背中が丸まって内側へ反ってしまう猫背は、姿勢が悪く見えるだけではなく、肩こりなど身体の不調を引き起こす原因になるとされています。また、肺が圧迫されるため、呼吸が浅くなり疲労がたまりやすくなるおそれも。
しかし「猫背を改善したい!」と思っていても、具体的に何をしたらいいのかわからず悩んでいる方もいるかもしれません。
そこでこの記事では、そもそも猫背の原因とは何か、どのような種類があるのかなど、基本的な内容について詳しく解説。さらに、猫背を治すための筋トレ方法や予防方法をご紹介しますので、猫背の改善に役立ててみてください。
猫背には種類がある
背中が丸まっている姿勢は「猫背」とひとくくりにされがちですが、実はその要因や状態によって分類することが可能です。まずは猫背の種類ごとに、それぞれの特徴を見ていきましょう。
猫背の種類をチェック!
・円背型猫背
胸部分の背骨が前に曲がり、背中が丸まってしまうタイプの猫背です。医学の世界では「円背」とも呼ばれており、高齢者に多く見られます。骨盤が後ろに傾いているため、腰痛を引き起こす場合も。
・前肩型猫背
肩が前に出ることで背中が丸まってしまうタイプの猫背です。肩甲骨が外側に広がった状態で、肩こりなどを引き起こす可能性があります。
・顔出し型猫背
顔が前に出てしまうタイプの猫背です。背中の丸まりが小さく見えるため、一見すると猫背だと気づかない場合も。悪化すると顎関節症や首の痛みなどを引き起こす可能性があります。
・首なし型猫背
前述した3つの複合型ともいえる猫背です。背中の丸みや肩の巻き込みに加えて、顔が前に突き出ることによって首が短く見えるため、「首なし型」と呼ばれています。
首なし型猫背の特徴は、常に上半身に力が入ってしまう事です。これにより、首の痛みや重度の肩こり、頭痛などの原因になるといわれています。
(参考:おおくぼ整骨院│猫背矯正)
猫背の見分け方
猫背の種類とその特徴について解説しましたが、実際に猫背の種類はどのように見分ければいいのでしょうか。自宅でできる簡単なセルフチェック方法をご紹介します。
・猫背かどうかのチェック方法
猫背かどうかは、壁に背を向けて立つだけで簡単にチェックできます。
まずは、頭、背中、お尻、かかとの4か所を壁に密着させてみましょう。このとき、もし「壁から頭かお尻を離したほうが楽」と感じたら、猫背の可能性があります。もし、猫背の可能性があった方は、さらに自分がどの種類の猫背に当てはまるかをチェックしてみましょう。
・種類のチェック方法
壁に背中を向け、約30cm離れた位置に立ちます。このとき、余計な力が入らないよう、リラックスした状態で行うようにしてください。そのまま壁に向かってゆっくりと後ろ歩きで進み、背中、お尻、かかとが壁に着いた時点でストップします。
以下の項目にならって各部位のすき間をチェックしましょう。
チェックポイント1:腰と壁の距離
手のひらがスッと入る程度のすき間があれば正常な状態です。ただし、手首まで楽に入ってしまう場合は、猫背とは真逆の「反り腰」状態になっている可能性があります。逆に。力を入れてようやく手のひらが入る人は、円背型猫背になっているかもしれません。
チェックポイント2:頭と壁の距離
壁に頭が着いている場合は正常ですが、手のひらがなんとか入る程度のすき間がある場合は、円背型猫背もしくは前肩型猫背の可能性があります。また、手のひらが楽に入り、力を入れなければ壁に頭が着かない人は、顔出し型猫背かもしれません。
チェックポイント3:肩と壁の距離
手のひらがなんとか入る程度のすき間があれば正常な状態です。もし拳ひとつ分が入ってしまうほど大きなすき間があれば、前肩型猫背の可能性があります。
チェックポイント1~3のすべてで正常なすき間を維持できていない場合は、首なし型猫背の可能性があります。
(参考:Kracie カンポルライフ│[専門家が教える]猫背のデメリットと猫背矯正をサポートするカンタン体操)
猫背の原因とは
