フットサルで敵のプレスを回避して逆サイドへ展開する“パドロン”とは?

著者名YOYO氏
木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために
日本フットサル界のパイオニア・木暮賢一郎さんが世界で勝つために必要な理論、戦術、トレーニング方法、監督論などの貴重なノウハウを惜しげもなく提供しているのが、オンラインサロン『木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために』です。今回はその中から育成年代やアマチュアチームから上級者まで使える戦術を少しだけ紹介します。

4つの攻撃システムはあくまでもベースに過ぎない

オフェンスを構築するにあたって大事なことはいくつかありますが、以下の3つは最初に考慮する必要があります。

1.監督の好きなシステム

2.自チームの選手の特徴

3.パドロン、ジョガーダ

監督がいるチームの場合は当然、監督自身の好みや得意としている戦術がチームに反映されます。選手も監督の目指すフットサルを体現しようとする姿勢が求められます。監督がいなかった場合でも、キャプテンや戦術の方向性を決めるメンバーの意見やチームでイメージしているフットサルがあれば、その形を目指すことになるでしょう。

しかし、自チームの選手の個々の特徴が目指したい戦術にフィットしていないのであれば、いくら好みや得意だといってチームに落とし込んだところで機能しないわけです。

そこで重要になってくるのが、パドロンとジョガーダです。簡単にいうとパドロンとはローテーションのことでパスをもらう動きやマークを引きつける動きなどをチームで連動して行うことです。ジョガーダとはいわゆるサインプレーのことで一連の動きやパス出しを型として再現させることをいいます。

優先順位は別としてこの3を欠くことは出来ません。もちろん育成においては全選手が様々なポジションや全ての動きをマスターするためにトレーニングする必要がありますが、これがエリートカテゴリーになればなるほど専門性が重要になっています。

ある監督はPIVOを使うシステムやパドロンに非常に長けているとしても、そのチームにPIVOとして機能する選手がいなければ難しくなります。

出典: 木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

(※ PIVOとはサッカーでいうフォワードのようなポジションのこと。前線でボールを受ける役割を担う。)

木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

フットサルにおける攻撃システム(フォーメーション)は、上記の4つが基本となります。左側の数字が後列を意味しています。「4-0」はフィールドプレイヤーの4人がコンパクトに位置するシステムで、守備に転じた際のリスクも大きく運動量を必要とする為、トップレベルのチームでないと実現は難しいとされています。

システムというのは基本この4つがベースになります。ただしこのシステムに対してパドロンやジョガーダというのはこの何倍もあります。

以前にも書きましたがこのパドロンやジョガーダに関しては好む監督好まない監督が居ます。 ただ僕個人としては日本人には学ぶべき事だと思いますし、新しい物を考える努力をしなければならないと思っています。

なのでチームのオフェンスを構築していくためには、まず指導者が明確なシステムやパドロンを選手に伝え、そのなかでのオプションや相手の守り方に対する攻略ポイントを伝える事が必要になります。

オフェンスは個人のアイディアやタレント、技術でなんとかなるというのは間違いで、ディフェンス同様に細かくあるべきだと思っています。

出典: 木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

 攻撃の局面で、最終的な判断を下すのはあくまでもコート上の選手ですし、ボール保持者になるわけですが、トップレベルのチームはパドロンやジョガーダを日々のトレーニングで向上させ、最適な状況で活用しているわけです。

逆アラのポジションに対してのプレス回避の例

フットサルでは、アラ(サッカーでいうサイドに位置するMFのようなポジション)から逆アラにパスを通すことができると、サッカーでいうサイドチェンジのように局面を打開しやすい状況になります。

今回は、サロン内で紹介されていた逆アラのポジションに対しての崩しの例を紹介します。バリエーションは沢山ありますし、木暮さん曰くこれだけで講習会が出来るほどなのだそうですが、今回はプレスを回避するパターンを見ていきましょう。

木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

このシーンに関しては2-1-1の形からスタートして1の選手が死角からサポートしに入ります。この場合にまず起こるのが逆アラのポジションの選手がマンツーマンでついていくのか、スペースを守ったまま残るのかの迷いが生まれます。

