確定申告は原則として2月16日から3月15日に行われます。近年、確定申告書類の提出方法が増えており、以前より容易になった部分もありますが、逆にやり方に迷いが出た人もいるでしょう。この記事では確定申告の提出のやり方や、状況によって必要になるものなどを細かく説明します。初めて確定申告する人だけではなく、毎年確定申告をしている人なども、ぜひ参考にしてください。
確定申告書類の提出方法
確定申告書類の提出方法は窓口、e-Tax、郵送の3つがあり、e-Taxの場合はパソコンかスマートフォンを使って行います。それぞれ詳しく見ていきましょう。
税務署の窓口で提出する
管轄税務署の窓口に確定申告書を持って行くと、直接提出できます。記入内容のチェックはしませんが、書類の不備はチェックしてもらえます。また、控えを用意していればその場で受付印を押してもらえます。時間外の場合は、時間外収受箱へ投函しましょう。
(参考:弥生確定申告あんしんガイド|どれが最適?確定申告の3つの提出方法を徹底解説)
インターネット経由で提出する(e-Tax)
インターネット経由、いわゆるe-Taxで提出する方法では、「マイナンバー方式」または「ID・パスワード方式」を使用します。ただし、ID・パスワード方式は暫定的な方式となっており、いずれはマイナンバーカード方式に一本化される可能性があります。
また、2020年分の確定申告から青色申告特別控除の上限が55万円に変更されました。しかし、e-Taxを利用すれば最大65万円の控除が受けられます。さらに、一部の添付書類を省略できるメリットもあります。
インターネット経由での提出は、パソコンまたはスマートフォンで行えます。1月上旬から3月中旬と早めに手続きができるようになっており、24時間利用可能です。
(参考:弥生確定申告あんしんガイド|パソコンで確定申告を行うには?準備・方法・用意するものを解説)
パソコンで提出する
パソコンを使用する場合は、インターネット環境が整っている必要があります。所得金額を算出したあと、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」で作業を行います。クラウド会計ソフトなどを利用するとスムーズに提出できるでしょう。
(参考:弥生確定申告あんしんガイド|パソコンで確定申告を行うには?準備・方法・用意するものを解説)
スマートフォンで提出する
2020年1月31日より、マイナンバーカードとマイナンバーカード対応のスマートフォンを持っている人は、スマートフォンから確定申告が提出できるようになりました。マイナポータルアプリの「もっとつながる」機能から確定申告書等作成コーナーが利用できます。2021年1月4日で、Android向け「e-Taxアプリ」のサービスは終了しているので注意しましょう。現在はAndroidの人もマイナポータルアプリで確定申告できます。
ただし、スマートフォンで提出できる人には制限があり、現在は事業所得や不動産所得がある人は対象外となっています。
(参考:e-Tax国税電子申告・納税システム|お知らせ スマートフォンからより便利にe-Taxをご利用いただけるようになりました。)
郵送
確定申告は住所地等の所轄税務署に郵便または信書便物として郵送できます。郵便物・信書便物以外の荷物として送付することはできないため気をつけましょう。郵送の場合、税務署に書類が届いた日ではなく、封筒に押された通信日付印が提出日となります。
(参考:国税庁|申告書の提出方法)
確定申告に必要なもの【窓口提出の場合】
窓口で確定申告書類を提出するのに必要なものは、以下の通りです。ひとつずつ詳しく見ていきましょう。
確定申告書・控え
印鑑
本人確認書類
口座番号のわかるもの
給与所得を証明する書類(源泉徴収票・支払調書)
各種控除証明書類
(参考:freee|確定申告の基礎知識 確定申告の持ち物とは?失敗しないための必要書類リスト)
確定申告書・控え
確定申告書類は税務署や確定申告会場、市区町村の担当窓口、指導相談会場で受け取れます。また、管轄税務署に連絡すると用紙を郵送してもらえます。国税庁ホームページ「確定申告特集」で、必要な用紙をダウンロードして利用することも可能です。
