スマホやタブレットなどの電子機器が普及した現代では、ストレートネックの悩みを抱える人が増加しています。
ストレートネックは肩こりや頭痛などを引き起こすほか、悪化するとヘルニアに発展する恐れも。改善のためのストレッチや予防方法などを知り、ストレートネックに関する疑問を解消しましょう。
ストレートネックとは
ストレートネックとは、本来ゆるやかに「く」の字を描いているはずの首の骨が真っ直ぐになってしまった状態のことです。
ストレートネックの症状がある人は、無理な姿勢で頭を支えることになるため、「頸椎」と呼ばれる首にある骨に大きな負荷がかかり、頭痛や肩こりなどを引き起こしてしまうとされています。また、ストレートネックになると顔全体が前に出たように見えるため、姿勢が悪く見えてしまうというデメリットもあるのです。
ストレートネックになる原因
ストレートネックになる主な原因は姿勢だと言われています。日常生活でとくに気をつけたい事例を見てみましょう。
スマホやパソコンを見るときの姿勢が悪い
スマホやパソコンなどを見る際の姿勢の悪さがストレートネックの原因になることがあります。
背筋を伸ばさない前傾姿勢でスマホやパソコンを使う際、負担がかかっているのは首の骨だけではありません。首の前についている胸鎖乳突筋(きょうさにゅうとつきん)と呼ばれる筋肉は、前傾姿勢をとるときに前方へ引っ張られるため大きな負担がかかります。この状態が長く続くと胸鎖乳突筋が緊張して凝り固まり、頚椎が下方に引っ張られることでストレートネックになってしまうのです。
猫背・反り腰
猫背・反り腰の姿勢は頭が前につき出ることが多く、腰や肩以外に首の周辺にも大きな負荷がかかってしまいます。そのため、猫背・反り腰の状態を放置すると、ストレートネックに発展しやすいと考えられています。
枕の高さが合っていない
高さの合わない枕で寝ていると睡眠時にも首がまっすぐになってしまい、いつの間にかストレートネックになっている可能性も。予防のためには、自分に合った寝具を選ぶことが大切です。
ストレートネックの症状
ストレートネックになると、どのような症状が出るのでしょうか。主な例を見てみましょう。
首の痛み・肩こり
まず挙げられるのは首の痛みや肩こりで、とくに寝ているときに痛みを感じやすくなるといわれています。これは、ストレートネックの状態で仰向けになると頭の位置が通常よりも高くなるため、肩や首に大きな負担がかかってしまうことが原因です。
頭痛・めまい
ストレートネックによって首の周辺の大きな負担がかかると、首の神経にもダメージが蓄積されていきます。その結果、神経が損傷し頭痛に発展する可能性があるのです。また、首の胸鎖乳突筋がこわばることで血管が圧迫されるため、めまいも生じやすくなると考えられています。
手や指のしびれ
ストレートネックの症状としては、手や指のしびれも挙げられます。
首の筋肉がこわばっていると、首の骨である頚椎の間で緩衝材の役割をしている椎間板の変形してしまいます。その結果、首から手や指にかけてつながっている神経が圧迫され、手の痛みや動かしづらさの原因となってしまうのです。
(参考:医療法人 良花会整形外科とくはらクリニック│手・足のしびれ)
顎関節症
ストレートネックの方の場合、下顎が上顎より後方に位置することが多くなります。これによって、顎二腹筋と肩甲挙筋に負荷がかかることに加え、飲食の際には上下の歯の接触が多くなるため、顎関節症を引き起こしてしまう場合があると考えられているのです。
ストレートネックが重症化すると背骨が変形し、ヘルニアに発展する可能性もあります。異常を感じたら長期間放置せず、早めに改善することが大切だといえるでしょう。
ストレートネックのセルフチェック
自分がストレートネックなのか、判断がつかない人もいるでしょう。ここでは、簡単にできるセルフチェックの方法を紹介します。
質問でチェック
まずは以下の項目をチェックしてみましょう。当てはまるものが多ければ、ストレートネックの疑いがあります。
・頭を後ろにそらしたとき、首に痛みを感じる。
・首を回すと痛みを感じる。
・首を動かすとき、ギシギシとした音が鳴る。
・こめかみのあたりが頻繁に痛くなる。
・首や後頭部にはりを感じることが多い。
・目に疲れを感じやすい。
・目がかすむ。
・猫背である。
・頻繁に寝違える。
動いてチェック
続いては、以下の手順に沿って実際に身体を動かして、ストレートネックかどうかを確認してみましょう。
1.壁に背を向けて、お尻と背中をぴったりつけた状態で立ちます。
2.後頭部、肩甲骨、お尻、かかとが壁についているか確認します。
もし後頭部が前に出ている場合、ストレートネックの疑いがあります。無理をしないと4点を壁につけることができない人も、ストレートネックの可能性が高いと言えるでしょう。
ストレートネックのストレッチ
ストレートネックは簡単に改善されるものではありませんが、予防として自宅でできるストレッチもあります。ここでは、家にある道具を使ったストレッチや、寝た状態でもできるストレッチを紹介します。
タオルを使ったストレッチ
まずはタオルを使ってできる簡単なストレッチを試してみましょう。
肩の柔軟性に自信がある人はフェイスタオルを、肩がこわばっており万歳の姿勢をしても腕が耳につかない人はバスタオルを用意してください。
1.タオルの両端を手で持ち、5秒間ゆっくりと息を吸いながらタオルを頭上に動かします。
2.5秒間息を吐きながらゆっくりとひじを曲げ、タオルを後頭部まで下ろします。このとき、首や背すじが曲がらないように気をつけましょう。
