近年、動画サイトなどでも注目を集めている「HIIT」は、短時間で脂肪燃焼の効果が期待できるため、「運動を長時間せずにダイエットや筋トレがしたい」と思っている人におすすめのトレーニングです。
この記事では、そんなHIITの基礎知識やメリット、さらに部位別のトレーニング方法などを詳しく紹介します。自宅で簡単に行えるトレーニングもあるので、ぜひ挑戦してみてください!
HIIT(ヒット/ヒート)とは?
HIITとは、High Intensity Interval Training(高強度インターバルトレーニング)の略称で、負荷の高い筋トレなどの運動と休憩を交互に行うことで、脂肪を燃焼しやすい身体を作ることを目的に行うトレーニング方法です。
HIITトレーニングはどんな人に向いている?
HIITの特徴は、トレーニング時間がとても短いこと。内容にもよりますが、中には約4分で終わるトレーニングもあります。短時間で集中的に行うことができるため、仕事や勉強などでなかなか運動する時間がとれない人にもおすすめです。
また、HIITは脂肪を燃焼させ筋肉をつけることができるため、ダイエットにも最適なトレーニングだと言えるでしょう。
タバタ式トレーニング(田畑法)とは
HIITの中でも有名なメニューが、タバタ式トレーニング(田畑法)です。このトレーニングは、立命館大学の田畑泉教授が発案した方法で、20秒間の運動と10秒間の休憩を交互に、計8セット行います。
タバタ式トレーニングは約4分間の短いメニューですが、「有酸素性エネルギー」と「無酸素性エネルギー」のどちらにもアプローチできることから、身体を限界まで追い込むことができるといわれています。
有酸素性エネルギーとは、軽いジョギングなどの有酸素運動で使われるもので、これを鍛えると持久力や基礎代謝が上がります。一方、無酸素性エネルギーとは、筋トレなどの無酸素運動で利用されるエネルギーで、筋肉に蓄積された糖を消費し、運動後に脂肪を燃焼しやすい状態を作ります。
なお、有酸素運動を始めて間もない状態では、エネルギー源として糖を消費しています。そこから運動を継続することで徐々にエネルギー源が脂肪に切り替わっていくため、最初に無酸素運動をしておくことで、効率よく脂肪を燃焼させることができるのです。
タバタ式トレーニングで行う20秒間の運動はどんなものでも構いませんが、短時間でもバテてしまうほど心拍数の上がるメニューに取り組むのがポイント。エアロバイクやダッシュ、水泳など、自分に向いている種目を試してみましょう。
HIITやタバタ式トレーニングにおすすめのメニューは、後ほど詳しく紹介します。
HIITのメリット・効果
HIITによって、具体的にどのような効果が得られるのでしょうか。代表的な4つのメリットを見ていきましょう。
筋肉強化
HIITでは短時間で集中して身体を追い込むため、無酸素性エネルギーが刺激され筋肉中の糖が一気に消費されます。これにより、HIITを続けると筋肉量が増えると考えられているほか、メニューを工夫すれば特定の部位の筋肉を強化することも可能です。
脂肪燃焼効果
HIITの代表的なメリットとして注目されているのが脂肪燃焼効果です。全力で運動に取り組むと筋肉中の糖消費率が高まり、脂肪を燃焼させやすい身体になると考えられています。
持久力・心肺機能アップ
HIITは持久力や心肺機能アップの効果も期待されています。特にタバタ式トレーニングでは酸素の摂取量が増えることで心肺機能が向上し、その結果持久力がアップした事例も見られるようです(※)。また、心肺機能が向上することで基礎代謝も上がるため、常に脂肪が燃えやすい状態を作ることができるでしょう。
(参考:立命館 学園通信│Ritsumeikan Style)
アフターバーン効果
負荷の高い運動を行うと、身体は一時的に酸素が不足した状態となるため、これを補うために運動後の酸素消費量が一時的に増加することがあります。この現象はアフターバーン効果と呼ばれており、酸素の消費量が増加すると同時に基礎代謝が向上し、より多くの脂肪を燃焼させることができると考えられているのです。
