作品もアートも味わい尽くす。アニメ『ブルーピリオド』オンラインサロン

著者名サトートモロー
作品もアートも味わい尽くす。アニメ『ブルーピリオド』オンラインサロン

2021年の秋アニメとして、10月から放送がスタートしたアニメ『ブルーピリオド』。山口つばささん原作の同作は、絵を描くことに目覚めた主人公・矢口八虎が、国内最難関の芸術大学・東京藝術大学を目指しながら、美術について学ぶ姿を描いています。

そんな『ブルーピリオド』のオンラインサロンがオープンあることを、皆さんはご存知でしょうか?その名も、「TVアニメ『ブルーピリオド』ファンサロン 東京美術学院 オンライン学科」。2022年1月までの期間限定でオープンしたこのサロンでは、作品のファンなら誰もが気になる、魅力あふれるコンテンツが展開されています。

今回は、ブルーピリオドの大ファンである筆者が、プロデューサー兼サロンオーナーの松本拓也さんに、サロンの特徴やこれから始まるコンテンツについて詳しく伺いました!


松本拓也(まつもと・たくや)さん

DMM picturesプロデューサー。『ブルーピリオド』のほか、『あひるの空』『波よ聞いてくれ』『ましろのおと』『灼熱カバディ』『ジャヒー様はくじけない!』などに携わっている。


作品により愛着のわく場所を作りたい

ーーアニメ発のオンラインサロンは、非常に面白い試みだと思います。今回、サロンを開設することにしたきっかけを教えてください。

雑誌のインタビューや先行上映回、ラジオ、生配信といったさまざまな媒体で、作品の魅力を伝えることはできます。けれど、もっとクローズドな環境で、裏側を見せたりファンの方々からの質問に答えたりする場所って意外と少ないんですね。

でも、そういう場所があれば、もっと作品に愛着がわくじゃないですか。そんな環境を提供したいと思い、オンラインサロンの開設を決めました。

 

ーーそうだったんですね。前例が少ないなかで、オンラインサロン開設で大変だったことはありますか?

アニメの制作委員会というシステムは、本当にたくさんの会社さんが関わっています。関係者の方々に「オンラインサロンを立ち上げたい」と提案して、その合意を得ることが一番大変でしたね(苦笑)。

 

ーーたしかに…。サロン内では、主にどんなことを発信しているのでしょうか?

現在は、毎週アニメの最新話が放送されるのに合わせて、ライブ配信をしています。副音声みたいな感じで、「このシーンはここが苦労して…」と、リアルタイムで僕が解説していくんです。ほかにも、サロンメンバーさんから質問があれば、CMなどの時間でお答えもしています。

アニメの放送時間が毎週金曜日の深夜なので、平日最終日の寝る前に、ゆるい感じで聞いてもらえればなと(笑)。

『ブルーピリオド』で気づかされた、身近にあるアート

ーー『ブルーピリオド』は美術・芸術が大きな題材として存在します。松本さんは、もともとこうしたジャンルに興味がありましたか?

ちゃんと意識するようになったのは、アニメに関わるようになってからだと思います。実は、『ブルーピリオド』をアニメ化するというのは、約4年前の時点で決定していたんですよ。

 

ーーたしか、漫画原作が『月刊アフタヌーン』で連載をスタートしたのが2017年なので、連載直後くらいから計画が進んでいたのですね。

そうです。そのときには放送時期の目標とかも、ある程度立てていましたね。『ブルーピリオド』で登場する作品は、作者である山口つばさ先生のお知り合いに描いていただいた作品や、予備校からお借りした作品が多く出てきます。

どれも非常に上手で、ひとつひとつに味がある。一方で、まだ「成長途中」な作品も多く、意外とカジュアルな気持ちで眺めることができるんですね。

あと、主人公の八虎は、高校2年生で美術部に入って、先生からさまざまな課題を出されるじゃないですか。その量がまた膨大なんですが、そのなかに「1日1枚写真を撮る」というものがあります。

それを見て、「これならできそう」と、自分でもついやってみたくなりませんでした?

 

ーー分かります(笑)。漫画の第1巻をはじめて読んだとき、スマホ片手に外を散策しました。

ですよね(笑)。でも、『ブルーピリオド』を読んで美術館に興味を持ったとして、先程の「1日1枚写真を撮る」と同じように、自分もすぐに美術館に行ってみようとは思えないじゃないですか。どこがどんな展示をしているのかが分からないので、なかなか足を運べないと言うか。

だから、僕にとって美術館に行くことはかなりハードルが高かったんですが、『ブルーピリオド』を読めば読むほど、日常のあらゆるものがアートに見えてくるようになったんですよ。

普段歩いている通路や日常的に利用しているショッピングモールだって、実は著名な建築家がデザインしているなんてこともあります。これだって、言ってみればアートの一種ですよね。

ちなみに、渋谷区内にある17の公衆トイレは、日本財団と渋谷区自治体とが協力して行なった『THE TOKYO TOILET』というプロジェクトで作られたもので、隈研吾さんや安藤忠雄さんなどの著名なクリエーターさんが手掛けています。

こんな感じで、僕自身『ブルーピリオド』に関わるようになってから、芸術や美術ってめちゃくちゃ幅広いんだ、敷居も全然高くないんだということが分かりました。そこに気づいてから、より身近なものとして美術を見るようになったと思います。

1カットへの並々ならぬこだわり

ーーこれは漫画・アニメのファンとしての個人的な質問なんですが…。実際にアニメを放送するにあたり、なにが一番大変でしたか?

