健康や美容、スタイル維持など、さまざまなシーンで「インナーマッスルを鍛えること」の重要性が取り上げられるようになりました。しかし、インナーマッスルの詳しい作用や仕組みを知らないという方は多いのではないでしょうか。
この記事では、知っていそうで意外と知らない、インナーマッスルの構造や仕組みについて学びながら、インナーマッスルを鍛えるメリットや部位別のトレーニングを紹介します。
インナーマッスルとは
トレーニング用語として使われることの多い、「インナーマッスル」という言葉は、身体の奥深いところに位置する筋肉である「深層筋」のことを指しています。
インナーマッスルは、姿勢を維持したり、動作をサポートしたり、内蔵の働きをサポートしたりするときに働く筋肉です。身近な例で言えば、揺れる電車に乗っている際に姿勢を保つために働くのもこのインナーマッスル。見た目に影響しにくい筋肉ですが、日常生活からスポーツシーンまで、私たちの活動を支えてくれる大切な役割を担っています。
反対に、身体の表層にある「アウターマッスル(表層筋)」は、走ったり歩いたり物を持ち上げたりと、身体を動作させるときに働く筋肉です。インナーマッスルとは異なり、目に見える筋肉で、アウターマッスルが鍛えられると見た目に大きな変化が起きやすくなります。
(参考:カラダリズム|インナーマッスル)
インナーマッスルを鍛えるとどのような効果があるのか
筋トレというと、目に見えやすいアウターマッスルにばかり意識が向きがちですが、インナーマッスルを鍛えることで得られる効果やメリットはたくさんあります。
まず、身体の土台であるインナーマッスルが鍛えられると、歩く・走る・投げる・打つといったあらゆる動作に安定感がプラスされます。そのため、日常生活やスポーツなど、様々な場面でトータルパフォーマンスを向上させることができるでしょう。とくに、サッカーやラグビー、格闘技といった接触が多いスポーツでは、衝撃に強くなる・ケガを予防するという点でもメリットが大きくなります。
次に、健康増進効果を期待することができます。冒頭でも紹介したように、インナーマッスルは姿勢維持や日常動作のサポートに欠かせない筋肉です。そのため、インナーマッスルが鍛えられることで姿勢の保持がしやすくなり、腰痛や肩こりといった慢性的なトラブルの予防や改善に効果が期待できるのです。
最後に、お腹周りの引き締め効果を期待することができます。人間の腹部には骨がなく、その代わりに、腹横筋、横隔膜、多裂筋、骨盤底筋群から構成される「インナーユニット」と呼ばれるお腹周りのインナーマッスルが、腹部に圧力(腹圧)を加えることで内蔵の位置などを正常に保っています。そのため、インナーユニットがゆるんでしまうと、内臓の重みに腹部の圧力が耐えられなくなり下垂するため、下腹部がぽっこりしてしまうのです。そこで、腹部を支えるインナーユニットを鍛えることで、腹圧が強化され、引き締まったお腹が手に入れることができます。
日常生活やスポーツシーンでのパフォーマンスアップ、健康増進、スタイル作り。この3つの目的において、高い効果を発揮してくれるインナーマッスルは見た目に変化をもたらすアウターマッスルと同様にしっかり鍛えておきたい筋肉といえるでしょう。
(参考:ALPEN GROUP MAGAZINE|プランクの効果とは? 姿勢や種類を知って体幹を鍛えよう!)