確定申告に必要な申告書は、AとBの2種類があります。また、青色申告の場合は青色決算申告書、白色申告の場合は収支内訳書を提出します。申告書とともに控えも持参すると、収受日印を教えてもらえるので、ぜひ持参しましょう。
(参考:国税庁|申告書用紙)
印鑑
確定申告書類にはいくつか印鑑を押すところがあります。すべて押印済だったとしても、印鑑を押し忘れる可能性もあるので、必ず持参するようにしましょう。
本人確認書類
本人確認書類はマイナンバーカードを持っている人と持っていない人で、持参するものが異なります。
マイナンバーカードを持っている人
マイナンバーカードを持っている人は、マイナンバーカードまたは写しを持参しましょう。ただし、写しの場合は表面と裏面の写しが必要です。
マイナンバーカードを持っていない人
マイナンバーカードを持っていない人は、マイナンバーの番号確認書類と本人確認書類の両方を持参する必要があります。
【番号確認書類】
以下のいずれか1つを用意しましょう。
- マイナンバー通知カード
- 住民票の写しまたは住民票記載事項証明書(マイナンバーの記載があるものに限る)
【本人確認書類】
以下のいずれか1つを用意しましょう。
- 運転免許証
- 公的医療保険の被保険者証
- パスポート
- 身体障害者手帳
- 在留カード
(参考:国税庁|申告書に添付・提示する書類)
口座番号がわかるもの
還付金を受け取るには銀行口座が必要です。そのため、振込先である口座番号がわかるものを持参しましょう。
給与所得を証明する書類(源泉徴収票・支払調書)
給与収入や公的年金等がある場合は、申告する年分の源泉徴収票を提出しなければなりません。また、その他に収入がある場合は、支払調書など収入金額がわかる書類も提出しましょう。
各種控除証明書類
生命保険料控除や地震保険料控除、社会保険料控除、小規模企業共通等掛金控除、医療費控除、寄附金控除などを受ける場合は、各種控除証明書を持参しましょう。
(参考:国税庁|確定申告の際にご持参いただくもの)
確定申告に必要なもの【郵送提出の場合】
郵送で確定申告書類を提出するのに必要なものは、以下の通りです。郵送の際に必要なもののみ、詳しく見ていきましょう。
確定申告書・控え
本人確認書類
給与所得を証明する書類(源泉徴収票・支払調書)
各種控除証明書類
返信用封筒
切手
(参考:Money Forwardクラウド確定申告|郵送で青色申告の必要書類を提出する方法や期限について解説!)
返信用封筒
返信用封筒を書類と一緒に送付すると、収受日付印を押して返送してもらえます。収受日付印のある控えは翌年の参考書類になるため、ぜひ同封しましょう。
切手
返信用封筒には切手を貼っておく必要があります。また、確定申告書類を入れた封筒にも正しい金額の切手を貼って投函しましょう。
確定申告に必要なもの【ネット(e-Tax)提出の場合】
ネット(e-Tax)で確定申告書類を提出するのに必要なものは、以下の通りです。
確定申告書(データのみで紙は不要)
給与所得を証明する書類(源泉徴収票・支払調書)
各種控除証明書類(種類によっては入力のみで添付不要)
パソコンまたはスマートフォン
利用者識別番号と暗証番号
電子証明書
ICカードリーダライタ
(参考:e-tax国税電子申告・納税システム)
パソコンを使う場合
パソコンを使う場合は、国税庁が定めた推奨環境を満たすパソコンと、インターネットに接続できる環境が必要です。メモリが512MB以上、2GB以上の空きがあることなど、国税庁のHPに細かく記載されているので、詳しくは「e-Taxソフトのダウンロードコーナー(2)利用環境の確認」をご覧ください。
(参考:e-Tax国税電子申告・納税システム|e-Taxソフトのダウンロードコーナー)
スマートフォンを使う場合
スマートフォンを使う場合は、マイナンバーカードとマイナポータルアプリ対応のスマートフォンを用意する必要があります。その後、マイナポータルアプリをインストールしましょう。
マイナポータルのよくあるご質問「マイナポータルアプリに対応しているスマートフォン等を教えてください。」には、マイナポータルに対応している機種一覧があるので、参考にしてみてください。
(参考:マイナポータル|よくあるご質問)
利用者識別番号と暗証番号
e-taxを利用するのに必要な開始届出書は、オンラインでも提出可能です。届出が受理されるとログインに必要な利用者識別番号が取得できます。利用者識別番号には初期の暗証番号が設定されているので、自分の覚えやすい暗証番号に変更しましょう。
