ヘアメイクアーティストとして独立後、経営者、タレント、書家と数え切れないほどの活躍を見せている、美容家・IKKOさん。これまで、TV、ラジオ、書籍、ディナーショーと、多くの舞台で、仕事や人生のヒントとなる言葉を届け続けてきました。
そんなIKKOさんが主宰する3カ月限定オンラインサロン「毎日 One minute IKKO」が、2020年7月1日より始まります。オンラインサロンという新たなステージで、IKKOさんは何を伝えたいのか。その想いを伺いました。
新たなステージで、自分の言葉を届けたい
ーオンラインサロンを開設しようとしたきっかけを教えて下さい。
以前から、マネージャーにオンラインサロンの話は聞いていました。ただ、私はディナーショーのような、対面でのコミュニケーションが得意だったので、オンライン上で自分の想いをきちんと伝えられるかが不安だったんです。
ですが新型コロナウイルスによって、対面でコミュニケーションできる機会は減らすことを余儀なくされました。私にとって、1つの大切なステージが失われてしまったんですね。
この状況の中で、ファンの皆様との関係をどう築いていくべきか。そう考えた時、場所も時間の制限もないオンラインサロンでなら、自分の想いを皆様にお届けできるかもしれないと思ったんです。
そんなタイミングで、DMMの方から一緒にオンラインサロンをやらないかと相談を受けました。「一緒に仕事をしたいと私に価値を見出してくださるなら」と、オンラインサロンを始めてみることにしたんです。
ーオンラインサロンを3カ月の期間限定にしたのはなぜですか?
オンラインサロンという媒体が、私に向いているかはまだ分からないじゃない。だから、だらだらと続けて、私もファンの方も飼い殺しのようになってしまうのは避けたかったの。
3カ月の期間限定にしたとき、周りの方からは「オンラインサロンは長く続けた方がいい」と、反対の声も多くありました。ですが私は、じっくり時間をかけるタイプではありません。もしも、会員様が思うように集まらなければ、私はその程度の実力ということ。その時はスパッと終わらせようと考えたんです。
もちろん、想定以上にファンの皆様が集まってくださったなら、その声にはきちんとお応えしたいと思っています。
ー非常に慎重な姿勢で驚きました。多くの人々から支持されているIKKOさんでも、勢いにまかせて突き進まないんですね。
私、「自分を高く評価しすぎる」というのは、人生で一番みっともないことだと思うんです。もちろん、若いうちに見栄を張ることは必ずしも悪いことではないわ。ただ、年齢を重ねてなお、虚栄を張る姿勢は、とてもみっともないと感じます。これは決して、自分を卑下することではないの。
自分をよく見せることが上手な、賢い人もいますよね。でも、嘘や虚栄を重ねれば、自分の人生にも傷がついてしまう。50を過ぎた今、「恥ずかしくない生き方をしたい」と、私は常々思っているんです。
誤解をつくらない、正確に伝えるための「丁寧」のすすめ
ーオンラインサロンでは、どのようなコンテンツを発信する予定ですか?
最初は美容に特化した内容を発信していく予定だったの。だけど、美容をやるにはかなりストイックになってしまうので、毎日続けられて、もっと皆様に喜んでいただけるものはないか、と考えました。そこで、知り合いの方にも相談しながら思いついたのが「毎日1分IKKO」というものです。語呂合わせもいいわよね。
私は、いやなことや逆境が「人生に薪をくべる」ことにつながると思っています。諦めそうになりながらもチャレンジしたことが、爆発的なヒットになることがあるの。私もまだバラエティに慣れていなかった頃は、たくさん工夫しました。愛ある人達から、「こうしたほうがIKKOさんのキャラクターが活きるよ」と、アドバイスされたこともありましたね。
こうしたアドバイスや工夫のおかげで、自分にとって苦手だったことが最大の武器になる可能性もあります。見ていただいた方に、そんな気づきを与えられる1分発信。それを私のオンラインサロンのキーにしていきたいです。
ー「毎日1分IKKO」で伝えたい内容を、くわしく伺ってもいいですか?
そうね。まず、丁寧に生きていくことの大切さを伝えていきたいです。
実は、この取材の前に、ちょうどCMの声撮りをやってきたんです。私は昔からナレーションがとてもヘタでした(笑)。「言葉が尻切れとんぼになって魂がこもっていない」、「相手の耳に残らない話し方だ」と、よく言われました。それからボイストレーニングや声優の先生からレッスンを受けるようになり、日本語に欠かせない母音の表現や、言葉のリズム、身ぶりでの表現を学びました。
普通に声出しをしても、相手には届きません。どう表現するかで、言葉の伝わり方は大きく変わっていく。だから、どう伝えたいかを脳でシミュレーションして、言葉一つ一つを丁寧に伝えることが大切なんです。
ー自分の意図したことを相手に伝えるために、「丁寧」であることはとても大切なんですね。
日常生活でも同じよ。たとえば、隣の人が臭うのに、自分が臭いと誤解されることもあるじゃない(笑)。そういうことって、かなりたくさんあります。
とくに今はマスクをしているから、相手に感情を伝えられるのは目だけですよね。だから、感情がとても誤解されやすいんです。電話だって話し方、声のトーンひとつで「この人は怒っているのかな」と勘違いされてしまうこともある。思いもかけないところで誤解されるから、丁寧すぎるくらいがちょうどいいんです。
魔法のひと手間で、人生はもっと豊かになる
私、今度料理本を出させていただくんですが、タイトルに「魔法のひと手間」という言葉を使いたいと思っています。この言葉も、私のオンラインサロンでは重要なポイントにしたいなと。
ー素敵な言葉ですね。IKKOさんはどんなとき、「魔法のひと手間」の大切さを感じますか?