3.5秒間正面を向いた状態で姿勢を維持します。
4.再びゆっくりと息を吸いながらタオルを頭上に動かし、5秒間息を吐きながら背中ごと前に倒します。肩甲骨を開いた状態で背中の筋肉を伸ばすイメージです。
5.前傾姿勢を10秒間保ってから、ゆっくりともとの体勢に戻ります。
肩甲骨がほぐれたら、脇の筋肉を伸ばすストレッチも行いましょう。
1.タオルの両端を持った状態で腕を上に伸ばし、片方の腕を上に、もう片方を下に傾けます。タオルで斜めの直線を描くイメージです。このとき、タオルは背中側にして、ひじを曲げないように注意しましょう。
2.ゆっくりと呼吸しながら10秒維持し、反対側の腕も同様にストレッチします。
テニスボールを使ったストレッチ
硬式テニスボールを使ったストレッチもあります。
1.テニスボール2つを横に並べ、テープなどでくっつけて固定します。
2.平らな床の上に座り、寝転んだとき肩甲骨の間に当たるようにテニスボールを置きます。
3.ゆっくりと仰向けに寝そべり、テニスボールの位置を調整します。
4.片手の指で下あごをぐっと押し込みます。もう片方の腕は頭上に伸ばしておきます。
5.ゆっくり呼吸をしながら10秒間体勢をキープし、もとの状態に戻ります。
寝ながらできるストレッチ
次に紹介するストレッチは寝転がった状態でも行うことができるため、寝起きの習慣にするのもおすすめです。
1.背すじとひざを伸ばした状態で、横向きに寝ます。
2.上に来ているひざを軽く曲げ、上半身を反対側に大きくひねります。このとき、上のひざが床から離れないように片手で押さえておきましょう。もう片方の腕は、まっすぐ横に伸ばすと姿勢が安定します。
3.ゆっくりともとの姿勢に戻り、反対向きに寝そべって同様のストレッチを行います。
この動作を左右1回ずつで1セットとし、3セットを目安に行ってみてください。
また、寝転がって行うストレッチには、タオルを使った方法もあります。
1.寝転がり、首の位置に棒状に丸めたタオルを置きます。
2.リラックスした状態で、5分間姿勢を維持します。
3.首を右に向け、10秒間姿勢を維持します。その後、左側を向き同様の姿勢を10秒間キープします。
(参考:名和株式会社│【タオル体操】タオルひとつで簡単のびのびストレッチ!)
ストレートネックにならないための姿勢
記事の前半でも説明したように、ストレートネックになってしまう主な原因は姿勢の悪化だとされています。スマホを見るときや、デスクワークをするときの姿勢を日常的に見直して、ストレートネックを予防しましょう。
・正しい姿勢で椅子に座る
椅子に座るときは前傾姿勢や猫背、反り腰にならないように注意することで、首にかかる負担小さくすることができます。
まず、かかとがしっかり地面に着いた状態で椅子に深く腰かけ、脚の付け根に手を置きます。そのまま軽く胸を張った姿勢が、首に負担をかけない正しい座り方です。お尻から腰にかけての土台がどっしりと安定している感覚を意識してください。
・画面の位置を目線に合わせる
スマートフォンなどの画面を見るときは視線が下がりやすいため、知らず知らずのうちに前傾姿勢になってしまいます。
スマホを使うときは脇をしっかりしめた状態で腕の力を使い、画面を目線の高さに持ち上げましょう。パソコンを使うときは、画面が目線の高さと同じか、10度程度下の位置になるように机の高さを調節します。このとき、目から画面までの距離は40cm以上開けることが推奨されています(※)。
(※参考:厚生労働省「自宅等でテレワークを行う際の作業環境整備」)
・ひじの位置に注意する
座るときは、椅子の高さやひじかけの位置を調整して、できるだけ腕が疲れない姿勢をとりましょう。肩甲骨が少し上がる程度の位置にひじが来るようにすると、首への負担を緩和することができます。
また、いくら正しい姿勢をとっていても、長時間画面を見つめていると目や筋肉に疲れがたまってしまいます。ストレートネックを予防するためにも、デスクワークをするときは1時間に1回は休憩をとるように心がけましょう。
ストレートネックの治療
ストレートネックにはどのような治療が適切なのでしょうか。ここでは、ストレッチを続けても症状が改善しないときは何科に相談すればいいのか、保険は適用されるのかなど、ストレートネックに関する様々な疑問にお答えします。
何科を受診すべき?
ストレートネックによる激しい痛みに悩んでいるときは、整形外科を受診してみましょう。一部の医療機関では、ストレートネックに特化した治療やリハビリを行っている場合もあります。
また、ストレートネックは骨に関する症状でもあるため、整骨院でも治療が可能です。とくに姿勢の改善や再発防止などを目的としている場合は、整骨院に相談してみてもいいでしょう。
保険は適用される?
ストレートネックの治療に医療保険が適用されるかどうかは、診療を受ける医療機関や症状によって異なります。病院の整形外科や整骨院では保険の適用範囲内となる可能性もあるため、診療を受ける前に相談をしておきましょう。
マッサージや整体院、カイロプラクティックは基本的に保険の適用外となっています。
首のカーブがまっすぐになってしまい、神経や筋肉に負荷をかけてしまうストレートネック。肩こりや頭痛、めまいの原因にもなるため、日常的に正しい姿勢を心がけて予防しましょう。もしストレートネックになってしまった場合、軽度であればストレッチで改善できる可能性がありますが、激しい痛みが続く場合は無理せず医師に相談してください。