体の一部にひびが入ったような見た目になる「肉割れ」。巷では「脂肪線」や「デブ線」と呼ばれることもあり、多くの女性の悩みの種となっている肉割れですが、肌の露出が増える夏場は特に気になりますよね。
この記事では、まず肉割れとは何かを解説し、肉割れができやすい場所や肉割れができる原因を一つ一つ見ていきます。そのうえで、自宅でできる肉割れケアやサロンで受けられる治療方法を紹介します。肉割れを予防しケアしていくために、是非参考にしてくださいね。
肉割れとは
初めに、肉割れとは一体どういう状態なのかを把握しておきましょう。
私たちの皮膚は、一番外側から順に「表皮」、「真皮」、「皮下組織」という3つの層から形作られています。そして、肉割れの原因とされているのは、急激な体形の変化による真皮層の断裂です。
過度な筋トレや急激な体重の増加など、何らかの理由で急激な体形の変化が起こると、皮下組織が膨張し、皮膚全体が引っ張られた状態になります。真皮は「コラーゲン繊維」と「エラスチン繊維」から構成されていますが、コラーゲン繊維は伸縮しづらい性質があるため、引っ張られることで断裂してしまいます。こうして真皮が裂け、表皮の上からその裂け目が見える状態になるのが、「肉割れ」と呼ばれる現象です。
一般に「妊娠線」と呼ばれるものも、肉割れの一種です。
肉割れの幅は数ミリ程度ですが、長さは数センチから十数センチまで様々。英語では「ストレッチマーク」と呼ばれ、美容クリニックやスキンケア用品ではこの名称が使用されていることも多いようです。
(参考:恵比寿美容クリニック)
肉割れができやすい場所
前述したように、肉割れの主な原因は急激な体形の変化によるものなので、できやすい場所はある程度決まっています。気づかないうちにできている可能性もありますので、心当たりがある人は、次に挙げる部位をチェックしてみてください。
太もも
肉割れは、急激に体重が増加した時などにもできやすいため、太もものように脂肪がつきやすい場所は要注意です。太ももの内側や後ろ側など、普段はあまり自分で見ることのない部分にもできている可能性があります。
胸
女性の場合、胸も脂肪がつきやすい部位の一つです。成長期や妊娠によって短期間でバストサイズが変化すると、胸に肉割れができることがあります。
お尻
肉割れができやすい場所の中でも最も気づきにくいのが、お尻です。体重が急激に増加した時、あるいは急激に減少した時は、お尻に肉割れができていないかチェックしてみましょう。
(参考:恵比寿美容クリニック|肉割れは「おしり」にもできる?発症部位をキレイにする治療法とは)
お腹
お腹は、全身の中でも特に脂肪がつきやすい部位のため、もともと肉割れができやすい場所です。しかし、女性の場合、妊娠によって肉割れを経験することがあります。これは、お腹の中の赤ちゃんの成長に合わせて急激にお腹の皮膚が膨張するためで、肥満とは関係なく起こることがほとんどです。
(参考:公益社団法人 福岡県薬剤師会|質疑応答)
ふくらはぎ
男女問わず肉割れができやすい場所として、ふくらはぎがあります。成長期で急激に身長が伸びた時などは、ふくらはぎに肉割れができることがあるようです。その他、歩き方の癖が原因で肉割れができてしまうケースもあります。
肉割れの状態
肉割れと一口に言っても、その見た目は一様ではありません。肉割れは、赤いものと白いものの2種類に大別することができます。ここでは、その違いを確認しておきましょう。
赤い肉割れ
肉割れの線が赤色あるいは赤紫色のものは、肉割れが発生して間もない状態のものです。赤い色の正体は、断裂した皮膚の下に透けて見える毛細血管。この状態の時は、肉割れ部分の皮膚がわずかにへこんでいるのがわかります。
白い肉割れ
肉割れができてからある程度時間が経つと、赤かった部分が徐々に退色し、灰白色に変わっていきます。見た目では赤い肉割れよりも目立ちにくくなりますが、表面に細かいしわができ、触るとでこぼこしているのが特徴です。
肉割れの原因
いろいろな場所にできてしまう厄介な肉割れですが、原因を知っておけば予防がしやすくなります。新たに肉割れができるのを防ぐためにも、肉割れの主な原因を詳しく知っておきましょう。
成長期
成長期には、短期間で急激な体形の変化が起こるため、太ももやふくらはぎなどを中心として、全身に肉割れができることがあります。急激に背が伸びたり、部活などでの運動によって短期間で筋肉が発達したりする場合などは、特に肉割れができやすくなるでしょう。
