社会人にとってボーナスは、自分へのご褒美のようなもの。しかし、ボーナスは会社や自治体によって金額が大きく異なります。そのため、自分がもらったボーナスが多いのか少ないのか、気になる人もいるでしょう。そこで、この記事では気になるボーナスの平均支給額や支給額のランキングをご紹介。さらに、ボーナスの使い道、転職後のボーナスといった素朴な疑問にもお答えします。
ボーナスの平均額を公開!
夏や冬になると、毎年ニュースで話題となるボーナス平均支給額。中には「自分はそんなにもらっていない」と不満を抱く人もいるでしょう。これはある意味当然のことで、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」や「毎月勤労統計調査」の結果を見ると、ボーナス支給額は年代、性別、業種などによってかなり差があることがわかります。
民間企業の平均
厚生労働省の「毎月勤労統計調査」によると、平成30年夏季賞与は平均38万3,879円、平成30年年末賞与は平均38万9,926円となっています。
一方、日本経済新聞社の調査によると、令和初のボーナスとなる2019年夏季賞与の平均は83万9,844円。この数値は一部上場企業のみを対象に調査した結果であるため、厚生労働省が発表した「毎月勤労統計調査」よりも金額が高くなっています。しかし、金額は前年比0.37%減で、7年ぶりのマイナス傾向。米中貿易摩擦などの影響で電機、鉄鋼、繊維などの業績が落ち込んでいることが原因と考えられています。
(参考:日本経済新聞|夏のボーナス0.37%減、7年ぶりマイナス 本社調査、厚生労働省|毎月勤労統計調査 平成30年9月分結果速報等、厚生労働省|毎月勤労統計調査 平成31年2月分結果速報等)
平均ボーナスの年度推移
厚生労働省 毎月勤労統計調査 平成31年2月分結果速報等で夏季賞与平均額の年度推移を見てみると、平成30年夏季賞与は前年度比4.2%増加となりました。平成28年は前年度比2.6%、平成29年は前年度比0.3%の上昇に留まっていたことから、平成30年夏季賞与は例年に比べ大きく増額したことがわかります。
一方、年末賞与平均額の年度推移を見てみると、平成30年年末賞与は前年度に比べ1.0%の増加。平成28年は前年度比0.2%、平成29年は前年度比2.9%となっており、こちらも3年連続で増加しています。
(参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 平成31年2月分結果速報等)
業種別の平均ボーナス
業種別に見てみると、鉱業・採石業等の平成30年年末賞与は、前年に比べ51.6%増加しており、平均支給金額は58万6,499円。調査産業全体の平均ボーナス額である38万9,926円よりも大幅に高くなっています。
最もボーナス平均額が高い業種は情報通信業で、平成30年年末賞与の平均額は67万9,407円でした。一方、最もボーナス平均額が低かったのが飲食サービス業等です。平成30年年末賞与の平均額は7万398円で、情報通信業に比べると60万円以上の差があることがわかります。
これには、飲食サービス業には非正規雇用労働者が多いことと、正社員に若手が多いことが関係しています。非正規雇用労働者はボーナスを支給されない場合がほとんどですが、統計上は労働者の1人として数えられるため、必然的に平均額が下がってしまうのです。また、若手従業員は勤続年数が短いために年収が低く、業種全体の平均ボーナス額を引き下げていることも原因の一つと考えられます。
(参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 平成31年2月分結果速報等、DIAMOND online|外食産業の平均年収ランキング【全103位・完全版】、平均が低い中でもっとも高いのはどこか)
年代別の平均ボーナス
多くの場合、ボーナスは毎月の給料をもとにして、「給料~か月分」という形で支給されます。そのため、支給額は年代ごとに大きく異なっています。
例えば、平成30年の20代前半男性社員の平均年収は212万6,000円ですが、50代前半男性社員の平均年収は426万円となっており、約2倍の差があることがわかります。
国税庁の「平成30年分民間給与実態統計調査」によると、年収に対する平均賞与の割合は約19%とされています。これを上記の平均年収に当てはめると、20代前半男性社員の平均賞与は年間約40万円程度、50代前半男性社員の場合は年間約81万円程度になります。20代~60代の年代別平均ボーナスは男女による差も見られるため、次の項で詳しく紹介します。
