初心者が投資を始めるときには、まずどんなリスクがあるのかを知っておく必要があります。投資のリスクを完全になくすことは難しいですが、リスクを減らすことは可能です。この記事では、株式投資で考えられるリスクの種類と、それらのリスクをできるだけ回避するための方法を解説します。
株式投資で考えられるリスクの種類とは?
投資には常にリスクが伴います。しかし、慌てることはありません。投資を始める前にあらかじめリスクについて理解しておけば、リスクを減らすことが可能です。まずは、株式投資において起こりうるリスクの種類について説明します。
株式投資のリスク1:株価の下落
株式投資のリスクとして、まず株価の下落が挙げられます。株価は常に変動するため、株を購入した時よりも株価が高くなるときもあれば、低くなるときもあります。購入時より株価が低い時に株を売却すると、その分が損失となってしまうのです。このように株価が下落する根本的な原因は、世界的な成長が減速することにあります。
具体的には、世界総生産、日本でいう国内総生産(GDP)が減少することで株価は下落します。国内総生産の減少は、その国で生産された物やサービスの量が減少したということ、つまり、その国の各企業が稼ぎ出したお金の量が減ったということを意味します。そして、各企業の売り上げが減少することで社会全体が不景気になると、株主は株価下落による元本割れを恐れて、早めに株を手放そうとするため、どんどん株価が下がっていくのです。
また、株主が得られる配当金が減ってしまった時も、株を売りたいと考える株主が増加します。これは国外においても同じことで、上場企業の本拠地がある国の景気が悪化すれば、その企業の株価は下落します。ただし、まれに経済指標が落ち込んでも株価が下落しないことがあります。これをバブル期といい、バブル期はGDPが減少しても株価が下がらないどころか、かえって株価がどんどん上昇していきます。そして、バブルがはじけるとき、株価は大暴落を起こすのです。ただし、このようなケースは非常に稀で、10年に1度くらいの頻度で起こる可能性があると頭に入れておくと良いでしょう。
(参考:みんなの株式 株価はどうして上下するの?)
株式投資のリスク2:企業の倒産
企業の倒産も、株式投資におけるリスクのひとつです。もし、倒産した企業の株を保有していた場合、その株は売買できなくなり、株の価値はほとんどなくなってしまいます。その企業に財産が残っていれば、自身が投資した資金を回収する権利はありますが、ほとんどの企業は債務超過によって倒産するケースが多く、資金を回収できることはほぼないと考えて良いでしょう。つまり、自身がその企業に投資した資金をすべて失う恐れがあるため、企業の倒産は株式投資の中で最大のリスクともいえます。
また、倒産時は企業に資金が残っていないどころか、負債を抱えている場合があります。しかし、このような場合、株主が負債の責任までを問われることはありません。これを有限責任といいます。つまり、企業が負債を抱えて倒産したとき、債権者は自分が出資した金額をすべて失うことになりますが、それ以上の金額を請求されることはありません。
ところで、企業はどのような理由で倒産に追い込まれるのでしょうか。主な原因としては、業務不振、不祥事などによる社会的信用の損失、資金繰りの失敗の3つが挙げられます。
まず、業績不振による倒産では、業績不振によって赤字の状態が何年も続くことで、企業の資金が底をつき、倒産に至ります。
次に、企業の不祥事などにより社会的信用を失い倒産するケースでは、インサイダー取引や不正会計疑惑、社員による犯罪、製品のリコールなどによって、その企業に対する社会的なイメージが低下し、業績が悪化した結果、倒産に至ります。
最後に、資金繰りの失敗により倒産するケースでは、企業が保有する現金が足りなくなり、買掛金や税金の支払いができなくなった結果、倒産に至ります。先に、赤字決算が続くと倒産に至ることを説明しましたが、倒産に至るかどうかのポイントは企業が保有する資金の有無です。その年が決算上で赤字になっていても、現金を保有していれば、買掛金や税金の支払いができるため、倒産には至りません。逆に、決算上は黒字でも手元に現金が足りず倒産に陥る、いわゆる黒字倒産のケースもあります。
株式投資のリスク3:流動性によるリスク
最後に紹介する株式投資のリスクは、流動性リスクです。流動性とは、市場における株の売買がどれだけ活発に行われているかを示す指標です。株の流動性は、株の売買が成立した数を示す「出来高」や売買注文の一覧表である「板」などで確認することができます。
株の売買が活発に成立している状態を流動性が高い状態、株の売買が活発に成立していない状態を流動性が低い状態と言います。そして、流動性リスクとは、売りたいと思った時に買い手がいない、あるいは買いたいと思った時に売り手がいない状態になることを言い、流動性が低くなると流動性リスクは上昇します。流動性リスクがある状態で取引を行うと、思わぬ高値で株を購入してしまったり、希望価格で株を売買することが難しくなったりするため、損をする可能性が高くなってしまうのです。
