『踊る大捜査線』本広克行監督が手がける“大人の砂場”は、「映画を作る面白さ」を堪能できる場所

著者名サトートモロー
『踊る大捜査線』本広克行監督が手がける“大人の砂場”は、「映画を作る面白さ」を堪能できる場所

邦画史上最大級の大ヒットを記録した『踊る大捜査線』シリーズや、『PSYCHO-PASS サイコパス』『亜人』『サマータイムマシン・ブルース』『UDON』『幕が上がる』など。数々の大ヒット作を世に送り出してきた本広克行監督が、情熱を注ぐ“もうひとつの現場”があります。それが、オンラインサロン「エンタメの森 本広企画制作所(FOE)」です。

そこは、映像作品を観るのが好きな人やつくるのが好きな人たちが交わり、大きな熱狂を生み出す場所。なぜ、監督はオンラインサロンという形を選んだのでしょうか。創作の裏側へ足を踏み入れる楽しさ、そして仲間とエンタメを生み出す魅力について伺いました。

本広克行

1965年生まれ。香川県育ち。横浜放送映画専門学院(現・日本映画大学)卒業。CM、情報バラエティ、ドラマのADを経て、1992年に深夜ドラマ『悪いこと』で監督デビュー。邦画史上最大級の大ヒットを記録した『踊る大捜査線』シリーズや、『PSYCHO-PASS サイコパス』『亜人』『サマータイムマシン・ブルース』『UDON』『幕が上がる』など、数々の大ヒット作を世に送り出してきた。

作りたかったのは、誰もが参加できる“創作の砂場”

ーー監督がオンラインサロン「エンタメの森(FOE)」を始めたきっかけを教えてください。

当時はオンラインサロンが一部で盛り上がり始めていた頃で、とくに盛り上がっているいくつかのコミュニティの様子を見ていたところ、「この仕組みならば面白いことができるんじゃないか」と思ったことがきっかけでした。それまでも映画監督主催のワークショップというものはありましたが、僕にとってはオンラインサロンのほうが合うな、と思ったんです。

 

ーーワークショップというのは?

映画監督や演出家が講師となって、役者や役者志望の人に演技を指導したり撮影手法を教えたりする講座です。多くの人とつながるのに有効な場所ではありますが、僕にはそれが面倒くさくて(笑)。ワークショップはよく、新しい役者さんを発掘する場所として活用されます。一方で、監督主催ということで、参加者にとっては自分のことを監督に売り込む場所でもあるんです。その雰囲気が、僕はどうも苦手でした。もっとフランクに、もっと気軽に面白い人たちと出会って、作品づくりについて語り合ったり実際に作品を作ったりする場所を作れないかと思ったんです。

 

――それをできるのが、オンラインサロンだと考えたんですね。

開設当初から、学校の先生や主婦の方など、映像業界とは違うキャリアの方がたくさん参加してくれました。特に開設初期は、僕の映画のファンの人たちが多かったかな(笑)。みんなで映画祭に行くなど、いろいろな形で交流を重ねてきました。そんな「エンタメの森(FOE)」も、前身にあたるコミュニティを2018年に開設してから8年経ったことで、顔ぶれは大きく変わりました。今在籍しているメンバーの8割は役者さんか、役者を目指している人たちです。

 

――映像を観るのが好きな人が主体のサロンから、演じることが好きな人が主体のサロンに変化してきたのですね。となると、「エンタメの森(FOE)」はプロを目指す方が集まる、少し敷居の高い場所に変化したのでしょうか?

そんなことはありません。確かにプロの比率は増えましたが、さまざまな属性の方が集まって混ざり合っている状態は変わりません。ちなみに、8年間の運営で実はサロン名を一度変更しています。当初は「本広克行」と僕の名前を前面に出していたんですが、イメージを刷新したいなと思った時、運営メンバーから提案されたのが「エンタメの森(FOE)」でした。理由を聞いたら、「今、『どうぶつの森』にハマってるから」って。

 

ーーまさかの理由ですね(笑)。

そうでしょう(笑)。でも、僕の名前を出しすぎない方がメンバーが主体的になれるかなと思って、思い切って改名しました。

 

しっかり学び、ゆるくつながる。

――「エンタメの森(FOE)」では、サロンメンバーが映画制作の楽しさに触れるための4つの楽しみ方を掲げています。それが「学び」「繋がり」「体験」「実践」ですが、具体的にどんな活動をされているのでしょうか?

