疲れを感じたときやお風呂あがりになんとなく身体をほぐしてみることはあるものの、具体的な身体のほぐし方は分からないという人は多いはず。
実は、ストレッチを継続的に行うことで、リラックス効果や疲労回復、さらには基礎代謝の向上にも効果が期待できるんです。そこでこの記事では、ストレッチの主な効果について解説したうえで、身体の部位ごとのストレッチ方法を紹介します。
ストレッチに期待できる効果
ストレッチは、意識的に筋肉や関節を伸ばすことで筋肉の柔軟性を高めることができる運動です。
取り組む場面やアプローチする部位よって使い分けることで、運動前後の準備運動やクールダウンはとしてはもちろん、そのほかにも基礎代謝の向上やリラックス、疲労回復などにも効果が期待できるとされています。ここでは、ストレッチのさまざまな効果について詳しく紹介します。
(参考:ストレッチ専門店 SUPERストレッチ│ストレッチの目的と効果)
基礎代謝アップ
日常的にストレッチを行うことで、基礎代謝を高める効果が期待できます。
ストレッチによって身体の柔軟性が高まることで血流が良くなり、身体の各部位の可動域も広がります。すると、自然に身体の動きが大きくなり日常的に運動量が増え、より筋肉に刺激を与えられるため、基礎代謝の向上が期待できるのです。
パフォーマンス向上
身体を適度に動かすことで筋を温めて、関節や筋に動作を与える「動的ストレッチ」を行って身体の柔軟性を高め関節の可動域を広げることは、運動のパフォーマンスの向上に効果が期待できるとされています。
反対に、ゆっくりと関節を伸ばすことで動きを加える「静的ストレッチ」を過度に行うと、パフォーマンスが低下する可能性があるとされています。しかし、パフォーマンスの向上に向けた運動前のウォーミングアップとして有効的な「動的ストレッチ」に対し、「静的ストレッチ」は以下で紹介する疲労回復やクールダウンとして有効的とされているため、運動の場面によってストレッチを効果的に使い分けましょう。
また、この主な違いについては「ストレッチの種類」の項目にて詳しく解説します。
(参考:ASPI│ストレッチの重要性について|意外と知らない効果や影響)
ケガの予防効果
ストレッチを行って身体の柔軟性を上げることで、ケガ予防の効果も期待できます。
柔軟性が低いと、転倒など突然の事態に身体が反応できず大きな怪我をしやすくなる可能性があります。また、柔軟やストレッチなどの準備運動をしておらず身体の柔軟性が低い状態で激しい運動をすると、思いがけず筋や筋肉をいためてしまうという危険性も。
運動をする前は、簡単にストレッチを行っておくことでケガの予防につながります。安全に楽しむためにも、とくに普段あまり運動をしないという方は、ストレッチをするようにしましょう。
(参考:WELL-BEING GUIDE│ストレッチは怪我の防止になるの?)
疲労回復
ストレッチは、筋肉の疲労回復にも効果も期待できます。
運動によって疲労した筋肉をそのままの状態にしておくと、身体の不調やパフォーマンスの低下をもたらしてしまいます。そこで、運動後にストレッチを行うことによって硬くなった筋肉がほぐれるため、血流が良くなり、その結果、酸素や栄養補給が身体の隅々まで行き渡り、疲労の回復を早めることができるのです。
(参考:アリナミン│疲れの対処法~運動とビタミン編:運動と疲労)
リラックス効果
前述したように、ストレッチには筋肉を柔らかくし血流を良くする働きがあるほか、心身のリラックス効果も期待できます。ストレッチを行うことで副交感神経が活性化し、これによりストレスが軽減されリラックス効果を感じることができるのです。
副交感神経を活性化させることは質の良い睡眠にもつながるため、リラックス効果や休息を求めてストレッチをする場合は、たっぷりと時間をかけて取り組むよう心掛けましょう。
(参考:羽毛ふとんリメイク&リフォーム│睡眠前のたった数分間でできるストレッチで快眠に!)
ストレッチの種類
ストレッチは、関節を動かすことで可動域を広げる「動的ストレッチ」とゆっくり伸ばすことで筋肉を弛緩させる「静的ストレッチ」に分類されていますが、「動的ストレッチ」はダイナミックストレッチとバリスティックストレッチ、「静的ストレッチ」はスタティックストレッチと、目的に応じてさらに3種類に細分化することができます。
この3つの主要ストレッチと道具を使った方法について詳しく見てみましょう。
(参考:Fitness online│以外と知らない?目的に応じたストレッチの効果と方法)
ダイナミックストレッチ
関節を大きく動かしながら、筋肉を伸縮させるのがダイナミックストレッチです。ラジオ体操がその代表と言えるでしょう。ダイナミックストレッチは運動前のウォーミングアップに用いられることが多く、体温を上げる目的や関節の可動域を広げる目的として効果的が期待できるとされています。
(参考:WELL-BEING GUIDE│ストレッチにはどのような種類があるの?)