大人になってからできる肉割れと違って、成長期の肉割れは避けることができないものです。
妊娠
成長期の肉割れと同じく避けがたいのが、妊娠中にできる肉割れです。妊娠中は、お腹の中の子供の成長に伴って急激にお腹が大きくなりますので、皮膚の膨張に真皮層がついていけず、肉割れができてしまいます。さらに、妊娠中はコラーゲンの生成が抑制されるため、肌の弾力が失われ、ますます肉割れが起こりやすい状態に。
妊娠中にできる肉割れは、「妊娠線」あるいは「マタニティライン」とも呼ばれおり、およそ9割以上の妊婦さんが経験するとされています。
加齢
肉割れの主な原因は、急激な体型の変化によるものがほとんどですが、実は加齢も肉割れの原因の一つとされています。
皮膚の中間層にあたる真皮には、肌の弾力を保つためのコラーゲンが豊富に含まれていますが、年齢を重ねるにつれてこのコラーゲンの保有量は減少していきます。加齢によってコラーゲンが減った肌は、小さな刺激からもダメージを受けやすくなっているため、若い頃よりも肉割れができやすくなるのです。
さらに、加齢に伴う毛細血管の減少や血管の衰えによって血流が悪くなることも、肉割れができやすくなる理由の一つと考えられています。
短期間で太る
冒頭でもご紹介した通り、短期間で体重が増加することによって皮膚が引っ張られると、真皮層がそれについていけずに裂けて、肉割れができてしまいます。そのため、肉割れには「脂肪線」や「デブ線」といった俗称でも知られるようになりました。特に柔軟性の低い皮膚にできやすいため、お腹やお尻、太ももなど、脂肪の多い場所にできるケースが多いとわれています。
短期間で痩せる
短期間で痩せた場合にも肉割れができやすくなります。太る場合と違って皮膚が膨張することはありませんが、急激な体型の変化に真皮層が対応できず、その結果コラーゲン繊維がダメージを受けることで、太った時と同じように肉割れが生じると言われています。
また、短期間で急に瘦せると、肉割れができやすいだけでなく、皮膚がたるんでしまうこともあります。無理なダイエットにはくれぐれも気を付けましょう。
急な運動・筋トレ
運動不足だった人が急に運動を始めたり、過度な筋トレで体の一部に負荷がかかったりすると、筋肉の急速な発達に皮膚が追いつけず、肉割れができてしまうことがあります。特に男性の場合、過度なトレーニングが原因で手足に肉割れができてしまうケースも。
肉割れを防ぐためには、自分にあったペースで、徐々に運動の負荷を上げていくことを心がけましょう。
歩き方や走り方の癖
普段の歩き方、あるいはジョギングの習慣のある人の場合は走り方が、肉割れができる原因となっていることもあります。
特に女性の場合、ヒールやパンプスを履いた状態では指の先に力が入りづらく、足の指を上げて歩く形になります。このようにアンバランスな歩き方をすると、ふくらはぎの筋肉に過剰な負担がかかり、一部の筋肉のみが発達してしまうため、肉割れができる原因となるのです。特にふくらはぎの内側には肉割れができやすいので、ヒールを履く機会の多い人は注意してください。
乾燥
肉割れには、皮脂の分泌量が少なく、乾燥しやすい場所にできやすいという特徴があります。これは、皮膚が乾燥すると皮下組織や真皮の柔軟性が低下し、刺激を受けた時に断裂が起きやすくなるためです。
肌が乾燥しがちな人は、日ごろから保湿を心がけましょう。
肉割れの消し方・治し方
実は、一度できてしまった肉割れを完全に消すことはできません。断裂したコラーゲン繊維はターンオーバーによって修復されることがないので、体形の変化が止まったり元の体形に戻ったりしても、少なからず跡が残ってしまいます。
それでも、肉割れを目立たなくすることはできますので、まずは自宅でできるケアを試してみましょう。
クリームなどでの保湿
肉割れができた肌は乾燥しやすくなっていますので、肉割れを目立たなくするためには毎日の保湿が重要です。浸透力の高い保湿クリームを選び、血流の良くなっているお風呂上がりなどのタイミングで塗るといいでしょう。
保湿クリームは、コラーゲン、ヒアルロン酸、セラミドなどの保湿成分が含まれているもの、あるいは人間の皮脂成分に近いホホバオイルなどの植物性オイルが含まれているものがおすすめです。
