小島慶子が生み出す“新しいオンラインサロンのかたち”

著者名CANARY 編集部
小島慶子が生み出す“新しいオンラインサロンのかたち”

TBSのアナウンサーとして活躍した後、エッセイスト・タレントとしてテレビ、ラジオ、雑誌、Webなど、幅広いメディアで精力的な発信を続ける小島慶子さん。2014年には夫の退職に伴い、家族と共にオーストラリアへ移住。小島さんが日本で出稼ぎする日豪往復生活や、“大黒柱母さん”としてのライフスタイルも注目を集めています。

そんな小島さんが今年4月、DMMオンラインサロンにて『つながるサロン』をスタートしました。そして、1212日にはサロンメンバーに加え、一般参加も可能な初のスペシャルイベント(その名も「男らしさとナイト」!)が予定されているとのこと。

「イベントを皮切りに、オンラインサロンというクローズドな空間を開いていきたい」と語る小島さんに、その狙いと“新しいオンラインサロンのかたち”について聞きました。

ラジオとオンラインサロンの意外な共通点

――オンラインサロンをはじめたきっかけを教えて下さい。

 世の中のことに関心のある人が安心してつながれる場所を作りたいと思ったんです。私も子どもを生んでから「彼らの生きる社会をもっと住みやすいところにしたい」と思ってソーシャルセクターでの活動に関心を持ち、さまざまな社会課題の解決に関わる取り組みに参加するようになりました。そこには自殺防止支援や子どもの貧困、性暴力やハラスメントなどの問題を解決しようと、いろんな経歴を持つ優秀な人たちが集まっていました。

 まったく異なるバックグラウンドを持ちながら志を同じくする人たちと知り合えたことで、「世の中って捨てたもんじゃない!」と心から思えたし、同時に、長く放送局で働いていた私が最先端だと思っていた メディアで働く人の世界”がどんなにちっぽけで狭いものかを思い知ったんです。仕事とは違う交流の場に参加して、まさに目を開かれたんですね。

 一方で、私は長年ラジオ・パーソナリティをやっていたんですが、ラジオのリスナーとは特別な繋がりを感じていました。リスナー同士でも自然とコミュニティが出来上がっていて、私抜きでもオフ会なんかを開いて交流を深めているんですよ。漫画家、元自衛官、ドライバー、看護師、シングルマザー、病気療養中の方など、普段の生活の場は全く違う人々が、同じ番組を聴いて笑ったり泣いたりしている親密なコミュニティでした。ラジオを通じてすごく不思議な空間が出来上がっていたんです。いまだにリスナーが声をかけてくれることがあります。かなり砕けた話もしていた番組なのに、タクシーの運転手さんや学校の先生、霞ヶ関や財界関係者などいろんなところに元リスナーがいることがわかって、こんなに様々な人たちが、毎日私の喋りを聴いてくれていたのかと驚いています。

 中には「亡くなった兄が入院中にとても楽しみにしていたのが小島さんの番組でした。私がこうして小島さんと話せたことを兄はとても喜んでくれると思います」と言って下さった方もいます。誰かに話しかけるって、たとえ電波越しであってもかけがえのない縁を結ぶことなんだなとしみじみ嬉しかったです。

 当時はまだ「格差」「分断」みたいな言葉は今ほど話題になっていなかったけど、ラジオは昔から、普段出会えない人同士や、ひとりぼっちの人と世の中をつなぐ空間を提供していた。そういう意味で「ラジオは最先端のメディアである」という思いは昔から持っていました。そんな元リスナーたちが今でもたくさんいらっしゃるし、それとは別に私のエッセイを読んだり講演を聴いて下さる方々もいて、それぞれに「小島慶子はおもしろい」と思って下さっている。だったらその人たち同士がつながったら楽しいかも!と思ったんですよ。どうも私、マッチング本能が強いみたいで、友人や知人どうしもすぐ引き合わせたくなっちゃう。そこから新しい関係が生まれて、私の手を離れてひとりでに育っていくのを見るのがとても楽しいんです。

 多少なりとも私に興味を持ってくださる方々は、私が関心を寄せる事柄に興味を持っている方々でもあるので、きっと話も合うだろうし、自分がハブになって新しいコミュニティができたらいいなと思ったんです。

オンラインサロンを通して色々な人をつなげたい

――名前の通り「つながる」がテーマなんですね。

 私のサロンは、ざっくり言えば「小島慶子的なものに興味関心のある人同士が出会うための場」です。「成功の秘訣教えます!」とか「アナウンサー試験必勝法!」とか「芸能界の裏話教えちゃいます」とかじゃないですから、割と地味ですよね(笑)。でも、自分が関心を持っていることをオンラインでもオフラインでも安心してシェアできる仲間が欲しい!と思っている人は少なくないはず。私は幸いなことに仕事柄そのような出会いがたくさんありますが、多くの人は職場と友人と近所と家族と習い事となどのある程度限られた人間関係の中で生活しているし、いろんな柵(しがらみ)もある。安心して話せる、って実はあまり近い関係ではない方が可能なのかもしれません。たまに顔を合わせるけど深入りしすぎない距離感が一番心地いい。サロンではそういうゆるやかな交流の場を作りつつ、いろいろな専門家との出会いの場も提供したいです。