資料集めがとにかく大変で、特に絵画を集めるのは苦労しましたね。原作で登場する絵画の中には、紛失していたり、売れたりして、アニメ化の時点ですでに元の所有者の手元にないものも多くあったんですよ。

八虎が進路を決めるきっかけになった森先輩の天使の絵とか、東京芸大の受験での絵とか、ストーリー上絶対に必要なものは、とにかく必死になって集めたんですけど、どうしても集められない絵はある。そうしたものは、優先度をつけて集めたり、新しく描いてもらったりしました。

それと、漫画=静画という特徴で成り立っていた表現を、アニメでどう描写するかという問題もありました。実は森先輩の絵って、※100号サイズのキャンバスに描かれているんですが、元の絵はA4サイズくらいの大きさなんですよ。

どうやって縮尺を合わせるか、演出面含め、舛成総監督・浅野監督には非常に尽力いただきました。(編集部注:キャンバスはF(人物)、P(風景)、M(海景)、S(正方形)と種類があり、Fタイプの100号キャンパスは、サイズが縦162.0cm、横130.3cmになる。)

 

ーーえ!?全然サイズが違うんですね。

ほかにも、これは苦労というわけではないんですが、漫画ではモノクロで描かれているシーンを、どうカラーで表現するかにはかなりこだわっています。

たとえば、八虎が自分の部屋の窓から夕焼けに染まった外の景色を見て、美術の面白さと受験や進路とに葛藤しながらも絵を描き始めることを決めるシーンがあるんですが、このときの夕景は「どんな情景なら八虎が絵を描きたくなるだろう」ということを想像しながら、かなり細かく調整していただいて。現場で実際に3パターンくらい出してどれが一番合うかを調整したりしました。

『ブルーピリオド』は、アクション作品とは異なり、激しい動きの少ない作品です。だからこそ、1カット1カットへの演出をかなりこだわっています。これからアニメを観るときには、そこにぜひ思いをはせていただけたら嬉しいですね。

アートをはじめる第一歩「絵画コンテスト」

ーー今後オンラインサロン内で予定しているコンテンツがあれば、ぜひ教えてください。

アニメの裏側を配信するのは、今後も継続していきたいです。それとは別に、もっと双方向的にメンバーさんと交流する企画として、「絵画コンテスト」を開催したいなと。

冒頭でも話しましたが、『ブルーピリオド』で美術の魅力やおもしろさに惹かれても、「何を描けばいい?」となってしまうじゃないですか。だから、僕たちが予備校の大葉先生のように「お題」を提示することで、描くきっかけを作るわけです。たとえば、「身近にあるもの」とか。

描くために最低限必要なものは、ノートに鉛筆やボールペン1本。どれも100円くらいで手に入ります。実際に手を動かしてみることで、「美術・芸術って敷居の高いものではないんだ」ってことに気づいてもらえればなと。そして、自分の活動や趣味の幅を、広げるきっかけにしてほしいと思います。

 

ーー関係者の方々と、一緒に絵を描けたら楽しそうですね。最後に、改めてこのオンラインサロンの魅力や、伝えたいメッセージがあればお願いします。

アニメ、特に製作委員会というシステムには、非常に多くの方が関わっています。そのため、情報公開もある程度決められたレールで、皆さんにお届けするしかありませんが、オンラインサロンは、どこよりもはやく情報をお届けできる場所だと考えています。

これからも、クローズドな場所だから提供できるコンテンツをたくさん用意していきたいと思っているので、サロンを通じて今よりもっとこの作品を好きになっていただけたら嬉しいです。

 

「TVアニメ『ブルーピリオド』ファンサロン 東京美術学院 オンライン学科」は、作品の魅力・アートの魅力の両方をもっともっと深く味わえる場所。このサロンで、アニメも芸術も思い切り堪能しませんか?

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ブルーピリオド製作委員会 - TVアニメ『ブルーピリオド』ファンサロン 東京美術学院 オンライン学科 - DMM オンラインサロンアニメ「ブルーピリオド」のファンコミュニティ。 普段見られない現場風景や原稿などを限定公開。 皆さんに参加していただきながら「ブルーピリオド」の世界をもっと好きになっていただけるようなファンクラブを目指します。
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