去る9月12日(水)、オンラインサロン「GRADUATE塾」が主催するイベント「SASSOON academy マーク・ヘイズ スペシャルセミナー」がDMM.com本社(六本木)で開催された。「GRADUATE塾」は、表参道にあるヘアサロン「GRADUATE」の代表を務めるカリスマ美容師・ATSUTOSHI氏が主宰している、美容業界注目のオンラインサロン。
イベントに登壇したマーク・へイズ氏は、イギリス・ロンドンのヴィダルサスーン クリエイティブチームの最高責任者として長年美容業界のトップを走り続けている人物で、ヴィダルサスーンの在籍歴は40年を超える。世界最高峰のヘアクリエイティブを一目見ようと、会場には100人を超える観客が集結。若手の美容師や美容学生、美容業界を目指す高校生の姿も数多く見られた。
神の手が作りだすショートヘアに魅了される会場
イベントは3部構成で、初めの45分はショートヘアのカットショーを披露。中盤には、ヴィダルサスーンでマーク・へイズ氏が歩んできた道を紹介するムービーを15分間上映。最後は再びヘアショーを行い、ロングヘアのカットを45分間実演した。合間には質疑応答やモデルたちのダンスパフォーマンスも。120分、たっぷりと彼の技術を堪能できるプログラムとなっている。
第1部のショートヘアのカットショーは、美容師の基本であるグラデーションカットをデモンストレーション。ミディアムヘアの髪を後ろから丁寧にカットするところからスタートした。参加者はマーク・ヘイズ氏の技術を片時も見逃すまいと、真剣な眼差しでスマホのカメラや動画に様子をおさめており、いかにこのセミナーが貴重な機会かがわかる。
マーク・へイズ氏は、はさみの入れ方やカットする場所だけでなく、カットする際の自分の立ち位置にいたるまで細かく解説。印象的だったのは、何度も”基本がとても重要”とアドバイスしていたこと。
「基本を知っていれば、髪を好きなヘアスタイルにコントロールすることができる。基礎を抑えて創作的なヘアスタイルを習得すれば、美容師としての個性も生まれる」という。
マーク・ヘイズ氏の歩んできた道とは?
第2部では、”私の辿ってきた道”と題し、ヴィダル・サスーンとマーク・ヘイズ氏のレガシーをまとめたムービーが上映された。その内容をもとに彼の簡単な経歴を紹介しよう。
マーク・ヘイズ氏が所属するヴィダルサスーングループ主宰のヘアショーにはじめて自身が参加したのは、1981年のこと。場所はベルギーだったそうだ。このショーで評価され、1年後にマンチェスターのサスーンサロンへ配属された。その後、それから世界中のサスーンの後継者の育成に当たっている。
ムービーの上映が終わると、マーク・ヘイズ氏は参加者に向かって、自身のモットーは、「より多くの人に、より創造的なチャンスを、より多く与える」ことだと語った。同時に彼は、常に初心に戻ることを忘れないのだという。彼がいかに、クリエイティブな美容師の育成に注力しているかがわかるメッセージだ。
トーク後、第3部のロングヘアのレイヤーカットがスタート。今回なぜ2パターンのヘアカットを用意したのかというと、”髪型を作る”ということは、長くても短くても自由自在に操れることだからだという。
後ろの髪はシンプルなラインでカットしているが、ほんの少しだけAラインになっているのがポイント。サイドに向かって長くカットしており、フェイスラインの周りはレイヤーを使用していくのがマーク・へイズ氏流。アウトラインを残しつつ、軽さを出すテクニックを紹介した。
また、前髪も二種類の違った長さでカット(ダブルフリンジ)するのがポイントだと解説。バックセンターを短く、サイドに流れるにつれてレイヤーを入れることで柔らかい雰囲気になるのだそうだ。
ヘアカット中に相手と信頼関係を築いていく
カット中には、マーク・へイズ氏自身の美容哲学も熱弁。ヘアアレンジにおいて、もっとも大切にしているの「似合わせること」だと話した。単に見た目だけでなく、相手の”内面”にも似合う髪型をつくること。その点を最重視しているのだという。
「ヘアカットはどこのサロンでもできる。しかし、その中で自分を選んでくれるだけの関係を作りあげることが大切である。お客様があなたとだけしか築けない関係を構築して、見た目にも内面にも合う髪型にしてあげること。そこを強く意識してください」
ロングヘアのデモンストレーションに入ってからは、会場からたくさんの手が挙がり、続々と質問が飛んだ。その中でも、特に印象的だったのが、「今目標にしていることはありますか」と「尊敬している人はいますか」というふたつの質問。マーク・ヘイズ氏は前者の質問には次のように答えた。
「もちろん、目標やゴールはあります。しかし、それらは美容師をはじめたときから今日に至るまで徐々に変わっています。なぜなら、経験をたくさん積んだり、ポジションが変わったりするからです。今の夢は、自分の部下たちがベストな結果を出してくれること。わたしの部下は、個性のある人ばかり。彼らが行く道を助けてあげることが自分のミッションだと思っています」
また、後者の質問には照れ臭そうにこう答えた。
「今までわたしを助けてくれた人はたくさんいます。例えば、わたしが入社したばかりのときに上司だった、アートディレクターやインターナショナルディレクター、クリエイティブディレクターたちは、わたしにヘアスタイルの作り方を一から教えてくれました。特にクリエイティブディレクターとはその後25年間、一緒に仕事をしました。そう考えると、年齢や肩書きに関わらず、ヴィダル・サスーン氏が教えてくれたことを継承している人たち、つまり周りの人たちをとても尊敬しています」
マーク・へイズ氏はイベントの終了後も、一緒に写真を撮りたい人や直接アドバイスをもらいたいという参加者ひとりひとりに、丁寧に対応。じっくり話を聞いたり、励ましの言葉をかけたり、とびきりの笑顔で勇気づけたりしていたのが印象的だった。
オンラインサロン「GRADUATE塾」では、オリジナルコンテンツや入会者同士の交流イベントも充実。美容業界で志の高い仲間を見つけたい人はぜひ参加してみてはいかがだろうか。