「学び」でいうと、最近力を入れているのは「台本読み」です。オンラインで毎週のように、みんなで集まってシナリオの読み合わせ会をやっています。役者じゃない人は、なかなか台本を声に出して読む機会がありません。でも、これをやると「なるほど、このシナリオはこういう構造になっているんだ」とか、演じる側の気持ちがわかってくる。一人で黙読するのとは、まったく違う発見があるんです。

オンラインであれば、東京都心にいなくても読み合わせができます。東北や北陸、関西など、遠方から参加してくれるメンバーも多いです。最近はオンラインのツールも進化して、音声がぶつからずにスムーズに読み合わせができるようになってきたなと思います。

「繋がり」という点では、毎週土曜の夜には「サロンカフェ」というオンラインの雑談の場があって。本当に「今日見たテレビどうだった?」みたいな話をするだけなんですけど、そこから「今度みんなで宇都宮に餃子食べに行こう」と、グルメツアー企画が生まれたりもします。特に顔を出さなくてもいいので、女性からは「ノーメイクで気軽に参加できる」と好評です(笑)。

SpatialChat

SpatialChat

 

――とても気軽に触れ合える場があるのですね。グルメツアーの企画とありましたが、皆さんで一緒に出かけることもあるのですか?

多いですよ。例えば去年(2025年)は、みんなで大阪・関西万博にたびたび行っていました。あれは面白かったです。そこで見たとあるパビリオンの演出からインスピレーションを受け、今年公開の『踊る大捜査線』にも活かしています。

 

企画は行列で生まれている?遊びが本気に変わる瞬間

――「エンタメの森(FOE)」では、『アクトレスモンタージュ』、たぶん杉沢村』、『明日に向かって演れ!など、実際に作品を作って公開もしています。こうした作品たちは、どういうきっかけで生まれるのでしょうか?

実は、結構意外な場所で生まれるんですよ。先ほどグルメツアーの話をしましたが、以前、富山にブラックラーメンを食べに行くツアーを組んだんです。名店に足を運ぶと、2、3時間と平気で並びます。その行列に並んでいる時間が暇だから、「何か面白い企画ない?」って話をし始める。そこから映画の企画が立ち上がったりするんです。

――ラーメン屋の行列で企画会議が!

僕は食べることが一番好きなので、メンバーにはよく付き合わせちゃってます(笑)。でも、そういう遊びの中から面白いものが生まれてくるんです。例えば、サロンメンバーに「キバちゃん」という人がいます。ちょっとおっかない見た目なんだけれど、すごく面白い舞台役者なんですよ。僕は彼に言ったんです、「キバちゃん、絶対SNSやったほうがいい。きっとみんないいね!してくれるから」って。すると、キバちゃんは本当にSNSを始めて、今すごいバズってるんですよ。

 

ーーえ、あのキバちゃんですか!?……実は、ものすごくファンです。

そうなの!?(笑)。キバちゃんを主役にして、いろんな店を食べ歩く『キバちゃん泉佐野へ行く 食王への道』という短編映画を制作して、「泉佐野フィルムフェス vol.2」で上映しました。こうした作品づくりも、もとはと言えばただの遊びの延長線上なんです。

キバちゃん

キバちゃん

 

――メンバーの個性がコンテンツになっていくのは、非常に面白いですね。本広監督は、サロン発の作品づくりにどう関わっているのですか?