たとえば、感謝の伝え方。私の大好きなドラマで、花登 筺(はなと・こばこ)さん原作の『ぬかるみの女』という作品があります。戦後の高度経済成長期で、水商売に生きる女を描いたドラマなんですが、最近見返していて、とても印象的なシーンを見つけたんです。
主人公たちが電車で移動しているとき、ある子が「車掌の『ありがとうございました』を聞くと眠くなる」と言ったんです。主人公は、なぜ車掌さんの言葉を聞くと眠くなるのかを考えました。そして、車掌さんにとっての「ありがとうございました」は、台本のように毎日淡々と言い続けるだけの文章にすぎなかったことが原因だと気付いたんです。
彼女たちは「私たちの言葉も、車掌さんと同じ感覚になっていなかっただろうか」と考えました。そこで、相手にしっかり感謝の気持ちを伝えるにはどうすればよいかを話し合います。その結果、ドレスが汚れないように床に和紙を敷き、そこにひざまづいて感謝を伝えるという、彼女たちだけの接客方法を考えつきました。
その姿を見て、時代は違えど、私も自分なり感謝の表現をもう一度見直そうと思ったわ。
ー当たり前とされていることに、自分なりのひと手間を加えていくということですね。
自分のお部屋もそうね。毎日、自分の思う目標に向けてシミュレーションして、キーとなるポイントをしっかり組み立てる。それができれば、大抵の人は成功できます。だから三畳一間でも四畳一間でもいいから、自分なりのひと手間を加えて、自分にとっての完璧なスペースにしなければいけません。
成人すると、復習して反省する時間よりも、目標に向けてどうするかという予習のほうが、はるかに重要になります。それを考えられるお部屋を、ぜひ作ってください。
美しくかわいらしい「アゲグッズ」に込める想い
ほかにも、「毎日1分IKKO」では私の日常もお届けしたいと思っています。たとえば、お気に入りの「アゲグッズ」なども紹介していきます。
これは色味やかわいらしさがポイントだけど、美の観点に注目した作品も発信していきます。たとえばこれは、美川憲一さんからいただいたアンティークのお人形です。
ーどこか雰囲気を感じさせるお人形ですね。
そうなの!これはロサンゼルスの美川さんのご自宅で見つけたもので、私はどのインテリアよりも先にこのお人形に目がいきました。ずっと気にしていたら、美川さんから譲っていただけることになって。一流の作品には、作品を作った一流の職人さんの思いや、すぐれた審美眼でその作品を愛してきた先輩の思いが込められているから、独特の存在感や華がありますね。
丁寧に作られ、長年愛されてきた作品たちに、澄み切ったきれいな思いを込めて育んでいく。それが私の役目だと思っています。
巻き戻せる針と巻き戻せない針
私は、58年生きてきた中で、多くの感情を学びました。20代は常識の違い、30代は責任の違い、40代は本気の温度差の違い。その中では、パニック障害、過呼吸症候群にも悩まされました。そうして学んだことも、日々の生活に対するヒントとして、皆様に伝えていきたいですね。
ー50代を迎えた今、感じることはありますか?
人生には巻き戻せる針、巻き戻せない針があるということかしら。死ぬほど相手のことを好きになったとしても、永遠に2人の気持ちが続くわけではありません。お互いに関係を維持するために努力することが大切だけど、どちらかの気持ちが離れたら、元の関係値に戻ることはできないでしょう。
針を巻き戻せないなら、新しい関係を作るしかないわね。恋人や家族、大親友、パートナー。そうやって愛の形を変えていけば、かつての間柄を超える関係を築けると思います。大切な恋人ができたり、親になったりしたときには、私の言葉を思い出してみて。
IKKOと一緒に、人生観を語り合いましょう
ーIKKOさんのサロンに入りたいという方へ、伝えたいことはありますか?
人生観や人生談義が好きだけれど、人と話す機会がないという方、とくに若い方には見ていただきたいです。人生はシーソーゲームのようなもの。さまざまな時代の波が押し寄せ、残念だけど、ときに自分をマウンティングしようとする人も出てくるわ。時代の流れに翻弄されないように、人からマウンティングされないように生きていくには、エネルギーを発揮して努力するしかないと思います。
若い時は、自分にはまだまだ時間がたっぷりあると思うじゃない。私もそうだったけれど、40代半ばにさしかかったとき、「これ以上、人生で遠回りできない」と思ったの。50代になって、その思いはさらに強くなりました。年々失っていくものは増えていく一方だから、若いうちは努力して自分の好きなものに囲まれていたほうがいい。
人生はちょっとした心の持ちようで変わるし、人生は目にする景色で全て決まるの。私の発信する言葉で、皆さんが目指す目標に一歩でも近づけたら幸せです。
愛をこめて IKKO
美容家というプロフェッショナルとして、厳格な道を歩んできたIKKOさん。そして、パニック障害や過呼吸症候群、自分の性への悩みに向き合ってきたIKKOさん。さまざまな側面を持つIKKOさんから生まれる言葉には、いたるところに「人生を大切にして、豊かな毎日を過ごしてほしい」という願いが詰まっている気がしました。
オンラインという新たな舞台で活動を始めるIKKOさんは、どんな表情や言葉を私たちに届けてくれるのか。7月1日のオープンが、今から楽しみです。