株式投資のリスクを軽減するための対処方法
株式投資にどんなリスクがあるのかが理解できたところで、次に必要なのはこれらのリスクを回避することです。ここからは、できるだけリスクを回避するにはどうしたら良いのか、具体的な対処方法を3つ紹介します。
株式投資のリスク回避方法1:分散投資をする
株式投資のリスクを回避する方法の一つに、分散投資があります。分散投資というのは、投資先の企業を1社だけに限らず、複数の企業に分けることを言います。1社に全額投資してしまうと、その企業が倒産したときに全投資額を失ってしまう可能性があるためです。この時、同じ業界の企業で分散しても、株価が似たような動きになる場合があるため、複数の業界に分散することでリスクを減らすようにすると良いでしょう。
ただし、分散投資の場合、短期間で大きな利益を上げるのは難しく、利益を得るためには長期間投資しなければなりません。また、どの銘柄を購入したか把握しておかねばならないため、管理の手間がかかるというデメリットもあります。しかし、長期的視点で分散投資を行っていると、それぞれの株の価格変動が大きくてもリターンのばらつきが抑えられ、安定的な利益を得やすくなります。また、売買のタイミングを常にチェックしなくて良いので資産運用がしやすい点もメリットといえるでしょう。リスクが低く、安定的な利益を得やすい投資方法です。
株式投資のリスク回避方法2:長期保有をする
次に、株を長期保有することも株式投資のリスク回避に有効な方法です。長期保有することで、その間に株主配当を受け取れることや、約2〜10倍の値上がり益が期待できるなどのメリットがあります。ただし、その間に景気が悪化し、株価が下落するリスクもあります。このリスクを回避するためには、定期的に銘柄のファンダメンタルズ分析を行うことが有効です。ファンダメンタルズ分析とは、個別の企業の財務情報や経済の動きを分析する方法のこと。具体的には、会社四季報を利用して個別企業の財務状況を分析したり、新聞やニュースなどで業界に関係する法律や政策を把握したりします。また、企業のホームページなどで経営者の人物像を分析するのもその一つです。
ファンダメンタルズ分析の結果、社会の景気が回復しているにも関わらず、投資先の企業の業績は回復していなかったり、業界内の他の企業は好調なのに投資先企業は不調だったりする場合は、株価が下がり続ける可能性があるので注意が必要です。また、過去の株価暴落時の実績も調べてみるのもおすすめです。一時的に業績が下がっていても、長期的に見たときに業績が右肩上がりになっていれば長期保有に適している企業だといえます。
株式投資のリスク回避方法3:投資額を抑える
株式投資のリスクを回避するためには、投資方法だけを見直すのではなく、根本的に投資額を抑えることも大切です。いきなりたくさんの金額を株式投資に回してしまうと、株価が下落したり企業が倒産したりしたときに手元に現金が残らなくなってしまいます。そのような投資は避けるようにしましょう。
また、投資と貯金を混同して考えてしまうのはとても危険です。株式投資には、株価の上昇によって利益を得たり、株主優待を得られたりするなどのメリットがありますが、同時に元本割れのリスクもあります。一方、銀行口座に現金を預けて貯金している場合は、金利が低いのでほとんど現金が増えることはありませんが、好きなときに預金を下ろせるうえ、銀行が破綻しても1000万円までの元本保証があります。このように、投資と貯金はそれぞれのメリットとデメリットがあるので、そのバランスがとても重要になるのです。貯金の中から具体的に使い道が決まっているお金を除いた、余裕資金を投資に回すと良いでしょう。
(参考:預金保険機構)
投資に回す金額の割合については、さまざまな考え方がありますが。どのくらいの支出があり、どのくらいの貯金が必要なのか、現状を考えてから慎重に判断する必要があります。初心者の場合は、いきなり大きな投資をするとリスクも大きくなってしまうので、最初は投資が3割、貯金が7割くらいのバランスで始めるとリスクが少なく済むでしょう。こうすれば、株式投資で損失を出しても貯金があるので、大きな影響は受けづらくなります。まずは、安全性を確保した上で収益アップを目指しましょう。
投資は自己責任!リスクを考えて健全な投資を
株式投資には常にリスクがあります。今回紹介したように、リスクを分散する・株を長期保有する・投資額を抑えるという3つのポイントを心がけるとリスクを回避しやすくなるでしょう。いきなりたくさんの利益を得ようとせず、株式投資は無理のない範囲で行うようにしてくださいね!