エンゲル係数とは?平均データと計算をわかりやすく解説

著者名SJ
エンゲル係数とは?平均データと計算をわかりやすく解説

一度はどこかで聞いたことがある「エンゲル係数」ですが、皆さんは自分のエンゲル係数を気にしたことがありますか?エンゲル係数とは、日々の消費に占める食費の割合を表すもので、生活水準と関連していると言われます。

この記事では、世代別や家族構成別のエンゲル係数の平均、また世界と日本のエンゲル係数の比較など、色々な視点からエンゲル係数の実際のところをご紹介します。この機会に、みなさんも自分の家計のエンゲル係数について考えてみてはいかがでしょうか。 

エンゲル係数とは

エンゲル係数の平均値をご紹介する前に、まずはエンゲル係数とは何かをおさらいしておきましょう。

 エンゲル係数とは

エンゲル係数とは、ドイツの統計学者エンゲルが示した「エンゲルの法則」で用いられているもので、消費支出全体に占める食費の割合を指します。そして、エンゲルの法則とは、エンゲルが実際の家計調査に基づいて見出した「所得が高くなるにつれ、エンゲル係数は低くなる」という経験則のことを言い、エンゲルがこの法則を見出してから150年以上が経った今でも、家計の状況を示す指標として広く用いられています。

 エンゲル係数の計算方法

エンゲル係数の計算方法はいたってシンプルです。数式で表すと、

エンゲル係数=食費÷消費支出総額 

となります。

なお、分母になる「消費支出」というのは、収入から税金や社会保障費等を差し引いた、いわゆる「手取り」の収入から、さらに貯蓄額を引いたもののことです。消費、つまり日々の生活のために使う金額ということですね。

日本のエンゲル係数平均とは

それでは、さっそく日本のエンゲル係数がどのくらいか見ていきましょう。ここでは、総務省統計局のデータを参照しています。

 平均

まずは全国平均を見てみましょう。2018年の年間平均データによると、日本の平均的な世帯のエンゲル係数は25.5%でした。(参考:総務省統計局 家計調査 2018年

でも、この数字だけ見ても、これが高いのか低いのかわかりませんよね。そもそも、エンゲル係数はどのくらいの数値が適切なのでしょうか? 

理想

エンゲル係数にこれといった明確な基準はありませんが、20%程度が理想とされることが多いようです。家計に占める食費の割合として、著名なフィナンシャルプランナーが「手取りの15%程度」を推奨している例もありますが、手取りのうちいくらかは貯蓄に回されると考えると、やはり消費支出(手取り-貯蓄)の20%程度というところに落ち着きそうです。

 日本のエンゲル係数推移

最新の2018年データでは25.5%であったエンゲル係数ですが、時系列で見るとどのように変化してきたのでしょうか。家計調査の「二人以上の世帯」のデータは、時系列に並べたものも公開されています。これによると、2000年から2018年のエンゲル係数推移は、次のグラフのようになります。(参考:総務省統計局 家計調査 時系列データ

グラフからは、2000年代半ばから上昇傾向が続いていることが見てとれます。

入手できる形でデータは揃っていませんが、2005年ごろまでは、日本全国のエンゲル係数は一貫して減少傾向にありました。 

1946年には65%を超えていたものが急激に低下し、1953年に50%を下回ったようです。そして、1960年代に入って40%70年代には35%を割り、80年代に入る前に30%を切りました。92年ごろには25%を下回る水準まで低下していましたので、ここ数年は、80年代以来の水準に戻っているということになります。(参考:総務省統計局|統計Today No.129

都道府県別 エンゲル係数平均を調査!

つづいて、都道府県別のエンゲル係数を見てみましょう。都道府県別のデータは、5年ごとに実施される全国消費実態調査の結果の一部として公開されています。最新の2014年のデータを使って都道府県別のエンゲル係数をランキングにすると、次のグラフのようになります。ここでは、低い方から半分ずつ表示しています。(参考:総務省統計局|全国消費実態調査

まずは上位の半分を見てみると、一番エンゲル係数が低いのが香川、次いで栃木、佐賀…と、主要都市でないところが続きます。

続いて残りの下位半分を見ていきますと、もっともエンゲル係数の高い都道府県3つがいずれも近畿地方となっています。食へのこだわりが強そうな大阪・京都のエンゲル係数が高いのは、なんとなくうなずけますね。最も低い香川と最も高い大阪では、3%以上の開きがありました。 

年齢別 エンゲル係数平均を調査!

続いては、年代別のエンゲル係数を見ていきましょう。2018年の家計調査の結果から、世帯主の年代別にエンゲル係数を整理すると、以下のグラフのようになります。(参考:総務省統計局|家計調査 2018年

20代から40代までは、25%弱でほぼ横ばいですが、50代でぐっと低下した後、急激に上昇し、70代では28%近い数値になっています。

 20

わずかな差ではありますが、20代のエンゲル係数は24.9%で、30代(24.6%)と40代(24.8%)を上回っています。一般的に、20代はまだ若手で収入が少ない時期ですので、娯楽や被服代など、食費以外の消費にかけられるお金が限られており、結果的にエンゲル係数が上がると考えられます。

 30

30代は、50代に次いでエンゲル係数が低くなっています。

20代と比べると収入がある程度増えることや、結婚して共働きの場合は世帯全体の家計に余裕が出ること、また子どもがいてもまだ小さいため食費が多くはかからないことなどが背景にあると考えられます。

 大学生

全国大学生活協同組合連合会が行った2018年の調査結果に基づき、1か月の支出内訳からエンゲル係数を計算してみました。(参考:全国大学生活協同組合連合会|第54回学生生活実態調査の概要報告

自宅で暮らす大学生は食費が少なく済んでいますが、家賃がかからないことで消費支出全体の金額も小さい分、エンゲル係数は30%弱と高くなっています。 

一方、下宿している大学生の場合は、収入が少ない中、消費支出の半分近くを家賃に持っていかれることもあって、食費を切り詰める傾向があるのかもしれません。エンゲル係数は23%台と、日本の平均を大きく下回っています。

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 生活スタイル別 エンゲル係数平均を調査!

