アートディレクターとして、25年以上のキャリアを持つハイロックさん。彼はオンラインサロン「ハイロック 大人の部活動 THE FUTURE CLUB」で、人それぞれの「好きなデザイン」「好きなモノ」を発見する喜びを伝えてきました。
また、ハイロックさんはメディアクリエイターとして数多くのメディアで活躍する一面も持ちます。今回はその経験を活かし、サロンでの活動を通じて誕生したメディア『THE FUTURE CLUB BOOK』についてお話を伺いました。
アパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザインを経て2011年独立。自身の情報サイト「HIVISION」を運営しつつ、メディア各方面でグッドデザインアイテム、最新ガジェットを紹介。著書に『I LOVE FND ボクがコレを選ぶ理由(マガジンハウス)』。
50名の好きが詰まった本『THE FUTURE CLUB BOOK』
ーーハイロックさんとは、2020年3月にも取材をさせていただきました。
このとき、メンバーそれぞれの“モノ愛”を詰め込んだ本を制作していると伺いましたが、その後の状況はいかがでしょうか?
本は、あの取材の直後に完成しました。サロン内で有志の出版部を立ち上げて、タイトルをサロン名にちなみ『THE FUTURE CLUB BOOK』と名付けて発表したんです。1号目は評判も良く、ありがたいことにすぐ完売してしまいましたね。
ーー素晴らしいですね!1号目ということですが、すでに何号か出版しているのですか?
はい、現在は合計で2号出版しています。一般的な書店で販売はせず、僕のショッピングチャンネルを中心に代理店を募り、全国10か所以上の店舗に置いてもらいました。
だから、販売先の中には、洋服屋さんやキャンプサイト、あと天ぷら屋さんもありましたね(笑)。
ーーかなりユニークな販売先ですね。本の中身は、実際にどんなものなのですか?
最初から、シリーズとして出版していくことを想定していましたので、各シリーズごとにテーマを決めて、アルファベット一文字で表しています。1号目は、50名ほど参加してくれたサロンメンバーの「私の逸品」を紹介するということで、ずばりモノの「M」を付けました。
2号目は、2020年のクリスマス前に発行しています。季節に合わせてギフト特集ということで、「G」のアルファベットを付けました。今後、例えば旅なら「T(Travel)」という感じで、シリーズを重ねて皆さんの本棚に並べてもらおうと思っています。
ーー出版期間を伺うと、まさにコロナ禍という状況での制作だったと思いますが…
はい。『THE FUTURE CLUB BOOK』は、「コロナ禍で一度も直接誰とも会わずに作った本」なんです。実際に、本の製作ではサロン内で編集長・副編集長を立てて、毎週オンライン上でミーティングを重ねて約50名のアイディアをまとめていました。
ーーモノ選びという本が、すべてデジタルで完結しているというのが面白いですね。3号目の構想は、すでにあるのですか?
次は、ハイロックの「H」を付けます。僕の単独著書で、より僕のセレクトにフォーカスした一冊を、皆さんに届けようかなと。
そのタイミングで、完売した1号目の増刷もかけつつ、さらにサロン内のみなさんで作り上げた本を盛り上げていきたいですね。
Instagram+セブンイレブンを組み合わせた新感覚メディア「9g」
実はもうひとつ、僕たちのオンラインサロンで生まれたメディアがあります。それが「9g(ナイングラム)」です。僕たちにとって、最新の成果物のひとつです。
ーー9g。どういったメディアなのでしょうか?
9gは、出版部に対抗する形で立ち上げられた、メディア部の活動の一環で生まれました。Instagramで展開しているメディアで、アイスやバナナ、ポテチ、宇宙など、毎月何回か決められるテーマをそれぞれ9枚1セットの写真で紹介していくんです。
例えば、スターバックスのフラペチーノの投稿は、2021年6月30日にスタートした、47の各都道府県でしか味わえない限定「47 JIMOTO フラペチーノ」にちなんでスタートしました。こんな感じで、9枚1セットの写真を使って一つのテーマを紹介していきます。
また、これまでに投稿した写真を使用して、毎月9日9時に「9g PAPER」という新聞も発行しているんですよ。
ーーなるほど。新聞は、紙で受け取ることができるのでしょうか?
Instagramでネットワークプリントの予約番号をお知らせし、皆さんにセブンイレブンのコピー機で印刷してもらうという方法で発行しています。
ちなみに、発行した新聞の重量を計ったら9グラムだったんです。「9g」という名前にしたのは、ちょうど2020年の9月9日に立ち上げたからなのですが、この偶然には驚きました(笑)。メンバーの呼称も「オタク9名」という意味の「9 geeks」にして、ちょうど今年の9月で1周年を迎えます。
また、近い将来は全米でも配信を考えています。Fedexのオフィスのコピー機を利用して日本同様に印刷することができます。
ーー偶然と狙ったものが重なって、とにかく「9」づくしなメディアになったのですね。
そうですね(笑)。予約番号を知れば誰でも手に入れることができて、現在毎月500枚ほど印刷されています。
駅構内などで手に取れるフリーペーパーでもなければ、ポストに投函されるチラシでもない。自分でセブンイレブンに行き、100円を払わないと読めない新聞が、500人もの読者に購読してもらっているというのは、すごいことだと思います。
ーーたしかに。9gというメディアには、それだけコアなファンが増えているということですよね。
メディアの立ち上げは、やることが非常に多くてパワーも必要なので、陸上の短距離走で使うような瞬発力のある筋肉が必要です。でも、ある程度メディアが成長してくると、今度はマラソンで使う持久力のある筋肉が求められるようになります。
もっとも重要で難しいのは、モチベーションを維持しつつ中だるみしないことじゃないでしょうか。英会話やジム通いで「1日1時間頑張ろう」と思っても、すぐにやめてしまう人って少なくないですよね?こういうコツコツと続ける必要がある活動って、やめなければ負けないんですよ。
僕も、「9g」の毎号発行後には、メンバーと反省会を開きつつ、よかったことを共有して喜び合うようにしていて。英会話と同じで、デザインやモノ選びは、ノウハウや能力よりもモチベーションに重点を置いています。
ーーそういう意味では、9gを約1年続けてきたことは非常に大きいですね。
その通りです。2、3号程度なら、ちょっとした努力で誰でも作れますから。続けることが何より大事で、継続するうちに「これ、やる意味ある?」という疑問が湧いてきます。矛盾していますが、「やる意味」というのはやり切った先に見えるもので、たった数カ月程度では、そう見えてきません。
ーーみなさんがサロン内で活動を継続していく気持ちを、ハイロックさんが支えているのですね。今後、9gで考えている戦略はありますか?
9gは固定のファンが多く、広告能力も非常に高いと考えています。グッズ化やイベントの開催、オンラインショップで新聞の販売やタイアップなど、こうしたマネタイズに次はチャレンジしたいですね。
モノ選びやデザインの面白さを学びながら、それらを発信するメディアも作り上げ、収益化の流れを知る。ハイロックさんは、「THE FUTURE CLUB」内で、モノ・デザインを起点とした、さまざまな表現をする機会を、メンバーに提供しています。
これは、サロンメンバーはハイロックさんとともに仕事をしているといっても過言ではありません。彼を軸に集まる、デザインを愛する仲間たちと、学ぶだけでなく、表現するためのメディアの立ち上げにもチャレンジしてみませんか?
さらに後編の記事では、ハイロックさんおすすめの5アイテムを紹介していただきましたので、こちらの記事もぜひチェックしてみてください!