副業で稼げるようになると、同時に気になるのは税金のことではないでしょうか。たとえ副業であっても、一定の所得を超えた場合は税金を納める必要があります。そこで、この記事では、税金が発生する基準や納税方法、税金の計算方法などをまとめました。副業で得た利益に対してどのくらい税金を払わなければならないのか、計算してみましょう。
副業に課せられる税金の種類
副業に課せられる税金は、主に所得税と住民税の2つです。これらはともに、納税者個人の所得に対して課せられる税金です。
所得税とは国に納める国税の一つで、課税対象となる年の1月1日から12月31日までに発生した課税所得金額を基準に5~45%の範囲で税率が変動し、最終的な税額が計算されます。課税所得金額とは、全ての所得金額から、必要経費(消耗品費や交通費など)と所得控除(基礎控除や社会保険料控除など)を差し引いた物です。課税対象となる年の翌年に設定される、確定申告期限日*までに納税を行う必要があります。
(*ほとんどの場合は3月15日)
(参考:国税庁|所得税の仕組み)
なお、東日本大震災からの復興を目的として平成23年に施行された特別措置法の規定により、2013年1月1日から2037年12月31日までは、納税する所得税額の2.1%が復興特別所得税として徴収されることになっています。
住民税とは各地方公共団体に納める地方税の一つで、課税所得金額にかかわらず税率は10%で一定です。税額は、課税対象となる年の課税所得金額を基準にして計算され、普通徴収は課税対象となる年の翌年6月末日、8月末日、10月末日、翌々年1月末日に納税を行います。ただし、サラリーマンの方は毎月の給与から住民税が天引きされる特別徴収となっている場合がほとんどです。
(参考:港区|納税について)
副業による所得に税金が課せられる条件
サラリーマンの方は、会社で行ってくれる年末調整によって所得税額の決定と納税が完了します。そのため、追加納税の必要が生じるのは、副業による所得の合計金額が20万円を超えた場合です。
所得は収入から必要経費を差し引いたものです。たとえば1年間の売り上げが100万円であっても、必要経費が85万円だった場合は、所得は15万円となるので、改めて納税を行う必要はありません。
(参考:国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人)
税金が還付される条件
税金を払いすぎている状態になってしまうのは、源泉徴収や予定納税された所得税額がその年の所得にかかる税額を上回っている場合、確定申告を行ったあとで所得を再計算した結果、確定申告時に申告した所得よりも少額になった場合などが考えられるでしょう。このように、税金を払いすぎいてしまった場合でも、還付申告をすれば払い戻しを受けることができます。還付申告は確定申告期間に関係なく、申告対象となる年の翌年1月1日から5年間提出することができます。
また、還付申告を行うと住民税額も再計算となり、住民税の減額と還付を受けられる場合もあるので、所得税の還付金額が少ない場合でも申告を行うメリットはあると言えるでしょう。
副業にかかる税金を実際に計算してみよう
副業にも税金がかかることがわかったところで、気になるのは具体的な税額ではないでしょうか。以下に計算の手順を説明するので、自分にどのくらいの所得がありどのくらいの税金がかかるのか、実際に計算してみましょう。
収入源別に所得金額を求める
まずは所得がいくらになるのかを計算しなければなりません。所得には給与所得以外に事業所得、不動産所得、雑所得などの種類があり、それぞれ計算方法が異なります。以下、種類別に解説していきます。
給与所得の場合
アルバイトやパートを副業にしていて、勤務先から給与を得ている場合、その所得は給与所得に当てはまります。給与所得の計算方法は下記の通りです。
給与所得 = 給与収入-給与所得控除額
給与所得控除は、作業着や筆記具、勉強のための書籍などのように、業務上必要な物を購入する事もある給与所得者の事情を考慮したもので、事業所得でいうところの経費のようなものです。控除額は、給与所得の金額によって異なり、たとえば、給与収入が300万円の場合の給与所得控除額は、下記のように計算できます。
3,000,000×0.3+180,000=1,080,000[円]
通常、企業で行われる年末調整は、その企業で支払われた給与のみを対象に行われるため、本業・副業ともに給与所得の場合は、所得金額にかかわらず確定申告をしなければなりません。本業先と副業先それぞれから発行される源泉徴収票が必要になります。源泉徴収票を受け取っていない場合は、勤務先に依頼すれば発行してもらえます。
(参考:国税庁|給与所得控除)
(※:令和2年より給与所得控除の金額が変更になります)
事業・不動産所得の場合