(参考:厚生労働省|平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況、国税庁|平成30年分民間給与実態統計調査 )
男女別の平均ボーナス
労働基準法には、性別を理由に賃金の差を設けないことが明記されています。しかし、実際は社内での役職や勤続年数の違いなどにより、男女で賃金やボーナス支給額には差があります。そこで、「平成30年賃金構造基本統計調査」と「平成30年分民間給与実態統計調査」をもとに男女別の平均年間ボーナス額を算出しました。
男性社員の場合(ボーナスは年収の19.8%として計算)
20代前半
平均年収 212万6,000円
平均ボーナス額 42万948円
20代後半
平均年収 247万9,000円
平均ボーナス額 49万848円
30代前半
平均年収 289万4,000円
平均ボーナス額 57万3,012円
30代後半
平均年収 325万2,000円
平均ボーナス額 64万3,896円
40代前半
平均年収 358万7,000円
平均ボーナス額 71万226円
40代後半
平均年収 394万9,000円
平均ボーナス額 78万1,902円
50代前半
平均年収 426万円
平均ボーナス額 84万3480円
50代後半
平均年収 419万5,000円
平均ボーナス額 83万610円
60代前半
平均年収 300万6,000円
平均ボーナス額 59万5,188円
60代後半
平均年収 258万8,000円
平均ボーナス額 51万2,424円
女性社員の場合(ボーナスは年収の16.3%として計算)
20代前半
平均年収 206万5,000円
平均ボーナス額 33万6,595円
20代後半
平均年収 229万6,000円
平均ボーナス額 37万4,248円
30代前半
平均年収 243万4,000円
平均ボーナス額 39万6,742円
30代後半
平均年収 253万6,000円
平均ボーナス額 41万3,368円
40代前半
平均年収 264万1,000円
平均ボーナス額 43万483円
40代後半
平均年収 268万7,000円
平均ボーナス額 43万7,981円
50代前半
平均年収 270万6,000円
平均ボーナス額 44万1,078円
50代後半
平均年収 266万5,000円
平均ボーナス額 43万4,395円
60代前半
平均年収 222万6,000円
平均ボーナス額 36万2,838円
60代後半
平均年収 208万7,000円
平均ボーナス額 34万181円
男女ともに、もっとも年間ボーナス平均額が高くなったのは50代前半。社内でも上役に据えられることが多いためだと考えられます。どの年代においても男性のボーナス平均額が女性よりも高くなっており、年齢が上がるにつれてその差は大きくなる傾向にあることが分かります。
(参考:労働基準法、厚生労働省|平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況、民間給与実態統計調査 )
企業規模別の平均ボーナス
企業規模別に平成30年年末賞与を見てみると、企業の規模が大きくなればなるほどボーナス額も上がっていることがわかります。従業員数が500人規模の企業では1人あたり66万6,695円ですが、30~99人規模の企業では1人あたり34万3,981円となっており、およそ2倍の差が見られます。
(参考:厚生労働省|毎月勤労統計調査 平成31年2月分結果速報等 )
学歴別の平均ボーナス
ボーナス金額は学歴によっても違いが見られます。「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、賃金は大学・大学院卒がもっとも高く、続いて高専・短大卒、高卒の順で低くなるという結果となっています。
男性の場合、大学・大学院卒の平均年収は400万5,000円。前項のようにボーナスの割合を年収の19.8%だと仮定すると、年間79万2990円がボーナスになります。一方、高専・短大卒の平均年収は313万8,000円なので、ボーナスは年間62万1,324円。大学・大学院卒に比べ、約16万円低くなっています。
(参考:厚生労働省|平成30年賃金構造基本統計調査 結果の概況 )
新入社員の平均ボーナス
新入社員の場合、入社後初めてのボーナスは減額もしくは寸志扱いになることがあります。これは、ボーナス査定期間の一部しか在籍していないためですが、会社によっては中途入社の社員も同様の扱いになることがあります。そのため、新入社員の初ボーナスは年末賞与となることが一般的です。初支給の賞与は、月給の1か月分程度が相場と言われています。
