普段はめったに使う機会がない年金手帳。転職した時になどに会社から提出を求められ、どこに保管したかわからず探しまわった経験がある人も多いのではないでしょうか。
そもそも、年金手帳とは何のためにあり、会社に提出する必要があるのはどんな時なのか。そして、年金手帳はいつどのように発行され、紛失した場合、あるいは名前や住所に変更があった場合にどうすればいいのか。この記事では、そんな年金手帳の基礎知識をわかりやすくまとめてお伝えします。
年金手帳は誰もが長く付き合っていく重要な書類です。この機会にその目的や使用場面を把握して、今後も大切に保管してくださいね。
年金手帳とは
年金手帳は、厚生労働省との連携のもとで日本の公的年金事業を運営している「日本年金機構」が発行する小さな冊子であり、年金の加入記録の管理に使われる10桁の「基礎年金番号」が記載されています。この基礎年金番号は1人に1つ割り当てられており、自営業者なども含めて全ての人が加入する国民年金、会社員が加入する厚生年金、公務員が加入する共済など、全ての公的年金制度に共通して使用される番号です。
年金手帳の使い道
年金手帳は、主に就職や退職の時、勤務先の年金制度への加入や脱退の手続きのために必要となります。そのほか、年金手帳が必要になる場面としては、次のような例が挙げられます。
・住所や名前の変更など、年金に関する届け出を行う時
・配偶者が加入している厚生年金や共済に被扶養者として加入する時、また脱退する時
・ねんきんネットに登録する時
・個人型確定拠出年金(iDeCo)関係の手続きを行う時
・年金の受給手続きを行う時や相談を行う時
ただし、現在は基礎年金番号とマイナンバーの紐づけが進んでおり、多くの場面で基礎年金番号に代えてマイナンバーを使用することができるようになりました。このため、上記で紹介したような各種手続きの際に年金手帳が必要となるケースは減りつつあると言えます。
一方で、マイナンバーは厳重に管理することが義務付けられているため、手続きの度に基礎年金番号を使用するほうが、会社にとっては簡便と言えます。このため、年金手帳を求められる機会が全くなくなるということはないと考えられるでしょう。
年金手帳の見方
年金手帳を開くと、最初のページに「基礎年金番号」と氏名、生年月日、性別、交付年月日が記載されています。
次のページ以降には、特に何も書いていない人がほとんどかと思いますが、ここは年金の加入記録を自分でメモするためのページです。ただし、年金の加入記録は基礎年金番号を使って記録・管理されているため、自分でメモを取っていなくても特に問題ありません。
メモ欄の後ろには、届け出が必要な場合、どうすればよいかを記載したページがあり、年金関連で何かわからないことがある時にはここを確認するとよいでしょう。
年金手帳の色について
年金手帳の表紙の色は、年金制度に加入した時期によって異なります。
なお、昭和49年以前にはおおよそ5年ごとに年金手帳の色が更新されていたため、茶色のほかに、水色や薄橙色のものがあります。
会社への年金手帳提出
年金手帳が必要になる主な場面として「勤務先への提出」を紹介しましたが、年金手帳を会社に提出する必要があるのはどんな時なのか、また年金手帳を会社に預ける場合があるのはなぜなのか、具体的に確認しておきましょう。
会社への提出が必要なタイミング
会社に年金手帳を提出する必要があるのは、主に次のタイミングです。
・入社時(厚生年金加入時)
・退職時(厚生年金脱退時)
・引っ越しで住所が変わった時
・結婚などで名前が変わった時
厚生年金に加入する会社員の場合、一般的に加入や変更の手続きは全て会社を通して行われるため、変更があるたびに会社に年金手帳を預けて手続きを進めてもらう必要があります。
年金手帳を会社が保管するケース
上で紹介したように、会社に年金手帳を提出しなければならない場面は意外にも多くあることがわかります。
そのため、手続きが発生するたびに会社が年金手帳を預かり、手続き後に本人に返却するという対応を繰り返していると、どちらが持っているのかわからなくなってしまい、年金手帳を紛失してしまうことがあるかもしれません。こうした事態を避けるため、入社時に年金手帳を会社に提出し、そのまま退職時まで会社で保管するというケースも多く見られるようです。
年金手帳の発行
そもそも年金手帳はいつどのようにして入手するのでしょうか。あらためて発行のタイミングと手続きを確認しておきましょう。
年金手帳の発行タイミング
日本に住んでいる20歳以上60歳未満の全ての人は、国民年金への加入が義務付けられているため、基本的には、20歳になったタイミングで国民年金への加入手続きが行われ、年金手帳が発行されることとなります。
