジャクソンの追悼パフォーマンスを披露したことがきっかけでした。
あれから10年、常にエンターテイメントの最前線を疾走してきた彼は、2019年2月にDMMオンラインサロン『Kento Mori Dream Salon』を立ち上げ、現在の姿を余すことなくさらけ出しています。その活動の裏には、まだ日の目を見ていない大きなチャレンジが隠されているのだとか。
表に出ている情報はたったの1%。謎に包まれたケントさんの「今」
―ダンスアーティストとして活動し、これまで輝かしい成果を残してきたケントさんの今を教えてください
20代でアメリカに乗り込んだ時、僕のチャレンジの中心にはダンスがありました。そして、20代を後悔なく駆け抜けて30代を迎えた時、さらに次のステップへ行きたいと考えるようになったんです。
ーそれはどんなことですか?
僕のメインは、究極的に言うと「Heartbeat」。ダンスも含めて、もっと自分の胸のうちにあるリズムを、そのまま形にしたいという音楽観、世界観を昔から持っていました。それをもっと具体的な形として、世に出したかったんです。
人生80年って考えたら、僕の歳で言えばあと50年あるけど、自分の納得のできるものを体で表現できるのは、あと5年くらいが限界かも知れない。そうなった時、自分の余命は5年しかないじゃないですか。だからこそ、残された時間で、どんな風に過ごしたいかが大切なんですよ。
僕は小さい頃からダンスが好きだったけど、ダンサーになりたかったわけではありませんでした。ダンスの前に音楽、もっと言えばエンターテイメント全体が好きだった。それなら一度、本気でエンターテイメントという分野に本気でぶつかってみたいと思ったんです。それが30歳を迎えた僕の生きがいで、今の活動の中心になっています。
活動に当たっては、環境作りのために会社を立ち上げたりもしました。SNSでもさまざまな活動を載せているけど、あれは全体の活動のうち1%に過ぎません。残りの99%で取り組んでいるチャレンジは、今年ようやく皆さんにお見せできると思います。
ーアーティストに加えてビジネスマンという肩書きを背負うに当たって、何か準備はしていたのでしょうか。
いえ全然。僕はとても不器用な人間で、学生時代もそうなんですが、参考書の内容を覚えたり、先人の作った道をフォローしたりするのが圧倒的に苦手でした。でも逆に、ゼロイチで物事を創り出すことには無性に駆り立てられたんですよ。
たとえば、僕が渡米した時、MJは2001年以来ステージに立っていなくて、新しい活動をするなんて誰も思っていませんでした。でも僕にとってはそんなの全然関係なかった。ただマイケルと同じステージに立ちたいという思いだけで渡米して、彼のドキュメンタリー映画『THIS IS IT』のオーディションに応募し、日本人ダンサーとして唯一の合格者になることができたんです。
こんな感じで、「たとえ経験がなくても自分の信じたことをやり抜く」というスタンスで、僕はここまでやってきました。
オンラインサロン誕生は、品川〜新大阪間の新幹線内だった
ーオンラインサロンを始めたきっかけを教えてください。
ビジネスパートナーの立山さんがきっかけですね。ちょうどサロンを立ち上げる1週間前、東京の仕事を終えて大阪のミーティングに向かう途中でした。新大阪駅行きの新幹線の中で、急に彼から「ケントさん、オンラインサロンって知ってます?」って、コテコテの関西弁で聞かれたんです。実は僕、その瞬間までオンラインサロンのことを全く知らなくて、「ヘアカットの何かですか?」って返事をしてしまいました(笑)。
そこから新幹線に乗っている2時間半の間、立山さんから仕組みについてみっちり説明を受けて。新大阪駅に着いて、彼から「オンラインサロンをやりましょう」と言われた時、二つ返事でOKしたんです。
ー即決だったんですね。
立山さんをはじめ、僕のこれまでのチャレンジや姿を見てきた方から、「ケントさんのチャレンジやフィロソフィーはコンテンツとして残さなきゃ、シェアしなきゃだめだ」って言われたんです。今まさに、僕自身がチャレンジの最中にありますし、その瞬間でしか語れないこと、その瞬間でしか伝えられない雰囲気をコンテンツとして残す手段として、オンラインサロンをやる意味があるなと。
ー周りの方の意見と同じように、ケントさん自身も今の自分の姿をなんらかの形で残していきたいという意識はありましたか?