「ストレッチマーククリーム」や「ストレッチマークオイル」など、市販の肉割れケア用品を活用しても良いでしょう。
肌のマッサージ
血液の巡りを良くして肌の柔軟性を保つには、マッサージが有効です。マッサージの際、保湿クリームやオイルを使うことで肌への負担を少なくすることができるほか、クリームやオイルの成分をしっかりと肌に浸透させることができます。
お腹の場合、おへそ周りに円を描くようにクリームなどを塗り、手のひら全体を使っておへその下から上に向かってさすり上げるようにマッサージしていきます。太ももやお尻、ふくらはぎなど下半身の場合は、下から上に向かってクリームなどを塗り、ふくらはぎから太もも、太ももからお尻へという方向を意識してマッサージすると良いでしょう。
肌に刺激を与えないよう、優しく撫でるようにマッサージするのがポイントです。
(参考:恵比寿美容クリニック|ただクリームを塗るだけじゃダメ!妊娠線・肉割れを予防するマッサージの方法)
食生活の改善
肉割れを目立たなくするためには、直接的な肌のケアだけでなくインナーケアも重要です。
肌を作るのに欠かせないタンパク質を摂取するには、肉や魚、卵、大豆を食べるのがおすすめ。また、肌のターンオーバーを促すためにはビタミンやミネラルやコラーゲンが欠かせませんので、こうした栄養素を多く含む野菜や果物、きのこ、海藻なども積極的に食べるとよいでしょう。その一方で、脂肪の元となる炭水化物や脂質は控えめにするのがおすすめです。
コラーゲンの生成にはビタミンCが必要になるため、ビタミンCの多い食材も一緒に食べるとさらに効果的が期待できます。
肉割れの治療
ここまでで紹介したような自宅でできる肉割れのケアのほかに、美容クリニックなどで受けられる治療もあります。できたばかりで赤い肉割れなら自宅でのケアで比較的早く目立たなくなる可能性がありますが、白くなっているものや肉割れ線が太くなって光沢が出ているものには効果が出にくいため、気になる人は美容クリニックでの治療も検討してみるといいでしょう。
なお、肉割れの治療は自由診療扱いとなるため、基本的には医療保険が適用されません。そのため、治療費は10割負担となります。ごく稀なケースですが、肉割れが激しい痛みを伴っていて日常生活に支障が出ている場合や、肉割れが深すぎて皮膚が正常な状態でない場合などには、保険が適用されることもあります。
美容クリニックでの肉割れ治療には、次のような方法があります。
レーザー治療
肉割れの代表的な治療方法の一つが、レーザー治療です。真皮に直接働きかけるレーザーを皮膚に照射することで、コラーゲンの生成と皮下脂肪の分解を促し、伸びた皮膚を収縮させます。これによって、肌を引き締まってなめらかになり、肉割れを目立ちにくくなるのです。
料金はクリニックによりますが、1回1万円~5万円程度で、一般に5~6回の治療を受ける必要があると言われています。また、治療と治療の間には1~2週間の間隔を空ける必要があるため、治療が完了するまでに2~3か月かかることも念頭に置いておきましょう。
(参考:精美スキンケアクリニック)
炭酸ガス治療
炭酸ガス治療も、広く行われている肉割れ治療のひとつ。血流を改善する炭酸ガスを真皮に直接注入することで皮膚の代謝を促し、肉割れを改善します。また、ガスの注入によって皮下組織にダメージを与えることで、コラーゲンの産出が促され、皮膚の再生能力を引き出す効果も。
料金は、手のひらサイズの肉割れで1か所3~4万円程度と言われています。治療時間は10分~30分程度で、ダウンタイムもほとんどなく、レーザー治療と比較すると短時間で治療できるのが特徴です。
(参考:コーラルビューティークリニック|妊娠線、肉割れは炭酸メソでキレイにしましょう。)
残念ながら、肉割れは一度できてしまうと完全に元の状態に戻すことはできません。毎日の保湿やマッサージで目立たなくすることはできますが、まずは肉割れができてしまうのを防ぐことが大切です。そのためにも、日ごろから食生活や保湿、歩き方などに気を配りましょう。
この記事で紹介した肉割れの原因に思い当たることがある人は、肉割れができやすい場所をあらためてチェックしてみましょう。もし気づかないうちに肉割れができてしまっていたら、この記事で紹介したケア方法を今日からでも是非試してみてくださいね。