竹中平蔵が語るリーダー育成論「竹中流21世紀リーダー塾」の目指すもの

著者名ハシ ビロコ
竹中平蔵が語るリーダー育成論「竹中流21世紀リーダー塾」の目指すもの

いつか経営者や政治家になりたい。ただ漠然とそんな目標を抱いていないだろうか。しかし、組織を導くリーダーには、さまざまな素質が必要だ。さらに社会情勢によって、求められるリーダー像は刻一刻と変化していく。 

そんな激動の21世紀の中でリーダーを目指す人の背中を押してくれるのが、「竹中流21世紀リーダー塾」。元経済財政政策担当大臣で、現在は東洋大学や慶応大学で教鞭をとる竹中平蔵氏が主宰するオンラインサロンだ。

 自らの経験をもとに、グローバルな視野でリーダー教育に携わる竹中氏。今回は、オンラインサロンの狙いや今度の展望などを直接伺った。さらに月に1度、都内で開催されるリアルゼミナールに潜入。熱い議論の様子をお伝えする。

「もし自分がリーダーだったら?」を現実的に考える

竹中流21世紀リーダー塾」は、オンラインサロンではあるものの、直に議論を交わすリアルゼミナールには特に力を入れているという。その狙いについて、竹中氏はこう語る。

 

竹中平蔵(以下、竹中):「絶対的な正解が存在しないテーマを扱うときは、双方向でやりとりしてお互いに刺激を受けることが大切だと思っています。リアルゼミナールもそれを狙いにしているんです。 

リーダーシップ論については、多くの書籍が出版されているものの、確立された理論はありません。また、状況によって、どのようなリーダーが求められるかも異なります。

 そこで、私のリアルゼミナールでは、今目の前にある問題を具体的に議論します。『みなさんがリーダーだったらどう対処する?』という問いに対して、自ら実践的な対処方法を考え、さらに過去のリーダーの行動について議論することで刺激を与え合っています。」

 

オンラインサロン受講生は、会社経営者、政治家の秘書、ファンド経営者などさまざまだ。年代は30代が中心で、将来リーダーになることを見据えている参加者が多いという。 

求められるのは決断力のあるリーダー

農耕社会だった日本では過般来、コンセンサスを重視するリーダーが重宝されてきた。しかし、21世紀に求められるリーダー像とは、人を導く力を持った、舵取りのできるリーダーなのだという。

 

竹中:「進路もわからない荒波の中にいるときにコンセンサスをとっていては、船が沈んでしまいます。その場合は、すぐに進路を決断して、船員を導くことのできる勇敢なリーダーが必要になるんです。ソフトバンクの孫正義社長や実業家の堀江貴文氏は、まさにそうしたリーダーの一例ですね。

ただし、リーダーはみんなの力を借りないとなにもできません。協力してくれる人にどうインセンティブを与えるかを考えることも重要になります。」

いざというときのため、ゴミ箱をいっぱいに

人はいつリーダーになるかわからない。身に着けた知識がすぐに役立つとは限らないが、今から蓄積することは無駄ではないと、竹中氏は指摘する。 

 

竹中:「たとえば、あなたが社長になるとします。しかし、いつ社長になるのか、具体的なスケジュールは決まっていません。突然社長が辞めて、次の社長にあなたが任命されるなど、カオスの中で急にチャンスを得ることもあるでしょう。

流れはどうあれ、あなたが実際に社長になり、社長としてのアイデアを求められたものの、なかなかいい案が思いつかない。そんな時、ゴミ箱をひっくり返してアイデアを探すことがあります。これはGarbage-can theory(ゴミ箱理論)と呼ばれており、過去のリーダーたちが実践してきた方法です。

 常にゴミ箱をアイデアや知識でいっぱいにしておけば、いざというとき助けになってくれる可能性がありますよね。つまり、ゴミ箱理論は、さまざまなことについて常に考えておけ、という示唆なんです。」

