1万時間の法則とは?由来となった研究や誤解、継続のコツまとめ!

著者名SJ
1万時間の法則とは?由来となった研究や誤解、継続のコツまとめ!

この記事にたどり着いたあなたは、「1万時間の法則」というものをどこかで耳にしたことがあるのでしょう。これは、世界的なベストセラーを通して一躍有名になった法則で、その後色々な形で拡散されて定着しています。しかし、1万時間の法則は誤解されている面も多く、ビジネス界や学術界でたびたび論争を巻き起こしてきました。

この記事では、まず「1万時間の法則」がどういったものかを解説し、法則の根拠となっている研究内容などを紹介しながら、この法則がどのように誤解されてきたのかを検証します。そのうえで、何かを継続するための3つのコツをお伝えしますので、新しい何かにチャレンジしたいと思っている人は、ぜひ参考にしてください。

1万時間の法則とは

1万時間の法則とは、何かで一流になるためには1万時間を費やさなければならないという法則です。1万時間の法則という言葉が世に広まったのは、イギリス出身で元新聞記者のマルコム・グラッドウェル氏が書いたベストセラー「天才!成功する人々の法則」(原題は“Outliers: The Story of Success”)がきっかけです。

グラッドウェル氏は、心理学者のアンダース・エリクソン教授が1993年に発表した研究結果を元に、この法則を導き出しました。この研究は、世界トップレベルのバイオリン奏者などが、どのくらいの時間をかけて練習を積んできたかを調査したものです。調査結果に基づき、卓越した技術の習得は1万時間の計画的な練習の賜物であるとエリクソン教授は結論付けました。

グラッドウェル氏はこの研究結果を紹介したうえで、ビル・ゲイツのようなビジネス界の成功者も1万時間の下積み期間を経て大成したと主張し、この考えを「1万時間の法則」として世に広めたのです。

(参考:マイナビニュース│1万時間の法則とは|継続して取り組むコツ7選と量より質を高める方法4選

1万時間の計算例

1万時間が膨大な時間であることは直感的にわかりますが、具体的にはどのくらいの期間にあたるのでしょうか。

例えば、毎日5時間練習した場合だと、1万時間に到達するのに2千日、すなわち約5年半かかることになります。

同じように、毎日2時間半なら4千日で約11年、毎日1時間ならかかる日数は1万日で約27年半です。

もしフルタイムでの仕事と同じように平日に毎日8時間練習したとしても、1年の総練習時間は2,080時間止まりですので、1万時間を達成するまでには5年近くかかることになります。

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1万時間は誤解?

卓越した技術を身に着けるため、あるいは何かのエキスパートになるために、1万時間もの練習が本当に必要なのかと疑問に思う人は多いでしょう。実際、1万時間の法則にはビジネス界でも学術界でも多くの反対意見が示されています。

例えば、新たなスキルの習得方法を解説する本「たいていのことは20時間で習得できる」の著者であるジョシュ・カウフマン氏は、TEDの講演で、1万時間の法則が誤解されていると指摘しています。

カウフマン氏は、エリクソン教授のもともとの主張は「とてつもなく競争の激しい分野のとても限定された題材で頂点を極めるには、1万時間かかる」というものだったと指摘し、それが伝言ゲームの要領で次第に単純化され、誤った内容に変わっていったと説明しました。

その上で、心理学の別の研究成果や成長曲線などを引き合いに出しながら、ウクレレの演奏や語学など、新しいスキルを身に着けるのに重要なのは最初の20時間だという見解を示しています。

また、心理学者のデイビッド・ザカリー・ハンブリック教授は、音楽やチェスの名人が成功した要因について調査を行い、成功への練習の寄与度は3割程度に過ぎないという結論に達しました。さらに、ハンブリック教授によると、チェスのグランドマスターたちの練習時間は平均約1万時間であったものの、実際には千時間未満から24千時間超まで大きなばらつきがあったとして、1万時間という数字の有効性に疑問を投げかけました。

他にも、「『週4時間』だけ働く。」の著者であるティモシー・フェリス氏は、1つのことを完璧に極めようとするよりも、多数のことでかなり高いレベルに到達しようとする方が魅力的だという見方を示したうえで、1年もあれば様々な分野でとても高いレベルに到達することができるとし、1万時間の法則を一蹴しています。

(参考:DIAMOND ONLINE│【山口周】努力は本当に報われる?「1万時間の法則」がデタラメな理由

エリクソン教授の研究

そもそも、エリクソン教授が行った調査はどういうものだったのでしょうか。

エリクソン教授は、バイオリン奏者を次の4つのグループに分けて、バイオリンを始めてからの総練習時間を聞き取りました。

 

