読書会サロン「本が好き!倶楽部オンラインサロン」で定期的に開催されている、「読まない読書会」。本を読まないのに、どうやって読書会をするんだろう?考えれば考えるほどに、興味がわいてくるイベントを主催しているのが、サロンオーナーのくっきーさんです。
彼はいったい、異色の読書会でなにをしたいのか。さまざまなシーンにおすすめの本を紹介しつつ、くっきーさんが考える「読書の魅力」を伺いました。
本名・久木田 裕常(くきた・ひろつね)さん。読まない読書家。『読書の方法~自分を成長させる本の読み方』(きずな出版)著者。総フォロワー44,000人のSNSコミュニティ『本が好き!倶楽部』主宰。クラブハウサー。声のSNSクラブハウスで毎朝『本を売らない本屋さん』開催。
異例のイベント、『ブックパーティ』
ーーくっきーさんが読書のオンラインサロンをつくろうと思ったのは、なぜですか?
僕はもともと読書が好きで、小説、ビジネス書、自己啓発書となんでも読んできました。著名な先生のセミナーも好きで、参加者として足を運んだり、自分で読書会を主催したりもしてきたんですね。ただ、こうしたセミナーに参加しても、ほとんどの方は変わることがありません。
せっかくいいことを読んだり学んだりしているのに、変わらない。それじゃ面白くないじゃないですか。僕は人の成長や変化にも興味があったので、変われないのはなぜだろうとずっと考えていて。
そして、多くの参加者さんたちが「私には無理」というマインドを持っているのではと思ったんです。これでは読書会やセミナーで一瞬テンションが上がっても、自宅へ帰ればまた日常に埋没してしまいますよね。
だから、単発のイベントではなく、人と継続的に関わる仕組みが必要だと考えて、それにぴったりだったのがオンラインサロンでした。これなら、僕や参加者さんが一緒に人生を変えるという場所を作れるなと。
ーー確かに、読書して「参考になる!」と思っても、結局自分の生活に生かしきれていないことはよくある気がします…。
もちろん、読書を趣味と捉えて「別に変わらなくてもいいじゃん」という考え方も、全然ありだと思います。僕は本好きだから、読書家が増えればいいなと思いますが、日本全体で見るとそういう人ってごく少数ですからね。正確な数字は知りませんが、日本の読書家の割合って、人口の2割以下じゃないでしょうか。
とはいえ、世の中に潜む多くの困りごとは、たいてい本に解決策が書いてあるんです。そういう情報や知識を活用できないのは、とてももったいない。だから、せめて人口の6割くらいは、本の情報を「使える」ようになって欲しいと考えました。
そのために、僕のオンラインサロンでは「読まない読書会『ブックパーティー』」というワークショップ形式のイベントを主催しています。
ーー読書会なのに、本を読まない?え、どういうことですか?
『ブックパーティ』では、大枠としてのテーマを取り上げて、本からそのテーマについて考えます。
例えば、「これからのライフスタイルを考える」というテーマだとしたら、参加者さんそれぞれが思い思いの本を持ち寄って、そこからテーマに対する答えを見つけていくわけです。
ーーそれぞれが、自分の読んだ本を持ってくるんですね。
いえ、むしろ読んでいない本でいいんです。なんとなく手に取った本を、目次や本文をぱらぱらと見ながら、3分くらいでテーマに対する答えになりそうなものを見つけていく。だから、辞書を引くイメージに近いかもしれません。本を「読む」のではなく、あくまで「使う」ことにフォーカスしていくんです。
最初は答えが見つからなくても、どうにかこうにかこじつけてみると、役立つ答えが見つかることもあるんですよ。
ーーこじつけで答えが見つかるんですか?
はい。まだコロナ禍の自粛ムードがなかった頃、東京・日比谷公園で散歩をしながらの読書会を開きました。そのなかで、ある女性が「後ろの席に座るおじさん上司が、うざくてしょうがない」という悩みを打ち明けたんです。
その上司は、席を立つときにイスをほったらかしにしたり、ほかのイスにぶつかったりと、がさつなところがあったそうで、それがずっと続いたことでストレスになっていたんですね。
参加者さんたちは、自己啓発書やスポーツ、栄養書など、さまざまなジャンルから女性にアドバイスをしていきました。どれも素晴らしい内容だったんですが、彼女にだけはひびかなかった。
すると、とある参加者さんが西洋美術史の本から、「※ロマン主義」という言葉を引用したんです。
※ロマン主義とは
18世紀後半〜19世紀前半頃に活躍した画家による、個人の思考・欲求・幻想、そして進化続ける当時の「今」を描いた絵画のこと。
(参考:「ロマン主義」とは?有名な画家と代表作品について分かりやすく解説)
その人自身も、ただ目についた言葉を口に出しただけで、周りの人も失笑していたんですが、相談者の女性だけは「この悩みをロマンとして、楽しんでもいいんだ!」と、衝撃を受けたみたいで(笑)。
周りは「?」だらけだったんですが、翌日、彼女は上司がほったらかしたイスの写メをグループに投稿しました。その写真のタイトルは『今日のロマン』。あんなに嫌っていた相手の行為を、芸術や笑いに昇華したんですね。
ーー適当に見つけた言葉が、悩んでいた本人にだけ響いたんですね。
最初から読まなくていい。くっきー流「読書を嫌いにならない方法」
ーーくっきーさん自身は、どんなふうに読書を楽しんでいますか?
