金融資産はいくらですか?と聞かれて、あなたは迷わず即答できますか。「金融資産」は、富裕層を定義する基準としても使われるなど、日常的に耳にすることの多い用語です。しかし、それが具体的に何を指すのかは、知らない人が多いのではないでしょうか。
この記事では、金融資産とは何かを解説し、続いて、金融資産の平均値や中央値、高額な金融資産を持つ世帯の割合も見ていきます。自分の金融資産がいくらあるのかを把握したい人や、自分の金融資産額を同年代の平均と比べたい人は、是非参考にしてください。
金融資産とは
まずは、金融資産とは何を指すのかを確認しましょう。金融資産とは、現金化できる実体を持たない資産のことを言います。土地や家などの不動産は「実体」のある資産ですので、金融資産には含まれません。
それでは、具体的にどういったものが金融資産に含まれるのか、分類に従って詳しく見ていきましょう。
金融資産の分類
金融資産には、主に次の6つが含まれます。
なお、場合によっては、現金と商品券・小切手は金融資産として扱われない場合もあります。ローンを組む際などには金融機関から金融資産の額を確認されますので、その際には金融資産の定義をきちんと確認するようにしましょう。
富裕層の定義
お金持ちのことを「富裕層」と呼ぶことがありますが、どの程度のお金持ちを「富裕層」と呼ぶのかは、保有する金融資産の額によって定義するのが一般的です。
金融資産についての定期的な調査を実施している野村総研では、世帯が保有する金融資産の総額から負債の総額を差し引いた「純金融資産保有額」によって、世帯を5つの階層に分類しており、このうちの1つの階層が「富裕層」と名付けられています。
野村総研の階層分類は、次の表のようになっています。
(参考:株式会社野村総合研究所 野村総合研究所、日本の富裕層は127万世帯、純金融資産総額は299兆円と推計)
この定義に従うと、例えば多数の高額な不動産を保有している人でも、金融資産が1億円に満たなければ、富裕層とは呼べないことになります。同じように、どれだけ収入が多い人でも、稼いだお金を金融資産として手元に残していなければ、富裕層には該当しないと言えます。
金融資産の平均値・中央値
金融資産がどういうものかわかったところで、続いては、日本の平均的な世帯の金融資産がどの程度なのかを見ていきましょう。
ここでは、金融広報中央委員会が毎年行っている「家計の金融行動に関する世論調査」のうち、二人以上の世帯の調査結果をご紹介します。(参考:金融広報中央委員会 令和元年(2019年)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査])
最新の調査結果によると、二人以上世帯の金融資産保有額は、平均1,139万円でした。この平均額の内訳を見てみると、預貯金が487万円、保険が384万円、有価証券が224万円、その他が44万円となっています。
平均がこれほど高水準であることに驚いた人もいるかもしれませんが、平均値は高額な金融資産を持つ世帯があると、それによって大きく引き上げられてしまいます。このため、平均値は必ずしも平均的な世帯の金融資産額を示しているとは言えません。
そこで、平均的な世帯の実態をより忠実に表す指標として使われるのが「中央値」です。中央値とは、回答の値が小さい順に世帯を並べた時に、ちょうど真ん中に来る世帯が回答した値です。同調査によると、金融資産保有額の中央値は419万円となっており、平均値を見て驚いた人も、現実的な数字に思える数字に近づきました。
中央値と平均額との開きがとても大きいことから、高額な金融資産を保有する世帯が多いことがわかります。
金融資産の平均値・中央値(20代)
同じ調査の結果を使って、金融資産の保有額を世代別に見ていきましょう。
20代では平均が165万円、中央値が71万円となりました。資産の分類別に平均額の内訳を見ると、次のグラフの通りになります(単位:万円)。
金融資産の平均値・中央値(30代)
30代では、平均金融資産保有額が529万円、中央値が240万円でした。平均額の内訳は次のとおりです。
金融資産の平均値・中央値(40代)
40代では、平均が694万円、中央値が365万円となりました。平均額の内訳は次のとおりで、30代までと違って、保有する保険の総額が預貯金額を上回っていることがわかります。
金融資産の平均値・中央値(50代)
50代の保有金融資産の平均は1,194万円と、初めて1千万円の大台を超えました。中央値は600万円、平均額の内訳は次のグラフのとおりです。
このデータから、年代が上がるにつれて金融資産の額が増えていく様子がよくわかります。また、上の年代ほど預貯金の割合が小さくなり、保険や株式の保有額が増えていく傾向にあるようです。
なお、ここでの保険には、生命保険、損害保険、個人年金保険が含まれています。
金融資産の分布
最後に、金融資産の保有額が多い世帯が、日本全体のどれくらいの割合を占めているのかを計算してみました。
ここでは、先に紹介した野村総研の2017年の調査結果、そして2019年の「家計の金融行動に関する世論調査」の結果を参照しています。
金融資産1億円以上の割合
金融資産1億円以上の世帯は、野村総研の分類で言うと「富裕層」と「超富裕層」のトップ2層に当たります。野村総研による最新の調査結果では、富裕層が118.3万世帯、超富裕層が8.4万世帯とされていますので、合計126.7世帯となり、割合で見ると全体(同調査の全ての層の合計世帯数:5,372.3万世帯)の2.36%となります。
金融資産5千万円以上の割合
金融資産5,000万円以上1億円未満の層は、「準富裕層」と呼ばれる人々です。この層は合計322.2万世帯という調査結果ですので、割合で見ると全体の6%に当たり、これを先ほどの金融資産1億円以上の世帯と合算すると、8.36%。つまり、金融資産5,000万円以上の世帯は、日本全体の1割にも満たないということが分かります。
金融資産3千万円以上の割合
同じ調査によると、「アッパーマス層」と呼ばれる、金融資産3,000万円以上5,000万円未満の人々は、日本全体で720.3万世帯あり、全世帯の13.41%を占めています。
金融資産5,000万円以上の世帯と合わせると21.76%となりますので、日本の2割強の世帯には、金融資産が3,000万円以上あるという結果に。
金融資産2千万円以上の割合
野村総研の分類では、金融資産3,000万円未満の世帯は「マス層」としてまとめられていますので、この先は「家計の金融行動に関する世論調査」の数字を使用します。
2019年の同調査によると、金融資産の保有額が2,000万円以上3,000万円未満の世帯は、回答者(回収された調査票のうち無回答のものを除いた数:2,936世帯)の7.25%でした。
なお、この調査では、金融資産が3,000万円以上の世帯は回答者の9.74%となっていますので、金融資産2,000万円以上の世帯の割合は、全体の約17%となります。野村総研のデータと数字にやや開きがありますが、野村総研の調査では、高額な金融資産を保有する世帯がより多く存在するものと見積もられているようです。
金融資産1千万円以上の割合
「家計の金融行動に関する世論調査」結果から、同じ要領で金融資産の保有額が1,000万円以上2,000万円未満の世帯の割合を計算すると、回答者の16.08%という結果になりました。
金融資産2,000万円以上の世帯合計が約17%でしたので、金融資産1,000万円以上の世帯を全て合わせると、回答者の33.07%となります。つまり、日本の全世帯の3分の1は、1,000万円以上の金融資産を保有しているようです。
銀行で住宅ローンを組む際などには、自分の金融資産がいくらあるのか伝える必要があります。借り入れの予定がある人もそうでない人も、この機会に自分の金融資産を計算して、同じ年代、あるいは日本全体で自分がどのくらいの位置にいるのか、確認してみてはいかがでしょうか。