アルバイトやパート以外の副業、たとえば、卸売業、小売業、農業などを営んで、継続的な収入を得ている場合、その所得は事業所得に当てはまります。
事業所得の計算方法は下記の通りです。
事業所得 = 総収入-必要経費
また、不動産などの貸付により収入を得ている場合は、原則として不動産所得に当てはまります。不動産所得の計算方法は下記の通りです。
不動産所得 = 総収入-必要経費
不動産による所得は「貸間、アパート等については、貸与することのできる独立した室数がおおむね10室以上であること」もしくは「独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること」という条件を満たしている場合に限り事業所得として申告することができます。不動産所得を事業所得として申告するメリットは、最大で65万円の青色申告特別控除の適用、青色事業専従者給与の特例、または事業専従者控除の特例を受けられる点です。
ただし、65万円の青色申告特別控除を適用するためには、正規の簿記の原則に則って記帳すること、貸借対照表・損益計算書を確定申告書に添付して申告期限内に提出することなど、一定の条件を満たさなければなりません。
不動産所得として申告する場合でも、白色申告と青色申告のどちらも利用可能ですが、適用される青色申告特別控除は10万円までです。
雑所得の場合
アフィリエイトや単発で受けた執筆の仕事など、事業的な規模ではないものや、単発の仕事による収入は雑所得に当てはまります。雑所得の計算方法は下記の通りです。
雑所得 = 総収入金額―必要経費
雑所得は事業所得とは違い、給与所得などと損益通算ができないほか、青色申告特別控除の対象外となるので注意が必要です。
所得金額を合算して税率をかける
各種所得がいくらあるかわかったら、すべての所得を合算しましょう。そこから所得控除を引いた金額が課税対象となる金額です。所得控除の種類には、38万円の基礎控除や医療費控除、生命保険料控除、寄附金控除などがあります。そして最後に、課税対象の金額に税率を掛けた金額が実際に支払う税額です。
住民税の税率は一律で10%ですが、所得税は所得に応じて税率が変化する累進課税制度を採用しているので、課税対象となる金額に応じて5~45%の間で税率が変動します。
税金の納付方法
副業の収入に対して支払わなければならない税額を把握したところで、納税方法についても知っておきましょう。最後に納税方法の種類と具体的な手順を説明します。
現金納付
現金納付とは、納付書を利用して現金払いで税金を納める方法です。支払場所は金融機関や税務署で、税金が30万円以下の場合はコンビニエンスストアでも支払いが可能です。
コンビニエンスストアで支払う場合は、納付書ではなくQRコードを利用することで簡単に納税を行うことができます。QRコードは国税庁のホームページから「税の情報・手続・用紙」→「納税・納税証明書手続」→「コンビニ納付(QRコード)」の順にアクセスし、あらかじめ印刷しておく必要があります。
振替納付
振替納付とは、指定した預貯金口座からの口座振替で税金を納める方法です。自動で預貯金口座から税金が引き落とされるので、現金納付のように直接支払いに行ったり、QRコードを作成したりする手間がかかりません。また、振替納付に限り、納税時期が法廷納付期限日から約1ヶ月後になります。税額の確定が申告期限ギリギリになっても、振替納付なら余裕を持って資金繰りを行うことができるでしょう。
振替納税を利用するには、税務署と預貯金口座の金融機関に専用の依頼書を事前に提出する必要があります。
電子納付
電子納付とは、インターネットを通じて税金を納める方法です。国税電子申告・納税システムのe-Taxを利用して確定申告を行うと、インターネットバンキング等による電子納税と、インターネット経由で預貯金口座から口座振替するダイレクト納付の2種類から納税方法を選ぶことができます。
電子納税は、Pay-easyによる電子納税を利用できる金融機関からであれば、パソコンやスマートフォン・携帯電話、ATMから自分の好きな時間に納税できることが大きなメリットです。しかし、領収書が発行されないため、領収書が必要な人はほかの納付方法を選ぶようにしましょう。
一方、ダイレクト納付は、一度登録を行うと、それ以降は簡単な手続きで納税を行えるというメリットがあります。しかし、利用する場合には、事前に税務署へ利用届書を提出する必要がありますので、注意してください。
副業に税金がかかるケースもあるのでしっかり確認しよう
副業だからといって税金を払わなくて良いわけではありません。副業で年間20万円より多くの所得を得ている場合は税金を納める義務があります。本来納めるべき税金を納めていないと、無申告加算税や延滞税が発生し、本来よりも多くの税金を納めなければなりません。このようなことを防ぐために、この記事でご紹介した内容を参考にして税についての理解を深め、しっかり納税を行うようにしましょう。