ただし、20歳になる前から企業などで働いている人の場合は、就職の際に厚生年金保険などへ加入するため、20歳に達していなくても就職のタイミングで年金手帳が発行されます。
年金手帳の発行手続き
初めて年金手帳を発行する際、本人が行う手続きは特にありません。
令和元年10月以前は、20歳になる少し前に国民年金への加入手続きの案内が送られてくる仕組みになっていたため、受け取った人は書類に記入して手続きを行う必要がありました。しかし現在では、20歳になった段階で自動的に年金加入手続きが行われる形に変更されています。
年金手帳を受け取る大まかな流れとしては、20歳の誕生日を迎えてからおおよそ2週間以内に、まず「国民年金加入のお知らせ」と関連書類が届き、年金加入手続きが完了したことが通知されます。そして、これと同じ時期に年金手帳が郵送される仕組みです。
なお、現在は年金加入者の情報がシステム上で管理されており、手帳という形で保管する必要性が下がってきたため、年金手帳を廃止することが令和2年に決定しました。そのため、令和4年4月以降は、年金手帳に代わって「基礎年金番号通知書」が発行されることになっています。
年金手帳を紛失した際の再発行
年金手帳をなくしてしまったという場合でも、年金手帳は簡単に再発行することができます。遠近手帳を再発行する手続きについて詳しく見ていきましょう。
再発行の手続き先
手続きをどこで行うかは、加入している年金の種類によって異なります。会社勤めの場合、または会社勤めの配偶者の扶養に入っている場合は、自身または配偶者の勤務する事業所を管轄する年金事務所で手続きを行ってください。自営業などで国民年金のみに加入している場合は、自宅の住所地の市町村役場で手続きを行いましょう。
年金手帳の再発行に必要なもの
年金手帳の再発行を申請する際は、「年金手帳再交付申請書」の記入が必要です。手続きは窓口のほか、郵送や電子申請でも可能。手続きを終えると、個人で再発行の手続きをした場合は自宅に、会社を通して手続きをした場合は会社に、後日新しい年金手帳が郵送されます。
(参考:日本年金機構│年金手帳を紛失したのですが、再発行はできますか。)
年金手帳が再発行されるまでの期間
再発行を申請してから年金手帳が手元に届くまでには、おおよそ2週間かかります。ただし、急ぎで年金手帳が必要な場合は、年金事務所の窓口に行って手続きを行えば、その場で発行してもらえる場合があります。
また、国民年金のみに加入している人であっても、市町村役場を通して実際には年金事務所が手続きを行っているため、急いでいる時は同じく年金事務所の窓口に行って手続きを行うのがおすすめです。
窓口での即日発行を希望する場合は、免許証やマイナンバーカードなど写真付きの身分証明書と印鑑を持参してください。ただし、日本年金機構のルール上は即日発行の義務はないため、必ずその場で再発行してもらえるとは限りません。管轄の年金事務所で対応してもらえるか、事前に電話で問い合わせておきましょう。
年金手帳に記載されている住所や氏名の変更
最後に、住所や名前が変わった時の手続き方法を確認しておきましょう。
住所変更時に必要な手続き
マイナンバーと基礎年金番号が結びついている場合は、住所が変わっても特に手続きは必要ありません。ただし、住民票の住所と実際の居住地が異なる人など、例外的なケースでは手続きが必要です。
手続きが必要な場合、会社勤めの人は、勤務先に「被保険者住所変更届」と年金手帳を提出すれば、会社が手続きを行ってくれます。
自営業者など国民年金のみに加入している人の場合、市町村役場で転居の届け出を行うことで、新しい住所が年金記録にも反映されるため、特別な手続きは不要です。
氏名変更時に必要な手続き
住所変更と同様に、マイナンバーと基礎年金番号が結びついている場合は、氏名が変わっても手続きは不要です。
手続きが必要な人の場合、会社勤めであれば勤務先に「被保険者氏名変更届」と年金手帳を提出しましょう。
国民年金のみの加入者であれば、婚姻届の提出などで市町村への届け出を行う際、年金記録にも名前の変更が反映されるため、特別な手続きは必要ありません。
現在では、廃止が決定している年金手帳。しかし、廃止と言っても新規発行や再発行が行われなくなるだけで、既に年金手帳を持っている人は従来通り年金手帳を基礎年金番号の確認書類として使うことができます。
基礎年金番号は転職や年金受給の際に必要な重要な情報であるため、今後も年金手帳はなくさないよう、大切に保管しておきましょう。もしどこにも見当たらない場合は、この記事で解説した内容を参考に、余裕を持って再発行の申請を進めてくださいね。