スタティックストレッチ
ゆっくりと時間をかけて筋肉を伸ばしていくのがスタティックストレッチです。
スタティックストレッチは、筋肉を伸ばし緩めることで血流を促すため、身体をリラックスさせる効果が期待できます。ダイナミックストレッチとは反対に、運動前のウォームアップとして行うと筋が弛緩しすぎて、筋力が発揮しにくくなってしまう場合があるため注意してください。
バリスティックストレッチ
反動や弾みをつけてテンポよく行うのが、バリスティックストレッチです。
勢いをつけて筋肉にアプローチするため、ダイナミックストレッチに比べて、より大きな力が筋肉に加わるのが特徴です。運動前の準備運動として用いられることが多く、こちらも主にパフォーマンス向上に効果が期待できるとされています。反動をつけてアキレス腱を伸ばすストレッチなどをイメージするとわかりやすいでしょう。
筋肉の温度上昇や柔軟性アップにも効果が期待できますが、筋肉に強い力がかかる運動のため、筋や毛細血管がダメージを受けてしまう危険性も。正しい方法で、十分注意して取り組みましょう。
ストレッチポールを使う
最近では、フィットネス用品の1つである「ストレッチポール」を使用したエクササイズにも注目が集まっています。ここでは、ストレッチポールに仰向けに乗った際の基本姿勢をご紹介します。
⑴ポールの端にお尻を乗せ、両手を床につけてください。その状態のまま、両手で体を支えながら、ポールの上に仰向けになって乗りましょう。
⑵降りる際は、左右どちらでも自分が降りやすい側にお尻をずらして、身体をすべらせるように降りてください。
ストレッチポールを適切に使用することで、インナーマッスルと称される身体の内側にある筋肉が刺激され、アウターマッスルと称される身体の外側の筋肉がゆるみます。さらに、ストレッチポールに乗ることで副交感神経が刺激されるため、身体をリラックスした状態にできるでしょう。
ストレッチポールは、手軽に入手できるうえ、ストレッチだけではなく筋トレにも活用できるため、ぜひ活用してみてください。
(参考:stretchpole│より良い効果を得るために基本の3ステップ)
ストレッチの方法
ストレッチは部位ごとにアプローチの方法が異なります。ここでは、多くの種類があるストレッチの中から、椅子に座ったまま行えるものや、寝る前に簡単に行えるものなど、手軽に取り組めるメニューを部位別にご紹介します。
腕
パソコン作業や車の運転を長時間していると、腕に負担がかかり腱鞘炎になってしまう場合も。こまめにストレッチを行うことで腕の筋肉を伸縮させ、血流を促しましょう。
⑴椅子に浅く座った状態で、右手で左手の甲を包み込みます。このとき、左手の手首と指を軽く曲げておきましょう。
⑵右手で左手を支えたまま、左の掌が身体の内側に向くよう斜め下に向かって左腕を伸ばします。肘を伸ばしたまま、10秒間静止します。このとき、左の指は軽く曲げたままにしておきましょう。
この動作を左右1回ずつで1セットとし、3セットを目安に取り組んでみてください。前腕の外側と前腕の内側を伸ばすイメージで行いましょう。
肩・肩甲冑
肩甲骨の周囲に集まっている「褐色脂肪細胞」には脂肪を燃焼させエネルギーに変換する作用があると考えられているため、意識して肩甲骨のストレッチを行うことで代謝アップが期待できるでしょう。
⑴腕を頭上に上げ、手のひらを外側に向けて甲を合わせます。
⑵背中側へゆっくりと腕をおろしていき、お尻の後ろで指先同士を合わせましょう。
この動作を1往復1セットとし、10~20セットを目安に行ってください。肩甲骨から腕を身体の外側に向かって動かすことを意識して取り組みましょう。
背中
デスクワークのあとやスマートフォンを長時間使ったあとなど、背中に疲れを感じた際は広背筋を伸ばすストレッチを行ってみましょう。疲れが取れるだけでなく、猫背防止にも効果が期待できます。
⑴正座して両腕を上に伸ばします。右手で左手首を掴んで右側へ引っ張り、右側の床に向かってお尻を落としてください。
⑵右手で左手首を引っ張ったまま、左側の肋骨部分を押し出すイメージで、20〜30秒間身体の側面を伸ばします。
⑶さらに、腕を斜め前に移動させ、背中の上部・肩甲骨周辺を伸ばすイメージで背中を少し丸めましょう。20〜30秒間この状態をキープします。
⑷反対側も同様に⑵〜⑶を繰り返し行ってください。
股関節
上半身と下半身をつなぐ大切な部位である股関節にアプローチすることで、血流を良くすると同時に歩行や運動によって蓄積された疲労をほぐしましょう。
⑴地面におしりを付けて座った姿勢から両足裏を合わせ、身体を前に倒す。
⑵そのままの状態で、ゆっくりと呼吸をしながら30秒間静止しましょう。
お尻
歩く動作や座っているときなど、お尻は日常の中のさまざまな動きをサポートしている筋肉。なかでも、お尻の表面に位置する大きな筋肉である「大殿筋」を中心にほぐすストレッチをご紹介します。