部位別 インナーマッスルの鍛え方
インナーマッスルの鍛え方は、アウターマッスルの鍛え方とは少し異なります。アウターマッスルは、ターゲットとなる筋肉を大きく動かすことで刺激を与えますが、インナーマッスルは、姿勢の保持や各動作のサポートのために、ごく小さく動かすことがほとんどです。また、筋肉自体の強さもそれほどありません。
インナーマッスルの鍛え方のコツは、低負荷でゆっくり動くこと。これを念頭に置きつつ、部位別の鍛え方や効果を見ていきましょう。
全身 のインナーマッスルを鍛える方法
インナーマッスルは、腹部のほかにも肩や腰など全身の様々な筋肉部位にあり、それぞれが連動して働きます。あまり時間がないという方は、幅広く全身を鍛えられる「プランク」という種目をやってみましょう。
鍛え方「プランク」
(1)うつ伏せの姿勢になります。
(2)つま先とひじを肩幅にして、身体を浮かせます。
(3)かかとから背筋まで一直線にした姿勢を保ち、30秒〜1分その状態を維持しましょう。
インターバル(30秒〜1分)をはさみ、3セット行います。
効果
プランクはお腹、背中、肩、胸、お尻、太ももと、全身のインナーマッスルを鍛えることができます。お腹周りをスッキリさせることはもちろん、日常の様々な動作がより安定しやすくなるでしょう。
強度を上げたい場合は、右足・左手、左足・右手と対角線上の手足を床から離して、お腹の下で離した方のひじ・ひざをくっつける動作を繰り返す「ニー・トゥー・エルボー」という種目もおすすめです。
(参考:fungoal|インナーマッスルの鍛え方。基礎知識から具体的なトレーニング方法まで。)
肩のインナーマッスル、ローテーターカフ を鍛える方法
肩のインナーマッスルは、棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の4つの筋肉で構成され「ローテーターカフ」と呼ばれます。肩はほかの関節と比べ、骨と骨のつながりが弱く、また靭帯もそこまで強くありません。
今回、紹介するトレーニングでは、負荷としてダンベルを使用します。無い場合は、水を入れたペットボトルで代用しましょう。
鍛え方「エクスターナルローテーション」「インターナルローテーション」
・エクスターナルローテーション
(1)身体を横向きにして、床に寝そべります。
(2)上側の手で、軽めのダンベルか水を入れたペットボトルを持ちましょう。
(3)下の腕で身体を支えつつ、上の腕は脇を締めてひじを90°に曲げます。
(4)脇を締めた状態で、手を天井へ向けるように前腕を持ち上げましょう。
(5)元の位置に腕を下ろします。
この動作を、左右20回ずつで1セットとし、3セットを目安に取り組んでみてください。
・インターナルローテーション
(1)身体を横向きにして、床に寝そべります。
(2)下側の手で、軽めのダンベルか水を入れたペットボトルを持ちましょう。
(3)下側の腕は脇を締め、ひじを90°に曲げます。
(4)脇を締めた状態で、手を天井へ向けるように前腕を持ち上げましょう。
(5)元の位置に腕を下ろします。
この動作を左右20回ずつで1セットとし、3セットを目安に取り組んでみてください。
効果
ローテーターカフには、肩周りの関節の安定性を助ける役割があります。ローテーターカフを鍛えることで、野球やテニスなど、肩の筋肉を使うスポーツをする方のパフォーマンスが向上することはもちろん、ダイエットやボディメイクに励む方も上半身の姿勢が安定しやすくなり、ケガにも強くなります。
お腹周りのインナーユニットを鍛える方法
前述したように、インナーユニットと呼ばれるお腹のインナーマッスルは、腹横筋や横隔膜、多裂筋、骨盤底筋群といった4つの筋肉で構成されています。インナーユニットには、腹圧を保って内臓の位置を維持する働きと、呼吸を支える働きの2つの働きがあります。
別名「呼吸筋」とも呼ばれるインナーユニットを鍛えるには、呼吸トレーニングが効果的とされています。
鍛え方「ドローイン」「ブレーシング」