僕にとって、読書には2種類あります。ひとつは「今を楽しむ読書」。もうひとつは「未来を変える読書」です。前者は小説、後者は実用書や自己啓発書が当てはまりますね。
両方に共通するのは、「最初から読まない」「途中で読むのをやめてもいい」「全部理解しようとしなくていい」という考え方です。皆さんとても真面目なので、無理やり最初から最後まで読もうとするんですが、それではトータルの読後感も嫌な感じになります。途中でやめたら著者に失礼じゃないかと考えがちですが、むしろイヤイヤ読まれるほうが著者にはつらいですよね(笑)。
また、読後感が悪くなってしまうと、今後同じ著者の本を手に取ろうと思えなくなるじゃないですか。それなら、さくっと読むのをやめてしまった方が、もしかしたら、別の機会で手に取ったときには、違う印象を覚えるかもしれません。そうやって、未来に可能性を残してあげるんです。
ーーたしかに、昔はあまりしっくりこなかった本も、今読むとすごくハマったという話をよく聞きますね。
「最初から最後まで読んで理解する」は、読書にとって一番ですよね。しかし、これは面白くて気づいたら読み終わっていたという、結果論にすぎません。人間関係と同じで、すべての本と一生添い遂げようとしなくていいんです。そんなのムリムリ(笑)。
夫婦だったり、大切なときだけ相談する友人だったり、毎朝あいさつをするコンビニ店員だったり。それぞれの本と、それぞれに適した関係性を築けばいいと思います。
合計10冊!シチュエーション別くっきーさんのおすすめ本
ーーここからは、事前にお伝えしていた「シチュエーション別おすすめ本」というテーマで、くっきーさんから本を紹介していただければと思います。
はい。今回はサロンメンバーさんの意見も聞きながら考えたので、サロン全体のおすすめ本として紹介していければと思います。
10代、20代までに読んでおきたい本3選
1.『「どうせ無理」と思っている君へ 本当の自信の増やしかた』(植松 努/PHP研究所)
世界中の著名人による講演会を開催・配信している非営利団体・TEDにて、「願いを実現する方法」というトークテーマで有名なプレゼンをした、植松さんの著書です。動画は2,000万回以上再生されていて、もちろんその内容も素敵だったんですが、本でも素晴らしい内容が書かれていることで選ばれました。
実は僕、まだこの本を読んでいなくて(笑)。早速手に取ってみたいと思います。
2.『友だち幻想』(菅野 仁/筑摩書房)
友人や人付き合いなど、人間関係では皆と仲よくすることが大切と、無意識に思ってしまいますよね。著者の菅野さんは、それを幻想だと伝えていて。もっと自由に人と付き合っていいんだ、と思わせてくれる一冊です。
この本もまだ読んでいません(笑)。
3.『カラフル』(森 絵都/文藝春秋)
主人公が、自殺を図った少年の身体に入り、人生をやり直すという物語です。再挑戦のチャンスを得て人生を送るうちに、人の欠点や美点が見えてきて、相手の見方が変わっていくさまが書かれています。これもぜひ、読みたいなあと思っています。
ーー生き方を考える10代、20代にとって、ものの見方の指針になるような本が並びましたね。それよりも、ここまでの3冊、すベてくっきーさんも読んでいないんですね(笑)。
いよいよ夏本番!読書で「夏」を感じられる本2選
実は、このテーマが一番苦戦しました。
1.『夜のピクニック』(恩田 陸/新潮社)
「一晩徹夜で外を歩く」という高校最後の行事を描いた物語です。何気ない一夜で、裏に隠れていた人間模様がじりじりとあぶりだされていきます。味わい深い結末も含め、学校生活に戻りたくなる作品でした。
この本はちゃんと読みましたよ(笑)。
2.漫画『弱虫ペダル』(渡辺 航/秋田書店)
今回は、漫画のおすすめも多く出てきました。実際に、僕の読書のうち約半分は、漫画が占めているんです。『弱虫ペダル』は、自転車競技部を描いた物語なんですが、とにかく熱い。僕はアニメから入ったのですが、70巻以上あるのを一気に読んでしまいました。
ーー青春のドキドキを感じる夏に、じりじりと照りつけるような夏。全然違う夏を楽しめる作品ですね。
休むまもなく一気に読んでしまった本3選
1.『蜜蜂と遠雷』(恩田 陸/幻冬舎)