 さっき「私が関心を寄せる事柄」と言いましたが、具体的には「生きづらさ」「働き方」「子育て・教育」「ジェンダー」「海外移住」「発達障害」などに興味を持って参加している方が多いですね。多様性と包摂の時代を指向しつつも、何が幸せなのか決めかねて不安を感じている人たち、という言い方もできるかも。その不安を克服するために何かにすがるのではなくて、人との出会いや学びによって、ささやかでもいいから建設的なアクションをしたいという気持ちのある人びととも言えます。私自身がそうですし。

 そうそう、サロンのメンバーとして出会った桐朋小学校の教諭、星野俊樹さんは熱心にジェンダー教育を行っている先生で、『BuzzFeedJapan』などでも取り上げられている方です。サロンの中でも精力的に発信して下さっています。「女は弱くてダセえ」と言ってくる男子に憤るクラスの女の子の日記を発端にジェンダーの授業をされたことを投稿してくれたり、私自身も勉強になることばかりです。実は、星野さんとは共通の知人がたくさんいたことも後にわかって、まさにこのオンラインサロンで「つながった」んですね。

 私自身TwitterやFacebookはやってますが、こういった有料の双方向サービスは初めての試みです。手探りですすめていくなかで、たくさんの発見がありました。それを特に強く感じたのは、オフ会を開催したときのことです。私の友人でもある有名モード誌の編集者もサロンのメンバーになってくれていたのでオフ会に参加したんですが、とても喜んでくれて。

 というのも、彼は東京のど真ん中でファッションどっぷりの生活をずっと続けてきた人なので、実はすごく世間が狭いんですよね。オフ会には様々な職業や地方の方がいらっしゃるので、普段まったく話を聞く機会がない人たちと話せて、めちゃくちゃ楽しかったそうなんです。それを聞いて、「ああ、やって良かったな」と思いました。

 普段会う機会のない人と会って世間話をするのって、結構大事だと思います。今は社会の分断が進んでいると言われていますが、情報の取り方も多様化して、自分の関心のあることしか目に入らないようになっていますから、自分にとっての“世間”は同じ風景の中にミルフィーユのように何層にも重なった無数の“世間”のうちのたった一層でしかないということを忘れがちです。ああそうか、自分とは全然違う景色を見ている人もいるんだよな!って気づくと、ちょっと世界が違って見える。

 極端な例になりますが、以前、吉本芸人の闇営業問題が連日テレビやネットで取り上げられていた時に、一方ではDJ集団“レペゼン地球”のリーダー、DJ社長のヤラセ動画が大ニュースになっていました(※)。でも、メディアの第一線で活躍している人たちの中で「レペゼン地球」や「DJ社長」について知らない人もたくさんいたんですよね。実は私も、ある知人に教えてもらうまで全く知りませんでした。で、周りの人に聞いてみたんですよ、レペゼン地球知ってる?って。すると、芸能事務所の若いスタッフは詳しく知ってるけど、テレビ局の中堅社員は全く知らなかったりする。官僚も新聞記者も知らない、東京の中心部でメインストリームにいる人はほとんど知らないです。でもさすが、新聞の世論調査部の人は知っていました(笑)。一元的な世論を作り出すとも言える仕事の人が、実は全く異なる世論が何層にも積み重なっていることをよくわかっているというのはなんとも皮肉な気がしますが・・・。

 みんな自分のことで手いっぱいで、なかなか世間を広げる機会はありません。私もいろいろな人と知り合う機会があるとは言え、やはりメディアの世界に近いところや、東京を中心とした付き合いになりがちです。一方で、私の書いたものや話したことに触れて下さる方は本当に幅広く、そうした開かれたチャンネルを持っていることは、とても恵まれていると思います。だからみんなをつなぐ場を作りたいと思ったんです。

 サロンにはいろんな専門家や面白い取り組みをされている方がいらっしゃるので、イベントという形で会員でない方にも知見をシェアしたいし、まだ著名ではないけれど面白いことをしている人や素敵な視点を持っている人が、サロンのイベントを通じて世に広く知られていくようにできたらいいなとも思っています。ゆくゆくはNPOなどとコラボして、チャリティイベントもしたい。いろんな人を混ぜて、新しいことが生まれるきっかけにしたいですね。

