私たちが行なう運動は、ウォーキング、サイクリングなどの「有酸素運動」と短距離走などの「無酸素運動」という二つの運動方法に分かれています。ダイエットとして日常的に運動をする人にとって、なじみ深いのは有酸素運動の方かもしれません。
しかし、無酸素運動は、ダイエットや健康増進を目指す人にとっても、取り入れるべき運動でもあるのです。今回はそんな無酸素運動の効果や特徴を紹介しつつ、ダイエットの効果をさらに高めるトレーニング方法を解説します!
無酸素運動とは
無酸素運動は、短い時間で大きな力を発揮する強度の高い運動を指し、具体的には短距離走やレジスタンス運動などがこれに当てはまります(レジスタンス運動については、このあとに解説します)。無酸素運動の特徴は、短時間で多くのエネルギー消費が必要になるということです。
私たちの身体は、三大栄養素である糖質・脂質・たんぱく質を、反応させてエネルギーに変えます。そして、この時のエネルギーの作り方は大きく2つ。「酸素を使う方法」と「酸素を使わない方法」です。
後者の酸素を使わない方法は、エネルギーの供給スピードが早く、無酸素運動ではこちらのエネルギー供給がメインになります。一方、運動の強度が高ければ高いほど、このエネルギー供給が追いつかなくなり、身体に疲労が蓄積されていくため、無酸素運動は長時間続けることができません。
(参考:glico|有酸素運動と無酸素運動の違いを知っていますか?)
無酸素運動の効果
筋肉には、持久力の高い「遅筋」と、瞬発力のある「速筋」の2種類あり、瞬間的に大きな力が必要となる無酸素運動は、このうちの速筋を鍛えるのに適しています。
速筋は遅筋よりも加齢によって衰えやすいという特徴があり、速筋の筋力が低下すると、ちょっとした段差でつまずいたり、運動機能が低下したりすることがあります。しかし、年齢に関わらず速筋は鍛えることができるので、健康や体力維持には無酸素運動がとても重要と言えるでしょう。
無酸素運動と有酸素運動との違い
有酸素運動は、無酸素運動に対して比較的筋肉への負荷が軽い運動を指します。有酸素運動は糖質と脂質を主なエネルギー源とするのが特徴で、エネルギーをつくるために酸素が必要となります。
脂肪を直接エネルギーとして消費できるため、脂肪燃焼だけでなく高血圧や冠動脈疾患など、病気の予防・改善にも効果が期待できます。つまり、より直接的に脂肪燃焼をしてダイエットできるというのが、有酸素運動のメリットと言えるでしょう。
(参考:南青山HAABビューティークリニック/渋谷・南青山 -レディースクリニック- 美容皮膚科|有酸素運動・無酸素運動の違いとは?〜痩身・小顔施術ならHAABビューティー南青山クリニック〜)
レジスタンス運動と無酸素運動の違い
レジスタンス運動は、対象となる筋肉に抵抗(レジスタンス)や負荷をかけた動作を繰り返す運動で、一般的には「筋トレ」「筋力トレーニング」と呼ばれています。自体重を利用して行う腕立て伏せやスクワット、ダンベル・バーベル・その他マシンを使うトレーニングは、すべてレジスタンス運動(筋トレ)の一種です。
レジスタンス運動と無酸素運動はよく混同されがちですが、基本的には「レジスタンス運動は無酸素運動の一部」という認識で問題ありません。運動強度によるものの、有酸素運動と比べて筋肉に大きな負荷がかかるため、週2〜3回は休養日をはさみつつ、継続して行うのがポイントです。
無酸素運動の種類
無酸素運動には大きく2つの種類があります。それが、筋トレ(レジスタンス運動)と短距離のダッシュです。それぞれの運動を詳しく見てみましょう。
筋トレ(レジスタンス運動)
筋トレは、自体重からマシン・ダンベル等まで、自分の体力や筋力レベルに合わせて負荷を調整することができます。そして、1つの種目あたりの回数となる目安も、目的に応じて変動します。
たとえば、瞬発力やパワーを向上させたい場合は、1回〜4回なんとかできる強度。筋力もアップしつつ筋肉を成長させたい場合は、8回〜10回できる強度を。やや有酸素運動に近くなりますが、筋肉の持久力を上げたい場合は、18回以上できる強度を選ぶといいでしょう。
ただし、1セットだけでは効果が出にくいので、目安となる回数を1セットとし、3〜5セット行うのが理想的です。運動に慣れていない人であれば、まずは自体重のみを使ったトレーニングで10回〜15回の3セットを目標にし、その後、マシン・ダンベル等の重りを使ったりフォームを変えたりしながら、負荷を調整していくといいでしょう。
ダッシュ
ダッシュ(短距離走)は、代表的な無酸素運動のひとつ。下半身の筋肉はもちろん、フォームを安定させるために体幹が鍛えられ、大きく腕を振るため腕の筋肉も鍛えることができます。50m走・100m走を、全力で走るのがポイントです。
しっかりとつま先で地面を蹴るイメージで、しっかりももを上げて走るのが理想的。前傾姿勢になりすぎないよう、姿勢も意識しましょう。ある程度スペースが必要な運動なので、大きな運動場や公園でチャレンジしてみてください。
有酸素運動の種類
有酸素運動にもさまざまな種類があります。これからダイエットを始めたいという方は、自分の趣味や住まいの環境に合わせて好きなものを選んでみましょう。
また、それぞれの運動には、メッツという運動強度の単位も合わせて載せています。メッツは安静時を1とした場合と比べて、その運動が何倍のエネルギーを消費するかを示した数字です。動きの速さや取り組む時間によっても変わりますが、メッツが高いほど消費するエネルギーも多くなりますので、運動を選ぶ時の目安にしてみてください。
