自転車は、通勤、通学、子供の送り迎えなど多くのシーンで活躍する、とても身近な乗り物です。また、自転車を漕ぐ動きは有酸素運動になるため、ダイエットの一環として取り入れている人も多いのではないでしょうか?
そこでこの記事では、自転車ダイエットの効果やメリット、効果的なダイエット方法について詳しく解説します。
自転車で消費するカロリー
自転車で消費するカロリーを知る時に便利なのが、運動強度を表すメッツ(METs)という単位です。メッツは安静時を1とした場合、その運動がどれくらいのエネルギーを消費するかを表します。
(参考:松本協立病院|MTEsとは?)
そして、実際に消費するカロリーは次の計算式で求めることができます。
METs×時間×体重(kg)=消費カロリー(kcal)
日本人の20歳以上の平均体重は、男性で66.8kg、女性で53.2kgとなっており、これを元にして自転車で消費するカロリーを計算すると次のようになります。
・通勤程度のペースで1時間漕いだ場合(時速16.1km)
運動強度:4.0METs
・男性の消費カロリー=約267.2kcal
・女性の消費カロリー=約212.8kcal
・レジャー目的の少し速いペースで1時間漕いだ場合(時速19.3〜22.4km)
運動強度:8.0METs
・男性の消費カロリー=約534.4kcal
・女性の消費カロリー=約425.6kcal
次は、ほかの代表的な有酸素運動であるウォーキング、ジョギング(ランニング)、水泳で消費するカロリーと、自転車で消費するカロリーを比較してみましょう。
(1)約6000歩(1時間程度)でゆっくり散歩した場合
運動強度:3.5METs
・男性の消費カロリー=約233.8kcal
・女性の消費カロリー=約186.2kcal
(2)時速6.4kmのスロージョギングを1時間行った場合
運動強度:6.0METs
・男性の消費カロリー=約400.8kcal
・女性の消費カロリー=約319.2kcal
(3)時速8kmのランニング寄りのジョギングを1時間行った場合
運動強度:8.3METs
・男性の消費カロリー=約554.4kcal
・女性の消費カロリー=約441.6kcal
(4)平泳ぎでゆっくり1時間泳いだ場合
運動強度:5.3METs
・男性の消費カロリー=約354.0kcal
・女性の消費カロリー=約282.0kcal
(5)クロールでゆっくり1時間泳いだ場合
運動強度:5.8METs
・男性の消費カロリー=約387.4kcal
・女性の消費カロリー=約308.6kcal
この計算結果をもとにして、それぞれの有酸素運動を消費カロリーの多い順に並べた場合、ランキングは次のようになります。
7位:約1時間のゆっくり散歩
6位:時速16.1kmの自転車
5位:ゆっくり泳ぐ平泳ぎ
4位:ゆっくり泳ぐクロール
3位:時速6.4kmのスロージョギング
2位:時速19.3〜22.4kmの自転車
1位:時速8kmのランニング寄りのジョギング
(参考記事:厚生労働省|身体活動・運動)
自転車ダイエットのメリット・デメリット
消費カロリーという観点以外でも、自転車ダイエットにはさまざまなメリット、あるいはデメリットがあります。
メリット
・通学や通勤などの移動時間を活用できる
自転車は通学、通勤、子供の送り迎えなど、さまざまな移動シーンで利用できる便利な乗り物です。そのため、日常な移動で自転車を使うようにすれば、移動時間利用して有酸素運動を行うことができます。
・体への負担が少ない
ランニングやジョギングは、着地のたびに足腰に大きな負担がかかるため、足首・ひざ・腰を痛めてしまうリスクがあります。一方で、自転車に乗る際は体の重さが直接足にかからず、体への負担が少ないため、安心して取り組むことができるでしょう。
・外の空気や景色を楽しめる
自転車での移動は、体への負担が小さい分、遠出がしやすくなります。そこで、いつもは行かない場所に「自転車旅」をすれば、周りの景色を楽しみつつカロリーも消費できる、まさに一石二鳥のダイエットができますね。
・疲れにくいため無理なく続けられる
ランニングなどのほかの有酸素運動と比較した場合、自転車は肉体的にも精神的にも疲労を感じにくいといわれています。有酸素運動は早いペースで行なうよりも、長い時間継続して行なう方が高い脂肪燃焼効果を発揮するため、無理なく続けられる自転車はダイエットに最適です。