もちろんありました。僕が仕掛けようとしているチャレンジは、日本、ひいてはアジアのエンターテイメントに、新たなトレンドをもたらすことになると思っています。僕はそれを勝手に「アポロ計画」とか呼んでいるんですが。
結果はどうなるかわからないけれど、そこに関わる全ての人が、本気で向き合ってチャレンジをしたんだという事実は、絶対残すべきだと思います。もしかしたら、山頂を目前に遭難してしまうかもしれないし、リタイアするかもしれない。当然そんな結果は望んでいないんだけど、その様子はありのままに見せるべきだなって。
ー夢に向かって突き進む、ケントさんのありのままを見せる、ということですね。
そうです。だから週1回行われるディスカッションやライブ配信では100%嘘のない自分を見せようと思っています。メンバーの合う・合わないは別にして、僕はこうやって考えて生きてきたっていうのを、カッコつけずに伝えています。20代はまだ尖っていたんで、見せたいとは思いませんでしたが、30代になったしもういいかなって(笑)。今は毎週のディスカッションが、楽しみでしょうがないです。
多くの人が惚れ込む、ケント・モリのフィロソフィー
ーケントさんがサロンを通じて、メンバーに伝えたいことはなんですか?
僕が言いたいことは1つ、「E=MC^2」だけです。
ーE=MC^2(*)。なるほど……?
(*)理論物理学者、アルベルト・アインシュタインが自身の論文で提唱した方程式。この世で最も美しい数式とも称される。Eはエネルギー、mは質量、cは光の速度を表す物理学的関係式で、「わずかな質量の中にも膨大なエネルギーが秘められている」ということを示している。
今、頑張ってなんとか理解しようという苦労と優しさを感じました、ありがとうございます(笑)。
僕は常々、人間の持つエネルギーと才能は、常にイコール(平等)だと思っています。だから、大事なのは自分の才能を信じて、中に秘められたエネルギーをどれだけ燃やし尽くそうとするか、じゃないかなって。実際に、まるで核爆発・核融合のように情熱を燃やして、でかいことを成し遂げた偉人がたくさんいる。僕らにはできる人・できない人の境はなくて、単に「やるかやらないか」だけなんです。それだけは、サロン内外で一貫して伝えてきました。
「人が死ぬ気になりゃー、できにゃーことはにゃー(ない:名古屋弁)」
これはうちのおばあちゃんの言葉なんですが、彼女はその言葉を信じてずっと生きてきて、91歳だけどまだまだ元気。とてもシンプルな言葉だけど、僕自身も本当にそうだなって思っています。
ーダンス、エンターテイメントという軸を見つけたケントさんとは違い、爆発させるものを見つけられていない人には、どんなアドバイスをしますか?