ウォーキング・ランニング
ウォーキングは、もっとも手軽な有酸素運動です。ゆっくりとした歩行は2.0〜2.5メッツで、体力に自信がない人でも安心して取り組むことできます。ダイエット効果を実感したい方は、なるべく大股で腕を大きく振るようにしてみるといいでしょう。
また、ウォーキングよりもやや強度の高いランニングも人気の有酸素運動のひとつです。最近では、皇居周辺や公園などでランニングをする人の姿がよく見られるようになりました。ランニングの強度は8.0メッツと、ウォーキングに比べるとかなり高めです。
ただし、有酸素運動を行う上で大切なのは「比較的軽い負荷の運動を継続して行う」こと。短時間で終えてしまうと、脂肪燃焼効果はあまり期待できません。軽く息が弾み、会話を楽しめるようなペースを目安に走ってみましょう。
ヨガ
ヨガは決められたポーズを取りながら、ゆっくりと身体を動かす運動で、女性にも人気です。ホットヨガ、マタニティヨガなど、目的に応じてたくさんの種類があり、じんわりと汗をかく強度で動けるので、有酸素運動としての効果も高いのが特徴。運動強度も2.5メッツと低いため、ウォーキングに近い感覚で手軽に取り組むことができます。
ヨガは、有酸素運動としての効果のほかに、柔軟性のアップ、メンタルヘルスの向上など、いくつもの効果が期待できます。また姿勢の維持によって筋肉も鍛えられるので、無酸素運動のような要素もあります。
登山
登山は、登り坂と下り坂を歩くため、運動強度は7.5メッツと比較的高めです。低い山でも片道1時間半ほど歩くので、トータルではかなりのエネルギーを消費することになります。さらに、お尻やもも、体幹の筋肉を鍛えるのにも向いているので、スタイルアップにも効果が期待できるでしょう。
登山は山の種類や季節によって、大きく景色が変わるため、気分もリフレッシュできます。また、登り切った時には大きな達成感も得られるので、ダイエット+趣味として、定期的に山登りをするのもおすすめです。
サイクリング
サイクリングの運動強度は8.0と、ランニングに次ぐ高さを誇ります。その一方、ランニングと比べてひざや腰の負担が減るため、それぞれの部位に不安がある人でも安心して取り組むことができるのが特徴です。
サイクリングはどんな自転車に乗るかで、スピード感や身体への負荷が大きく変わります。街乗り用のいわゆる「ママチャリ」は、座面の位置が低いとひざが痛くなるので、腰あたりの高さに設定しましょう。
ロードバイクに代表されるスポーツ自転車は、ママチャリよりも前かがみの姿勢になります。体幹回りの負担は増えるものの、その分腹部の筋肉を鍛えることにもなるので、シェイプアップ効果期待できるでしょう。
このスポーツは無酸素運動?有酸素運動?
ここまで、筋トレは無酸素運動で、ウォーキングは有酸素運動だと紹介してきました。では、そのほかのスポーツはどちらに分類されるのでしょうか。この疑問には「全てのスポーツは無酸素運動でもあり、有酸素運動でもある」というのが答えになります。
スポーツでは、瞬間的な動きが必要な場面と、長時間一定の動きを続ける場面の両方があり、前者は無酸素運動の要素が強く、後者は有酸素運動の要素が強いと考えることができます。
そもそも、この有酸素運動と無酸素運動は、はっきりと線引きされているわけではありません。そのため、無酸素運動であると紹介した筋トレも、軽い負荷を繰り返す場合は有酸素運動の要素が強く、有酸素運動として有名なランニングも、強度次第では無酸素運動的な要素が強くなります。
スポーツも同様に、「有酸素運動的な側面」と「無酸素運動的な側面」が組み合わされて成り立っている考えることができます。実際にいくつか見てみましょう。
テニス
テニスは、ポイントを獲得するために、さまざまな種類のサーブで相手を翻弄し、長いラリーを制する必要があります。瞬発的な力が必要な一方で、なるべく身体に負担をかけず、ボールを打ち合う持久力も必要です。
水泳
水泳は脂肪燃焼効果が高く、有酸素運動として紹介されることもあるスポーツです。ゆっくりとしたストロークで泳ぐ場合の運動強度は6.0メッツ程度。しかし、競技を意識した早い泳ぎの場合、平泳ぎは10.0メッツ。バタフライやクロールは11.0メッツにもなります。
実際、プロの水泳選手を見てみると、肩や背中の筋肉が非常に発達していることがわかります。
サッカー
サッカーの試合は、前半と後半で合わせて90分間あります。同点による延長やロスタイム(ファウルや特別な事情で中断していた時間に応じて増える試合時間)を合わせると、さらに長くなるケースもあるでしょう。
味方からのパスに全速力で追いついたり、ストップ&ゴーなどの激しい動きをしたり。サッカー選手には、瞬発力を発揮するための強靭な下半身の筋力が求められる一方で、試合がこう着している場合も絶えず動き続けるための体力も必要です。
バスケ
バスケットボールは休憩をはさみつつ、40分間の試合を戦いぬくスポーツです。攻守の切り替えが非常に多いので、味方チームのゴールポストと相手チームのポストを、絶えず動き回ることになるでしょう。
そして、ゴールの奪い合いでは激しい切り返しや全力のジャンプが必要なため、筋持久力と瞬発力どちらも求められることになります。
無酸素運動はダイエットに効果がある?