アフターバーン効果は運動後24時間から72時間ほど続くといわれているため、定期的にHIITを行えば脂肪を燃焼しやすい身体を維持できるでしょう。また、アフターバーン効果はセットを重ねるごとに高まると考えられています。
(参考:RENAISSANCE│話題の筋トレ「HIIT」とは?メリットや自宅でできる運動方法を紹介)
HIITのデメリット・注意点
HIITは身体への負荷が高いトレーニングなので、注意すべきポイントもあります。主なデメリットや注意点を確認してみましょう。
負荷が大きく、ツラい
限界まで身体を追い込むHIITは、ほかのトレーニングに比べてかなりツラいと感じるでしょう。また、負荷のかかる運動を取り入れるため、疲労感もたまりやすいとされています。
しかし、途中で手を抜いてしまっては、何の意味もありません。ツラくても最後まで力を出し切るという強い意志を持って取り組んでみましょう。
事前にエネルギー補給を
トレーニングの途中でエネルギー切れを起こしてしまうと集中力が途切れ、全力を出し切ることが難しくなってしまいます。HIITは特に多くのエネルギーを消費するため、空腹時を避けて行うようにしてください。
トレーニング前はエネルギーと水分をしっかり補給し、トレーニング後も筋肉を修復するために必要なタンパク質などをしっかり摂取しましょう。
事前に最大心拍数の把握を
HIITでいう「限界」は、一般的に「220-年齢」で計算される最大心拍数を基準に把握することができます。HIIT中に全力を出せているか確認したいときは、心拍数を定期的にチェックし、最大心拍数の90%前後を維持できるようにすると良いでしょう。
HIITではトレーニング中の血圧が上昇するため、高血圧の人は事前に医師に相談することをおすすめします。また、関節への負荷も大きいため、体重に不安のある人も医師に確認しておくといいでしょう。
(参考:MORINAGA かんたん、わかる!プロテインの教科書│運動時の栄養補給のポイント)
主要なHIITトレーニングメニューまとめ
ここからは、HIITの主なトレーニングメニューを紹介します。HIITではすべてのセットで同じ運動を行う必要はありません。いくつかのメニューを組み合わせ、最後まで楽しく身体を追い込める内容を考えてみましょう。
スライドスクワット
体幹や下半身の筋肉を鍛えたいときにおすすめのトレーニングです。
1.両脚を肩幅よりも大きく開いた状態で立ち、胸の前で腕を組みます。
2.背すじが曲がらないように、ひざをゆっくり曲げて腰を落とします。
3.腰の高さをキープしながら、右側にスライドするイメージで左足をまっすぐ伸ばします。
4.同様に右足も伸ばし、上半身を左側にスライドさせます。
20秒間で、手順3と4を丁寧に、かつ可能な限りスピーディーにくり返しましょう。
ひざつき腕立て伏せ
上半身の筋肉強化におすすめのトレーニングです。特に大胸筋や肩甲骨の周辺、体幹の筋肉へアプローチすることができます。
1.うつぶせになり、肩の下に手のひらを置きます。
2.ひじをゆっくりと伸ばし、上半身を浮かせます。このとき、ひざは曲げて床につき、足の裏は天井を向いた状態にします。
3.息を吐きながら上半身を床ぎりぎりまで下げます。
4.ひざは床につけた状態で息を吸いながらひじを伸ばし、再び上半身を浮かせます。
20秒間で手順3と4をリズミカルにくり返しましょう。
スーパーマン
その名の通り、スーパーマンのようなポーズで行うトレーニングです。体の背面にアプローチすることができます。
1.足をそろえた状態でうつぶせになり、両腕を広げて全身でTの字を作ります。このとき、手のひらは前方に向けてください。
2.息を吐きながら胸と足を床から浮かせます。腕は伸ばしたまま、耳と同じ高さまで上げましょう。
3.息を吸いながら、1の状態に戻ります。
手順2と3を20秒間くり返し行います。
3方向ひねり腹筋
お腹周りの筋肉を鍛えたいときにおすすめのトレーニングです。通常の腹筋にひねりが加わるため、より負荷を高めることができます。
1.あおむけの状態になり、両ひざを立てます。
2.万歳をするように、両手を伸ばして床につけます。
3.息を吐きながら上半身を起こします。このとき、腕はまっすぐ胸の前に移動させます。
