脚本家の小林雄次さん(写真左)とプロデューサーの高達俊之さん(写真右)による「シナリオランド」では、アニメや特撮の仕事に関心のある人やシナリオのノウハウを得たい人向けに多彩なゲストを迎えたオフラインイベントを開催しています。
9月には『牙狼〈GARO〉』シリーズのアクション監督を始めとして、数々の特撮アクションに携わる大橋明さん(写真中央)をゲスト講師に迎えたワークショップも開催。現場はどんな様子なのか、実際に参加してきました!
アクション監督になるつもりはなかった!?
イベントはプロデューサーである高達さんの挨拶からスタート。
「ぼくも前はアニメの業界にずっといたのですが、特撮アクションって実際どういう風に作られているのか。アクションはどこまでシナリオで書き込めばいいのか。分からないことばかりなので、今日は会員の皆さまと同じ立場になって勉強できればと思います。」
2部構成の前半では、事前に会員の方々から寄せられた質問を軸に大橋さんが手がけた作品についてのお話を伺います。
もともとは、スタントマンからスタートした大橋さん。「なぜ、アクション監督の仕事を始めようと思ったのか」という質問に対して、実はアクション監督には全く興味がなかったと回答。
「社長の横山誠さんが『キューティーハニー THE LIVE』の総監督とアクション監督をやるはずだったのが、ひとりでは手が回らないから今回だけやってくれっていわれたのです。
でもアクション監督になるのが嫌で「(アクション監督は)やりますけど、スタントもやらせてください」、と。それで『キューティーハニー THE LIVE』で両方をやったのがきっかけです。
別にスタントマンを引退したとは言ってないのですけど、いまではスタントの仕事が来なくなって、アクション監督がメインになっちゃいました。」(大橋)
これだけ数多くのアクション作品に監督として携わりながらも、実は目指していたわけではなかったとは驚きです。
制作現場の裏側を惜しみなく披露する質問コーナー
「アクションを面白く表現する上で意識していることは?」という来場者からの質問には、アクションのなかに一癖いれるとキャラが生きてくるなど、実践的なコツを披露。
ほかにも数多く寄せられた質問に対して丁寧に、なかなか知ることのできない制作現場の裏側を惜しまず教えてくれました。
「あまり知られていない出演作品はありますか?」という質問では、「『踊る大捜査線』のテレビシリーズで、織田裕二さんを刺す犯人の男は僕が吹き替えました」という意外な出演経験が判明!
これには会場にいた参加者も意表を突かれた様子!
こういったアクションファンならずともタメになる言葉や、現場のプロだからこそ知る事実が続々と飛び出します。
質問コーナーのあとは、小林さんと大橋さんがともに関わった作品をスクリーンに映しながら、制作現場の裏側についてレクチャー。
シナリオが全員に配られ、作品の見所やどうやってアクションを付けたのか、俳優さんの表情についてなど、過去に制作を担当した作品も絡めながら紹介。
みなさん、スクリーンとシナリオを交互にみながら大橋さんの作品解説に耳を傾けます。
質問を交えながら大橋さんが手がけてきた作品やアクションの裏側についての講義で、あっという間に一時間が経過。聞きたいことは山ほどありますが、ここらで一旦休憩です。
プロ直々。アクション監督からアドバイスがもらえるワークショップ
後半はサロン会員が書いたシナリオをもとにしたワークショップ。アクションシーンのシナリオに対してプロ目線でコメントをしてもらえる、またとない機会です。
大橋さんには事前に13名の作品を読んで頂き、絞った3本のシナリオを全員に配布。ですが、せっかく書いてきてくれたからと全員分を講評することに。
それぞれにシナリオとしてというよりも、アクション監督としての評価ポイントや改善点、このキャラはどんなバックグランドがあってこういう動きをするのかなどを書いた本人に逆質問。プロ目線で疑問点をぶつけることで、書いてきたシナリオはより具体的なものへと仕上がっていきます。
これはと思ったのが、ト書きに「看守の必殺の一撃」と書いた場合、脚本家の方でどういう必殺の一撃なのかを考えるべきなのか、それともアクション監督にお任せしたほうがいいのかという質問。
ト書きとは、台詞外の役者の動作・演出の説明などを表した文章で、俳優さんはト書きを見ながら演技を行います。なぜト書きかというと、「○○するとそこへ某が現れ」で使われている「ト」を簡易的に表現したためです。
大橋さん的には「プランがはっきりしているのならば、書いておいてもらったほうがイメージしやすい」とのこと。シナリオの段階で書かれたものを膨らますのか、俳優さんのアクションで膨らますのかも変わってくるそうですが、ト書きは具体的に書いた方がいいようです。
ちなみに、大橋さんは撮影しないシーンであったとしても、前後のストーリーが気になるそう。そこがはっきりすることで、キャラクターの動きや表情などの演出も変わってくるのだとか。
全員の講評が終わったら、大橋さんが選んだ3本のシナリオについて実際にアクションを付けながら、より詳しく講評していきます。
現場でシナリオはどのように変わるのか、アクション監督はト書きをどこまで活かすのか、アクション監督にとって使いやすい脚本とは、などなど。具体的なアドバイスが続きました。
アクション監督だけではなく、監督業もこなす大橋さん。脚本では最大限に予算のかかるシーンを想定しておくことで削られてもいいようにするなど、かなり実践的なお話も。
また、アクションを付けやすいシチュエーションを選ぶ意味や、その場にあるものをどう活かしアクションを付けるのか。映画学校を出たわけではないのに監督になったことで苦労したエピソードなど、自身の経験もたっぷり披露してくれました。
普段は話す機会がないシナリオライターと出会えて楽しかったという、大橋さん。
最後に記念写真を撮ってイベントは無事に終了。
…と思いきや、みなさん聞き足りなかったと見えて、まだまだ小林さんや高達さん、大橋さんとの会話を楽しんでいました。
オフラインイベントも充実のサロン
10月22日には、小林さんによるアニメシナリオのワークショップも決定。
アニメシナリオがどのように作られ、また制作現場でシナリオがどのように展開されるか、具体的に聞けるそうです。
シナリオを書いてみたいというひとも、アニメや特撮、映画やドラマが好きというひとも「シナリオランド」に参加すれば、これまでの作品も見方が変わるのは間違いありません。
入会された方には、もれなくここでしか読めない「シナリオライター志望者のためのお助けQ&A集」も提供されますので、気になった方はぜひサロンに参加してみてください。