1970年代から出版の世界で活躍し、男性誌「Begin」や富裕層向け男性誌「LEON」など、数々の有名雑誌を創刊させてきた名物編集者、岸田一郎さん。「ちょいワルおやじ」「ちょいモテおやじ」をはじめ、インパクトのある造語を世に送り出し、次々にライフスタイルの新しいトレンドを提案してきました。
そんな岸田さんが次に目をつけたのは、オンラインサロン。雑誌創刊の請負人とも言える岸田さんの手がけるオンラインサロンとは、一体どんなものになるのでしょうか。
岸田一郎
メディアプロデューサー。『Begin』『CarEX』『時計Begin』などの創刊編集長。2001年9月、”ちょい不良(ワル)オヤジ”で一世を風靡した『LEON』を創刊、未曾有のヒット作に育て上げた。2004年女性誌「NIKITA」も創刊。”ちょいモテ、オヤジ”は2005年新語・流行語大賞を10ベストを受賞。
セミリタイヤを目前に芽生えた欲求「リアルな岸田一郎を見せたい」
現在68歳を迎えた岸田一郎さん。インスタグラムやブログでは、年齢を感じさせないほど精力的な活動をする岸田さんの姿が見られます。誰よりも今を楽しむ岸田さんの取材場所は、なんと岸田さん自らが運転してきたキャンピングカーの中!車の中とは思えない贅沢な空間を楽しみながら、サロンを始めようと思った経緯から伺いました。
ー岸田さんは4月の投稿で、意味深な発言をされていましたよね。これはサロンの立ち上げを意味していたんでしょうか?
そう。オンラインサロン『ちょいモテ総研』と、もう1つはサロンとは別に、YouTubeで『岸田チャンネル』という動画配信を始めることにしました。
私はこれまで、『Begin』や『CarEX』『LEON』など雑誌の創刊ばかりを担当してきました。セミリタイヤした身ではあるんだけど、まだまだ情報を発信していきたいって思いがあったんです。まあ、編集者の性(さが)ですかね(笑)。
ーどちらの活動もすごい興味があります。二つの媒体では、どのような情報を発信していくのですか?
今使っているinstagramをはじめとしたSNSもそうだけど、YouTubeやオンラインサロンの良さは「リアル」にあるんじゃないかなと思っているんです。雑誌はあくまで「企画」の面白さを発信する媒体だけど、最近は雑誌に感じられる作り物のイメージが、通用しなくなってきた。
なので、YouTubeやサロンでは、「68歳の岸田一郎」という一人のおっさんの、リアルなライフスタイルを見せていきたいなって。今何をやっているのか、何を面白いと感じているのか、何に夢中なのかということを伝えていきたいです。
ー確かに、たくさんの流行を生み出した岸田さんが、今何に興味があるのか気になる方は多いのではないでしょうか。オンラインサロンではどのようなことを実現していきたいですか?
オンラインサロンではメンバーとの「双方向のコミュニケーション」を大切にしたいなって思ってます。雑誌時代から、読者や消費者からの生の声を聞きたいとずっと思っていたんですが、その方法がありませんでした。一応編集部へのお便りを受け付けてはいたけど、かなり面倒くさいシステムでしたね(笑)。それに雑誌というのは、背景にクライアントがいてポリティカルな判断を余儀なくされます。メディアの制約上、答えられない話も多かった。
でも、セミリタイアした今の私の立場なら、そうしたしがらみはありません。しかも、オンラインサロンのようなクローズドな場所なら、気心知れたメンバーさんとぶっちゃけた話なんかもできそうですよね。時計ブームはどうしかけたのかとか、ちょいワルブームの裏話とかね。逆に、サロンメンバーからも「最近これにハマっているんです!」って感じで、面白い話を聞けるかもしれないと、今から胸を躍らせています。
今もなおラグジュアリーを愛する仲間と、サロンを盛り上げたい
時計や車、ファッションなど、身の回りのあらゆるモノに「モテ」要素を意識し、こだわり抜いてきたという岸田さん。2019年7月にオープンするオンラインサロン『ちょいモテ総研』では、どんな仲間を集めていくのでしょうか。
ー岸田さんは『ちょいモテ総研』で、どんな仲間を作っていきたいですか?
時計とか車とか、ラグジュアリーなものに対する日本人の物欲は、明らかに以前より衰退しました。一方で、今でもこうしたモノを愛している人は、少なからず存在すると思うんですよね。それは私達と同世代かもしれないし、もしかしたら20代、30代の若い世代かもしれない。そういう人にはぜひ、サロンに来てほしいなあ。
ー岸田さんが多くの雑誌を創刊していた頃と比べて、世の中はどのように変わったのでしょうか?