4.腕と上半身を左にひねります。
5.腕と上半身を中央に戻します。(3と同じ姿勢に戻る)
6.腕と上半身を右にひねり、その後2の姿勢に戻ります。
手順2~6を20秒間くり返します。トレーニング中はお腹から力を抜かないように注意しましょう。
バーピージャンプ
全身を鍛えたいときはバーピージャンプがおすすめです。
1.足をそろえ、直立の姿勢をとります。
2.ひざを曲げてしゃがみ、床に両手をつけます。
3.両手を床から離さないよう注意しながら、勢いをつけて足を後ろに伸ばします。腕立て伏せのように、つま先を床につけるイメージです。
4.勢いをつけて両足を曲げ、2と同じ姿勢に戻ります。
5.ひざを伸ばして、高くジャンプします。両腕は万歳をするように頭上に伸ばしましょう。
手順2~5を20秒間全力でくり返します。きつくても最後まで手を抜かないように心がけましょう。
もも上げトレーニング
太ももの筋肉を鍛えたいときにおすすめのトレーニングです。
1.背すじをピンと伸ばし、直立の姿勢をとります。
2.走るときのように両腕を前後に大きく振りながら、左右のひざを高く上げます。足を高くあげればあげるほど負荷がかかるため、太ももの高さが床と平行になる状態を目標にしましょう。
手順2を20秒間で可能な限り早く繰り返しましょう。
マウンテンクライマー
マウンテンクライマーは、有酸素運動としての側面も持つトレーニングですが、HIITにも取り入れられています。
1.うつぶせになり、肩の下に手のひらを置きます。
2.ひじを伸ばしながら上半身を起こし、腕立て伏せのような姿勢になります。
3.左右のひざを胸にひきつけるイメージで、両脚を交互に動かします。このとき腕は伸ばした状態を維持しながら、しっかり床を蹴って足を動かしましょう。
手順3を20秒間、できるだけ早く行います。着地するときは、足首をひねらないように注意してください。
【部位別】HIITトレーニング
ダイエットなどで部分痩せを目指している人には、部位別のHIITトレーニングがおすすめです。メニュー例をいくつか紹介していますので、間に休憩を入れながら取り組んでみてください。休憩時間は、運動時間の半分が目安とされています。
HIITで脚痩せさせたい
・スライドスクワット
・マウンテンクライマー
HIITで二の腕を細くしたい
・フレンチプレス
・リアレイズ
・腕後ろ上げ
上記で紹介した3つのトレーニングは、ダンベルや、水の入ったペットボトルを持って、立った状態で行うトレーニングです。
フレンチプレスでは、ペットボトルかダンベルを1つ両手で持ち、後頭部から頭上へと上げ下げをくり返します。
リアレイズは両ひざを軽く曲げ、上半身を前にかがめた姿勢で行います。ペットボトルかダンベルを1本ずつ両手に持ち、腕が肩と同じ高さになるよう素早く上げ下げをくり返します。
腕後ろ上げも、リアレイズと同じく上半身をかがめ、両ひざを軽く曲げて行うトレーニングです。左右の手にペットボトルかダンベルを1本ずつ持ち、ひじを曲げて胸の前に移動させます。ひじを伸ばして斜め後ろに腕を振り上げ、またもとの状態に戻る動きを20秒くり返しましょう。
HIITでおなかをスッキリさせたい
・3方向ひねり腹筋
・プランク前腕と両ひじ、爪先を床につけた状態でうつぶせになり、身体を床から浮かせた状態を20秒間キープします。)
HIITでお尻をスッキリさせたい
・スライドスクワット
・ひざつき腕立て伏せ(片足を上げた状態で行うと、より高いお尻の引き締め効果を期待することができます。)
HIITに関するよくある質問
最後はHIITに関するよくある質問にお答えします。トレーニングに最適な頻度やほかのトレーニングとの違いなどを確認してみましょう。
トレーニング頻度は?毎日やってもいい?
HIITはかなり負荷のかかるトレーニングのため、週2~3回を目安に行うようにしましょう。毎日取り組んでしまうと、疲労感が抜けなかったり、ケガにつながったりするおそれがあります。また、HIITは限界まで一気に身体を追い込まないと効果が薄れてしまうため、1日に何度も取り組むのではなく、1回で全力を出し切るイメージで行ってください。
事前のウォーミングアップは必要?何がおすすめ?