話し上手なリーダーであれ

リーダーはただ頭を働かせればいいわけではない。関係者を納得させるためのコミュニケーション能力も重要だと竹中氏は言う。

 

竹中:「リーダーが周囲を動かすために必要な能力は、大きく分けて3つあると思います。

1つ目は、クリティカルシンキング、つまり、批判的に考えて分析すること。2つ目は、クリエイティブシンキング、批判だけでなく、じゃあどうするのかを提案すること。最後は、エフェクティブコミュニケーション、人を動かすためのコミュニケーションです。関係者に語って伝える力があれば、自分ひとりだけではできないことも実現できます。

今活躍している経営者はみんな話がうまいんですよ。だからリアルゼミナールでも、発信力を伸ばすために発表の時間を設けています。参加するうちに、みなさん上手くなっていますね。」

リアルゼミナールを大阪でも

東京のみに限らず、大阪でもオンラインサロンの活動を広げたいと、自身の思いを語ってくれた竹中氏。今後、オンラインサロンはどのように展開されていくのだろうか。 

 

竹中:「大阪でもリアルゼミナールを開催するつもりです。そうしなければ意味がありません。

今は、インターネット上に情報があふれていて、供給量が無限大の社会になっています。そんな中に、私が1滴だけ情報を落としてもつまらないじゃないですか。だから、私はブログなどもやっておらず、できる限り直に情報を伝えたいと常に考えています。

インターネット上にある情報は質のいいものよりも、そうでないもののほうが多いかもしれません。だからこそ、リアルで議論して、情報を選別する力や、必要ない情報を排除する力を身に着けてほしいんです。

 これはリーダーだけでなく、リーダーについていくフォロワーにも必要な能力です。ひとりひとりがリーダーにアドバイスできるようなマインドセットを持つことによって、組織の質が向上します。」

 

東京に比べると、地方ではリーダー教育の機会が少ない。自身も関西出身である竹中氏は、以前から大阪でリアルゼミナールをやりたいと思っていたそうだ。

 

竹中:11月に開催されるNEST KANSAI(新経済サミット)にスピーカーとして招待されているので、それに合わせてリアルゼミナールの募集をかけてみたいと思っています。

関西の方は、東京に比べるとこうしたゼミに参加できる機会が少ないですよね。私が関西出身なので、前々から関西でもリーダー教育の機会を作りたいとは思っていました。今は、いよいよ実現に向けて準備をしています。 

関西では、ベンチャービジネスをしている方がすごく盛り上がっているので、リアルゼミナールをやれば東京会場とはまた違った若い年代の方も来てくれるかもしれません。多様なリーダーシップを扱いたいと考えているので、ぜひさまざまな方に来てほしいですね。」

議論が白熱!サロンメンバーが主体のリアルゼミナール

議論の中からリーダーに必要な力を見つけ、それを養っていくためのリアルゼミナール。実際に参加してみると、リーダーに必要な力が自然と身につく場なのだと実感できた。 

リアルゼミナール前半では、最新トピックスをもとに全員で議論をする。扱うトピックは、オリンピックやパラリンピックに向けて東京をよくするためになにをするか、次の選挙でどんな公約を掲げるか、など多岐にわたった。さらに後半では、少人数のグループに分かれて議論を行い、その考えを深めていく。

 

この日は、1012日に日本を直撃し、各地に大きな爪痕を残した台風19号についての話題から議論がスタートした。 

台風前日、コンビニやスーパーで空になった棚を目にした人は多いだろう。一方で、在庫を十分に確保していた店舗も見られた。その要因として、大手コンビニチェーンにおける流通システムの違いに着目した竹中氏。災害対策と流通、という多角的な視点でテーマに切り込んだ。

すると受講生も、この度の台風で明らかになった課題を次々と挙げていく。リアルゼミナールには海外出身の受講生も多く参加しており、外国語サポートは十分だったか、他国に比べると日本は本当に安全なのかと、グローバルな視点でも議論は深まっていく。