前述したように、筋力増強が期待できる無酸素運動は、健康維持や病気の予防に効果が期待できます。さらに、最近はダイエット効果も非常に高いと注目されているのです。
その理由は2つあります。1つは無酸素運動によって筋肉量が増えると、生きていくために最低限必要なエネルギー、すなわち基礎代謝があがるという点です。そのため、しっかりと筋トレ等で筋肉を成長させることで、「太りにくくやせやすい身体」を作りやすくなります。
もう1つが、「アフターバーン効果」が得られる点です。これは高強度のトレーニングをしたあと、消費エネルギー量の高い状態が24時間〜最大72時間継続するというもの。
運動そのものの消費カロリーは、無酸素運動よりも有酸素運動の方が高いと言われていますが、このアフターバーン効果を活用することで、運動したあとも脂肪が燃焼しやすい状態を維持することができるのです。
アフターバーン効果を得るための目安は、「最大心拍数の80%以上をキープしたトレーニングを行うこと」。最大心拍数の80%とは、おおよそ下記の計算で求められます。
(206.9-(0.67×年齢))×0.8
さらに、本格的にダイエットしたい方は、心拍数を測定できるメーターを活用してみましょう。おおまかな強度の計算で問題ないという人は、「自分が全力でできる強度の2歩手前」あたりを意識してみてください。
ただし、運動に慣れていない方は無理をせず、少しずつ運動強度を高めていきましょう。
ダイエットにおすすめの無酸素運動と有酸素運動の組み合わせトレーニング
ダイエットを目的にトレーニングをしたいけど、無酸素運動と有酸素運動をどう組み合わせればいいか悩んでしまう方は多いでしょう。そんな場合は、無酸素運動→有酸素運動の順序でトレーニングをするのがおすすめです。
自宅でトレーニングする人は、腕立て伏せやスクワット、ジャンプなどのトレーニングをしたあとで、ウォーキングをしてみてください。無酸素運動を最初に行う理由は、体内にしっかりエネルギーがある状態で、負荷の高いトレーニングを行うためです。
こうすることで、糖質が優先してエネルギーとして消費されるため、有酸素運動をする際には脂質が消費されやすくなるというメリットもあります。また、無酸素運動によって成長ホルモンの分泌も活性化され、脂肪を燃やしやすい状態を作ってくれるのです。
「無酸素運動も有酸素運動もやりたいけれど、仕事・家事が忙しくて時間が取れない」という人は、最近注目されているHIIT(ヒット、高強度インターバルトレーニング)を試してみましょう。
やり方は非常にシンプルで、20秒の運動+10秒の休憩を1セットとし、合計8セット行うだけ。合計すると約4分程度で終わりますが、20秒の運動時はできるかぎり全力で取り組むようにしましょう。
HIITのいいところは、短時間で無酸素運動の効果と有酸素運動の効果が、両方得られるという点。つまり、筋肉を鍛えて基礎代謝をあげつつ、脂肪燃焼を一気に進めることができるのです。
トレーニングの内容は、自分で決めて構いません。公園や運動場で20秒ダッシュを8回繰り返すのもいいですし、腕立てふせ→スクワット→ジャンピングスクワット→腹筋運動と、複数の筋トレを組み合わせるのもおすすめ。YouTubeなどでもさまざまなバリエーションが紹介されているので、自分に合った組み合わせを見つけてみましょう。
また、最初のうちは8セットを完遂することができないかもしれません。その場合は半分の4セットからスタートして、徐々にセット数を増やしてみましょう。
(参考:スポーツクラブ メガロス|1日数分の運動で体脂肪が燃える!最新トレーニング法「HIIT」)
筋トレに代表される無酸素運動は、「身体を鍛えて大きくしたい人の運動」というイメージが強いもの。しかし、スポーツのパフォーマンスが上がったり、理想の体型を手に入れられたりと、無酸素運動を続けることによるメリットはたくさんあります。
有酸素運動よりも短時間で手軽に取り組めるものも多いため、これからダイエットを始める方はまず筋トレからスタートしてみてはいかがでしょうか?