(参考:e-tax国税電子申告|e-Taxの概要・利用全般)
電子証明書
電子証明書とは、認定局が間違いなく本人であることを電子的に証明するものです。利用者識別番号の登録が確認できると「電子証明書の登録・更新」画面が表示されるので、案内に従って電子証明書の登録を行います。自動的に表示されない場合は、「利用者情報登録」から「電子証明書登録・更新」をクリックしましょう。
(参考:e-Tax国税電子申告・納税システム|3.インストール・初期登録)
ICカードリーダライタ
パソコンを使用する場合には、マイナンバーカードに搭載された電子証明書を読み出すICカードリーダライタが必要なケースがあります。地方公共団体情報システム機構が運営する公的個人認証サービスポータルサイトでは「マイナンバーカードに対応したICカードRW一覧」が公開されています。
ただし、2021年分確定申告からスマートフォンのマイナポータルアプリで、パソコンに表示されたQRコードを読み取ることが可能になりました。そのため、マイナポータルアプリに対応しているスマートフォンを持っていればICカードリーダライタがなくてもe-TAXでの送信が可能です。
(参考:地方公共団体情報システム機構 公的個人認証サービスポータルサイト|申請に利用する機器を選ぶ)
控除を受ける場合に必要なもの
ここでは、確定申告で控除を受ける場合に必要なものを見ていきましょう。
医療費控除
本人やその配偶者、親族のために支払った医療費がある場合は、医療費控除の対象になる可能性があります。その場合は、医療控除の明細書や医療費通知書(原本)が必要です。
(参考:国税庁|令和3年分確定申告特集)
社会保険料控除
健康保険、国民年金、厚生年金保険等の社会保険控除には保険料の金額を証明する書類が必要です。
(参考:国税庁|No.1130社会保険料控除)
生命保険料控除・地震保険料控除
生命保険料や地震保険料の控除には、契約している保険会社から秋ごろに送られてくる証明書が必要です。
(参考:Rakuten楽天生命|保険料と医療費は控除できる!知っておきたい控除のしくみ)
住宅ローン控除
住宅ローン控除を受けるには、以下の書類が必要になります。
- 住宅借入金等特別控除額の計算明細書(税務署または国税庁のサイトから入手する)
- 建物・土地の登記事項証明書の原本(法務局から入手する)
- 請負契約書または建物・土地の売買契約書の写し
- 住宅ローンの残高証明書(金融機関から送付される)
- 認定通知書の写し(認定長期優良住宅・認定低炭素住宅の場合。不動産会社から入手する)
- 住民票(マイナンバーを記載する場合は不要)
住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除
住宅耐震改修特別控除・住宅特定改修特別税額控除を受けるためには、以下の書類が必要です。
- 住宅耐震改修特別控除額の計算明細書
- 増築等工事証明書または住宅耐震改修証明書
- 家屋の登記事項証明書など、家屋が昭和56年5月31日以前に建築されたと証明できる書類
- 住宅耐震改修の契約をし、補助金等の交付を受けている場合は、その金額がわかる書類
なお、登記事項証明書は「住宅耐震改修特別控除額の計算明細書」に不動産番号を記載した場合は不要です。
(参考:国税庁|No.1222耐震改修工事をした場合(住宅耐震改修特別控除)
ふるさと納税
ふるさと納税の控除には、寄付金受領書や寄附金控除に関する証明書が必要です。ただし、e-Taxで送信する場合は添付の省略ができます。また、ワンストップ特例制度を使用し、寄附金税額控除に係る申告特例申告書を寄附した自治体に送った場合は、確定申告は不要です。
(参考:総務省|ふるさと納税をされた方へ)
寄附金控除
国や地方公共団体、特定公益増進法人などに「特定寄附金」を支出した人が控除を受けるには、以下の書類が必要です。
- 寄附金の受領証(領収書)
- 寄附した法人や信託が適正な団体だと証明する書類の写し
- 認定書の写し
- 選挙管理委員会などの確認員が押印された寄附金控除のための書類(政治活動関連の場合)
(参考:Money Forwardクラウド給与|所得税で認められる寄付金控除の範囲とは?)