ピアノコンクールに臨む、野生児の天才や、努力で挫折を乗り越えた人など4人の主人公を描いた作品です。なかなか分厚いですが、一気に読み進んでしまうほど面白くて、音楽が聞こえてくるような小説でした。
2.『かがみの孤城』(辻村深月/ポプラ社)
これは10代、20代にも読んでほしい本です。鏡の世界に入り込んでしまった、同学年の少年少女。鏡のなかで過ごすうちに、彼らに隠されたさまざまな謎が明かされていきます。9割ほど読み進めても、その謎がなかなか解決していかないんです。ちゃんと終わるのか?というところから、怒涛の展開とカタルシス。
「そういうことだったのか…」と、作品の世界に入り込んでしまいました。
3.『大富豪からの手紙』(本田 健/ダイヤモンド社)
亡くなったおじいさんが孫のために遺した、よりよい人生を送るためのメッセージ。それを読みながら、主人公の青年がさまざまなチャレンジをしていきます。
小説が苦手な方も読みやすく、行間を味わえる作品でした。
ーー最近、小説を読む機会がぐんと減っていたのですが…。どれも手に取ってみたくなりました。
くっきーさんが一番泣けた本2選
これはもう、挙げたらきりがないくらいたくさんあります。悩みに悩んで、2冊を選びました。
1.『ユダヤ人大富豪の教えIII』(本田 健/大和書房)
もしも僕が「人生で一冊しか人に紹介してはいけない」としたら、間違いなくこの一冊を選びます。それくらい、僕はこの本をきっかけに人生が変わりました。人間関係には、さまざまな力学が働きますが、この本ではそれをマトリックスにして紹介しているんです。
僕がこの本を手に取ったのは、ちょうど離婚してバツイチになったタイミングでした。実際に本を読んで、なぜ僕が離婚したのかの謎が解け、すっかり号泣していましたね。
夫婦だけでなく、親子関係や上司・部下との関係に対しての気づきがたくさんあり、心がとても楽になる一冊です。オンラインサロンの読書会でも、週1回Zoomで内容をシェアするんですが、「あの人は、嫌な奴じゃなかったんだ」「独身で男性が嫌いだったけれど、この本を読んでパートナーが欲しくなった」と、さまざまな意見をいただきました。
2.漫画『四月は君の嘘』(新川 直司/講談社)
『蜂蜜と遠雷』が「音の聞こえる小説」なら、『四月は君の噓』は「音の聞こえる漫画」です。演奏シーンはもちろん、母親と息子の関係、友情、恋愛、切ない思いなどの描写がどれも素晴らしくて、何度も号泣させられました。
ーーどちらも、すごく面白そうですね。くっきーさん、おすすめ本の紹介ありがとうございました!
感謝で人に目を向けて、人生を変えていく
ーーくっきーさんは、オンラインサロンで読書の仕方とは別に、どんなことをメンバーさんたちに伝えていきたいですか?
僕が大切にしていることのひとつに、「感謝の習慣」があります。「本が好き!倶楽部オンラインサロン」は、私にはムリという思考から、私にはできるという思考に変わることをひとつの目的にしています。そうしないと、固定観念を脱して新たな視点や情報が得られません。
そこで大切なのが「感謝で思考は現実になる」という考え方です。ちょっとスピリチュアルっぽいですが、実は理にかなっている考え方なんですよ。
毎日寝る前に、今日あったよかった出来事を思い出してみてください。例えば、天気がよかったとか、そういう些細なことでいいんです。こうした事実に感謝するということは、ものを見る角度を変える行為にもつながります。そうやって、自分の可能性にも目を向けられるようにしたいんです。
ぶっちゃけ、本は嫌いでもいいんですよ(笑)。大量の本を読まなくたって、ほんの10秒目に入ったページを読むだけでいい。たったそれだけのことで、人生のヒントを見つけられることもあります。そうした気づきを通じて人生を変えたいと思える人と、このサロンで出会いたいですね。
本を通じて人生を変えたいというくっきーさん。しかし、彼は同時に「もっとライトに読書を楽しんでほしい」という気持ちも、強く抱いています。その思いの集大成が、読まない読書会『ブックパーティー』にあるのかもしれません。
昔は読書が趣味だったけれど、最近忙しくて読めていない。昔から、本を読みたいけれど読書が苦手。そんな人ほど、「本が好き!倶楽部オンラインサロン」の読書会に参加してみませんか?自分や参加者さんが見つけたかった数行の言葉が、人生を大きく変えてくれるかもしれません。