2018年は戌年。
自身の代表作のモチーフである狛犬の年でもあると、小松美羽さんは言います。
1月、シンガポールのアートフェア参加を皮切りに、北京のアートアワード新人賞受賞、2月からは香港で個展を開催するなど、年が明けてから追い風を受けているかのような活躍は、見えない何かに導かれているよう。
神獣をモチーフにした作品は世界的評価を受け、現代アーティストとしてますます躍進する小松さん。そのインスピレーションはいったいどこから生まれるのか?
今回は、作品が生み出される場所や道具へのこだわりを伺ってきました。
祈りを捧げ、作品に向き合う
――作品を制作するアトリエの、小松さんならではのこだわりを教えてください。
アトリエには祭壇があります。毎朝供物を捧げてお祈りをし、マントラを唱えてから作品制作に入ります。
――神棚に手を合わせるような気持ちでしょうか?
近いものではあります。神様とつながるための儀式のようなものです。
私にとって、絵を描くということは、私だけの力ではなくて、いろいろな不思議な力のおかげでできていることなので、そのことに感謝をし、自分が助けていただいている分の徳を神様にお返しして、また返し続けていくために、お導きくださいという祈りを捧げています。
――祭壇には何が飾られているんですか?
祭壇は自分でつくったんですが、タイ仏教の高僧からいただいたものなどを飾り、その一部はペンダントにしていつも身につけています。あと最近行った北京で購入した、チーリン(麒麟、中国の神獣)の像も祭壇を守る神獣として飾ったりしています。
――マントラを唱えるのはどんな意味があるんでしょうか?
第三の目を開くためのマントラなんです。私の描く神獣は神様に近い存在のものなので、普通の風景画を描くための目の見え方ではなく、第三の目で見る鍛え方が必要になってきます。
方法としては、まずマントラを唱えて、灯したろうそくの火を額の前にあるミニシアターのようなところに投影するんです。それをずっと見つめていると、ろうそくの火が小さくなったり大きくなったりして、その時にいろいろな神獣とつながると、さらに火が龍の形になったり、狛犬や獅子になったりします。
そうして、第三の目の感覚を研ぎ澄ましてから、絵を描いています。
――製作中はどうでしょうか。たとえば音楽を聴いたりしますか?
小さな音でテレビを流したりしてますね。最近は海外に行く機会が増えて、英語の勉強をしなきゃいけないので、子供向けの英語アニメのDVDをずっと流しています。
――愛用の道具についてもお伺いしたいんですが、昔から使い続けている画材などはありますか?
使っているものはずっと変化していますね。幼い頃は色えんぴつやクーピーで描いていましたが、美大時代は専攻が銅版画でしたし、今はアクリル絵の具や日本画の画材も使っているので、その時その時で表現したいものに画材を合わせています。
ただ、20代の頃に自分の作品に価値がつき、人の手に渡ることを意識した時から、絵の具の質にもこだわるようになりました。
安価な絵の具は時間がたつと割れてしまったりするんです。
個展を見に来た学生から、なんで小松さんの絵の具は割れないんですかって聞かれたりするんですが、それは私が魔法を使っているわけではなくて、高い絵の具を使っているからです(笑)、と。
――若い人たちにとっては、あこがれの作家の技法はぜひ真似したいですよね。
私も学生の頃は高価な絵の具は買えなかったので、節約して使ったりしていました。でも将来プロになりたいんだったら、そこは意識すべきだと思います。買っていただいたその先で絵の具が割れたりはがれたりしたら失礼ですし、商品としての価値も下がってしまいますから。
迫力のライブペイントパフォーマンス
出典:CANARY「圧巻のライブペイントも!現代アーティスト小松美羽の単独個展レポート」
――近年は精力的にライブペイントを行っていますが、人前でのパフォーマンスはアトリエでの作業とは違う感覚ですか?