次に、世帯人数別のエンゲル係数をグラフにすると、次のようになります。(参考:総務省統計局|家計調査 2018年

一人暮らし

意外かもしれませんが、エンゲル係数が最も低いのは一人暮らしという結果に。

ちなみに、男女差がとても大きく、単身世帯の男性の平均が27.0%なのに対し、女性平均は22.3%と、5%近い開きがあります。自炊で食費を抑えられるかどうかといった違いや、外食の頻度などが関係していそうです。(参考:総務省統計局 家計調査 2018年

 夫婦

2人暮らしを夫婦としてとらえると、夫婦2人暮らしのエンゲル係数は25.7%と、全体平均よりも若干高めです。子どもがいない分、気軽に外食しやすいことで、外食費がかさむのかもしれませんね。

ちなみに、家計に余裕があると、消費支出に占める外食費の割合が上昇する傾向が指摘されています。子どもがおらず比較的お金に余裕があることで、食にお金をかける夫婦が多いのでしょう。

4人家族

4人家族のエンゲル係数は、一人暮らしに次いで低くなっていますが、2人暮らしや3人家族とはそれほど差がありません。一人暮らしから4人家族までのエンゲル係数は、おおむね全体平均と同じ程度に収まっています。 

5人以上の世帯でエンゲル係数が急激に増えていく傾向を見ると、子どもが3人以上になると食費の負担が目に見えて大きくなるものと推測できます。 

エンゲル係数が高い理由

エンゲル係数の平均がどのくらいかわかったところで、エンゲル係数の意味するところをもう少し詳しく見ていきましょう。

 「エンゲル係数が高い」という意味は?

この記事の最初で紹介したエンゲルの法則を思い出してください。「所得が高くなるにつれ、エンゲル係数は低くなる」。裏を返せば、「所得が低くなるにつれ、エンゲル係数は高くなる」。これがエンゲルの法則です。

ここから、一般に、「エンゲル係数が高い」ということは、生活水準が低いことの表れであると捉えられています。

なぜエンゲル係数が高い?

日本では近年エンゲル係数が上昇していますが、これには食料品の値上がりなどが影響していると考えられています。物価の上昇にともなって収入も増えていくわけではないので、食費を優先して他の消費を抑える傾向にあれば、結果的にエンゲル係数は高くなりますよね。

あなたのエンゲル係数が平均よりも高い場合には、食費を見直してみるいい機会かもしれません。外食費がかさんでいるのであれば、外食を控えて自炊する機会を増やすだけでも、エンゲル係数はある程度下げることができるでしょう。

自炊に関しては、献立を決めて買うものをリストアップしてから買い物に行くことで、不必要な出費を防ぐことができます。また、買い置きしておける保存食は安売りの時にまとめ買いし、生鮮食品はこまめに買ってきちんと使い切るということを意識すると、ある程度は食費の節約につながります。 

まずは家計簿をつけてみて、食費の中でも自分がどこにどれだけのお金をかけているのか、把握してみることをおすすめします。

日本のエンゲル係数は高い?世界のエンゲル係数と比較

最後に、日本のエンゲル係数は世界的に見ると高いのか低いのか、外国と比較してみましょう。

まとまったデータは公開されていませんが、OECD2017年の国別データから主要国のエンゲル係数を計算したところ、以下のような結果になりました。(日本以外の国のデータ出典:OECD.Stat Final consumption expenditure of households

(計算方法:国内家計最終消費支出から帰属家賃を除いた額を消費支出とし、飲食・酒類・外食の費用の合算を食費として計算。)

アメリカ、ドイツは20%を切っていますが、スペインなどでは30%を超えています。一般的に、先進国のエンゲル係数は20%30%とされることが多いようです。 

詳しいデータはありませんが、中国では2017年のエンゲル係数が29.3%となり、初めて30%を割ったことから、「豊かな国の仲間入りをした」といった報道がなされたそうです。(参考:ライブドアニュース 中国は先進国の仲間入りをしたのか―中国メディア

フランス、イタリア、スペインなど、美食のイメージの強い国ではエンゲル係数が比較的高めな傾向を見ると、世界的に評価の高い「和食」を持つ日本のエンゲル係数が高めなのも、自然なことなのではないでしょうか。

 

エンゲル係数について、計算方法や目安がわかりましたでしょうか?エンゲル係数が高いからと言って悪い傾向を示しているということではありませんので、気にしすぎる必要はありませんが、食費がかさんで気になっているという人は、自分のエンゲル係数を計算してみるのもいいでしょう。数値目標を決めることで、食費のやりくりがしやすくなるかもしれません。

エンゲル係数を下げたい人は、記事内でご紹介した平均や傾向にもとづいて、自分に合った目標のエンゲル係数を設定し、その目標数値に向かって行動を改善してみましょう。

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