・ドローイン
(1)床に仰向けになり、ひざは軽く曲げておきます(立ったままの姿勢でも構いません)。
(2)両手はお腹の上に置き、大きく息を吸ってお腹を膨らませましょう。
(3)息を吐きながらお腹を限界まで凹ませます。下腹部や背中の方にも刺激が入っていれば、うまく凹ませることができている証拠です。
(4)再び息を吸いますが、このときお腹が凹んだ状態を維持してください。
この動作を10秒〜30秒かけて1セット行い、慣れてきたら回数を増やしましょう。
・ブレーシング
(1)床に仰向けになり、ひざは軽く曲げておきます(立ったままの姿勢でも構いません)。
(2)両手はお腹の上に置き、大きく息を吸ってお腹を膨らませましょう。
(3)息をゆっくり吐きます。このとき、お腹は凹まないように、膨らんだ状態を維持してください。
(4)お腹が凹んだ状態で、何回かゆっくりと呼吸を繰り返します。
効果
ドローインやブレーシングを行うことで、腰痛の予防につながることに加え、ウエストのシェイプアップにも高い効果を発揮します。また、ブレーシングが上達することで、スクワットや腕立てふせなど、アウターマッスルを鍛えるトレーニングの安定性を高めるきっかけにもなるでしょう。
股関節のインナーマッスル、腸腰筋を鍛える方法
腸腰筋は、股関節前面の深層部に位置する筋肉で、腸骨筋・大腰筋・小腰筋という3つの筋肉から構成されています。腸腰筋は下半身と上半身に関わる数少ない筋肉で、股関節を曲げて脚を上げたり、背骨を固定させて体幹を安定させたりするために働きます。
鍛え方「レッグレイズ 」
(1)あお向けの姿勢になりましょう。腰を沿って痛めないように、手はお尻の下に敷きます。
(2)腰が反らないように、両足をまっすぐ天井へ向けるように持ち上げます。
(3)ゆっくり元の姿勢に戻ります。
この動作を10回〜15回で1セットとし、3セット行いましょう。インナーマッスルを鍛えることが目的のため、反動を使わずにゆっくりと行ってください。
効果
腸腰筋は、体幹の安定と脚を上げる動作の安定に関わってくる筋肉です。腸腰筋を鍛えるとで、歩く・走るといった基本的な動作のパフォーマンスアップ効果が期待できるでしょう。また、骨盤の位置調整や身体の使い方も改善されるので、ヒップアップ、姿勢改善にも効果があるとされています。
ダイエットをはじめる女性は、腸腰筋とインナーユニット(お腹周りのインナーマッスル)の2つをよく鍛えることで、メリハリのあるスタイルづくりを目指すことができます。
器具を使ったインナーマッスルの鍛え方
インナーマッスルのトレーニングは、ダンベルやバーベルのような重りがなくてもできることがメリットです。さらに、下に紹介する器具を使うとトレーニングの幅をぐっと広げることができます。
ゴムチューブ
ゴムチューブは使い方次第で、身体にさまざまな負荷をかけることができるアイテムです。例えば、次のように使うことで効果的にインナーマッスルを鍛えることができます。
・肩のインナーマッスルを鍛えるトレーニング
(1)立った状態で、両手でゴムチューブを肩幅の長さに調整して持ちます。
(2)手の甲を前に向けて、肘を軽く曲げゴムチューブを左右にゆっくり引っ張りましょう。
(3)腕が身体から30°になるまで開いて、ゆっくり戻します。
この動作を10回で1セットとして、3セット繰り返しましょう。
・股関節のインナーマッスルを鍛えるトレーニング
(1)あお向けになり、両足にゴムチューブを巻いて軽く縛ります。
(2)もも上げをするイメージで、片方のひざを曲げて足を上げましょう。
(3)股関節が90°になったら、元の位置に戻り反対の足も同じように動かします。
この動作を10回⑴セットとし、左右交互に3セット繰り返します。
ここで紹介した以外にも、ゴムチューブを活用したトレーニングはたくさんあります。手軽に利用できて、トレーニングのバリエーションも多いゴムチューブを活用しながら、効果的に体を鍛えましょう。
バランスボール