僕は基本的に、監督やプロデューサーをメンバーの中から指名して、彼らに任せるようにしています。ただ、編集が上がってきたものに対しては、「この照明おかしいよね」「この芝居、なんとかならなかったの?」ってはっきりダメ出しします。その点は、プロフェッショナルとして接するようにしているんです。

また、作品づくりで忘れられがちな「お金」についてもしっかり指摘します。自主映画だからって、いくらでもお金を使っていいわけではありません。プロデューサー役のメンバーと一緒になって「それは止めよう」って言うのも僕の役目です。

 

ーーまさに、現場感を大事に作品づくりを実践していくのですね。

 

メンバーの人生がチェンジしていく様子を楽しんで見守りたい

――サロンでの活動を通じて、メンバーの方々にどのような変化が生まれていますか?

サロン内の作品だけでなく、僕が製作する作品にもメンバーを起用することがあります。メンバーのキャスティングファイルみたいなものを作って、プロのキャスティング担当者に渡したりもしているんですよ。

僕は「エンタメの森(FOE)」を、「芝居をちょっとかじった人が集まるエキストラ会社」だと思われたくないんです。サロンを通じて芝居の舞台に立っていただく以上、ちゃんとした「役者」として現場に送り出したいと考えています。

こんな活動を何年も続けているので、業界内でも少しずつ活動を面白がってくれる人が増えています。

 

ーーこのコミュニティを続けてきて、監督ご自身が一番やりがいを感じるのはどんな瞬間ですか?

やっぱり、新しいメンバーとの出会いですよね。そして、メンバーと話したり台本読みをしていくうちに、さまざまな演出のアイディアが生まれるんです。それに、僕が今までやってきた知識を伝えることで、メンバーの顔つきが変わっていくのを見ているのもすごく楽しいです。人の人生が少しだけチェンジしていく瞬間を見ていると、ああ、この場所をやっててよかったなと思います。僕がずっと映画を作り続けてきたことを、肯定してもらえているような気持ちにもなりますね。

 

――とても素敵な瞬間ですね。最後に、この春、何か新しい楽しみを見つけたいと思っている読者へメッセージをお願いします。

映画だけではなく、エンタメコンテンツに少しでも興味があるなら、「エンタメの森(FOE)」を覗いてみるのはおすすめです。

映画を作りたい、出演したいという人はもちろん、映画制作の様子を見学したい人、応援したい人、「面白いことがしたい」と漠然と考えている人でも、こういう場所に飛び込んでみると、きっと今までとは違う面白い景色が見えてくると思います。運営チームでオリエンテーションを随時行っているので、安心して飛び込んでください。ただ、正直に言うと、ちょっと入っただけでは、この面白さはわからないかもしれないという気持ちもあるんです。サロンメンバーとの出会いや活動を通して、さまざまな気付きを得てもらえたらいいなと思います。

僕は、「エンタメの森(FOE)」を「大人の砂場」だと思っています。砂場って、ダムを作る子もいれば、山を作る子もいる。ただ見ているだけの子もいるじゃないですか。ここも同じで、目的は人それぞれでいい。その中から面白いものが生まれたり、スターが誕生したりするのを、僕は見ていたいんです。

映像をつくる、演じるといった共通点で集まった人々が、ゆるやかに影響し合いながら、新しい“遊び”を生み出していく。「エンタメの森(FOE)」は、まさにそんな「大人の砂場」です。プロとアマチュアの境界線も、作り手と受け手の垣根もない。このサロンには、エンターテインメントを愛する人々が、それぞれの形で創作に関わり、人生を少しだけ豊かにしていくという姿がありました。

もしも、スクリーンの向こう側に広がる世界に少しでも興味があるのなら、この大きな遊び場に混ざってみるのはいかがでしょうか。そこでは、映画の新しい楽しみ方と、まだ見ぬ仲間たちがあなたを待っています。

 

【Youtube FOEチャンネル】

https://youtu.be/M1whclHDq-Y

 

本広克行 - エンタメの森 本広企画制作所 - DMMオンラインサロン
本広克行 - エンタメの森 本広企画制作所 - DMMオンラインサロン本広組Creative Salon FOE/エンタメの森(以下、FOE)は、映画監督の本広克行によるクリエイティブサロンです。仲間と学び、体験し、実践していく中で、日本の映画業界を盛り上げていきましょう!
lounge.dmm.com

 

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