・筋肉量の多い下半身を鍛えられる
私たちの体は、上半身に比べて下半身の筋肉量が多く、特に太ももやおしりには表面積の大きな筋肉が集中しています。そして、自転車では下半身を中心に動かすため、自然とこれらの大きな筋肉を鍛えることができるのです。
また、筋肉量が増えれば、運動中だけでなく安静時の消費カロリー=基礎代謝アップにつながります。つまり、楽しく自転車に乗っているだけで、「太りにくくやせやすい体づくり」を目指すことができるでしょう。
・美脚効果
特に女性の場合、「自転車に乗ると脚が太くなる」と心配に思う方もいるかもしれません。しかし、大きくたくましい太ももを持つ競輪選手は、限界まで下半身の筋肉に負荷をかけるトレーニングを日常的に行っています。一方、有酸素運動として自転車に乗る場合は、負荷が小さくゆっくりとした動作がメインになるため、筋肉が肥大化する心配は少ないでしょう。
つまり、自転車に乗ると脚が太くなるわけではないので、安心してください。
デメリット
自転車ダイエットは万能なダイエット法に見えますが、いくつか弱点もあります。
・自転車を持ってないと買う必要がある
ランニングやジョギング、散歩と違い、自転車ダイエットを行うには自転車が必要です。自転車を持っていない方は、安いものでは1万円台、クロスバイクやロードバイクなどを買うとなると3万円〜数十万円の初期投資が必要になることを覚えておきましょう。
・天候に左右されやすい
雨や雪など、天気が悪い日に自転車に乗ると、転倒して怪我をしたり、体が濡れて風邪をひいたりするリスクが高くなってしまいます。
そのため、天気が悪い日は、自転車には乗らずに室内でできる有酸素運動(ももあげや縄跳びなど)をするなど、あらかじめルールを決めておくのがおすすめです。
・強度を上げることが難しい
自転車で運動強度を上げる場合、ギアを上げてペダルを重くする、ペダルを回す速度を上げるといった方法が考えられます。しかし、これらを行なうと、運動強度が上がると同時に、自転車のスピードも速くなってしまうのです。特に、通勤・通学路などの路面や狭い公園でスピードを出す行為は大変危険なため、なかなか自転車の運動強度を上げるのは難しいでしょう。
(参考:Panasonic オンラインストア│自転車の消費カロリーを計算!今すぐできる効率的な自転車ダイエット)
自転車ダイエットで意識するポイント
自転車ダイエットを行う際は、次のポイントを意識することで、より効率よく脂肪を燃焼させることができます。
・サドルをいまよりも高く設定する
現在、シティサイクル(ママチャリ)に乗っている方は、サドルを今よりも高くしてください。ペダルが一番下にきたとき、ひざがほんの少し曲がっている位置が目安です。
こうすることで、自転車をこぐときにひざの負担を大きく減らすことができます。また、自転車に乗っているときに前傾姿勢になりやすく、その状態で姿勢を保つことにより腕や腹筋、背筋と上半身の筋肉が刺激できます。
・ギアを重くしすぎない
最近では、シティサイクルでも変速ギアが付いたタイプが増えています。ただし、ギアを重くすると、スピードが上がる代わりに脚の筋肉への負荷が増えるため、脚が太くなってしまう可能性があるのです。
有酸素運動を目的として自転車に乗る場合、ペダルを回すペースは1分間に60〜65回転程度
が目安とされているため、これよりも少なくならないようにギアをうまく調整してください。
・スピードよりも「長く続けられるペース」を維持する
有酸素運動の場合、ただ単に運動強度が高ければいいというわけではありません。効率よく脂肪を燃焼させるには、適度な強度で長く続けることが重要になるため、鼻歌を歌うほどの余裕はないけれど、息切れするほどではないくらいのペースを目標に、自転車をこぎ続けてみましょう。
筋トレも一緒に行うことで効果アップ
効率よくダイエットを行うためには、有酸素運動でカロリーを消費しつつ、筋トレ(無酸素運動)で筋肉量を増やして基礎代謝をアップさせることが重要です。さらに、筋肉量が増えることで、有酸素運動時のケガのリスクや疲労感が軽減できるといったメリットもあります。
ここで紹介する筋トレは、いずれも自宅でかんたん+道具不要でできるものばかりなので、ぜひ明日からのダイエットに取り入れてみてください!