HIITでケガを防ぐためにも、ウォーミングアップは長い時間をかけて念入りに行いましょう。
おすすめのウォーミングアップは、身体をゆっくりとほぐすストレッチです。さらに、運動後にもストレッチを行うと、筋肉の血流がよくなり疲労回復につながると考えられています。
HIIT前後の食事は何がいい?
運動中のエネルギー不足を防ぐため、HIIT前は軽食をとっておきましょう。おにぎりやバナナなど、消化がよく、炭水化物や糖分バランスよく摂取できるメニューがおすすめです。
ただし、食後すぐの運動は身体に大きな負担がかかってしまうため、HIITを始める15分前までには食事を済ませるようにしてください。
HIIT後は、筋肉の回復に必要なタンパク質を摂取しましょう。特に、手早くタンパク質を補えるプロテインがおすすめです。
HIITをやるなら朝?夜?
HIITの効果が最大になる時間帯には個人差があります。なぜなら、人によっては朝にトレーニングをした方が集中できるという場合もあれば、夜の方が高いパフォーマンスを発揮できる場合もあるからです。
HIITは継続するうちに持久力や基礎代謝が高まっていくため、生活リズムに合わせて無理なく続けるといいでしょう。
ただし、HIITを行うと心拍数が上がってしまうため、就寝前の時間帯は避けて行うようにしてください。
HIITをやり過ぎると筋肉は太くなる?
HIITの主な効果は心肺機能の向上や持久力のアップです。そのため、HIITを行ったからといって、急に筋肉が太くなることはありません。ただし、一般的な筋トレと同じように、継続することによって筋肉が大きくなることはあります。
HIITとサーキットトレーニングの違い
HIITと似ているように見えるサーキットトレーニングですが、目的に大きな違いがあります。サーキットトレーニングの主な目的は筋力アップで、様々な種類の筋トレを組み合わせることで、全身にくまなく負荷を与えることができます。
一方、HIITは運動後過剰酸素摂取量を増やして心肺機能を鍛えることを目的としているため、必ずしも筋トレを行う必要はありません。短時間全力で行える種目であれば、サイクリングでも水泳でも問題ないのです。
HIITと筋トレの違い
HIITと筋トレでは、運動時間が異なっており、HIITはとにかく短時間で身体を追い込みますが、筋トレの中には長時間継続してゆっくり行うメニューもあります。
また、筋トレは無酸素運動に分類されますが、HIITは有酸素運動と無酸素運動の要素をどちらも兼ね備えています。鍛えたい目的や部位によって、バランスよくトレーニングするといいでしょう。
HIITと有酸素運動の違い
脂肪燃焼に効果的といわれる有酸素運動ですが、HIITはそんな有酸素運動の効果と、筋肉に蓄えられた糖を消費する無酸素運動の効果を同時に期待することができます。
また、有酸素運動で脂肪燃焼の効果を期待するためには低負荷の運動を長時間続ける必要がありますが、HIITでは高い負荷の運動を短時間で行うことで脂肪を燃焼させます。さらに、トレーニングメニューも異なるため、自分に向いている方法を見つけてみましょう。
HIITを筋トレや有酸素と併用する場合の順番は?
HIITとほかの運動を組み合わせるときは、1日に詰め込みすぎないことがポイントです。各トレーニングを全力で行うためにも、筋トレや有酸素運動などは別日に行うといいでしょう。
脂肪燃焼を目的とする場合は、週に2~3回はHIIT、週1回はウェイトトレーニングといった具合にスケジュールを組んでみてください。筋力をピンポイントで鍛えたい場合やボディメイクをしたい場合は、週に2~3回はウェイトトレーニング、週1回はHIITを行うなど、筋トレの頻度を増やすと良いでしょう。
また、HIITがきついと感じるときは有酸素運動をメインに、週に数回HIITを行うのもおすすめです。
高い強度の運動を集中的に行い、こまめな休憩もくり返すことで心肺機能を鍛えるHIIT。運動内容は目的によって選ぶのはもちろん、その日の気分によってガラッと内容を変えることも可能です。いずれにしても大切なのは、身体を限界まで追い込むこと。ツライと感じた時は、何のためにHIITに取り組んでいるのかを思い出しながら、全力で取り組んでみましょう。