筋肉や肌、髪などの元となるタンパク質は、人間が生きていく上で欠かせない栄養素。しかし、そもそもタンパク質は1日にどのくらい摂取すれば良いのでしょうか。この記事では、1日に必要なタンパク質の量や不足した場合に起きる体調の変化、効果的な摂取方法などを詳しく紹介します。
タンパク質の役割
タンパク質は、糖質や脂質とならび、人間が生きていく上で欠かせない三大栄養素の一つです。人体の約15~20%はタンパク質でできていると言われており、体内では水分に次いで高い割合を占めています。
タンパク質は、髪の毛、皮膚、筋肉、内臓などを作るために使われるほか、ホルモンや酵素などを正常に働かせる上でも必要な栄養素です。また、タンパク質は身体を動かすためのエネルギー源としても利用可能で、タンパク質1gは4kcalのエネルギーに換算されるといわれています。
タンパク質が不足するとどうなる?
タンパク質は、アミノ酸が多数つながることでできる高分子化合物で、20種類のアミノ酸によって構成されています。この20種類のアミノ酸のうち、脂質や糖質から体内でも合成できるのが、「非必須アミノ酸」と呼ばれる11種類。残りの9種類は、体内では合成することができない「必須アミノ酸」と呼ばれるもので、必ず食事などから摂取する必要があります。
体内では常にタンパク質の合成と分解が行われていますが、この20種類のアミノ酸のうち1種類でも欠けてしまうと、体内でタンパク質を合成することができません。
では、もし体内のタンパク質が不足してしまうと、具体的にどのような症状が現れるのでしょうか。
(参考:MORINAGA かんたん、わかる!プロテインの教科書|人間の体はタンパク質でできている。タンパク質・アミノ酸・ペプチドの関係を解説)
筋肉量が減る
人間の身体は、エネルギー源が不足すると、筋肉に蓄えられたタンパク質などをエネルギーとして消費することで生命活動を維持しようとします。
筋肉は約80%がタンパク質で構成されているため、もしエネルギー源として消費されてしまうと筋肉量そのものが減ってしまいます。筋肉量が減ると基礎代謝が下がるため、結果として肥満に結びつくこともあるでしょう。また、筋力が衰えることで身体の機能が低下し、体調を崩しやすくなってしまうかもしれません。
思考が鈍くなる
タンパク質を構成するアミノ酸は、ドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質を作る材料にもなります。そのため、タンパク質が十分摂れていないいと、神経伝達物質のはたらきが鈍くなり、結果的に思考力や集中力の低下をまねく場合もあります。
免疫力の低下
体内の免疫システムに欠かせない抗体には、「免疫グロブリン」のようにタンパク質を元に作られたものが数多く存在します。そのため、もしタンパク質が不足すると、感染症リスクの増加や免疫細胞の活動低下などが起こる可能性もあるでしょう。免疫力を維持するためにも、タンパク質の摂取は欠かせません。
(参考:MORINAGA かんたん、わかる!プロテインの教科書|あなたは大丈夫?今すぐ気を付けたい「タンパク質不足」)
タンパク質を摂りすぎるとどうなる?
前述したようにタンパク質が不足すると体調を崩しやすくなってしまうおそれがありますが、反対に摂りすぎもおすすめできません。
1回の摂取で体内に吸収されるタンパク質量には限界があるため、それ以上摂取しても体外に排出されてしまいます。さらに、ときには過剰摂取によって悪影響が出る場合もあるでしょう。ここでは、タンパク質を摂りすぎた場合に起こる症状を確認していきます。
体重の増加
タンパク質含有量の多い肉などの食品には脂質も多く含まれているため、食べすぎると肥満や体重増加につながるおそれがあります。体重を増やしすぎないためには、バランスのよい食事や適度な運動を心がけることが大切です。
タンパク質は1度にたくさん摂取しても体内で有効活用しきれないため、1食あたり20gずつなど、数回に分けてこまめに摂ることを意識しましょう。
腎機能への負担
健康な成人はタンパク質を過剰に摂取しても問題が起こりにくいものの、健康状態によっては注意が必要になる場合があります。たとえば、慢性腎臓病患者は1日当たりのタンパク質摂取量を厳しく制限しなければなりません。
タンパク質が体内で利用されると、尿素窒素と呼ばれる老廃物が生成されます。しかし、腎機能が低下していた場合、この老廃物を適切に処理しきれず、身体に負担がかかってしまうのです。
また、過剰なエネルギー摂取によって糖尿病発生リスク増加や心血管疾患の増加などを引き起こす可能性もあると言われています。そのため、健康に不安がある人は特に、タンパク質の過剰摂取には気を付けたほうが良いでしょう。
(参考:glico|タンパク質の摂りすぎは危険!?過剰摂取による影響とは)
1日に必要なタンパク質の摂取量
人間が1日に必要とするタンパク質量の目安は、「体重×0.8~1g」といわれています。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」(※)によると、タンパク質の食事摂取基準は18歳以上の男性で65g、18歳以上の女性で50gです。しかし、タンパク質の消費量は、活動レベルや体格によっても異なるため、筋トレ中の方やよくスポーツをする方などはより多くのタンパク質を摂取することが推奨されています。
パターン別に、1日に必要なタンパク質摂取量を見てみましょう。
(参考:厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」)
筋トレ中の方
筋トレやスポーツを日常的に行う人の場合、運動によって破壊された筋肉細胞の修復に多くのタンパク質が必要になるため、体重1kgあたり2gのタンパク質を摂取することが推奨されています。
体内のタンパク質が不足していると、せっかくトレーニングをしても筋肉が定着しにくくなってしまうため、こまめなタンパク質摂取を心がけてください。
妊娠中の方
妊娠中の方に推奨されるタンパク質量は、妊娠時期によって異なります。
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、妊娠初期(〜13週6日)に必要なタンパク質量は通常の成人女性と同じく50g。妊娠中期(14週0日〜27週6日)は妊娠初期の必要量+5g、妊娠末期(28週0日〜)は妊娠初期の必要量+25gとなり、胎児の成長に合わせて必要なタンパク質量が増えていきます。
子ども・幼児
厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」によると、1日当たりに推奨されるタンパク質摂取量は、1~2歳で20g、3~5歳で25g、6~7歳で30gとされています。
年齢や体重が上がるにつれ必要なタンパク質量は上昇し、10歳以降になると男女で差が見られるようになります。
(参考:明日をもっとおいしくmeiji|日本人に必要なたんぱく質はどれくらい?)