本来、人間の背骨はゆるやかなS字カーブを描いています。背骨を支えるためにはお腹と背中の筋肉が不可欠ですが、運動不足などで筋力が低下している場合は、背骨を支える事ができません。そのため、姿勢が歪み猫背になってしまうのです。
また、前傾姿勢をとりがちな生活習慣も原因のひとつです。とくに座っているときは骨盤が後ろに倒れやすくなるため、バランスを取ろうとして身体が前に傾いてしまいます。さらに、スマートフォンやタブレットを使うときには、無意識のうちに首を下に傾けたり前かがみになったりと、つい姿勢が悪くなりがち。このように、身体に負担をかける体勢が日常的に積み重なった結果、猫背になってしまうのです。
ほかにも気分が沈んで前傾姿勢になることや、胃腸や内臓の痛みを和らげようとして前かがみになってしまうことなども、猫背の原因と考えられています。
(参考:Kracie カンポフルライフ│[専門家が教える]猫背のデメリットと猫背矯正をサポートするカンタン体操)
猫背を治すための筋トレ
猫背を改善するためには、凝り固まった筋肉をほぐし、背骨を支えるお腹と背中の筋肉を鍛える必要があります。
ここでは猫背の改善に効果が期待できるストレッチとトレーニング方法をピックアップ。自宅で手軽にできるものからジムのマシンを使って行うものまで、幅広く紹介します。
自宅編
身体を痛めてしまわないように、筋トレを始める前にはストレッチで筋肉をほぐしましょう。
・ストレッチ1
⑴背筋を伸ばして立ち、両手を身体の後ろに回して指を組みます。
⑵次に上を向いた状態で両手を後ろ向きに伸ばします。20秒ほどかけ、ゆっくりと行いましょう。
この動作を3セットくり返すことで、猫背の姿勢を一時的にリセットできます。仕事の休憩中など隙間時間に取り入れてみてください。
・ストレッチ2
上半身の姿勢を重点的にリセットさせたい場合は、床に寝転んだ状態でストレッチを行いましょう。
⑴仰向けになり、手のひらを床から少し浮かせたら腕を曲げ、円を描くように動かします。
⑵外回り、内回りを交互に行ってください。
この動作を各5回で1セットとし、3セットを目安に取り組んでみましょう。
・ストレッチ3
胸部分の筋肉をほぐしたいときは、バスタオルを使ったストレッチがおすすめです。
⑴肩甲骨部分に丸めたバスタオルを置き、仰向けで寝転がります。脚を90度に曲げ、両足の裏を壁にくっつけます。
⑵次に両腕をバンザイのように伸ばし、30秒姿勢をキープします。このとき、あごが上がらないように注意しましょう。
・ストレッチ4
胸部分の筋肉や首の後ろの筋肉をほぐすストレッチです。
⑴両腕を肩幅程度、両ひざを拳1つ分あけた状態で四つんばいになります。このとき、両手と両ひざの位置が離れすぎないように注意しましょう。横から見たとき、さかさまの台形があるイメージです。
⑵お尻をゆっくりとかかとにつけ、体重を後ろ側へ移動します。猫が伸びるときのように、腕は前にピンと伸ばしましょう。この姿勢を30秒間キープします。
ストレッチを行って筋肉をほぐした後は、背中やお腹の筋肉のトレーニングをしてみましょう。
(参考:Maison KOSE│見た目印象“-5歳“!【1回1分】猫背改善ストレッチ)
・背中や首の筋トレ
⑴背筋を伸ばした状態で椅子に座り、足を肩幅程度に開きます。肩と腕が水平になるように横に伸ばし、手のひらを正面にした状態でひじを90度に曲げます。
⑵手のひらが床と水平になるように、肩をひねります。
⑶腕をまっすぐ前に伸ばし、手のひらを軽く重ねます。あごは引いた状態で、顔が床と水平になるよう首を前に傾けます。
⑷約10秒間姿勢をキープしたら、ゆっくりもとの体勢に戻ります。
首を傾けた際に、背筋が曲がらないよう注意して行いましょう。
・背中とお腹の筋トレ
まず、腹筋を鍛えるトレーニングから紹介します。
⑴うつぶせに寝転び、両足のつま先を立てます。
⑵両手を肩の横に置き、ゆっくりと上体を起こしましょう。
⑶この状態を5秒キープし、元の状態にゆっくりと戻ります。
同じ動作を5セット行いましょう。