「平成30年賃金構造基本統計調査(初任給)」によると、平成30年6月分の新入社員給与は平均20万6,700円ですから、ボーナスの平均額も約20万円だと考えてよいでしょう。
(参考:厚生労働省|平成30年賃金構造基本統計調査(初任給)の概況、新入社員の気になる夏のボーナス平均額【20代・30代別】
ボーナスが高い企業ランキング
ボーナスは会社の業績にも左右されます。『会社四季報2019年2集春号』のランキングから、2018年のボーナス支給額が高かった企業ベスト5をご紹介します。
1位:東京エレクトロン(546万8,000円)
2位:ディスコ(482万7,000円)
3位:アドバンテスト(415万7,000円)
4位:双日(370万5,000円)
5位:大本組(366万8,000円)
トップ3になったのはいずれも半導体関連企業。業界全体が勢いづいていることを感じさせる結果となりました。4位の双日は、機械や医療などを幅広く手掛ける総合商社、5位の大本組は建設関連企業です。そのほか、8位に鹿島、10位に森組がランクインしており、オリンピック前の建築物需要の増加が追い風になっていると考えられます。
(参考:東洋経済ONLINE|「ボーナス」200万円超えの上位100社ランキング)
公務員のボーナス平均
ボーナスが支給されるのは会社員だけではありません。ここでは公務員のボーナス平均額をご紹介します。
国家公務員のボーナス平均
国家公務員のボーナスは期末手当と勤勉手当の合計額となり、2019年は4.45月分の月給が年2回に分けて支給される予定です。2019年夏季賞与平均額は約67万9,100円で、昨年度より約4.1%増加しました。金額が上がった理由としては、2018年8月に出された人事院勧告により、期末手当と勤勉手当の支給月数がわずかに増加したことが挙げられます。
参考:内閣官房内閣人事局|国家公務員の給与、内閣官房長官人事局|令和元年6月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給、朝日新聞デジタル|公務員のボーナス、平均67万9100円 昨夏より増額 )
地方公務員のボーナス平均
地方公務員のボーナス額は、国家公務員のボーナスを基準に決められています。地方自治体によって違いはあるものの、平成30年における一般職員の年間ボーナス平均額は161万6,098円となりました。
(参考:総務省|給与・定員等の調査結果等「期末・勤勉手当の支給状況」)
自治体別 ボーナス支給額ランキング
自治体別に一般職員の平成29年年間ボーナス支給額を見ていくと、もっとも高いのは大阪府の178万6,100円。そして、東京都(173万5,300円)、三重県(173万3,000円)と続く結果となりました。一方、もっとも支給額が低かったのは鳥取県の132万9,200円。1位の大阪府と比べると、約46万円も低くなっています。
(参考:総務省|給与・定員等の調査結果等「平成29年 地方公共団体別給与等の比較」 )
ボーナスがない企業も多い
ボーナスの支給は義務ではないため、すべての会社で必ず支給されているわけではありません。一見損をしているようにも思えますが、ボーナスがないことによるメリットも存在まします。では、一体どんな企業でボーナスが支給されないのか、そのメリットやデメリットを含めて見てみましょう。
ボーナスがない企業の特徴
業績悪化等の理由により資金繰りが悪化してしまうと、ボーナスを支給することができない場合があります。しかし、中には会社の業績が好調であるにもかかわらずボーナスが支給されないケースもあるのです。
例えば、給与を年俸制にしている会社はボーナスがない場合がほとんどですが、ボーナス分を含んだ年俸を12分割したものを月給として支給しています。そのため、「ボーナスがない=年収が少ない」とは言い切れません。
ボーナスがない企業のメリット
・安定した収入を得られる
ボーナスは大きな収入源ですが、会社の業績などによって支給額が増減します。そのため、年収を予想しづらいこともあるでしょう。
しかし、ボーナスがない企業であれば、月給×12か月分がそのまま年収になるため、生活の計画が立てやすくなります。また、毎年安定した収入を得られることは、社員にとってメリットだといえるでしょう。
・残業手当が高い
残業手当など、基本給以外の手当は月給をもとに算出されます。そのため、結果的にボーナスをもらうよりも収入が高くなる可能性もあるのです。
ボーナスがない企業のデメリット
・社員のモチベーション維持に工夫が必要
