減量やダイエットをする上で、真っ先に気になるのは体重や体脂肪率ではないでしょうか。しかし、身体を構成している要素として、もう1つ大事な指標があります。それが「骨格筋率」です。
実は、やせやすい身体づくりや見た目にも大きく関わっている骨格筋率。この記事では、骨格筋率が一体どんなものなのか、平均値はどれくらいなのかについて具体的に解説します!
骨格筋率 とは
私たちが身体を動かすためには、筋肉の存在が欠かせません。筋肉は、骨格筋、心筋(心臓の筋肉)、平滑筋(臓器に存在する筋肉)に分類されますが、このうち、私たちの見た目や運動能力に大きく関わっているのが骨格筋です。
そして、身体に占める骨格筋の割合を骨格筋率と言い、体脂肪率や体重とともに、身体の構成要素を知る上でとても重要な数値となっています。
骨格筋 とは
先述したとおり、立ったり座ったり、走ったり立ち止まったりと、あらゆる運動に深く関わっているのが骨格筋です。
骨格筋は、動作に応じて自分の意思で自由に動かすことができるため、「随意筋」とも呼ばれています。反対に、心筋や平滑筋など、自分の意思で自由に動かすことができない筋肉は「不随意筋」と呼ばれ、「随意筋」と区別されます。一般的に私たちが会話や文章で言い表している「筋肉」は、骨格筋を指している場合がほとんどです。
骨格筋を構成している筋繊維は、瞬発力に優れた「速筋」と、持久力に優れた「遅筋」とに分けられます。遅筋は年齢を重ねても衰えにくいものですが、速筋は20歳前後を境に、急速に衰えてしまう筋肉とされています。
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット|骨格筋(こっかくきん))
骨格筋率が高いことで得られるメリット
骨格筋率が高いということは、身体を動かすための筋肉の量(割合)が多いことを意味します。つまり、運動時や安静時に使われるエネルギー量が自然と増えるため、骨格筋率が低い人よりも「やせやすく太りにくい身体」であると言えるでしょう。
また、同じ体重の人でも、骨格筋率が高い人と低い人では、見た目やスタイルが大きく違う場合がほとんどです。さらに、骨格筋率が高くなると、血行不良の改善、体温維持力のアップなど、さまざまな健康効果も期待できます。
このように、ダイエット、美容、健康いずれにも効果を発揮してくれるのが、骨格筋率を高めるメリットなのです。これからダイエットをする方は、体重を落としつつ骨格筋率を上げるための工夫をしてみましょう。
骨格筋率の測り方
ここでは、骨格筋率の計算方法について説明します。
(1)体組成計で体重・体脂肪率を測り、体脂肪量を算出します。
体重(kg)×体脂肪率(%)=体脂肪量(kg)
(2)体重から体脂肪量を引き、除脂肪体重を計算します。
体重(kg)−体脂肪量(kg)=除脂肪体重(kg)
(3)骨格筋量を計算します。除脂肪体重は骨、内蔵、筋肉などがありますが、骨格筋量は除脂肪体重の約半分と言われています。
除脂肪体(kg)÷2=筋肉量(kg)
(4)体重に占める筋肉の割合を求める。
筋肉量(kg)÷体重(kg)=筋肉率(%)
実際に、体重が60kgで体脂肪率が25%の方の場合は、次のような計算になります。(※)
(1)60kg×0.25=15kg
(2)60kg−15kg=45kg
(3)45kg÷2=22.5kg
(4)22.5kg÷60kg=37.5%
※この計算では骨格筋量を除脂肪体重の半分という基準にしているため、体組成計の数値と変動する場合があります。
なお、市販の体組成計では骨格筋量や骨格筋率まで計算してくれるものもあるので、もう少し簡単に数字を知りたい方はそちらをチェックしてみるといいでしょう。
(参考:OmROn|取扱説明書別冊)
骨格筋率の平均値【男性】
骨格筋率は、身長などとは異なり、全国的な平均値が調査されているわけではありません。しかし、体組織計のメーカーとして有名なオムロンやエレコムでは、自社データに基づき、独自に骨格筋率の判定基準を定めています。
男性の骨格筋率の高さや低さを判定する、おおよその目安は下記の通りです。
(参考:ELECOM|Vol.16 男性・女性の体脂肪率の平均は?骨格筋率と併せてチェックしよう)
骨格筋率の平均値【女性】
次に女性です。女性は、男性よりも体脂肪率が高い傾向にあるため、骨格筋率も男性よりやや低めに設定されていることが分かります。
女性の骨格筋率の高さや低さを判定する、おおよその目安は下記の通りです。
(参考:OmROn|体重体組成計でわかること)
骨格筋率を理想に近づけるために
骨格筋率を高めることで、基礎代謝が上がって1日の消費エネルギーが増えるため、ダイエットにもつながると考えられます。また、骨格筋率が高いほど、同じ体重でもより体全体が引き締まって見えるため、ボディメイクに励む女性にとっても、骨格筋率は注目すべき指標と言えるでしょう。
骨格筋率を上げるためには、具体的に次の2つを意識したダイエットを心がけましょう!