疑問点があるとすぐにほかの受講生が意見を述べ、ときおり竹中氏も解説を加えていく。議論はかなりスピーディーに展開されるが、意外にも穏やかな雰囲気で、適度にジョークを交える場面もあった。

さまざまな課題が挙がったタイミングで竹中氏は、過去に日本を襲った災害のデータをもとに、国土強靭化について問いを投げかけた。

1959年の伊勢湾台風を期に制定された災害対策基本法。それ以降、制度や技術の進歩によって、死者の数は減少傾向にあったという。中には、2011年に発生した東北地方太平洋沖地震による津波のように、想定外の脅威によって被害が大きくなってしまったケースもあるものの、その度に対処法を考え実践することで、状況を改善してきた。

 大きな災害が起きてしまった際は、被害を把握することはもちろん、将来同じことを繰り返さないための対策に目を向けることが重要だと指摘する竹中氏。まさに、リーダーに必要なクリエイティブシンキングが発揮される場面だろう。 

後半では、56人ほどの小グループに分かれ、「もし自分が防災担当大臣だったらどのように国土強靭化を進めるか」について議論を行う。グループに分かれる直前に10分間の休憩が設けられたが、受講生たちは休憩の間もテーマについて意見を交わし、自然とグループごとに議論を始めていた。この場では、全員がリーダーであると同時にフォロワーでもあるのだ。 

竹中氏はグループごとの議論には口を挟まず、静かに耳を傾けていた。一方的に教えるのではなく受講生自身に気づかせ、さらに竹中氏自身も気づきを得るのだという。主体はあくまでも受講生。リアルゼミナールだからこそ、こうした実践的なリーダー教育が可能になるのだろう。

10分の議論後、各グループの代表者が意見を発表する。あるグループが「コンパクトシティー構想を進めることが国土強靭化につながる」と述べると、すかさず「引っ越したくない人はどうするのか」、「地方の農地はどうするのか」などの質問が飛ぶ。竹中氏も質問し、提案をより掘り下げていく。約2時間にわたって行われたリアルゼミナールだが、その間議論の声が途絶えることはほとんどなかった。

 

最新のテーマを議論し、考えを深めていく「竹中流21世紀リーダー塾」。議論の内容は、すぐに役立つものばかりではないかもしれない。しかし、竹中氏が教えてくれたゴミ箱理論の通り、知識や能力を貯蔵しておけば、いつか自分を助けてくれる大きな力になることだろう。 

また、竹中氏が長年リーダー教育をして培った経験や知識が詰まった書籍「結果を出すリーダーはどこが違うのか」が1023日に発売された。政治家としての小泉純一郎氏、スポーツのリーダーとしての王貞治氏など、多様なリーダーを分析した読み応えのある1冊だ。そして、この書籍の製作にあたっては「竹中流21世紀リーダー塾」のサロンメンバーが竹中氏と小泉氏の対談を企画しただけでなく、本の編集にも携わっているのだそう。まさに、オンラインサロンがあったからこそ誕生した書籍と言っても過言ではない。

リーダーの条件を知りたい人は、手にとってみてほしい。

結果を出すリーダーはどこが違うのか (幻冬舎単行本)

今後は大阪でもリアルゼミナール開催が予定されている。将来リーダーを目指している人は、オンラインサロンに参加し、ほかの受講生や竹中氏から刺激を受けてみてはいかがだろうか。

竹中 平蔵 - 竹中流21世紀リーダー塾 - DMM オンラインサロン
竹中 平蔵 - 竹中流21世紀リーダー塾 - DMM オンラインサロン竹中流21世紀リーダー塾(サロンオーナー:竹中平蔵)は、理論・実務両面からグローバル社会の現状と今後の展望を学び、実践する創発型コミュニティ。学校や各種セミナーが教えない本物の「21世紀型リーダー教育」を提供します。
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