タンパク質を多く含む食品
冒頭でもご紹介したように、タンパク質を構成するアミノ酸は全部で20種類あり、そのうち9種類は体内で合成できない「必須アミノ酸」です。
食品に含まれている必須アミノ酸とタンパク質のバランスを表した指標が「アミノ酸スコア」と呼ばれるもので、必須アミノ酸の数値が100に近いものほど、質の良いタンパク質とされます。効率よくタンパク質を摂取するために、食品選びの際はアミノ酸スコアを一つの目安にしてみるのも良いでしょう。
ここでは、スーパーでも買えるアミノ酸スコアが高い食材を紹介するので、毎日の食事に取り入れてみてください。
(参考:文部科学省|食品成分データベース)
・肉
必須アミノ酸は動物性タンパク質に多く含まれているため、豚肉や鶏肉などのアミノ酸スコアは100です。これはすべての必須アミノ酸が必要量を満たしていることを意味しています。
焼いた鶏むね肉(皮なし)の場合、100gあたりに含まれるタンパク質は38.8g。鶏ささみは100gあたり31.7gのタンパク質を含んでいます。
ただし、鶏肉の皮には脂質が多く含まれるため、脂質を避けたい場合は皮を取り除いて調理するといいでしょう。
・魚
魚類も動物性タンパク質を多く含むため、アミノ酸スコアは100です。特にマグロなどの赤身魚は高タンパクで、DHAのような良質な脂も一緒に摂取することができます。
クロマグロ(赤身、生)100gあたりのタンパク質量は26.4g。うるめいわし(生)は100gあたり21.3gのタンパク質を含んでいます。
・卵
卵にも必須アミノ酸がバランスよく含まれているため、アミノ酸スコアは100です。
鶏卵(生)100gあたりのタンパク質含有量は12.3g。卵1個がだいたい50gと仮定しても、1つで約6gのタンパク質を摂取することができます。さらに、卵はほかの食品とも組み合わせやすく、調理方法の幅も広いため、食事に取り入れやすいタンパク源とされています。
・乳製品
牛乳のアミノ酸スコアは100で、100gあたり3.3gのタンパク質を含んでいます。また、牛乳や乳製品には筋肉のもとになるBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)が豊富に含まれているため、筋トレ中の人も積極的に摂取するのがおすすめです。
・穀物・豆類
穀類や豆類などは上記の食品に比べればアミノ酸スコアは高くありません。しかし、不足している栄養素を補える食べ物と組み合わせると、タンパク質を効率よく摂取できるようになります。
たとえば、白米と豆製品、パンと肉類を一緒に食べるなど、バランスのよいメニューを心がけてみましょう。
(参考:MORINAGAかんたん、わかる!プロテインの教科書|タンパク質が多い食品を紹介。高タンパク食品を手軽に摂取!)
プロテインでのタンパク質摂取もオススメ!
プロテインパウダーやプロテインバーなどを利用することで、手軽に品質のいいタンパク質を摂取することができます。
また、プロテインには低脂質タイプのものあるため、低脂肪高タンパクにこだわる人は特にプロテインを活用するのがおすすめです。さらに、忙しくて十分に食事がとれないときなど、タンパク質を補助したい場面で活用するのも良いでしょう。
プロテインの効果については以下の記事で詳しく紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。
人間が健康に生きるうえで欠かせない栄養素の一つであるタンパク質。1日に必要な量のタンパク質を摂取できるように、普段の食生活を意識してみてください。その上で、必要量を補うことが難しい方はプロテインを利用するなど、無理なく実践してみましょう。