数多くのメディアでも活躍している、アートディレクターのハイロックさん。彼はオンラインサロン「ハイロック 大人の部活動 THE FUTURE CLUB」で、人それぞれの「好きなデザイン」「好きなモノ」を発見する喜びを伝えています。
そんなモノ選びのプロフェッショナルであるハイロックさんが、ズバリ今注目しているアイテムはなにか!今回は「2021年夏版!ハイロックセレクション」と題して、ハイロックさんおすすめの5アイテムを教えていただきました。
(サロン活動を通じて誕生したメディアについて伺った、前編のインタビューはこちら!)
アパレルブランド「A BATHING APE®」のグラフィックデザインを経て2011年独立。自身の情報サイト「HIVISION」を運営しつつ、メディア各方面でグッドデザインアイテム、最新ガジェットを紹介。著書に『I LOVE FND ボクがコレを選ぶ理由(マガジンハウス)』。
コンパクトに使えるお香 LIXTICK「POCKET INSENCE」
これはLIXTICKという、つまようじのブランドから発売されたアイテムです。これを前情報としてインプットしていると、このアイテムの面白さが分かると思います。
ーーつまようじのブランドというのも初めて耳にしました。
海外のラッパーのMVなどで、つまようじのようなアイテムをくわえているシーンを観たことはありませんか?ラッパーはよく、リフレッシュのためにハッカのフレーバーが付いたつまようじを咥えているんです。
LIXTICKというブランドを知っている人は、これを一目で「あ、つまようじだ」と認識するんじゃないかな。でも、実はこれ、一見つまようじに見える「お香」なんです。ふたを外すとそのままスタンドとして使えるようになっています。
ーーつまようじだと思わせて、実はお香なんですね(笑)。かなりミニマルにお香を楽しめそうです。
フタはアルミ製で、燃える心配がありません。製品の品質も高く、直立したまま倒れずに燃え続けますので、安全性も高いアイテムです。
オンラインサロンでは、香りが好きなメンバーさん同士で、たびたび香りに関する話題が交わされています。「この匂いをかぐとあの頃を思い出す」「彼女が好きだった香水の匂いだ」みたいに、香りって特別な体験を思い起こさせるじゃないですか。
ーーたしかに。匂いをかいだ瞬間に、昔の思い出が湧き上がることは少なくないですね。
僕自身も、香りに関しては日頃から活用していて、実際に仕事をする前は、集中できるフレーバーとしてミント系の香りをたく習慣があります。
イチロー選手が、毎日同じルーティンをこなして試合に臨むのと同じですね。そういうトリガーを持っていると、旅先でもすっと仕事モードに入ることができるんです。
ーー「POCKET INSENSE」なら、持ち運びやすいので外出先でもぴったりですね。
そうした香り好きなメンバーさんのひとりが、「こんなアイテムが出たよ」と教えてくれました。試しに使ってみたら、すごく便利なアイテムだなと。
僕がセレクターとして参加しているキュレーションサイト「ハッチ(HATCH)」では、すでにLIXTICKのつまようじは取り扱っていましたが、それにプラスして、この「POCKET INSENCE」も取り扱ようになりました。
タップマニア、ハイロックのお気に入り エレコム「クリップタップ」
これは「クリップタップ」と言って、すごく便利なアイテムなんですよ。名前の通り、タップの部分にクリップが付いていて、机や柱に挟んでしっかり固定できるようになっていて。タップ口を下にしてワークデスクに挟めば、デスク下から綺麗にケーブルを取りまわせます。
ーー少し向きを変えれば、コードを隠せるんですね。
クリップの形をしているのも、インテリア的な意味を持たせられていますよね。通常のタップが無造作に机や床の上にあると「そのアイテムがここにある理由」を話せません。でも、クリップがあることで、そこにある説得力を生むデザインになっている。デザインに理由を語らせるわけです。
ーー「デザインに理由を語らせる」という考え方が面白いですね。
僕はもともとタップマニアなんです(笑)。電化製品などのガジェットが好きな人にとって、最終的な課題は「ケーブルの取り回し」にあります。
テクノロジーの進歩で、インターネットやBluetoothなど無線化はどんどん進んでいますが、まだ電源だけは空中で飛ばせません。ガジェット好きは誰もが、煩わしいケーブルがなくなることを夢見つつ、モノを選んでいるんです。
もしもケーブルがなくなれば、プロダクトデザイナーもデザインアプローチが変わってくるし、今あるものの形も大きく変わるんじゃないかと思います。
ーーたしかに…。在宅ワークの機会が増えて以降、ケーブルが邪魔だと思う回数はすごく増えました(笑)。どうにかして、うまく隠せないかなと。
僕は隠せるタップと同時に、「隠さなくてもいい理由」があるタップを探しています。アメリカ製のインダストリアルっぽいデザインや、黄色でポップなものなんかもいいですね。その人に合う「隠さなくていい理由」になるタップです。
このクリップタップは、まさに僕にとって「隠さなくていい理由」になるデザインでした。
今後のトレンドは「色のある生活」? Honey Makes Me Busy「空気が守るノートPCケース」
【Honey Makes Me Busy「Air Laptop Sleeve」】
ーーこちらのノートPCケースは、市販されているものと比べてかなり変わったデザインですね。
これはHATCHのオリジナルブランド「Honey Makes Me Busy」の製品で、僕がロゴやデザインを担当しました。ケース下部にある弁から空気を入れることで衝撃を吸収する構造になっています。荷物を梱包するプチプチをイメージして作りました。
ーー空気でノートPCを保護するという発想がおもしろいですね。
そうですね。空気で守る…というのは耐久性という面が半分、残りの半分はノートPCケースなのに口で膨らますという遊び心でデザインしました(笑)。カラーバリエーションは、蛍光色と白、黒の3種類あります。
いずれも半透明で、ケース内のノートPCに貼ったステッカーが見えるようになっているんですよ。
ーーノートPCケースと聞くと色も地味な物が多いイメージですが、これはとてもカラフルで映えますね。
Appleの影響だと思いますが、世の中のデザインがすべてミニマルな方向へと変遷していきました。選ぶ方も、黒一色、白一色で揃えるとか、電化製品もシルバーしか購入しないとか、自然と1トーンで揃えがちな人は、結構多いかと思います。
でも、デザイナー目線では、せっかく色に囲まれた世界にいるなら、その色を組み合わせてコーディネートするほうが楽しいと思うんです。
ただ、最近はAppleもiMacのカラーバリエーションを追加するなど、色を楽しむという方向性に変化しています。Appleがこの方向を進めれば、世の中のサードパーティやブランドは、すぐ追従するでしょう。
もしかしたら、来年あたりにはガジェットに色があふれるかもしれませんね。
ーーそれは楽しみですね。私はまさに1トーンで統一してしまう人間で、どうしても白、黒、グレーといった色ばかりを生活でチョイスしてしまいます。カラフルなものを、どう選べばいいですか?