このシーンでは相手は残っています。また死角から入られたディフェンスは一瞬重なるので、本来対応するべき選手に対してのプレスが甘くなりがちです。

なのでこのシーンでは前をしっかり向いてPIVO当てをして回避に成功しています。

オプションとしてディフェンスが残った場合は相手の1ライン目に対して3X2を作れる マンツーマンの場合相手ディフェンス3人が1ラインになるのと、死角から入ることで、ボールホルダーではないディフェンスの選手に対して2X1を作れるのでプレッシャーが緩和される。

出典: 木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

サロン内では、上図とともに動画もアップされており、よりわかりやすく理解できます。映像の中では、右前にいた味方選手が敵ディフェンスの死角から後ろに入ってきた瞬間にボールを逆サイドにパスしています。後ろに戻ってきた選手はボールには触れず、スルーしますが、死角から入られた敵ディフェンスは反応が遅れており、パスを受けた逆サイドの味方選手は余裕を持ってボールを前に持ち出し、PIVOに縦パスを通しました。

大きく分けると相手がマンツーマンでも、残る場合でも攻撃のオプションを持つことが出来、なおかつ意図的に数的有利を作り出すことが出来ます。

カウンターでの数的有利ではなく意図的に同数の状態から数的有利を作り出すことがポイントです。

出典: 木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

これはプレス回避の一例ですが、こういった局面の解決方法をオフェンス、ディフェンスそれぞれでトレーニングから用意しておくことで大切なようです。まずは個人戦術からになりますが、チームとして型を共有しているパドロンに昇華させられれば、狙ったプレイの再現性はさらに高まるはずです。

パターンプレーとは数学でいう公式のようなもの

木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

僕の考えでいうとパターンプレーとは数学でいう所との公式にあたります。

もちろんフットサル、フットボールはクリエイティブさが醍醐味の一つであります。フットボールに正解は無いと言われますし、フットサルもそうだとは思いますが、ここでも何回か触れていますがフットサルは再現性が非常に高いスポーツです。なのでクリエイティブさは求められますが数学の文章問題を解く感覚に近いものがあると思っています。

足し算・引き算etc=パラレラ・ディアゴナルなどの個人戦術

因数分解etc=パドロン・ジョガーダ

読解力=ゲームを読む力・決断力

文章問題=試合

といった感覚ではないでしょうか。 文章問題を解くためにはまずはしっかりと意味を読み取り、答えを出すためにはどの公式を使うのかを考え、計算をして答えを導き出すと思います。

それと同じで試合では相手のディフェンスのシステムを読み取り、どのようなパドロンを使えば相手のディフェンスを攻略できるか考え、ゴールを奪うためにパラレラやディアゴナルを実行していくのです。

もちろんそこには技術やフィジカルにメンタルといった要素も当然加わりますが。

そう考えると数学で公式を知らなければいくら足し算や引き算が出来ても文章問題は解けませんし、公式を沢山知っている方が有利なのは間違いないと思います。

出典: 木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

昨年2016年のブラジルリーグではコリンチャンスが優勝しました。

現代の世界のフットサルは、フィジカルやディフェンス重視の傾向があります。そんな時代にパドロンやジョガーダを駆使しながらオフェンス面を進化させてきたブラジルのコリンチャンス。U-20チームなどの育成年代を含めた「しっかりとしたプロジェクトのもと続けてきたからこそ、この価値は本当に素晴らしい」と木暮さんは語っていました。

日本フットサルが世界で勝つために

木暮賢一郎 日本フットサルが世界で勝つために

オンラインサロン内では、木暮賢一郎さんの考えるフットサル論・トレーニング方法・練習方法・戦術・監督論など動画を交えて配信しています。

パワープレー時のポイントや4-0システムにおけるオフェンス/ディフェンス、3-1から4-0に移行するジョガーダなどの実際の練習風景や図解とともに解説しています。さらには、試合に向けたピーキングやスカウティング、ブラジルとスペインの違い、具体的なトレーニング方法などなど多岐に渡る内容が公開されています。オフ会は指導者講習会の形式で行われます。オンライン上でも、会員からの質問に積極的に回答していて、国際経験の豊富な現役のFリーグ監督とここまで交流できるのはとても貴重です。

先に触れたコリンチャンスについて「既存の概念を覆すような新しいアイデアと、素晴らしい育成モデルは大いに参考になる」とも述べており、「いち指導者として新しいフットサルを生み出せるようになりたい」とご自身の目標も語っていました。

そんな木暮賢一郎さんの理論を学ぶことで、日本のフットサルが世界で勝てるよう、共に日本全体のレベルを底上げしていきましょう!

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