ヘルステック=ヘルスケア×テクノロジーに関わる人材の交流や最先端技術を学べるオンラインサロン「ヘルスケアビジネス研究会」。業界のトップランナーや経営陣が多く集うこのサロンでは、メンバー達の中から次々と新しいビジネスが誕生しています。
現役医学生の洲脇祐太郎さんも、この波に乗るように新規事業を立ち上げ、オンラインサロンを通じてビジネスを躍進させました。現在、株式会社Botlogyの代表としてビジネスを展開する洲脇さんは、サロンを通じてどのように成功を掴んだのか。サロンの運営者である加藤浩晃さんと共に、その経緯を伺いました。
株式会社Botlogy 代表取締役社長 兼 CEO
小中高では、数学オリンピックの日本代表選考において、ファイナリストに選出。現在は京都府立医科大学医学部に在籍しながら、「医療機関と患者をつなぐ」をコンセプトに、チャットボット開発の第一人者として事業を展開している。
チャットボットを活用した医療向け新ビジネスの立ち上げ
ー洲脇さんの事業について教えてください。
洲脇さん(以下、洲脇):私は、主にクリニック向けに、LINEを活用したチャットボット(Chatbot)というシステムを提供しています。
チャットボットというのは、テキスト・音声などを使ってLINE上で自動的に会話を行うことができるプログラムのことです。クリニックで使う場合、患者さんは自動で表示される選択肢に回答していくだけで自分の症状を伝えることができますし、ドクターはその回答を見ることで、事前に患者さんの状態を把握することが可能です。
また、患者さんはLINEでクリニックの混雑状況、受付時間などを事前に知ることもできます。これまで病院の予約には、自宅近くの病院を検索して、HPにアクセスして、電話番号を調べて電話をかける、という手間が必要でした。LINEのチャットボットを活用することで、その手間を一気になくすことができるんです。
ー患者とドクターのコミュニケーションが、よりスムーズになるんですね。その他にも活用方法はありますか?
洲脇:そうですね。プッシュ通知といって、画面表示や音でメッセージを通知する機能もあるので、インフルエンザが流行し始めたら予防接種を促したり、夏場には水分補給をするよう呼びかけたりと、様々な活用法が考えられます。つまり、これまでハガキやメルマガなどで行なっていた情報発信やアナウンスが、LINEのアカウント一つで完結できるようになるんです。
ーすごい。洲脇さんはいつから、チャットボットの開発を始めたんですか?
洲脇:私は医学生なので、もともとシステムエンジニアだったわけではありません。でも、IT分野には昔から興味があって、独学でシステム開発の勉強を始めました。
現在は情報がネットに乱立していて、有象無象の情報をどう整理するかがとても難しくなっています。欲しい情報にたどり着くためには、大量の情報を上手に切り分ける=分岐させる必要がある。それを解決する手段として、チャットボットは非常に適していると思いました。
私がチャットボット開発を始めた当時、国内ではチャットボットに精通している人が少なかったんです。そんな中でも、積極的に新しい技術にアプローチし続け、2018年10月ごろには受託開発の依頼をいただけるようになりました。最初の案件はプログラミング教室の会員サポートでしたね。その他にも、『フィルコン』という、妊娠を診断できる女性向けのアプリも開発しました。
そうして実績を重ねながら、法人化させました。現在では、国内におけるチャットボット開発の第一人者だと自負しています。
ー医療だけでなく、いろいろなサービスに適用できるんですね。
洲脇:チャットボットのメリットは、システムをカスタマイズすればどんな業種、どんなシーンにも対応できる点にあります。実際、クリニックだけでなく動物病院への導入事例もあるくらいですよ。
ヘルスケアビジネス研究会との出会いと事業拡大
ーヘルスケアビジネス研究会には、どのようなきっかけで入会されたのですか?
加藤さん(以下、加藤):洲脇君が、ある企業でインターンをしているときに彼と知りあったんです。その後、自分が京都でイベントをする際に手伝いをしてもらったというか、ほとんど彼がやってくれちゃって!そこで精力的にイベントの準備をしてくれる彼の姿を見ていたので、「うちの会社でもインターンをしないか」と誘いました。ちょうど2018年の夏くらいだよね?