(1)2種類のトレーニングで脂肪燃焼+筋肉量アップ
筋肉量を増やすために、まずは運動量を増やしましょう。ダイエットと聞いて大抵の人が思い浮かべる、ジョギングなどの有酸素運動と筋トレなどの無酸素運動。この2つの特徴を上手に活かすことで、骨格筋率を高めることができます。
・ジョギングなどの有酸素運動:脂肪燃焼に効果はあるが筋肉量アップ効果は低め
まずは、有酸素運動です。軽く息がはずむ程度のウォーキングやジョギングを、20分前後を目安として継続的に取り組んでみてください。なかなか運動の時間が取れないという方は、通学や通勤の際に目的地の一駅前で電車を降りて歩く、移動ではなるべく階段を使うなど、日常生活の中で出来る限り身体を動かしてみましょう。
ただし、有酸素運動には脂肪燃焼効果があるものの、運動強度が低いため、筋肉量アップの効果は低めです。そのため、有酸素運動に加えて、次に紹介する無酸素運動(筋トレ)にも取り組んでみてください。
・筋トレなどの無酸素運動:実は筋肉量アップ効果も脂肪燃焼効果も高め
筋トレなどの無酸素運動は、有酸素運動よりも短時間ででき、必要最低限のスペースでできることが魅力です。また、運動後の脂肪燃焼効果も高いとされているため、ダイエット目的で筋トレを行う人も増えてきました。
筋トレを行う上でポイントとなるのは「回数よりも運動強度」です。例えば、スクワットを100回やるよりも、負荷を上げてなんとかこなせる強度のトレーニングを10回やる方が、筋肉量アップには効果があります。
自宅で簡単に筋トレをしたいという方には、「スロートレーニング」がおすすめです。スロートレーニングというのは、一つ一つの動作をゆっくり丁寧に行うトレーニングのこと。動く速度を調整することで、1回あたりの負荷を高めることができます。例えば、スクワットなら「5秒かけてゆっくりしゃがんで、しゃがんだ姿勢を5秒キープして、5秒かけてゆっくり元の姿勢に戻る」という動作になります。
筋トレは、必ずしも毎日やる必要はありません。例えば、週3回、腕立てふせと腹筋運動、スクワットを、それぞれスロートレーニングで3セット(1セット15回)するだけでも十分に効果は期待できます。最初のうちは、無理なく続けられるメニューを組み、ある程度トレーニングに慣れてきたら、鍛える部位を増やす、ジムに通うなどして負荷を上げてみてもいいかもしれませんね。
(2)骨格筋率を高めるための「食事」にも気を配ろう
筋トレや有酸素運動で動かした身体を回復するためには、バランスのいい食生活を心がけてください。まず大切なのは、筋肉を構成する「タンパク質」です。魚や鶏肉を中心に、タンパク質をしっかり摂取してあげましょう。
また、お米などの「炭水化物」も抜かずに適量を摂取してください。炭水化物(糖質)は、ダイエットをしている人にとっては天敵のように扱われがちですが、消費されたエネルギーの補充に欠かせません。体内で糖質や脂質などのエネルギー源が不足すると、筋肉中のタンパク質を分解してエネルギーに変える「異化(カタボリック)」という現象が起きてしまいます。
骨格筋率を高めるための食事では、タンパク質と炭水化物をしっかり摂ったうえで、野菜・きのこ類からビタミン・ミネラルも補給することを意識し、効率的に筋肉量を増やしていきましょう。
(参考:glico|筋トレの効果MAXにするための食べ物と食事メニュー)
体脂肪や体重ほど注目される機械の少ない骨格筋率。しかし、骨格筋率を意識したトレーニングを行えば、見た目や健康に大きな変化が期待できるでしょう。いままでのダイエットであまり成果を感じられなかったという方は、「骨格筋率を高める」という視点からダイエットに取り組んでみてくださいね。