企業の中途採用試験では、はじめに応募書類による選考が行われます。多数の応募がある場合、ありきたりな内容では書類選考を通過できず、面接にたどりつくことは難しいでしょう。つまり、企業が魅力を感じるような履歴書を作成し、書類選考を突破することが、転職活動の第一関門となるのです。履歴書の書き方がよくわからない人は、基本的なルールやコツを学んでおく必要があるでしょう。この記事では、「学歴・職歴」「志望動機」といった履歴書の項目ごとの書き方や、履歴書に関する注意点について詳しく説明していきます。
マナー厳守!履歴書の基本ルール
企業の採用担当者が履歴書から読み取るのは、応募者の経歴や資格だけではありません。実は、仕事に取り組む姿勢や入社にかける熱意なども見ているのです。例えば、基本的な書き方のルールが守られていなかったり、誤字脱字が多かったりすれば、雑な仕事をする人だと判断されてしまうでしょう。これでは、どれだけ熱意をこめて履歴書を書いていても、採用担当者に好印象を与えることはできません。そこで、まずは文章の書き方や証明写真のマナーなど、履歴書の基本的なルールをおさえておきましょう。
黒色のボールペンや万年筆で記入する 履歴書は、基本的に手書きで作成します。その際に、鉛筆やシャープペンシル、文字の消えるボールペンを使用するのは良くありません。必ず、黒色のボールペンや万年筆を用いて記入しましょう。これらは、一度書いてしまうと修正が難しいので、誤字脱字やインクの滲みなどには特に注意が必要です。
もし書き損じてしまったら、修正液などを使うのではなく、新しく書き直すようにしましょう。ただし、履歴書は項目が多いうえ、丁寧に書く必要がありますので、書き損じるたびに書き直しているとかなり時間がかかります。そこで、鉛筆で下書きをしてからペンで清書する、あらかじめ見本となる履歴書を作成してそれを見ながら記入するなど、書き間違いを減らす工夫をすると良いでしょう。
氏名などの基本情報は念入りに見直す
氏名や住所、連絡先など、普段から書きなれている項目ほど書き間違いに気づきにくいため、特に注意が必要です。
氏名や住所は、ふりがなを含めてはっきりと丁寧に書きましょう。この時、姓と名前の間に空白を入れると、よりわかりやすくなります。また、ふりがなのひらがな・カタカナ表記は、履歴書に記載されている表記で統一しましょう。例えば、「ふりがな」とあればひらがなで、「フリガナ」とあればカタカナで記入します。
連絡先は、日中に確実に連絡が取れる電話番号を明記しましょう。連絡先欄が一つしかない場合は、固定電話より、携帯電話の番号を記入することが望ましいとされています。
適切な証明写真を使用する
証明写真は、履歴書を手に取ったとき、最初に目がいきやすい部分です。第一印象を決定づける大きな要素になりますので、表情や服装にも気を配って撮影しましょう。
服装は、スーツなど、ビジネスをするのにふさわしいものにします。また、髪はすっきりとまとめ、寝ぐせなどは直し、清潔感が感じらえるスタイルに整えましょう。表情は明るく、まっすぐに前を向いて撮影します。撮影は、証明写真機などでも手軽に行えますが、より魅力的な証明写真を撮影するためにも、写真館での撮影をおすすめします。簡単に済ませたいからといって、デジタルカメラやスマートフォンで撮影して自分で修正・加工した写真や、スナップ写真などを貼るのは厳禁です。
履歴書に貼る写真のサイズは、2.4×3cmか3×4cmが一般的です。また、3カ月以内に撮影したものが望ましく、古いものや使い回しのものは良くありません。
履歴書の各項目の書き方とコツ
履歴書は、企業から応募書類に関する指定がなければ、市販品でも転職サイトなどにあるフォーマットをダウンロードして使用しても構いません。ただし、学歴・職歴欄が大きいもの、志望動機・自己PR欄が大きいものなど、履歴書によって様式が異なります。そのため、適当に選んだ履歴書にいきなり記入するのではなく、まずは項目ごとに書きたい内容を整理することが大切です。その上で、項目の分量に応じてもっとも書きやすいと思うフォーマットを選ぶと良いでしょう。次は、各項目をスムーズに書くコツを紹介していきます。
学歴欄の書き方
学歴欄は、1行目の中央に「学歴」と書き、実際の学歴はその次の行から書き始めます。義務教育に関しては卒業年次のみとし、義務教育以降は詳しく記載していきましょう。例えば、高等学校や専門学校、短期大学などは「〇月△日○○高等学校入学」「〇年△月○○高等学校卒業」と、入学年次と卒業年次を併記します。これは、高等専門学校や大学に進学した場合も同様ですが、大学院の場合のみ「卒業」ではなく「修了」と記載する必要があります。