You Tubeを中心に活動しているDJ集団「レペゼン地球」のリーダー・DJ社長が、事務所の新人女性を売り出すための話題作りとして、この女性に「DJ社長からパワハラ・セクハラを受けている」という旨の嘘のツイートをさせてネットの注目を集め、のちに動画でツイートは嘘であったとバラしてウケを狙ったものの、激しい非難や抗議を受け、ドーム公演が中止になるなどした事件。後日、謝罪動画をアップしてハフィントンポストの取材受けたDJ社長は「#MeTooもセカンドレイプという言葉も知らなかった」と述べて、再び批判された。

小島慶子を中心に集う、各界のゲストたち

――「混ぜる」ための試みのひとつが、1212日の初イベントということでしょうか。

 仕事で知り合った方や友人・知人の中には専門家も少なくないので、自分自身でキャスティングしてイベントをやりたいなっていう思いはずっとあったんです。私的な交流会を企画して幹事をやったりして、人と人が出会うのって本当に豊かだなと実感していたし。

 サロンを始めてから、私と会員さんだけの閉じた空間にするよりも、イベント開催で外に開く形にした方が出会いが広がると思いました。「小島慶子のサロンに入っていると、面白いゲストが来るトークイベントに格安で参加できて、なおかつその後のオフ会でいろんな人とのつながりもできる」ってのはなかなかいいかもしれないぞ、と。イベントの参加費はサロン会員は500円、一般参加の方は2000円。会員は懇親会にも参加できるので、圧倒的にサロン会員のほうがお得ですよ(笑)。さらに会員なら、都合が合わなくてイベントに参加できなくてもライブ配信やアーカイブでの視聴もできます。

 満を持しての第一回は、男性学の専門家で大正大学心理社会学部准教授の田中俊之さんを迎えて、「男らしさナイト」というトークイベントを開催します。田中さんとは『不自由な男たち〜その生き辛さはどこから来るのか』(祥伝社新書)という共著を出しているんです。イベントでは「『男は男らしくあらねばならない』という『男らしさの呪い』の正体とは何か。それについて語ることがなぜ今、重要なのか」について田中さんに詳しく伺いながら、なるべく敷居を低くして男性の生き辛さについて考察します。誤解されがちなのですが、男性の生き辛さに注目することは決して「男性だってジェンダーの押し付けの犠牲者なのだから、女性差別をする男性を大目に見てあげよう」ということではありません。構造的にも歴史的にも女性の方が圧倒的に理不尽な目にあってきたことは確かです。そうした男尊女卑、女性蔑視の背景には、男らしさの重圧によって男性が抱えた不安や不満が、差別や暴力という形で、より弱い立場の女性に向けられてきたという面もあるでしょう。男女が互いを責めて憎み合うだけでは何も生まれないので、怒るべき点には怒りつつ、誰もがジェンダーの押し付けから自由になれればめでたいよねという視点が必要ではないかと思います。

 トークには、サロンメンバーの桐朋小学校教諭・星野俊樹さんと臨床心理士・村中直人さんにも加わって頂きます。初等教育の現場で性別役割分業のすりこみを解体する取り組みを実践されている星野さんと、発達障害をニューロダイバーシティ(脳神経の多様性)という観点で捉えようと唱えていらっしゃる村中さん。発達障害の人たちが抱えているものは、「環境から“こうであれ”と言わるものとの相克」という言う点で、男らしさ・女らしさのしんどさと通底するものがあります。お二人には、何が「普通」かを一つに決めようとする思考によって様々な生き辛さが生み出されるという視点から、ジェンダーの「らしさのくびき」がいかに私たちを不自由にしているかを語って頂きます。男性はもちろん、女性にもぜひいらして頂きたいです。他ではなかなか聞けない議論が聞けますよ。会場の皆さんからもご意見ご質問を頂きながらワイワイやれれば!

 これまでもいろんなところで書いて来ましたが、私には男社会で働く女性として理不尽な目にあった経験も、一家を養う大黒柱としてしんどい思いをした経験もあるので、女らしさの押し付けと男らしさの押し付けのどちらもわかる気がするんです。そういうハイブリッドな女性は身の回りにも結構いて、だからこそ今は、男女が「らしさの押し付け合いは無理ゲーだからやめようぜ」と合意できるのではないかという希望も持っています。そのあたりをゲストの皆さんや会場の方にぶつけて話し合ってみたいなあと、楽しみにしています。

 

――今後のラインナップも楽しみです。

 有名無名にかかわらず、この人の話をぜひ皆さんに聞いて頂きたい!というとびきり面白い友人知人がたくさんいるので、アイディアはいろいろ温めています。どうぞお楽しみに。まだお会いしたことはないけどいつかお話ししたいと思っていた方にもご登壇いただけるように盛り上げていきたいですね。

 

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