文芸部員おすすめ!雨の日に読みたい本6選

著者名まきむぅ
文芸部員おすすめ!雨の日に読みたい本6選

「読書の秋」とはよく言いますが、「読書の梅雨」とも言えるかも。ねむたい雨音を聞きながら、しっとりとした風に包まれ、ゆっくりとページをめくる休日も乙なものです。そんな日に、どんな本が似合うかな? オンライン文芸部「まきむぅの手乗り文芸部」所属の文芸部員が、それぞれの「雨の日に読みたい本」をおすすめします!

「傘の自由化は可能か」大崎 善生

傘の自由化は可能か (角川文庫)

作家の大崎善生さんのエッセイです。このタイトルは、小説「パイロットフィッシュ」の一文が発端になっているので、そちらも合わせてオススメします。

梅雨は、引きこもる言い訳ができて良いですよね。そういう意味では、読書にぴったりの季節だと思います。

(降矢とばりさん)

「死神の精度」伊坂 幸太郎

死神の精度 (文春文庫)

人の死を「可」か「不可」で決定している死神の話。主人公が仕事をする時は必ず雨。

死神だから雨が降るのではなく、 主人公が仕事をする時はなぜか雨。

主人公は人間のような感情を仕事に持ち込みません。それでいて、音楽が好きで、仕事だけはまじめに取り組んでいるという、奇妙な人間臭さがあるのです。

そのためか、人の生死が書かれているにもかかわらず、テンポよく話が進んでいきます。

文章も読みやすく、雨の日でも気軽に読める作品です。

(ナカリーさん)

「静かな雨」宮下 奈都

静かな雨 (文春文庫)

宮下奈都さんのデビュー作です。

勘の良い方は「おすすめ作をタイトルで選んだんでしょう?」と思われたかもしれませんね。そう、当たりです。

「雨の日だからこそパッと明るい作品がいいかな?」「それとも土砂降りの雨のような激しい感じがいいかな?」などと考えた結果、梅雨の雨のようなしっとりとした作品を選びました。

宮下さんの作品は「音の描写」「匂いの描写」「味の描写」が本当に素敵です。雨音の調べをバックミュージックに、しっとりゆったり読んでみてください。そして、この作品を読み終わる頃、きっとあなたは『たいやき』を食べたくなることでしょう。

(ゆうさん)

「いま、会いにゆきます」市川拓司 

いま、会いにゆきます (小学館文庫)

雨の季節になったら戻ってくると言って死んだ妻の話。雨の日に読むのにふさわしく、黄色い傘が表紙の小説です。

主人公は、自身の不具合、妻との別れなど、 決して幸せな境遇とは言えません。それなのに、この小説からは不思議なほど愛しか感じられないのです。それは、自身の不幸ではなく、一貫して妻との愛を語り続けているからなのでしょう。

「いま、会いにゆきます」というタイトルには、この物語は一人でなく、二人の愛の話しだという意味もこめられています。最後まで読むと、このタイトルの本当の意味にたどり着くことができるでしょう。

読んでいると、雨の日が心地よく感じられる小説です。

(ナカリーさん)

「雨月物語」上田 秋成

改訂 雨月物語 現代語訳付き (角川ソフィア文庫)

言わずと知れた怪異小説の古典。もちろん「雨」から思いついた一冊ですが、本当の由来は「雨が上がり月が朦朧とした夜に書いた物語」とのことなので、ちょっと趣旨と外れてますかね(笑) 。でも読む分には雨の日もなかなか似合うと思うのです。

江戸時代に書かれたものなので、忠義を重んじたり、女性観が著しく偏っていたりするのは否めませんが、そういった古い価値観と相まって醸し出される叙情、登場人物の心の動きなどには、捨てがたいものがあります。物語としても、(古典の宿命として”どこかで聞いたような話”もあるものの)とても面白く読めます。

そして何よりその文体の美しさ! 独特のリズム感と音楽を思わせる流れ。結局のところ、この本を雨や朧月に似合うものにしているのは、この言葉そのものなのかもしれません。そこを味わうためにも、ぜひ原文で読んでいただきたいです。自慢じゃないですが私、古典はからきしダメで、「舞姫」すら読み通せないレベルで文語体は苦手なのですが、注釈だけでもほとんど読み通せるくらい平易で読みやすいです。時々は現代語訳も参照しましたが。(ちなみに私が読んだのは角川ソフィア文庫版です)

ついでにもう一冊、電子書籍でしか入手できませんが、この雨月物語を大胆にSFに翻案した同人アンソロジー『雨は満ち月降り落つる夜』もとても面白いです。

オリジナルの文体は片鱗すら味わうべくもないですが、「SF」と言う枠の中でこの怪異小説をどう調理するか、アプローチアイディアも様々で読み応えがあり、また総じて現代語小説としてのレベルも高いと思います。ジャンルが苦手でなければぜひ。

(けいりんさん)

「世界の言語入門」黒田龍之助

世界の言語入門 (講談社現代新書)

雨の日って、やる気が出? そんな時にまさか世界の言語に入門する気は起こらないでしょうが、開けてびっくり。この本、言語学者さんが書いたマジメな入門書だと思いきや、どっちかというと「90言語で世界一周」って感じのゆるゆるエッセイなんです。

特に素敵なのがハウサ語。国土のほとんどがサハラ砂漠の国・ニジェールで話される言語です。ほとんど雨が降らないこの砂漠の国では、日本語で「良い天気ですね」というところをこう言うのだそうです。「雨の具合はいかがですか?」。それになんと答えるのかは、ぜひこの本を読んでみてください!

他にも、ヘブライ語復活に人生を捧げた人の物語や、アゼルバイジャン語を話す人があるトルコ語を聞いて大パニックになった話など、世界の言語のエピソードが盛りだくさん。そんな広い広い世界から、あの雨雲も流れてきたんだなあ……と思うと、外出がおっくうな梅雨時でも、くもり空の向こうに思いを馳せられるかもしれません。

(まきむぅ)

 

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