学校名や学部名、学科、専攻名は略さずに正式名称で記載し、大学や大学院などでの研究テーマについても、応募先の職種で活かせそうなものであれば、詳細を記載しましょう。
中退歴があるときは、「家庭の事情により中途退学」などと、理由を簡潔に記載します。学歴に空白期間があると、マイナスイメージになりますので、中退については正直に記載しましょう。印象が悪そうだからと、中退したにも関わらず卒業したと偽りの内容を書くと、学歴詐称になります。
職歴欄の書き方
職歴欄は、1行目の中央に「職歴」と書き、その次の行から書き始めます。勤務期間が短い会社も含め、最初に勤めた会社から時系列で書いていきましょう。その際、社名は省略せず、所属部署とともに正式名称ですべて正確に書きます。なお、勤務しているときに社名の変更があったときは、「○○株式会社(現△△株式会社)」というように入社時の社名と変更後の社名をわかりやすく記載しましょう。部署の異動や昇格があった場合は、アピールポイントとして記入できます。
正社員以外の契約社員や派遣社員などで雇用された場合は、その旨を明記します。例えば、派遣社員の場合、「○○(派遣会社名)より△△(派遣先企業)に派遣」と書きましょう。また、社会人になって以降の長期アルバイトについても、履歴書に記載することが一般的です。アルバイトであっても、職務内容が応募先企業の職種と関連しているのであれば、選考の際に有利に働くこともあります。
転職活動を行っていた、病気で療養していたなどの無職期間がある場合、特に記載する必要はありません。ただし、留学していたなどアピールポイントになる理由であれば、「〇年△月□□に1年間留学」などと書くと良いでしょう。
退職理由については、「一身上の理由により退社」と書くのが一般的です。在職中で、すでに退職日が決まっているなら、「〇年△月退職予定」と書きます。最後は「現在に至る」とし、賞罰(受賞経験と犯罪歴)がないときは「以上」と右詰めで記入します。
免許・資格欄の書き方
免許・資格は、取得年月とともに正式名称で記載します。例えば、普通自動車免許であれば、正式名称は「普通自動車第一種運転免許」です。そのほかの資格についても、正しい名称を調べて誤りなく書きましょう。
なお、免許・資格欄は自己PRにつながるため、応募職種に直接関係するものでなくても記載して構いません。しかし、免許・資格が多すぎて枠に収まらない場合には、希望職種に関連すると思われる資格から優先的に記載するようにしましょう。特に、運転免許は応募資格に必須のケースもありますので、保有しているのであれば優先的に記載することをおすすめします。
また、現在は保有していなくても、取得を目指して勉強している免許や資格があれば書いても構いません。「○○取得に向けて勉強中」と書くか、合格の見込みがあるのであれば「〇月に取得予定」など取得予定時期を明記します。
志望動機欄の書き方
志望動機欄は、入社意欲がしっかり伝わる内容にすることが大切です。転職サイトの例文をそのまま真似たりせず、自分の言葉で丁寧に書きましょう。ポイントとなるのは「その業界を志望する理由」「他にも同業の会社があるなかで特にその会社を志望する理由」「その職種を志望する理由」です。これらの内容をふまえながら、自身の経験やスキルを活かし、どのように会社に貢献できるかも伝えましょう。
説得力のある志望動機を書くためには、応募先の企業を深く知っておく必要があります。そのため、応募先企業については事前にリサーチを行い、企業理念や事業戦略、特徴などをしっかり理解しておきましょう。
自己PR欄の書き方
自己PRは、得意分野や強み、こだわりを伝えて、企業に対して自分をアピールする目的があるので、採用すれば企業にどんな形で貢献できるかが伝わる内容にする必要があります。そこで、まずは応募先企業が求めている人物像や能力を調べ、それにマッチしたスキルや知識、実績をアピールすると良いでしょう。その際、具体的なエピソードや数値を添えると、説得力が増します。
また、趣味や特技は面接の際に話が膨らむ可能性が高いため、なるべく書くようにしましょう。特に、職務に関連する内容であれば、詳しく記載しておきます。なお、長文をびっしりと書くよりも、400文字程度で、端的にアピールポイントを書く方が好ましいとされています。
通勤時間欄の書き方
通勤時間欄は、自宅を出てから会社に着くまでにかかる最短時間を5分単位で記載します。通勤時間には、電車やバスなどの公共交通機関を利用している時間だけではなく、徒歩で移動する時間も含まれます。自家用車の利用が認められていて、自動車通勤を希望する場合は、その旨と移動時間を記載しておきましょう。
また、応募する企業に複数の勤務地があるときは、希望の勤務地までの通勤時間を記入します。そのときは、「※○○店に通勤する場合」とはっきりわかるように補足を入れておきましょう。そのほか、会社が自宅から遠く、入社が決定したら近くに引っ越すつもりならば、その旨も記載しておきます。