次に背筋を鍛えるトレーニングを紹介します。
⑴うつぶせの状態で両手を肩の横に置きます。
⑵背筋を意識して、5秒かけてゆっくりと上体を起こします。このとき、腕の力に頼らないように注意しましょう。その後、もとの状態に戻ります。
この動作を、10セットを目安に取り組んでみましょう。
ジム編
より本格的なトレーニングで猫背を改善したいという場合は、スポーツジムのマシンを活用してみましょう。
・ダンベル、ベンチを使った猫背解消筋トレ
背中中央部の僧帽筋を中心に背筋群全体を鍛えることができるトレーニングが「ワンハンドローイング」です。
⑴右手と右ひざをベンチに乗せ、左手を下ろした状態でダンベルを持ちます。
⑵ゆっくりと左手を曲げ、ひじの高さまでダンベルを持ち上げます。
⑶その後、ゆっくりともとの状態に戻しましょう。
この動作を左右それぞれ8~12回で1セットとし、3セットを目安に取り組んでみましょう。
背筋が曲がらないよう、常に注意して取り組んでください。
ダンベルは8~12回をなんとか持ち上げることのできる重さがおすすめです。
・バーベルを使った猫背解消筋トレ
バーベルを使った「デッドリフト」は背中だけでなく、腕、太もも、お尻とバランスよく鍛えることができます。
⑴つま先の位置にバーベルを置きましょう。脚を肩幅程度に開いたら、ひざを曲げてお尻を後ろに引きながらバーベルをつかみます。このとき、背筋が曲がらないように意識しましょう。
⑵ひざを伸ばしながらバーベルを持ち上げます。
⑶続いて腰を伸ばし、さらにバーベルを持ち上げましょう。
⑷ゆっくりともとの状態に戻したら、再び持ち上げます。
この動作を各5~10回で1セットとし、3セットを目安に取り組んでみましょう。
なるべく負荷の大きいバーベルを使って行うことが理想ですが、無理をしすぎないよう気をつけましょう。
・バーを使った猫背解消筋トレ
バーを活用して行う「フロント・ラットプルダウン」は、骨盤の傾きを保つ、背中を伸展するなどの働きに役立つ広背筋を鍛えることができるため、猫背解消に効果が期待できます。
⑴肩幅より広い位置でバーを握ります。握り方は自分に手の甲が向いた「順手」です。
⑵斜め上を向いて軽く胸を張り、肩甲骨を寄せるイメージでバーを胸の位置に徐々に引きつけます。
⑶最後にゆっくりとバーを上げます。このとき、ひじが伸び切らないように注意しましょう。
この動作を各8~12回で1セットとし、3~4セットを目安に取り組んでみましょう。
バーの重さは、男性の場合は体重の3分の1程度、女性は体重の4分の1程度から始めてみてください。
(参考:Sharez│ラットプルダウンの正しいやり方【広背筋と大円筋を効果的に鍛えよう】)
猫背を予防するための筋トレ
猫背を予防するためにはどの部位の筋肉を鍛えればいいのでしょうか。ここでは、家でも簡単に実践できる筋トレ例をご紹介します。
※記事内で紹介しているトレーニングの回数やセット数はあくまでも目安です。ご自身の体調に合わせ、無理のない範囲で行なってください。
・インナーマッスルの筋トレ
猫背の原因となる姿勢の悪化を防ぐためには、インナーマッスルが欠かせません。そこで、股関節の屈曲に欠かせない筋肉であり、骨盤を支える役割を持つ「大腰筋」を鍛えてみましょう。
まずは、椅子に座って行うトレーニングを紹介します。
⑴ 椅子に深く腰掛けた状態で、右ひじと左ひざをゆっくりと近づけます。背中を曲げるのではなく、身体をひねってひざを上げるよう心がけましょう。
⑵⑴を左右交互に30回行います。
次に、座って片ひざを立てた姿勢で行うトレーニングを紹介します。
⑴座った状態で片足を前に曲げ、ひざに両手を置きましょう。もう片方の足は後ろに引き、床にひざをつけてください。
⑵骨盤を前に押し出すイメージで体重をかけ、しっかり伸びていると感じる位置でストップ。姿勢を15秒間キープします。
背筋を曲げたり左右にぶれたりしないよう注意しましょう。
・肩甲骨の筋トレ