※記事内で紹介している回数やセット数はあくまでも目安です。ご自身の体調を考慮し、無理のない運動強度で行うようにしてください。
①ノーマルスクワット
(1)両足は肩幅よりやや広く開き、つま先を少し外へ向けます
(2)両手はまっすぐ前に伸ばすか、胸の前で組みましょう
(3)(2)の体勢から、ももが地面と水平になるまでゆっくりとしゃがみます。このとき、ももの前の筋肉が効いていることを意識してください。また、しゃがんだ際には膝がつま先の向いている方向より内側に入らないように注意し、顔は傾いた背筋に合わせて前方の床を見るようにしましょう。
(4)もも裏とお尻の筋肉を使うイメージで、まっすぐ立ち上がります。
この動作を10回1セットとし、3セット行います。慣れてきたら1セットの回数を増やしてみましょう。また、ダイエット目的の場合は、「しゃがむ・しゃがんだ姿勢をキープ・立ち上がる」という一連の動作を、それぞれ「3秒・3秒・3秒」かけながらゆっくり行うのもおすすめです。
さらに詳細にスクワットの方法について知りたい方は、こちらの記事を参考にしてみてください。
②プッシュアップ(腕立てふせ)
(1)うつ伏せの姿勢になります
(2)両手を胸の真横の位置で床につきましょう
(3)肩甲骨を寄せつつ、両手・両足で身体を浮かせるように手を伸ばします
(4)ひじの角度が90°になるくらいを目安に曲げて、胸を床に近づけましょう
(5)(4)の体勢から、両手の力を使って元の姿勢に戻ります
10回〜15回を1セットとし、3セットを目安に行います。自転車で頻繁につかう下半身だけでなく、上半身の筋肉もトレーニングで鍛えることで、全身のスタイルが整いやすくなるでしょう。
③プランク
(1)うつ伏せの姿勢になります
(2)つま先とひじを肩幅にして、身体を浮かせます
(3)かかとから背筋まで一直線にした姿勢を保ち、30秒〜1分その状態を維持しましょう。
インターバル(30秒〜1分)をはさみつつ、3セット行ってみてください。プランクはお腹を中心に、肩、腰、背中といった全身のインナーマッスルを刺激できるため、自転車の安定性アップにも効果的です。
慣れてきたら片足を地面から離す、片手を地面から離して前に伸ばすなど、より不安定な姿勢を取って負荷を上げてみましょう。
自転車ダイエットでよくある質問
ここからは、自転車ダイエットにまつわるさまざまな質問にお答えします!
脚やお尻以外の部分も痩せる?
自転車では、主に太ももとおしりの筋肉が刺激されます。しかし、それ以外の筋肉が休んでいるわけではありません。
例えば、前傾姿勢で自転車をこいでいるときは、姿勢を保持するためにお腹や背中といった体幹周りの筋肉が働いています。また、安定して自転車をこぐために、二の腕の筋肉も刺激されるため、太ももやお尻以外に、腕や体幹などの引き締め効果も期待できるでしょう。
おすすめの自転車の種類は?
自転車は、目的に応じて様々な種類がありますが、ダイエット目的で自転車を購入する場合はクロスバイクがおすすめです。このタイプの自転車は、速く走るために設計されたロードバイクをベースにしつつ、タイヤは街中でも不便なく走れる太さになっています。
さらに、シティサイクルのようにカゴを取り付けることも可能なため、通勤や通学からダイエットを目的とした軽い運動まで、日常のあらゆるシーンで活躍してくれるはずです。
自転車の種類で効果は変わる?
自転車に乗るときの姿勢によってもダイエット効果が変わってくるため、シティサイクルよりもスポーツサイクル(ロードバイク、クロスバイク)の方がダイエット効果は高いと言えるでしょう。
前傾姿勢で乗ることになるスポーツサイクルでは、姿勢を維持するために体幹への負荷が増加します。これにより、シティバイクに比べて広い範囲の筋肉を刺激することができるため、より効率よく脂肪を燃焼させることができるのです。
自転車ダイエットを行う際には、ここまでに紹介したシティバイクやスポーツサイクル以外に、エアロバイクという選択肢もあります。室内で利用するため風景の変化を楽しむことはできませんが、天候による影響を受けず、負荷も自由に調整することができます。
ジムで乗るイメージが強いエアロバイクですが、最近では自宅でも乗れるコンパクトな「スピンバイク」も販売されているので、気になる方はチェックしてみてください。
電動自転車でもいい?
電気によるアシストによって、きつい坂道でも楽に走ることのできる電動自転車。しかし、自転車をこぐ時の負荷が小さくなるため、ダイエット効果はあまり期待できません。自転車に乗らないよりはましですが、自転車でダイエットをしたいという方は、電動アシスト機能のない自転車を使うのがおすすめです。
1回でどのくらいの距離・時間走るべき?
ダイエット目的で自転車に乗る場合、20分以上を目安に継続しましょう。もちろん、20分に満たない場合でもある程度脂肪燃焼の効果が期待できますが、運動を開始してから約20分が経過すると、主なエネルギー源がグリコーゲンから脂肪に切り替わるため、より多くの脂肪を燃焼させることができます。
自分のライフスタイルに合わせて、継続できる時間・距離を自分で設定して、慣れてきたら徐々に運動量を増やしてみましょう。ちなみに、レジャー目的の少し速いペース(時速19.3〜22.4km)で20分間走った場合、約6〜7.5kmの距離をこぐ計算になります。
自転車ダイエットは、自転車さえあれば誰でも気軽に行うことができるハードルの低いダイエット方法です。また、足腰に負担がかかりにくいため、ランニングやジョギングが苦手という人でも気軽に取り組めるでしょう。自宅でできる筋トレと組み合わせつつ、楽しみながらダイエットにチャレンジしてみてください!