⑴床に座った状態で、右の膝を曲げて横に倒し、外側を床につけましょう。
⑵両手を身体の横の床について、骨盤をまっすぐ起こしながら左脚を真後ろに伸ばします。
⑶まっすぐ前に向かって体重をかけてください。この時、重心が左右にブレないよう注意しましょう。
⑷お尻の右側の筋肉を伸ばしながら30秒間静止します。
この動作を、脚を入れ替えて左右2回ずつ行いましょう。
前後に開脚するイメージで、骨盤を立たせることと、体重をしっかりと前方にかけることを意識して取り組んでください。
太もも(前)
日常生活を送る上で、特によく使うのが太ももの筋肉。丁寧にストレッチを行うことで筋繊維を傷めずにほぐすことができます。
⑴うつ伏せの姿勢で、床に肘をつき両手であごを支えましょう。
⑵足を後ろに曲げて、かかとで交互にお尻を叩きます。
⑶力を入れすぎずに1分間続けてください。
この動作を1分間で1セットとし、2~3セットを目安に取り組みましょう。
太もも(後ろ)
ハムストリングと呼ばれる太もも裏の筋肉は、日常生活で使うことの少ない部位です。そのため、久しぶりにダンスやスポーツをした翌日、筋肉痛になっていたなんてことも。普段から適度にストレッチをしておきましょう。
⑴左脚は伸ばし、右脚は膝を外側に曲げて床につけた状態にして座ります。このとき、背筋はまっすぐ伸ばしておきましょう。
⑵ゆっくりと呼吸をしながら、伸ばした左脚の先へ上半身を近づけます。余裕がある人は、左足を両手でつかみながら身体を引き寄せましょう。
⑶10秒ほど静止したら、⑴の姿勢に戻してください。
⑷左右の脚を入れ替えて⑴〜⑷を繰り返し行いましょう。
この動作を左右1回ずつで1セットとし、5〜10セットを目安に取り組みましょう。太ももの裏が伸びる感覚を意識してストレッチを行ってください。
ストレッチのよくある質問
最後に、ストレッチに関してよくある質問よくある質問にお答えします。
ストレッチするタイミングは?
ストレッチはお風呂上がりと運動の後に行うのがおすすめです。血流がよくなっており、筋肉が柔らかい状態でストレッチを行うと、筋肉がよく伸びるようになるため効果的に身体をほぐすことができます。
ストレッチを朝と夜でするならどちらがいい?
朝と夜とでは、ストレッチによって得られる効果が違うため、どちらがより優れているということはありません。
朝にストレッチを行うことで血の巡りが良くなり、内臓や自律神経など身体の機能が正常に働き出すため、身体を気持ちよく目覚めさせることができます。一方、夜寝る前にストレッチを行うと、副交感神経が優位になり、リラックスした状態でよく眠れるという効果が期待できます。自分が求める効果によって、ストレッチを行う時間帯を選びましょう。
(参考:glico│朝のストレッチで1日を快適に)
ストレッチをする際の注意点は?
ストレッチは手軽に行なうことができ、動きも少ないため安全な運動とされていますが、正しい方法で取り組まなければ十分な効果を期待することはできません。
厚生労働省が推奨している以下の5点を厳守して正しく取り組むよう心がけましょう。
・20秒以上かけて伸ばす
・伸ばす部位を意識する
・痛くなく身持ち良い程度に伸ばす
・呼吸を止めない
・部位を適切に選択すること
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット│ストレッチングの実際)
ストレッチはどのくらい続けるのがいい?
ストレッチの効果を実感できるまでの期間は、人によって異なります。数ヶ月で筋肉や身体の柔軟性の変化を実感できる場合もありますが、ストレッチの強度や普段の体温などによって効果の出方が違ってくるとされているため、期間にこだわらず継続して続けてみることが重要だと言えるでしょう。
(参考:WELL-BEING GUIDE│ストレッチはどの位の期間続ければ効果が出るの?)
体が硬くても続ける意味はある?
身体を柔らかくしたいとは思うものの、身体が硬くてなかなか続けられないという人もいるかもしれません。しかし、ストレッチは継続して行うことで効果的に柔軟性を高める効果が期待できます。
ただし、体が硬い人の場合は、伸縮しやすい大きな筋肉も硬くなっている可能性があるため、その状態のまま奥にある小さな筋肉のストレッチをしても、十分な効果を得られません。
初心者向けのストレッチメニューの中から、無理せず続けられるような内容を選んで継続して取り組んでみましょう。
ストレッチによって得られる効果を実感できることがやりがいにつながり、継続しやすくなります。期待したい効果や、ほぐしたい部位がある方はぜひ今回ご紹介したストレッチに挑戦してみてくださいね。
ストレッチを行う際は、手順だけでなく目的に合った方法やタイミングを意識して取り組むよう心がけましょう。