バランスボールを使ったトレーニングでは、身体を支える土台が不安定になることで、全身のバランス能力を養うことができます。また、普段はあまり使わない筋肉にまで刺激を与えることもできるため、インナーマッスルのトレーニングに最適なアイテムと言えるでしょう。
・骨盤周りの筋肉を鍛えるトレーニング
(1)バランスボールの上に座り、ひざは90°に曲げます。足は肩幅よりやや広めに開きましょう。
(2)背筋を伸ばしたまま、手は腰にあて、腰をゆっくり横に傾けて戻しましょう。反対側にも同じように動かします。
(3)骨盤を傾けるとき、頭や肩の位置はそのままを維持してください。
時計回りや反時計回りなど、さまざまな方向に動かしてみましょう。
・体幹の筋肉を鍛えるトレーニング
(1)あお向けになった姿勢になります。
(2)身体の真上で両手・両ひざで抱え込むようにバランスボールを持ちます。
(3)手とひざでボールをつぶすように、力を込めて挟み込みましょう。
(4)これ以上押せないと思ったら力を抜き、また力を入れます。
この動作を何度か繰り返してください。
初心者・女性におすすめのトレーニング方法
ここでは体力に自信がない方でも取り組める、トレーニングを紹介します。難易度に分けて紹介するので、まずは初級から試してみてください。
座りながらできるトレーニング
初級:両手と両ひざでふんばるトレーニング
(1)ひざを揃えて椅子に座り、両手はひざの上に置きましょう。
(2)姿勢はそのままで、腹筋を縮めるイメージで両手をひざに押し込みます。ひざもその力に負けないよう、ふんばってください。
(3)10秒力を入れたら一旦休憩し、再度10秒間力を入れます。
この動作を数回繰り返しましょう。
・中級者向け:ヒップフロート
(1)椅子に腰掛け、座面の両端を両手で掴みます。
(2)腹筋と両腕に力を入れて、イスの座面からお尻を浮かせましょう。
(3)バランスを取りながら3秒間キープし、再び元の姿勢に戻ります。
この動作を5回〜10回を目標にチャレンジしてみてください。
寝ながらできるトレーニング
初級:あお向けでできる骨盤運動トレーニング
(1)あお向けになり、ひざは軽く曲げておきます。
(2)腰と床の間に、軽く隙間が空いていることを確認してください。
(3)この隙間をつぶすように、腰を曲げます。おへそが下に押し込まれるイメージで、腰だけを動かすように意識してください。慣れない内は、隙間に手を入れてその手をつぶすように腰を動かす練習をしてみましょう。
この動作を5回〜10回を目安に行います。
・中級:「逆」サイクリング運動
(1)あお向けになり、ひざを曲げて脚を上げます。腰を痛めないように、両手はまっすぐ伸ばしお尻の下に敷きましょう。
(2)自転車をこぐ時とは逆の動きで、両足を交互に動かします。脚を伸ばしたとき、なるべく地面に近い位置で運動すると負荷が増します。
この動作を左右交互に20回動かします。回数よりも「ゆっくり丁寧に動かす」ことで、腹筋周辺のインナーマッスルを刺激できます。
日常生活でできるトレーニング
初級:立ったままで靴下を脱いだり履いたりする
一見するとトレーニングには見えませんが、このような日常の動作でも股関節周りのインナーマッスルを鍛えることができます。壁に手をつかず、片足立ちで靴下を履いたり脱いだりできるようになれば、体幹の安定性がかなり上がっている証拠です。
中級:電車の揺れに耐えてみよう
電車の中は、不規則な揺れが連続して起こります。まずは、つり革にしっかりつかまった状態で、急な揺れが起きても前後左右にブレないように、立ち位置をキープしてみましょう。
インナーマッスルを鍛えるトレーニングは、寝た姿勢で行えるものが多く、運動初心者の方や女性の方でも取り組みやすいのが大きな魅力です。運動にとって何よりも大切なのは継続すること。3ヶ月、半年など、長期間継続することでその効果を実感できるようになるので、スキマ時間などをうまく使って、ぜひ今回紹介したトレーニングを試してみてください!