オンラインサロンのモノ選び教室では、「自分が選ばない色をあえて選ぶとおもしろくなるよ」とアドバイスしています。くじ引きでもいいし、友人に選んでもらってもいい。自分のなかでは「選ばない色」をあえて選ぶと、長らく積み上げてきた「ワントーン伝説」がパタパタと崩れていきます。
ーー色の最適解を求めるのではなく、あえて違う色を選ぶというのが面白いですね。
僕はiPhoneをブルーにしましたが、そうすると、「バッグもスマホに合わせてブルーにしよう」と思うようになり、身の回りにブルーが増えていきました。そうすると、今度は「スニーカーは赤のラインが入ったものにしよう」と考えるようになる。
そうやって、次第に色を増やすことが楽しくなっていくんです。
カラビナで使いやすい リズム「携帯扇風機」
僕はたまに外回りをするんですが、そのときに大敵なのが汗です。特に夏場は駅からクライアントの事務所まで歩くと、汗でびっしょりになってしまうんですが、そのまま打ち合わせをするのは相手に失礼なので、この携帯扇風機を使っていったん汗を引かせます。
ーーこの扇風機で特に気に入っているポイントはありますか?
先端がカラビナになっていて、ズボンやバッグに付けられる点かな。あとは、意外と風力が強いのもポイントですね。自宅には専用のスタンドもあり、立てて使うこともできます。
ほかの携帯扇風機にもストラップがついているタイプのものがありますが、僕はほとんどの場合デザインが後付けになっていると感じるんです。ストラップと扇風機が、別々になっているというか。
ほかにも、質感やデザインで安っぽく見えてしまう事がありますが、この携帯扇風機は、色や質感、デザインのバランスで、その点はクリアしているかなと思います。
ミニマルデザインの元祖が手掛けた時計 BRAUN「デスククロック
【BRAUN「100th Anniversary Analog Alarm Clock BC12G」】
BRAUNは非常に歴史のある家電メーカーです。僕も約30年、さまざまなデザインのデスククロックを愛用してきました。これは2021年、BRAUN創業100周年を記念して作られたモデルです。もともと白と黒だけのカラーバリエーションだったのですが、はじめてグレーカラーが発売されて。一目見てすぐに買いました(笑)。
ーーハイロックさんはなぜ、BRAUNをずっと使い続けているのですか?
BRAUNの有名なデザイナーに、ディーター・ラムスという人物がいます。彼はデザイン好き、あるいはデザインを仕事にしている人なら誰もが知る偉人で、現在Appleが手掛けるミニマルデザインの、元祖とも言える人物です。
Apple創業者の元CDO(最高デザイン責任者)であるジョナサン・アイブも、ディーターを参考にしていたと公言しています。実際に、iPodの初期型デザインはBRAUNのラジオデザインにそっくりですし、iPhone初期の電卓アプリにあった丸いボタンは、BRAUNの電卓ボタンと同じなんです。
これは決してパクりではなく、いい意味でのリスペクトと言えますね。ディーター・ラムスもジョナサン・アイブも、お互いをリスペクトしている関係だと話しているくらいですから。
ーーそうした歴史を知ってデザインを見ると、また新しい発見がありそうですね。ハイロックさんは、常に新しいトレンドにアンテナを張っているイメージでした。BRAUNのように、長年愛用しているブランドやアイテムもあるんですね。
僕は基本的に、永く愛用するつもりでアイテムを探しています。
ただ、今使っているものを超えるベストが見つかれば、アップデートはしていきますね。20~30代はとにかく、「カッターナイフはこれ」「ハサミはこれ」と入れ替えながら、一軍を決める旅を続けていましたが、ここ10年は、だいぶスタメンが定着してきました。
しかし、これからも、日々変化していく様々なデザインに触れていきたいですね。
ハイロックさんが紹介してくれたアイテムのなかで、皆さんが気になったものはありますか? 今回紹介したアイテムは手に入りやすいものもありますので、早速手にしてみるのもいいかもしれません。
もしも、モノ選びが好きな仲間とつながりたくなったら、ハイロックさんが運営するオンラインサロン「ハイロック 大人の部活動 THE FUTURE CLUB」をチェックです!