【海外子育ての理想と現実】教育方針、言語環境、性格との相性を考える

著者名中野 円佳
海外×キャリア×ママ サロン
ジャーナリストの中野円佳です。夫の海外赴任に伴い、子供を連れて帯同しつつも、自分の仕事をグローバルなフリーランスとして模索したいと思っています。シンガポールに来て、1ヵ月が経ちました。「海外で子育て」というと響きがいいのですが、当事者としては色々と悩ましく、初心者として未だに迷いながら進んでいる状況です。

到着翌週からローカル幼稚園に通い始めた我が子

我が家の場合は、シンガポールにいきなり家族で出発し、ホテルで過ごしながらまず最初の週に学校見学を4~5件しました。

結局、到着翌日に見学したローカル幼稚園(プリスクール)に通わせることにして、その近くで物件を探し、引っ越す前の翌週から上の子は通わせはじめました。

そのプリスクールを選んだ理由は次のようなものです。

 

・ベースは英語で行われるものの、日本語クラスが毎日あり、自信が持てるまでかなり引っ込み思案になってしまううちの子には慣れやすいと感じた。まずは母国語をしっかり話せるようになってほしい下の子にとっても、日本語で話しかけてくれる先生が毎日クラスにいてくれるというのが魅力的だった。(きょうだいが別の園になると、行事や休暇などずれて厄介という話を聞いて、できれば2人同じ園にしたかった)

・日本語ベース、英語も学べるという日本人向けの幼稚園も見学したものの、足を踏み入れたら「ここは日本」という印象。シンガポールの多様性についても学ぶ機会はあるとのことだったが、個人的にはせっかくシンガポールに来たので、もう少し「日常」、つまりクラスメート等に多様性がある環境に触れてほしいと思った。一方で、中国語まで必須のところは英語の素養が全くない中ではちょっとしんどいかなと感じた。

・施設などが素晴らしく整っているインターナショナルスクールも非常に魅力的だったものの、高校生までいるマンモス校で右も左もわからないと委縮しそうな気もして、割と雑多でごちゃごちゃしているオープンな環境(その結果エアコンがなく開け放された空間で文字通りとてもオープンだが熱中症を心配する羽目になった)に就学前の異学年が放り込まれている空間が個人的に気に入った。

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ただし、こうした見学時の印象や最終的に判断をしたときの基準は子どもの性格、きょうだいの年齢構成、親の価値観などによって大きく異なります。

私自身まだ一ヵ月目なので、この学校選びが正解だったとは言えませんし、仮にこれで我が子がとてもうまくいったとしても、別の親子にとっても良い方法だとは全く言えないでしょう。

短い時間で十分に調べることができていなかった面もありますし、見学日程がうまく調整できずに、決めてから行った園や学校もありました。

小学校以降もシンガポールにいる可能性を踏まえると、また学校選びをする必要があり、最初から付属校のあるところを選んだほうが楽だった可能性もあります。

今、就学年齢になる前に転園する選択肢も残しておこうと思っています。

海外子育ての悩ましさ

海外子育ては、日本の均質性に比べれば圧倒的に多様性のある環境で子供に豊かな経験をもたらしてくれると思います。これに加え、「バイリンガルになれるのでは!?」と言語的なメリット(期待)を感じる保護者の方も多いと思います。

ただ、一方で母国語があやふやになるデメリットもかならず付きまといます。シンガポールのように様々な学校の中から選べる環境ばかりではないとも思いますが、私も結局言語として日本語も英語も捨てられずに悩みながら環境選びをすることになりました。

帰国子女などを対象とした調査研究によると、母国語が確立して柔軟に吸収する力もある7~9歳のときが海外に出るうえで最も適齢だとされているようです。

しかし、なかなか都合よく海外滞在を子どもの年齢と合わせられないご家庭も多いでしょう。我が家も「適齢」よりもかなり早いタイミングだったのでより母国語が大事と認識しており、悩ましい側面がありました。

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シンガポールに来てから、1か所見学したインターナショナルスクールで、ややショックな場面に出会いました。

STEM教育(編集部註:科学、技術、工学、数学といった科学技術開発につながる教育分野の総称。)など素晴らしいプログラムを実施している学校でしたが、算数のようなことをやっている教室を見学したときのこと。

日本の学校で言えば小学校5年生くらいの内容を、小学校1、2年生でやっているように感じました。

そのとき、クラスの5分の2くらいの生徒は、「はい、はい!!」と手を上げ、次々と難しい問題に答えていたのですが、残りの5分の3は、まったく何をやっているのかすら分かっていない様子で、ただただぼーっとその時間をやり過ごしているという様子でした。

もちろん、日本の学校でもそういう光景はあると思うのですが、その教室に何人かいた日本人の子供たちが全員、つまらなそうにしている5分の3のほうに含まれていたことが気になりました。

たまたまその授業だけだったかもしれません。その子たちは入ったばかりだったのかもしれません。あるいは、日本にいてもそうだったかもしれません。

でも、もし言語的な遅れが、その他の領域に及んで自己肯定感を下げていたら、親はすばらしい環境を選び取ったと思っていても、その子にとって学校生活が楽しいものにならない可能性もあると感じました。

これは勝手な推察ですし、ほんの一部の授業を見て感じただけのことです。教育社会学ではニューカマーの子供たちの学力などについての研究が山のようにあるので、そちらも追々参照したいと思っています。

海外に行く前から英会話スクールに行かせるなどして万全の対策をしてから出発されている方もいらっしゃるでしょうし、一方で子供自身は意外と慣れるのが早いので日常生活では何の問題もないかもしれません。

ただ、子供の性格にもよると思いますが、「鶏口牛後」のような考え方もありますし、言語という部分でビハインドになりやすいESL(English as Second Language)生徒の場合、ESLや習熟度への配慮が手厚い学校を選ぶなど、より学校選びや親のケアが大事になってくるのではないかと、1人の親としては心苦しく感じました。

海外子育ての検討ポイント

ということで、今のところ、海外子育てには次のような論点がつきまとうなと感じています。

・長期的にどんな風に育ってほしいのかという方針(日本の教育やシステムに戻って浮かないことを重視したいのか、グローバルな価値観を身に着けていることを重視したいのかなど)

・言語環境をどのように整えるか(現地の言葉をどれくらい習得してほしいか、日本語をどこでどう維持するか)

・言語をベースにしながら性格なども踏まえ、自己肯定感や習熟度をどう高めるか

 

おそらく、子供の様子を見ながらになるでしょうが、ご家族で話し合う参考にしていただけますと幸いです。私自身も、様々な事例をヒアリングしたり、学校見学等をしたりしながら引き続き摸索していきたいと思っています。

『海外×キャリア×ママ サロン』で情報交換

海外×キャリア×ママサロンでは、このような子育ての悩みに加え、ママたち自身のキャリアの継続の仕方などについて情報交換し、励まし合っています。はたから見れば恵まれた環境ではあると思いますが、子供が同じくらいの年齢で同じ行き先の先輩を見つけることは至難の業。孤独に悩みを抱え込んでしまうケースもあります。

オンライン上で悩みを共有したり、他の人の試行錯誤を読んだりすることで少しでも海外と子育てを自分自身のキャリアや子供たちの人生にとってプラスに導ける人が増えればいいなと思っています。

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