ボーナスは社員にとってモチベーション維持の手段でもあります。ボーナスがない企業はその分月給を上げるなど、社員が会社で働き続けたくなる工夫が必要になるでしょう。
ボーナスの使い道
ボーナスは、毎日頑張っている自分へのご褒美として、普段とは違う用途に使う人も多いでしょう。ここでは「第35回 Ponta消費意識調査 2019年6月」を参考に、主なボーナスの使い道をご紹介します。
貯金
ボーナスの使い道で6年連続1位となっているのが貯金。将来の生活を見据えてお金を貯める人が多いようです。特に、40代~60代以上は「老後の生活への備え」のために貯金する人が全体の約6割を占めました。
ボーナスを貯金に回す人の中では、ボーナスの50%以上を貯金するつもりと回答した人は全体の約6割。浪費せず、堅実に蓄えようとする傾向が見られます。
旅行
ボーナスの使い道第2位は旅行です。宿泊を伴う、少し長めの旅行に使う人が多くみられました。仕事で疲れた体や心を癒す、普段はなかなかできない家族旅行をするなど、特別な体験にボーナスを使うのもいいでしょう。
家電などの買い物
家電などの購入費用にボーナスを回す人もいます。特に、エアコンやパソコンなどの高価な家電を買い替えるときの資金源として、ボーナスを頼りにしている人も多いようです。
しかし、頻繁に買う物ではないため、使い道の割合としては低めとなっています。
ローンの返済
ローンの返済方式にボーナス払いを採用している場合、強制的にボーナスの使い道が決まってしまいます。新しく物を買うわけではないのでワクワク感は薄れるかもしれませんが、今使っている車や住宅などを維持する上ではとても大切な用途です。
しかし、ローンの返済にボーナスを使う人は6年連続で減少しており、金額が安定しないボーナスを返済にあてるのはリスクが高い、という見方が浸透していると考えられます。
(参考:株式会社ロイヤリティマーケティング|第35回 Ponta消費意識調査 2019年6月、Allabout 2019年夏ボーナス 使い道ランキング)
ボーナスに関するQ&A
ボーナスに関しては「手取りが少ない」、「退職や転職への影響はあるのか」など、様々な疑問を抱いている方もいるでしょう。ここでは、ボーナスに関する素朴な疑問にお答えします。
ボーナスは額面通りもらえる?
ボーナスの支給額と実際の手取り額はイコールではありません。毎月の給料と同じく、社会保険料、雇用保険料、所得税が控除され、残りの金額が手取りとなります。ただし、ボーナスは住民税の対象とならないため、住民税が引かれることはありません。
社会保険料とは、健康保険料や厚生年金保険料、40代以上の場合は介護保険料などを指します。厚生年金保険料はボーナス支給額の0.915%、雇用保険料はボーナス支給額の0.3%です。所得税は年収によって異なりますが、ボーナス支給月の前月給与をもとに計算されます。また、健康保険料は加入している組合の保険料率をボーナス支給額にかけ、その50%を支払います。
計算が面倒だという人は、ボーナスの支給額に0.8をかけると、おおよその手取り金額を計算することができます。
(参考:転職Hacks|ボーナスにも税金はかかる?、国税庁|平成31年(2019年)分 源泉徴収税額表)
ボーナスは年収に含まれる?
ボーナスは年収に含まれます。年収とは、会社が従業員に対して支払う金額すべてを指しているため、ボーナスだけでなく、特別手当や補助金も含んでいます。この年収から、税金や各種保険料などが引かれるため、源泉徴収票における年収と実際の手取りが異なるのはこのためです。
退職時期によってボーナスは減る?
退職時期がボーナス支給日直後の場合、支給額が減る場合もあります。これは、会社が従業員の将来的な業績アップを期待して、在職中のボーナス支給金額を高く設定していることがあるためです。しかし、就業規則に「ボーナスは月給の2か月分」などの明確な規定がある場合、退職を理由に減額することは原則として不可能となっています。もし、支給額に納得がいかない場合は人事に説明を求めてもいいでしょう。
転職してすぐにボーナスをもらうことはできる?
転職時期によってはボーナスをもらえないこともあります。新入社員と同じく、会社への在籍期間が短い場合は、寸志が支給されることも。しかし、転職後であってもすぐにボーナスを全額受給できる企業もあるので、まずは転職先の就業規則を確認してみましょう。
仕事のモチベーション維持にも一役買っているボーナス。平均額と実際の支給額は異なりますが、もらったときには誰でも嬉しいものですよね。毎月の給料とは別に、自分や家族などのために有効活用してはいかがでしょうか。