ベタかもしれないですが、「Follow Your Heart」。つまり、本当に大切なものは、あなたの心だけが知っているということかな。僕はゼロイチで物事を創ってきましたが、当然それだけが正解じゃなくて、大きな組織の中で、サポートに向いている人もいる。人それぞれに持ち場があって、組織や世の中が成り立っているんですよ。僕みたいなやつばかりじゃ、社会が成り立たないからね(笑)。
食物連鎖もそうで、ちっぽけなアリがいなくなるだけで、生態系のバランスが崩れて環境が激変してしまいます。自分の中でしっくりくる持ち場という名のイスを見つけて、「我ここにあり」と自信を持って宣言できるかどうか。この答えは、決して外の世界にはありません。自分と徹底的に向き合って、初めて答えを見つけることができるんです。
目の前にある事実に対して、自分がどう感じたか、そのイスがしっくりくるのかしないのか、僕はそれだけを考え続けて、全てをジャッジしてきました。
ー誰かに与えられたのではなく、考えに考え抜いた結果、自分だけの持ち場を見つけ出したんですね。
たとえば、横綱は日本の国技・相撲では神様ですが、ダンスフロアで誰よりもうまく踊ることはできないですよね。僕も同じで、仮にサラシを巻いてどれだけパッションを注いでも、横綱にはなれないでしょ。これは、持ち場が違うんだから当然のことです。自分と向き合って、これだと思い至った土俵でこそ、横綱になれるんですよ。しかも、同じ横綱でも若乃花と貴乃花じゃ、スタイルがまるで違う。
MJはブレイクダンスもするけれど、逆立ちしたり頭でスピンをしたりはしなかった。それでも、立ち姿や一瞬目線を変えるというわずかな動作が、世界中の目に止まったんです。つまり、誰でもできることを、誰よりも積み重ねた結果、世界を魅了することができた。それだけ全身全霊を込めて、一つのことに向き合うことができるかどうかが重要なんです。
メンバー全員が自分のイスを見つけて、新たな価値を見出したい
ーサロンが立ち上がって、3ヶ月以上が経ちました。立ち上げ当初から、サロン内の雰囲気は変わってきましたか?
僕の伝えたいことを捉えて、それを形にしようとしてくれるムーブメントがすでに生まれています。僕に密着して動画を撮影・編集してくれる「TOZF」というクリエイターコンビや、彼らが撮影したものに英語字幕を入れてくれる、TOEIC満点を獲得した英語マスター、イリちゃんが名乗りを上げてくれているのが、その表れですね。
もちろん、彼らのように、クリエイター・表現者じゃなくても、サロン内で誰しもが自分の持ち場を見つける余地があると思っています。
ーこれから入るサロンメンバーが、全く新しい自分だけの席を見つけるかもしれませんね。
全員が見つけられると思いますよ。
今僕が手がけている、新しいエンターテイメントを生み出すという1つの夢を、どう形にしていくのか。これがこのサロンの大きな軸になっていますが、僕から刺激を受けたメンバー達が、才能のかけ算をしてプロジェクトをもっともっと大きなものにしてくれるかもしれない。たとえ、動画撮影、編集、翻訳とかの技術がなかったとしても、熱意を持ってその様子を伝えようとしてくれるだけでもいいんです。
ーメンバーの方々が自分が持っている力を掛け合わせることで、ケントさんの夢をさらに大きくしていくんですね。
僕は昨日、ないしは1分前の自分を越えていきたいと常に思っています。日本人にとっての「10秒台の壁」のように、チャレンジを積み重ねた結果、将来的に乗り越えられることが出てくる。そんな感じで、先人達のものすごい努力や情熱が次の世代の刺激となり、記録や感動は更新されていくんです。
僕は次の世代に対して、「少なくとも俺の世代は、ここまでやりきったぞ!」と胸を張って伝えたい。そして、僕と同じように、自分自身もこの時代で何かを残していきたいという志を持つ人が、このオンラインサロンにどんどん集まればいいですね。さらに、彼らを応援したい人、見守りたい人、挑戦する姿に気持ちが高揚する人も大歓迎です。
僕のどうでもいい話を聞きながら、昨日の自分より1mmでもプラスに感じてもらえたら嬉しいですね。
命を燃やすように目の前のパフォーマンスに集中するケントさんの姿には、心の底から込み上げるものを感じました。ケント・モリが成し遂げようとする壮大な夢への道筋を間近に体験できる『Kento Mori Dream Salon』で、あなたの中に秘められた情熱を燃やし尽くしてみませんか?