お腹周りのたるみが目に付くようになったときなど、体重とともに気になってしまうのが体脂肪率ですよね。ダイエットやトレーニングの目安などとしてもよく耳にする言葉ですが、どのように計測しているのかご存知でしょうか。
この記事では、体脂肪率の測り方の種類や、計測結果を安定させるためのコツについて紹介します。
体脂肪率を計測する仕組みとは
体脂肪率の測り方を見ていく前に、まず「体脂肪率」についておさらいしてみましょう。
体脂肪率とは、身体全体の体重に対して、皮下脂肪や内臓脂肪がどの程度の割合で含まれているのかをパーセントで表したものです。体脂肪率は生活習慣病との直接的な相関はないため、メタボリックシンドロームの診断基準には採用されていませんが、肥満の状態を知る目安にはなります。厚生労働省では、成人男性は25%、成人女性は30%を超えると体脂肪量増加状態にあると定義しています。
また、体重が同じ人でも、筋肉と脂肪の量によって体型が異なります。筋肉に比べると、脂肪の体積は約1.2倍大きいため、外見が太って見える場合もあります。
そのためダイエットや健康面から、体内にどれくらい脂肪が蓄積されているかを示す体脂肪率への注目が高まりました。
体脂肪率を計測するには、水中体重秤量法や空気置換法などの様々な方法がありますが、一般家庭で手軽に体脂肪率を計測できる体組織計のほとんどでは、「生体インピーダンス法」が用いられています。この方法は、電気を通しにくいという脂肪の性質を利用したもので、体内に微弱な電流を流した際の電気抵抗値(インピーダンス)から体脂肪率を計測しています。
(参考:厚生労働省 e-ヘルスネット|体脂肪計(たいしぼうけい))
体脂肪率の測り方
体脂肪率は「体脂肪の重さ(kg)÷体重(kg))×100」という計算式から導きます。そのため、まずは体脂肪の重さを求めなければなりません。
冒頭でも述べたように、体脂肪の測り方にはいくつかの種類があり、測定場所や体脂肪計によって採用されている方法が異なります。代表的な測り方を例に、メリットやデメリットを見てみましょう。
キャリパー法
キャリパー法では「キャリパー」と呼ばれる専用の器具で指定された部位の脂肪をつまみ、その厚みをもとに体脂肪率を計測します。
人間の皮膚の厚みは0.5mmから2.0mm程度と非常に薄くなっているため、皮下脂肪の厚みは直接測定することが可能です。
キャリパー法のメリット
キャリパー法のメリットは、器具さえあれば場所を選ばずに計測できることです。皮下脂肪の厚みは体内の水分量などの影響を受けないため、飲食後や入浴後でもほぼ問題なくはかることができます。
キャリパー法のデメリット
キャリパー法では測定者によって誤差が生じてしまうことがデメリットと言えます。たとえ器具があっても測定には専門の技術が必要なため、初心者が正確に測定することは容易ではありません。
また、測定箇所を多くしすぎると誤差が出やすいこともデメリットのひとつ。そのため、測定場所には二の腕の下と肩甲骨下の2カ所が選ばれるのが一般的です。
生体インピーダンス法
生体インピーダンス法は、家庭用体脂肪計にも使われており、現在もっとも一般家庭に普及している体脂肪率計測方法です。
脂肪は筋肉に比べ電気を流しにくいという性質があるため、脂肪が多い人ほどインピーダンス(電気抵抗値)が高くなります。
そこで、生体インピーダンス法では、害にならない程度の微弱な電流を体内に流し、インピーダンス(電気抵抗値)と身長・体重を組み合わせることで体脂肪率を計測します。
生体インピーダンス法のメリット
生体インピーダンス法は、計測機器が比較的安価に手に入るだけでなく、誰でも簡単に計測できるため、計測対象への経済的・身体的負担の少なさがメリットといえます。
生体インピーダンス法のデメリット
生体インピーダンス法のデメリットは、体内の水分量によって計測値が変わってしまうことです。そのため、運動や入浴で汗をかいた直後や食事の後は、体脂肪率に誤差が生じてしまう場合があります。
また、微弱とはいえ体内に電流を流すため、ペースメーカーなどの機器を取り入れている方は使用することができません。
(参考:TANITA|体組成計の原理)
DEXA法
DEXA法は「二重エネルギーX線吸収法」と呼ばれることもある体脂肪率のはかり方です。2種類のエネルギーのX線を全身に照射し、各透過率の差をもとに体脂肪率を計測します。
(参考:日本赤十字社 伊勢赤十字病院)
DEXA法のメリット
DEXA法は、骨粗しょう症などの診断にも用いられている方法で、体内の筋肉量や脂肪量といった体組成を高い精度で計測することができます。
DEXA法のデメリット