私達の世代は、高齢者やシニアなんて言葉で表現されますが、前の世代のそれとは全く違う経験をしてきたんです。高度経済成長に支えられて、バブルを経験し、日本中にモノが溢れていく中で生きてきた。ある意味、幸福な世代だったかもしれません。そして、私達の世代の多くは、モノを買うことで自己表現をしてきました。
例えば、小学生の頃に自転車を買うとき、「君のは3段変速だけど、僕のは10段変速だよ!」みたいな感じでね。より高性能・高価なモノを持つことで、他人と差別化をしてきたんです。
でも、こうした現象は、日本に特有のモノではなく、国が成長する過程で誰しもが通るんだと思っています。ちょうど今の中国が、以前の日本と同じ状態ですね。文化が成熟していくにつれて、若い世代は単に高いモノを買って自己表現することの「カッコ悪さ」に気づいていった気がします。
ー成熟する過程で価値観が変化してきたんですね。
「若い人は元気がない」とよく聞くけれど、単に成熟してきただけだと思うな。私もそうで、かつてご飯を食べるのなら広尾の素敵なレストランで、話題のワインをたしなむという感じだった。いかにもバブリーな感じでしょ(笑)。
そんなことも大切ではあるんだけど、さらに加えて今の私なら、キャンピングカーで地方に行って、今までとは違う食事体験をしてみるとか、「これだけお金をかけて、楽しいことができた!」という思いだけじゃなくて、釣りやドライブなどの体験そのものを、ピュアに楽しめるようになった気がします。
つまり、私もそうなんですが、モノの価値を決める尺度が、お金だけではないということに、みんな気づき始めたんですよ。
もちろん、ラグジュアリーなモノも大好きだよ(笑)。サロンでは「私の〇〇自慢」みたいに、時計でも靴でも車でも、自分が愛着を持っているもののこだわりを披露するコーナーを設けようかなと考えています。
ー面白そうですね!岸田さんなら今、何を自慢しますか?
いっぱいあるよ!今身につけているものだったら、この時計かな。イラリアの『パネライ』というメーカーの時計で、17、8年前に買ったもの。当時は80万円くらいで買ったんだけど、今なら200万円くらいするかな。
『ちょいモテ総研』で、付加価値=武器を磨く手練手管を伝えたい
車、時計、ファッションなど、モノへの愛着にあふれたメンバーを集めていきたいという岸田さん。その一方で、サロンのテーマでもある「モテ」についても語ってくれました。
ー岸田さんの考えに共感したメンバーと、どんなサロンを創り上げていきたいですか?
私はラグジュアリーなモノが好きな、ある意味オタク的存在です。でもだからと言って、オタク談義をしたいわけじゃないんですよ。葉巻も好きだけど、男だけでシガーバーに集って「今年のシクロは巻きが甘いですね」みたいな話はしたくない。
そこにはちゃんと女性もいて、おしゃれで華やかな空間のなかで、一緒にモノを楽しむ空間を作りたいんです。私は雑誌時代も、ゴルフコンペなどさまざまな交流会を企画していました。その時も、やはり男女比は半々くらいだったんですよ。サロンもそれくらいの比率で、いろんな交流会を開きたいです。そんな意味合いから、女性も大歓迎ですね。
ーモノへの愛着はありつつも、モテの部分もしっかり押し出していきたいということですね。
魅力的な人というのは、その人の本質で推し測られます。それは知性かもしれないし、人間性、外見、年収、学歴、経歴など千差万別です。だけど本質的な部分っていうのは、ウソをつけないし誤魔化しが効きません。ですが本質の上に付加価値をプラスすることで、自分の魅力を底上げすることができるんですよ。例えば、
・どんな服を着てきたのか?
・デート先はどこか?
・デート中、どんな所作を見せるのか?
付加価値というのは簡単に鍛えられる戦闘力です。でも、金をかければいいってものではなく、やっぱり必要なのはお金じゃなくてセンスなんですよ。どんな女性にモテたいかを想定して、その好みに合った付加価値をどう身につけるか。
私は長年、そんなジャンルのメディアばかり作ってきたわけで、こうしたハウツーに関して教えられる部分は多いと思います。そこらの20代、30代の方よりも、高い戦闘力を持っているという自信があるよ。
ー岸田さんの精力的な姿を見て、私も新しいことをチャレンジしたくなりました。
よく私くらいの年齢になると、「もっと落ち着いて」「もっと渋みを出して」なんて言われるんで、私のライフスタイルとは全く逆です。今でも物欲はあるし、煩悩もあるからモテへの興味もなくならない。それにこの年齢になってくると、学生時代の友人でも、体を壊したとか、亡くなったなんて笑えない話がだんだん増えてきた。「あと何年、元気に過ごすことができるだろう」なんて真剣に考えるようになってから、30代、40代と脂の乗っていた時期と比べて、明らかに今の方が新しいことを始めたいモチベーションが高いです。
サロンでは私が始めた面白いこと、夢中になっていることを発信しますが、サロンメンバーから「あれが面白い」「これが面白い」というのもどんどん聞かせてほしい。ゆくゆくはそうしたメンバーからの発案で、イベントを開いていきたいなとも思っています。
モノへの愛情も女性への愛情も、まだまだ尽きるところを知らない岸田さん。高価なモノやモテへの欲求は、おおっぴらに口にできるものではありませんが、憧れとして胸に秘めている人は多いはず。時代の流行を作り続けてきた岸田さんのサロン『ちょいモテ総研』で、「モノとモテへの好奇心」を存分に満たしませんか?