肩甲骨を鍛えることも猫背や肩こり予防につながるといわれています。次に紹介するトレーニングではダンベルを使用するため、事前に用意しておきましょう。
⑴両手にダンベルを持ち、胸を張りながらマッスルポーズのように腕を開きます。このとき、ひじは少し曲げた状態を保ちましょう。
⑵10秒ほどかけて肩甲骨にひじを引き寄せ、また元の姿勢に戻します。
この動作を、10回を目安に行ってみましょう。ダンベルがない場合は、水を入れたペットボトルで代用できます。
また、スポーツタオルを使った筋トレも猫背予防に役立ちます。
⑴タオルを持った片腕を肩甲骨付近に置き、もう片方の手でタオルの先端を頭上に引っ張りましょう。
⑵5秒体勢をキープしたら、左右の手を入れ替えて行います。
この動作を各5回で1セットとし、無理のない範囲で行ってみましょう。動作中は背筋が曲がらないよう注意してください。
猫背を治したい人へおすすめのグッズ
筋トレの効果をより高めるグッズも販売されています。筋トレ方法と併せて上手く活用することで、より猫背予防効果を高めまる事ができるでしょう。
チューブ
チューブを使った筋トレは、猫背改善に役立ちます。また、強度にバリエーションがある製品が多いため、それぞれのレベルに合わせた負荷でトレーニングできるというメリットもあります。
チューブを使用した筋トレのひとつとして「ベントオーバーリバースフライ」を紹介します。
⑴両手にチューブを持った状態で両足を肩幅程度に開き、足でチューブの先端をチューブを踏みます。このとき、チューブの中心が足の中央に来るようにしましょう。
⑵ひざを軽く曲げ背筋を伸ばした状態で、上半身を前に45度傾けます。猫背や腰の反りに注意しましょう。
⑶肩甲骨を寄せるようなイメージで、約2秒かけてチューブを上に引っ張ります。腕はお尻に向かって斜め後ろに動かしましょう。
⑷3秒かけてゆっくりと元の状態に戻しましょう。
この動作を10回で1セットとし、2~3セットを目安に行ってみましょう。余裕がある人は1セットを15回程度に増やしてみるのもおすすめです。また、チューブを上に引っ張る際、普通に動かすだけでも筋トレになりますが、両手の親指が天井を向くよう腕をねじるとさらに効果がアップさせる事ができるでしょう。
筋トレの頻度は1週間に2回程度でも十分です。無理のない範囲で行ってみてください。
ダンベル
筋トレグッズの定番であるダンベルを活用して首や肩、背中上部を鍛えることで猫背解消に効果が期待できます。
⑴ダンベルを2つ使って行う「ダンベルシュラッグ」を試してみましょう。
⑵ 立った状態で両手にダンベルを持ちます。肩をすくめながらダンベルを軽く持ち上げます。
この動作を8~12回で1セットとし、3セットを目安に行ってみましょう。
ダンベルは、ダンベルシュラッグの1セットがギリギリ可能な重さを選ぶといいでしょう。ただし、いきなり重たいものを使うとケガをする恐れがあるので無理のない範囲で行ってください。
バランスクッション
エクササイズなどに活用されることが多い「バランスクッション」も猫背予防におすすめのアイテム。椅子に置くだけで手軽に筋トレができます。
⑴椅子にバランスクッションを敷いて座り、「前へならえ」のように両手を前に伸ばします。このとき、手のひら同士が向かい合うようにしましょう。
⑵肩甲骨を引き寄せるイメージで腕を後ろに動かします。ひじは曲げて構いませんが、姿勢を崩さないよう注意しましょう。
⑶5秒間キープした後、ゆっくりともとの体勢に戻してください。
この動作を、5セットを目安に取り組みましょう。
(参考:タニタオンラインショップ│タニタサイズ)
猫背をそのままにしておくと、首や肩の慢性的なコリを引き起こし血行が悪くなったり、呼吸が浅くなって代謝も落ちたりと、身体に悪い影響を及ぼしかねません。予防するためには、筋トレはもちろん、スマホを使うときに下を向かないなど、生活習慣を見直すことも有効的と言えます。今回紹介したストレッチやトレーニングを参考に、ぜひ日常生活取り入れてみてください。