DEXA法のデメリットは、計測機材が高価なために、専門の医療施設や研究施設以外での計測が難しいという点です。また、計測に時間がかかることもデメリットの一つと言えるでしょう。
水中体重秤量法
水中体重秤量(ひょうりょう)法では、水槽の中に置かれた体重計を使用して、頭まで水に浸かった際の体重(水中体重)を測定します。次に、水中体重を陸上で測った場合の体重と比較することで体の体積を求め、特殊な式(Brozek らの式(1963))に当てはめることで体脂肪率を計測します。
水中体重秤量法のメリット
水中体重秤量法は、体脂肪率の測り方においてかなり歴史が古く、この方法をもとに計測されたデータは、体脂肪計を作るうえでも重宝されてきました。しかし、生体インピーダンス法など、ほかの計測方法が普及した現在ではあまりメリットがないといえます。
水中体重秤量法のデメリット
水中体重秤量法のデメリットは、大規模な設備が必要となることや、計測対象者への身体的負荷が大きいことです。
計測は水中で行われるため、計測中は息をすることができません。また、肺の中に空気が残っていると計測値に影響が出てしまうため、水中に入る前にすべての息を吐き出す必要があります。
さらに、肺の中に残る空気量は個人差があるため、計測値の客観性が低い点もデメリットのひとつと言えるでしょう。
(参考:慶応義塾大学 スポーツ医学研究センター、申田道子(中央大学応用生物学部 食品栄養科学科 2014), 体脂肪率, 生物機能開発研究所紀要)
正確に体脂肪率をはかる方法
体脂肪を正確にはかるためには、計測条件をなるべく統一することがポイントです。とくに知っておきたい測り方のコツをご紹介します。
同じ時間にはかる
食事前や入浴前、起床前後など、あらかじめ計測時間を決めておきましょう。同じタイミングで計測することで、体内の水分量による計測結果の変化を最小限に抑えることができます。
なるべく同じ服装ではかる
服を着て計測する場合は、パジャマなど、毎回同じような服装を用意しましょう。服の重さによっても、体脂肪率の計測結果に誤差が出てしまうためです。
また、生体インピーダンス法を採用した体脂肪計を使うときは、靴下を履いたり、足が濡れたりしていると、電流が妨げられて正確に計測を行うことができないので、必ず乾いた裸足の状態で計測するようにしてください。
計測した体脂肪率がバラバラになるのはなぜ?
何度も体脂肪率を計測しているのに結果が安定しない、という経験はありませんか。
前述したように、体脂肪率を正確に計測するためには計測時の条件を統一し、機器を正しく使用することが大切です。
たとえば、生体インピーダンス法を用いた体脂肪計を使う場合、計測値は体内の水分量に左右されます。そのため、食後2時間以内や入浴・運動直後の計測は避けましょう。また、発熱時など、体温がいつもと大きく異なるときも、計測した体脂肪率に誤差が生じやすいといわれています。
体脂肪計を使用する際は、取扱説明書を確認しながら、正しい姿勢や格好、設置場所を守って使用するようにしましょう。
自宅で簡単に体脂肪率をはかるには?
自宅で体脂肪率を計測したいときは、市販の体脂肪計や体組成計を使ってみましょう。ここではおすすめの機械をいくつかご紹介します。
体脂肪率を測れる体重計
・タニタ basicシリーズ
体脂肪、体重、内臓脂肪、BMIが計測できる機種。前回の計測値を記録できるほか、複数人の身長や年齢などを登録する機能も搭載されています。
(商品リンク:タニタ basicシリーズ)
・オムロン カラダスキャンシリーズ
登録データを呼び出さなくても計測者を自動で認識してくれる体組成計です。体脂肪のほか、体重、内臓脂肪、BMI、骨格筋率、基礎代謝なども計測することができます。
スマホアプリと連動したデータ管理機能もあるため、継続的な体脂肪率推移を把握しやすいでしょう。
(商品リンク:オムロン カラダスキャンシリーズ)
・エレコム ECLEAR 体組成計シリーズ
体脂肪の中でも、とくに内臓脂肪レベルの計測に特化した体組成計です。計測値は50g単位まで表示されるため、より正確な数値を知りたい時に便利です。また、スマートフォンアプリにデータを入力すると、推移をグラフで表示することができるため、視覚的に体脂肪率の変化を把握することができます。
さらに、別売りのエクササイズ用品「エクリアリーンアップ」と連動したトレーニング機能も用意されています。
(商品リンク:エレコム ECLEAR 体組成計シリーズ)
体脂肪率のはかり方はさまざまですが、体脂肪計などを使えば、誰でも手軽に計測することができます。自分の身体の体脂肪率を知っておくことは、健康的な身体づくりと生活習慣改善への第一歩になるでしょう。
体脂肪率を過度に増減させる必要はありませんが、標準値を目安に健康的な状態を維持できるよう心がけてみてください。