「いいものは、いい」と評価できるクールさの復権を
―なぜ今、14年ぶりに「MONDO GROSSO」を復活させたのでしょう。
特に理由はないんですよ。そもそも、辞めたつもりもなかったし。スタッフからの「そろそろどうですか?」って言葉がきっかけでした(笑)。過去にこだわっているわけじゃなけれど、MONDO GROSSOをやるからには、過去と違うことをやらないといけない。MONDO GROSSOとして守るべきポリシーみたいないなものは、自分の中にありましたね。
―近年はCMやプロデュースの仕事を多くやっていらしたので、ご自身で「発信」することに興味がなくなってきたのかなと思っていたのですが。
なくなってましたね。この10年、自分の表現手段としてはDJがぴったりきていたけど、シーンの動向が変わってきて、それにもちょっと飽きてきて。
クラブシーンって、その時代の一番クールなものが凝縮された空間だったと思うんですよ。チャートと関係なく、カッコいい音楽はカッコいいという姿勢があった。でもEDMの登場で、トップ40的な音楽が盛り上がるシーンが生まれてしまった。ビジネスになるシーンができるのはいいけれど、これはEDMがもたらした功罪かもしれないですよね。食でもファッションでも音楽でも、パンチのあるものが勝っちゃうから。
じゃあ、今までクラブに来ていたクールな人はどこに行っているのかっていうと、家にいるんですよ。外に行かなくなっちゃった。そういう意味で今は、変わり目なのかもしれませんね。
―とはいえ、MONDO GROSSOとしてメジャーシーンの頂点のような『ミュージックステーション』という場に出ていかれたのにも驚かされました。女優・満島ひかりさんをボーカルに据えて、大沢さんがベースを弾くという、あのフィジカルな魅力は、爪痕を残したと思います。
長いものに巻かれてみたというか(笑)。爪痕の実感はまだないけれど、満島ひかりさんが歌うから出演できただろうし、純粋に音楽だけで判断できていない、いい意味での時代やブランドが先行する部分がある感じもしますけれど。でも、MONDO GROSSOじゃなかったら満島さんのボーカルの魅力がこれほど伝わらなかったかもしれないし。あと逆に、このアルバムで無名の主婦(下重かおり)っていうのが、ブランディングとして通用するのがわかったのはよかったですね(笑)。最後まで入れるかどうか悩んだんですけど。
―満島さん同様、MONDO GROSSOだから通用したともいえますが。
本来は誰でも許されないといけないんですよね。いいものをいいって判断してもらうために、ずるいけど僕は、MONDO GROSSOという受け皿を使った。アンチテーゼにはなったんじゃないかと思います。
―MONDO GROSSOとして、フジロックにも出演されますね。
これもすごく悩んだんですよ。でも、やるならライブまでやろうと思って。DJライブだと思っているかもしれないけれど、生バンドもやります。。打ち込みと生音のハイブリッド。
新しい音楽と出会うには、信用できるフィルターが大事
―オンラインサロン『ランダムノーツ』では大沢さんの感性を刺激した曲なども紹介してくださっていますが、これはDJ感覚のセレクトなのでしょうか。
そうですね。「これ知ってる?」ってより、「こんなのに出会えた」っていう方が良いかなという感覚で紹介しています。
―今や音楽は、データとして扱われる時代に。DJも今はデータですよね。
目的によって、使い分けてます。音楽を「聴かせる」ということだと、アナログの方がいいと思うし、「踊らせる」のだったら編集が必要なので編集したものをかけるし、現場でも編集する。そうするとデータじゃないとできないんですよ。
今、DJ用の曲がラップトップに360GBくらい入っています。なかなか整理できなくて。
―DJって、知識と感覚のアーカイブでもあると思うのですが、どうやって整理しているのですか?
やっぱりタグ付けですよ。コメント欄にメモするのが大事。それでも忘れるから、たまに見返したり。ダンストラックはアーティスト名もタイトルも覚えにくいじゃないですか。だから自分できちんと分類しないと。
―次々リリースされる新しい曲たち。どのように探しているのでしょう。
新しい音楽に関して言えば、 「The Hype Machine」という音楽ブロガーのまとめサイトのチェックと、友達から入ってくる情報ですね。以前は「Beatport」とかで探していたけれど、止めました(笑)。あてもなく探すより、信頼できるフィルターが大事だと思います。
目の前の面白いことに向き合って、やるべきことをやるだけ
―DJスタイルも音楽の聴き方も時代と共に変わってきていますが、50歳になられて「生き方」も変わりましたか。
「丸くなった」っていうのは正解かどうかわからないけど、エゴは減りましたね。ちょっと違う言い方をすると、エゴって自己顕示欲とか自分を前に出すってことだと思うんですが、昔はエゴイスティックに見えることが、カッコいいと思っていたのかもしれない。
実際はエゴを抑えて自分のやるべきことをやった方がすんなり前に行けるってことが、ちょっと分かるようになってきたのかも。謙虚になりすぎるのもよくないけど、妥当な評価を受けて、感謝しつつ、きちんと表現していかないとダメな時代になった気がしますね。
―音楽の世界でいうと、MONDO GROSSO世代のアーティストが25年経った今もトップに君臨していますが、大沢伸一を倒そうとする若者はいないんですか?
どうでしょうね、あまり言われたことがないな。僕のことなんか、眼中にないんだと思いますけど(笑)。若者がちょっと元気がないのかな。あるアーティストが好きで音楽を始めたら、僕らの世代はその後ろにあるものをもっと探求していったけれど、今の方が情報が多いのに、深掘りせずに2階層くらいで止まっちゃってるというか。もっと探求心があった方がいいのかもしれません。
―大沢さんご自身の今後のプランは?
できるだけ予定を立てないようにしています。立ててもどうせ変わっちゃうから(笑)。
MONDO GROSSOも予定外だったし、面白いと思ったことをやるしかなくて。カッコいいことを言うようですけれど、「夢は?」ってきかれても、答えられないんです。今が夢みたいなものだから。だって、16歳ぐらいの頃、音楽をやって生きていけるって夢みたいなものだったじゃないですか。それが今、できているんだから。目の前の面白いことに向き合って、やるべきことをやるっていくことですかね。
―14年ぶりに復活したMONDO GROSSOですが、次は、まさか14年後ではないですよね?
うーーん、当分やりたくないですね(笑)。 いつかわからない。もしかしたら来年やるかもしれないかれど。やりたいことがあるので、それ次第かな。
オーケストラの曲を作りたいんです。既成曲をオーケストラに置き換えるんじゃなくて、もっとラジカルな踊れるものを。いろんな人がそういうアプローチをしているので、オーケストラって言い方じゃない方がいいんだけど。何だろう、楽団? あ、それってオーケストラか(笑)。
クールな音楽や面白いものとの出会いが綴られたノート
FUJI ROCK FESTIVALへの出演を目前に控えた中、MONDO GROSSOの14年ぶりの復活という“現象”について大沢伸一さんに語っていただきました。
インタビュー中でも語られていたように一時的に自ら表現することへの興味が薄くなっていたものの、クールな音楽や面白いものとの出会いはキープしながら、来たるべくして来たのがこのタイミングだったのだと感じられた。
オンラインサロン『ランダムノーツ』はそんな大沢伸一さんの出会いの日記のような機能を果たしているのかもしれない。ここは音楽ファンや“いいもの”との出会いを求めている人にとっては、信用のおけるフィルターともいえる。
ここで綴られている様々な音やモノとの出会いから、これからもクールな音楽が“何度でも新しく生まれる”はずだ。