本人希望欄の書き方
本人希望欄は、複数の勤務地や職種などがある場合に希望を記載する欄です。たとえば、企業が営業職と事務職とで求人を出しているのであれば、「営業職を希望いたします」など、希望する職種を記載します。勤務地や職種が複数あり、特にこだわりがないときは、「貴社の規定に従います」と記載しましょう。
なお、勤務時間や給料などの希望に関しては、家庭の事情があるなど正当な理由がない限り書かない方が無難です。なぜなら、記載内容によっては、採用担当者にあまり良い印象を与えないことがあるからです。また、在職中の転職活動で、採用決定後すぐに入社できないときは、「引継ぎの関係上、○月〇日より就業可能です」と記載しておきましょう。
履歴書を書くときのNGポイント
いつも書類選考を通過できないという人は、履歴書自体に問題がある可能性もあります。書類選考に落ちる履歴書には、共通しているNGポイントがあり、いくら経歴や職歴が立派でも、NGポイントの多い履歴書では書類選考を通過することはできません。そのため、何が問題となるのかを知り、魅力的な履歴書を作成して面接のチャンスをつかみましょう。
履歴書を使い回している
転職活動では何社もの選考試験を受けることは珍しくありません。応募書類は企業ごとに作成する必要がありますが、なかには返却されてきた履歴書の日付を修正して使い回す人がいます。しかし、当然これはマナー違反です。たとえ面倒でも、企業ごとに新しく書きなおすようにしましょう。
また、日付が古い履歴書は印象を悪くしてしまいます。あらかじめ履歴書を書きためておく場合でも、郵送や持参する当日の日付を書くようにしましょう。
空欄や誤字・脱字が目立つ履歴書は、応募書類というだけではなく、正式なビジネス書類に当たります。そのため、空白がないように項目は全て記入し、誤字や脱字にも注意しましょう。書類に不備があると、「注意力が散漫」「見直しをきちんとしない雑な性格」といった悪い印象を与えてしまうかもしれません。何度も見直しを行い、不備がないようにすることが大切です。
履歴書を送付・持参する際の注意ポイント
履歴書の提出方法は、企業によって異なりますので、それぞれの企業で指定されている方法に従いましょう。
履歴書を持参する場合企業に直接持参する場合は、職務経歴書など、企業に指示された必要書類もそろえ、まとめて封筒に入れて持っていきます。履歴書の日付欄には、持参当日の年月日を記載します。
履歴書を郵送する場合
郵送するときは、A4サイズが入る角形4号か角形2号の封筒を使用し、クリアファイルにはさんで入れると、応募書類に折り目がつきません。この時、送付状を同封しておくと、より丁寧です。
封筒の色は、白、水色、茶色などがあり、いずれの色を使用しても問題ありませんが、白色を選択しておくのが無難でしょう。また、確実に採用担当者の手元に書類を届けるためにも、封筒表面の左下には赤色で、「履歴書在中」、または「応募書類在中」と、線で囲って記載します。
宛名については、人事など会社組織宛に送るときは「御中」を、採用担当者の氏名がわかっているときは「様」と記載しましょう。ただし、御中と様は併用してはいけません。例えば、「○○会社人事部御中 田中太郎様」と書くのは間違いで、この場合は「御中」をつけず、「〇〇会社人事部 田中太郎様」とするのが正しい書き方です。
履歴書をメールで送付する場合
履歴書は郵送か持参が一般的ですが、最近ではメールで送ってほしいと企業から指定されるケースも増えています。メールに添付して送る場合は、件名を空欄にしてはいけません。簡潔に用件が伝わるように、件名は「内容+自分の名前」の形にしましょう。たとえば、「履歴書送付の件 田中花子」などです。
メールの本文には、郵送の際に添える送付状と同様に、挨拶や入社にかける意欲を記すと良いでしょう。また、うっかり送信ミスをしてしまった場合に備えて、添付する応募書類のデータにパスワードを設定しておくと安心です。設定したパスワードは、応募書類を添付したメールとは別のメールで、採用担当者に連絡しておきましょう。
読み手の目線でチェック!履歴書の書き方を見直して転職に成功しよう
履歴書は、転職活動において重要な書類の一つです。これまで何度も書類選考に落ちていたという人も、書き方のコツを知って工夫すれば通過率が大幅に向上するかもしれません。
履歴書はビジネス書類であるという意識を持ち、1枚1枚丁寧に仕上げることが大切です。また、「自分が採用担当者ならどう思うか」「どんな内容なら話を聞いてみたいと思うか」という視点から履歴書を見直してみると、改善すべき点に気付けるかもしれません。