作品に向き合うスタンスとしてはそんなに変わらないです。ライブペイントの前も瞑想やマントラを唱えてから始めます。
描く作業自体のスピードはアトリエより早いです。ライブペイントは手を止めないっていうところが違いますね。
――それは経験を重ねて慣れてくるので早く描けるようになるのでしょうか?
あふれるイメージをぶつける方法がわかってきたというかんじです。限られた時間の中で、神獣たちの迫力や威厳のエネルギーのようなものを表現したいと思っていて、そのパワーに導かれているような感覚です。
出典:DMMオンラインサロン「小松美羽 地球人見聞録 ~1000年先のMIWAコード~」
――ライブペイントでは真っ白の袴姿が印象的ですが、衣装に選んだ理由を教えてください。
以前、伊勢神宮でかがり火を守るご神事に関わらせていただいたことがあって、その時に白装束を着させていただきました。タイ仏教の高僧について修行させていただいた時も白い服を着ましたし、やはり白というのは、古今東西で神聖な色としてあつかわれているんだと学ぶ機会が重なったんです。それをきっかけに、敬虔(けいけん)な気持ちで作品に向き合う意味を込めて、パフォーマンスでは白い袴を着るようになりました。
――アトリエでの作業中に着ているものはこだわりがありますか?
作業着は、私の生まれ故郷の長野県にある「フラッドヘッド」というお店の服を愛用しています。私の長野のアトリエの近くにある会社なんですが、すべてメイドイン長野にこだわった洋服をつくっていて、素晴らしい技術なんです。毎年私がデザインした干支Tシャツも出していただいて、特に今年は戌年なので、狛犬のデザインのTシャツは好評をいただきました。
日本を飛び出し世界から受けるインスピレーション
――海外へ行かれる機会も多いですが、必ず立ち寄る場所やお気に入りの場所などはありますか?
骨董品店を見つけると入ってしまいますね。北京で購入したチーリンもそうですけど、神獣モチーフのものって世界中にあるので、見つけるとうれしくなって、ついつい集めてしまいます。
――国によって神獣の描かれ方や造形の違いはありますか?
お国柄というか、そういうのが出るのもおもしろいです。博物館にも行くのも好きですが、古いものとのふれあいの中で、必ずいる神獣たちを見つけて、写真を撮ったりもします。でもやはり宿っているスピリットや神獣に対しての人々の思いは、土地が違えど共通しているので、どこの国に行っても古くからの信仰の形跡をみつけると、うれしいですし、勇気をもらえます。
――これからどんな活動をしていきたいですか?
私にとって絵を描くことは、徳を積むことにつながっています。
法施に近いと思っているんですが、絵を描くことで、神獣が私に見せてくれる世界、神様とのつながりなど、自分が感じたものを人に伝えていきたい。肉体の快楽や物理的なものに追われて窮屈になってしまった魂に、そうでない世界、魂が本来求めている解放の世界を知ってもらいたい。そんなふうに考えています。
そうしてまた私が得た徳分を神様にお返しして、魂が輪廻したその先でも、自分が成長できる生き方を探求し、また伝えていきたいと思っています。
常に自分を成長させることに貪欲で、最高のアートを描くということに全力で取り組む小松美羽さん。
そんな小松さんの人生論が詰まった一冊『世界の中で自分の役割を見つけること~最高のアートを描くための仕事の流儀~』が3月7日に発売されます。
『世界の中で自分の役割を見つけること~最高のアートを描くための仕事の流儀~』
小松美羽
3月7日発売 ダイヤモンド社刊
また、オンラインサロン「小松美羽 地球人見聞録 ~1000年先のMIWAコード~」では、小松美羽さんのイベントの裏話や、制作秘話など、SNSでは公開されない情報が発信されています。また、個展の入場券の先行販売や、サイン入りポストカードプレゼントなどの企画も大好評です。
「個展で声をかけていただいたり、会員の方との距離はとても近いですね」と小松さん。
ぜひ、世界的アーティスト小松美羽さんを最前列で応援してください。