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除を受けるには、支払った掛金の証明書が必要です。給与所得者の場合は、「給与所得者の保険料控除申告書」に添付して給与支払い者に提出するか、確定申告を提出する際に提示しましょう。
個人事業主が確定申告をする場合に必要なもの
個人事業主が確定申告書類を提出するのに必要なものは、以下の通りです。それぞれ詳しく説明いたします。
確定申告書B
青色申告決済書(青色申告の場合)
収支内訳書(白色申告の場合)
各種控除証明書類
(参考:freee|【2022年(令和3年分)】確定申告の必要書類と準備するものは?ケース別にまとめました)
確定申告書B
事業所得の個人事業主やフリーランスは、青色申告決算書と収支内訳書の金額を詳細に記載する確定申告書Bを提出します。確定申告書Bは税務署や市区町村、国税庁のサイトから入手できます。
(参考:弥生確定申告あんしんガイド|確定申告書Bの書き方と入手方法について)
青色決算申告書(青色申告の場合)
青色決算申告書は、帳簿付けの最終結果を決算書として作成する書類です。損益計算書(1枚)、損益の内訳記入書(2枚)、貸借対照表1枚(プラス控え)になっています。青色申告をする場合はすべてを提出しなければなりませんが、10万円の控除の場合は貸借対照表の記入は必要ありません。
収支内訳書(白色申告の場合)
収支内訳書は1年間の収入と支出の内訳を記載したもので、白色申告をする場合に必要です。売上や仕入、経費などが一目で把握できるようにしておくもので、青色決算申告書よりも簡単といわれています。
(参考:freee|白色申告の基礎知識)
会社員・パート・アルバイトが確定申告をする場合に必要なもの
最後に、会社員・パート・アルバイトが確定申告書類を提出するのに必要なものは、以下の通りです。
確定申告書A
源泉徴収票
各種控除証明書類
(参考:freee|【2022年(令和3年分)】確定申告の必要書類と準備するものは?ケース別にまとめました)
確定申告書A
給与所得の会社員・パート・アルバイトは、確定申告書Aを提出します。確定申告書AはBに比べて項目が少ないため使いやすいのが特徴です。2箇所以上から給与をもらっている人や副業所得が20万を超える人、給与が2,000万円を超えている人は確定申告書Aを提出する必要があります。
(参考:経理COMPASS|確定申告書Aとは|確定申告書Bとの違いと記入方法(図入り))
まとめ
インターネットの普及で確定申告のやり方や提出方法が増え、簡単に確定申告ができるように少しずつ変化しています。ただし、現在はまだ移り変わりの途中のため、やり方が変更になることも多いです。
確定申告はそれぞれの状況に合わせた提出物が必要になります。そのためまずは、自分がどのようなやり方で確定申告をするかを決めて、必要書類等を確認することが大切です。ぜひ便利なやり方を導入して、確定申告をスムーズに行いましょう。