1】音楽アカデミーでバイオリンを専攻する学生のうち、ソリストとしての国際的な活躍が期待される学生

2】音楽アカデミーでバイオリンを専攻する【1】以外の学生

3】音楽教育学部所属でバイオリン専攻の学生

4】交響楽団のバイオリン奏者

 

この結果、【1】と【2】のグループでだけ、20歳の時点での平均総練習時間が1万時間を超えたといいます。そこで、既に紹介したように、エリクソン教授は「卓越した技術の習得は1万時間の計画的な練習の賜物」という結論を導き出したのです。

カウフマン氏が指摘したように、これはあくまでもバイオリンの演奏という非常に競争の激しい分野の頂点に立つ人々の技術を対象にした調査の結果であり、これをそのままビジネスや一般的なスキルの習得に当てはめるのには無理があるのかもしれません。

量より質?質より量?

また、1万時間の法則では「1万時間」という時間の量が強調されていますが、これは「質より量」という主張のように聞こえがちです。この点でも、1万時間の法則は誤解を生みやすいと言えるでしょう。

研究結果を述べる際に、エリクソン教授は「1万時間の計画的な練習」と明言しており、1万時間を費やせば練習の質は問わないと言っているわけではありません。

また、特にスポーツなどでは持って生まれた体格も大きく影響しますが、この点はエリクソン教授も認めています。エリクソン教授は、卓越したパフォーマンスをするために遺伝子が影響している証拠は見つかっていないとしつつも、スポーツなど明らかに遺伝子が影響する場合は除くと説明しています。

とは言え、エリクソン教授の研究成果に疑問を投げかけたハンブリック教授でさえ、「練習が重要だと言うことを否定する者はいない」と述べているように、何かに熟練するためには練習量を確保することが必要だという点に、議論の余地はなさそうです。

(参考:紀伊國屋書店

物事を続けるためのコツ

1万時間を費やすにせよ、さらに短時間で済ませるにせよ、何かを習得するには継続的にそれに取り組むことが欠かせません。そこで、この記事の締めくくりとして、物事を続けるためのコツを3つご紹介します。

自分の興味のあることにする

最初のコツは、取り組む対象を自分が興味を持てるものにすることです。

何かを新たに身に着けたり、一流を目指したりするのであれば、地道な努力の積み重ねを避けては通れません。もし対象が興味のないことであった場合、途中で嫌になって投げ出してしまいそうですが、もともと興味のあったことなら、時間をかけてじっくり取り組むのもあまり苦にならないはずです。

毎日努力を続けて、少しずつ上達していくことに喜びを感じられるように、対象への興味を保ち続けるのがポイントです。

習慣化させる

負担を感じずに物事を継続するためには、それを習慣化してしまうのが一番です。日常のルーティンに組み込み、意識しなくても自然にそれに取り組むようになれば、努力しているという感覚さえなくなります。

習慣化の方法は、こちらの記事で詳しく解説しています。ある程度時間がかかりますが、一度習慣化ができれば楽に継続できるようになるので、ぜひ試してみてください。

習慣化させるための方法は?継続のコツや3日坊主になる理由を解説!  - CANARY
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アウトプットもする

新たに何かを身に着けるためには、本を読んだり動画を見たりして情報をインプットするだけではなく、実際にアウトプットをすることが重要です。

例えばウクレレを弾けるようになりたい場合、最初に全てのコードを覚えようとすると、覚えることが多すぎて嫌になってしまうでしょう。しかし、実際に曲を弾きながら覚えるようにすれば、よく使うコードがどれかもわかりますし、徐々に上達していく実感を得ることもできます。

「たいていのことは20時間で習得できる」の著者カウフマン氏は、実際に練習しながら自分で改善していくために必要なだけの知識を学んだら、その時点で練習を始めるようにと説いています。カウフマン氏によると、最初に知識をつけることに注力するのではなくアウトプットをしながら上達していくことが、たった20時間で効率よく物事を習得するための1つのコツなのだそうです。

まとめ

「何かで抜きんでるためには1万時間必要だ」という趣旨の1万時間の法則は、ベストセラーで大きく取り上げられたことによって世界的に有名になりました。しかし、その根拠とされている研究の内容に目をやると、この法則がかなり誤解された形で広まっていることが見えてきました。

とは言え、物事を身に着けるためにはある程度の練習や実践が不可欠だという点には、誰もが同意するでしょう。これから何かを習得したいと考えている人は、この記事の最後でご紹介した継続のコツを参考に、ぜひ最初の一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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