洲脇:そうですね。以前から加藤先生のことは京都府立医大でいろいろやっていらっしゃる医師だということを知っていましたし、加藤先生のオンラインサロンのことも知っていました。そして、1ヶ月の間インターンで京都から東京に住み込みをさせてもらったタイミングでサロンにも入会させてもらいました。
ーオンラインサロンを通じて、どのようにビジネスが発展していったのでしょうか。
洲脇:もともと、サロンに入る前からビジネスを立ち上げたいと思っていました。チャットボットが技術的に提供できるレベルになったのは2018年の夏ごろで、ちょうど東京でインターンをさせていただいたタイミングです。私は普段京都に住んでいるんですが、東京で得られる膨大な情報量に驚かされました。京都ではヘルステックについて学ぶ機会も、人脈やネットワークも少なかったんです。
だからこそ、東京という日本の中心部で、ヘルステックに関わる人々の強固なネットワークがある「ヘルスケアビジネス研究会」に参加することは、大きなメリットがあると思いました。
オンラインサロンに入会した当初、毎月第2金曜日で開催される勉強会に、私は京都からバスに乗って参加していました。ある日、サロンメンバーの一人でクリニックの事務長をされていた方とチャットボットの話をする機会があり、実際に私が開発した『フィルコン』を見せたら、「うちでも導入したい」という話になって。
2019年1月に具体的な話をして、4月に医療機関向けのチャットボットシステムを提供することになりました。現場にフィットしたシステムにするため、開発中は何度もクリニックへ通い、スタッフの方と打ち合わせを重ねましたね。
ーサロンに入って1年足らず、すごいペースですね。そのクリニックさんからはどんな反響がありますか?
洲脇:私自身、サロンを通じてここまでのビジネスが生まれるとは思っていませんでした(笑)。
具体的なデータについての検証は、まだまだこれからですね。ただ、従来から行なっていたブログやお知らせといった情報発信が、今までよりも積極的に行えるようになったと喜んでいただいています。
このほかにも、代理店をしているサロンメンバーの方とも仲良くしていただいて、より多くのクリニックへシステムを提供することが決まりました。開発も私一人では間に合わなくなってきたので、現在はエンジニア・営業などのスタッフを集めて、計5名で仕事をしています。
ー事業がどんどん拡大していきますね。現時点での目標はありますか?
洲脇:現在、世界には大小合わせて約10万施設のクリニックがあります。中長期的に、そのうちの5,000クリニックで、うちのシステムを導入してもらえるようになったら嬉しいですね。
業界のパイオニアから得られた気づき
ービジネスが加速した以外で、具体的にサロンに入ってよかったことはありますか?
洲脇:たくさんありますよ!一番大きかったのは、自分のビジネスに関してたくさんの気づきを得られたことです。
たとえば、私は医学生として医療に関する専門知識はありましたが、歯科クリニックのことはよくわかりませんでした。そこで、サロンに参加されている歯科医の先生に相談したところ、予約の仕組みや定期検診のお知らせの方法などを詳しく教えていただき、ドクターと患者さん双方の負担を減らす方法がわかりました。
ーサービスに落とし込めるアイディアを、たくさん得られたんですね。
洲脇:ほかにも、サロンに参加されている起業家の方や、事業会社の社長さん達と接することで、自分の視座をあげることもできました。そして、目先の仕事だけでなく、より壮大なビジョンを描けるようになったんです。
同世代ですでに起業して活躍している「ホクトさん」という方がいたのですが、彼とは特に仲良くさせていただいて。毎月1回必ず会うだけでなく、一緒に中国へ行って日本よりも進んでいる最先端のシステム動向を学びました。私は、今でこそ起業して事業を展開していますが、何もしなかったら地方の医学生として普通に過ごしていたと思いますね。
私は非常にわかりやすい事例ですが、実際にはサロン内のあらゆるところで業務提携や業務委託の話が出てきています。また、「ヘルスケアビジネス研究会」には、起業や事業開発が当たり前にできるような環境が揃っているので、この空気感をうまく活用することで、自分のマインドを変えることができると思いますよ。
加藤:洲脇君の場合、まだ学生でしかも京都からわざわざ来てくれていた。これってすごいことじゃないですか。
僕と個別に話すだけだったら、どっかのカフェで話してもいいわけで、わざわざサロンに入る必要もなかったと思います。でもヘルスケアビジネス研究会は、僕との一対一の関係じゃなく、サロンメンバー同士が繋がるN対Nの関係があるんですよ。だからこそ、ここまで彼のビジネスは熟成されていったんじゃないかなと。
洲脇:しかも、サロンメンバーの皆さんは、本来ならなかなかお会いすることのできない、ヘルステック業界のパイオニアばかりですしね。
ー洲脇さんは、サロンの環境を上手に活用して成功した事例なんですね。
加藤:僕が浜松医大で医学生だったころや、京都で医師をやっていたころ、ヘルステックを学ぼうにも、その手段もなければ、人材もいませんでした。そんな風に、歯がゆい思いをしていた当時の自分のためにこのサロンを運営し始めたというところもあるんです。それが今回、医学生である洲脇君にぴったりとハマった。それが本当に嬉しかったですね。
技術と医療がつながるシーンを次々と創り出している、ヘルスケアビジネス研究会。加藤浩晃さんは、この業界に参入していきたい若い人材と、彼らを牽引できる業界のベテランを求めています。濃厚な人脈が生むチャンスを、皆さんもつかみませんか?