美しい姿勢やたくましい身体を目指す手段として、筋トレを取り入れている方は多いはず。中でも、上半身の前面にある胸筋は、男性なら厚い胸板を、女性なら美しいバストラインを作るために欠かせません。この記事では、見た目のイメージに大きく関わる胸筋の仕組みと正しい鍛え方を詳しく紹介します!
胸筋の構造と仕組み
胸筋は、表面に大きく見える「大胸筋」と、インナーマッスルと呼ばれる「小胸筋」「前鋸筋」の大きく3種類に分類できます。
大胸筋は、胸の中央部から肩の前面・上腕についている筋肉で、肩を水平かつ内側へ動かしたり、腕を前に上げたりなど、肩や腕を動かす役割があります。また、作用の違いから、さらに上部・中部・下部に分けることができます。
インナーマッスルの一種である小胸筋と前鋸筋は、大胸筋の動きを補佐するように働きます。小胸筋は、肋骨の上部から肩甲骨に付いている筋肉で、肩を動かすときの肩甲骨の動きに関わります。
そして前鋸筋は、肋骨の側面から肩甲骨の内側に伸びる筋肉です。肩甲骨を前に押し出す動き(腕を壁につけて、押し込むような動き)で働きます。
(参考:REXER’S COLUMNS|大胸筋内側の鍛え方がわかる!鍛えるコツとトレーニングを紹介)
胸を鍛えるとどのような効果が得られるのか
胸筋を鍛えることは、スタイルアップと健康の両方に効果が期待できます。
まず、スタイルアップ面では、男性であれば厚い胸板を作ってたくましく見せる効果が期待でき、女性であればバストラインをきれいに整える効果が期待できると言われます。
よく「胸を鍛えるとバストアップできる」と言われますが、女性のバストは9割が脂肪、1割が乳腺で構成され、胸筋は、それらを支える土台のような役目を果たしています。そのため、胸を鍛えることでカップ数が劇的に上がるということはほとんどありません。しかし、筋肉を鍛えてバストの土台を安定させることで、バストラインを美しくしたり、胸のたるみを防いだりする効果があると考えられます。
次に、健康面では、肩こりなどの症状を改善する効果が期待できます。冒頭でもご紹介したように、全ての胸筋は肩や肩甲骨の動きに大きく影響しています。そのため、胸を鍛えることで肩周りの連動性が刺激され、肩こりや姿勢の改善も期待できるのです。
胸を鍛える筋トレメニュー
胸筋を鍛えるための筋トレメニューは、バリエーションが豊富です。ここでは自宅やジムでできる筋トレの中から、代表的なものをピックアップして紹介します。
自宅で行う筋トレ
背中の筋肉を鍛えるトレーニングとは異なり、胸筋を鍛えるトレーニングは、自体重を活用してできるものが多くあります。学生時代に体育系の部活や吹奏楽部などに所属していた方なら、一度はトライしたことのあるメニューかもしれません。
ご紹介している回数やセット数はあくまでも目安です。ご自身の体調を考慮しながら、無理のない運動強度で取り組んでみてください。
プッシュアップ(腕立てふせ) …筋トレ難易度☆☆
(1)うつ伏せの姿勢になります。
(2)両手を胸の真横の位置で床につきましょう。
(3)肩甲骨を寄せつつ、両手・両足で身体を浮かせるように手を伸ばします。
(4)ひじの角度が90°になるくらいを目安に曲げて、胸を床に近づけましょう。
(5)両手の力を使い、元の姿勢に戻ります。
1セットを10回〜15回とし、3セットを目安に繰り返してみてください。
プッシュアップのコツ・ポイント
胸筋を鍛えるトレーニングの中で、最も代表的な種目と言えるのがプッシュアップです。シンプルな動きながら、いくつかのポイントを押さえることでより高い効果を期待することができます。
まず、身体を浮かせたとき、つま先から背筋までが一直線になるように心がけてましょう。腰を落とし身体が反った姿勢になると、腰を痛めてしまう場合があります。また、逆に腰をくの字に曲げて行うと、今度は肩への負担が増すので注意してください。
次に、手を伸ばす際は、両手が胸の下あたりにあり、肩幅よりも少し広めに開かれているのが理想です。両手の位置が顔の下にあったり、幅が狭かったりすると、大胸筋を上手に使うことができません。
最後に、ひじを曲げるときは肩甲骨を内側に寄せて、胸を張るようにしてください。肩甲骨付近に力が入っていないと、ひじを曲げる動作で肩周辺が不安定になり、フォームが崩れたり胸への負荷が逃げたりする原因になってしまいます。
トレーニングに慣れていない方は、ひざをついて行う「ニー・プッシュアップ(ひざつきの腕立てふせ)」から試してみてください。自重の負荷が楽に感じる上級者の方は、両足をベッドの上など高い位置に置いたり、荷物をつめたリュックを背負ったりしながら、負荷を上げて行うのがおすすめです。
ジムで行う筋トレ
トレーニングジムでも、男性を中心に胸筋を鍛えるトレーニングは非常に人気です。その中で、もっとも有名な種目をご紹介します。
バーベルベンチプレス …筋トレ難易度☆☆☆
(1)ベンチにあお向けになり、バーベルを握ります。手は肩幅より拳1つ分ずつ広いイメージで握りましょう。
(2)ラックからバーベルを外し、胸の真上に構えます。
(3)肩甲骨を寄せて胸を張り、肘を外側に曲げるイメージでバーベルを胸の真上に下ろしていきましょう。
(4)胸のギリギリ上まで下ろしたら、トップの位置までバーベルを持ち上げます。
この一連の動作を、8回〜12回で1セットとし、3セットできる負荷でチャレンジしてみてください。
バーベルベンチプレス のコツ・ポイント
バーベルベンチプレスは、仰向けに寝た状態からバーベルを両腕で上げ下げするため、背中とお腹、お尻、両足にもしっかり力を入れて、土台となる身体を支える必要があります。お腹は凹ませずに、少し膨らんでいるくらいの意識にすると、お腹に力が入って全身を安定させやすくなるでしょう。
バーベルベンチプレスに慣れてきたら、背もたれの角度を上下に動かせるベンチを活用してみるのもおすすめです。たとえば背もたれを30°くらいにして行う「インクライン・ベンチプレス」は、より胸の上部への負荷を強めることができます。
バーベルやダンベルなどを使ったトレーニングは負荷が高く、自重のみのトレーニングに比べると効果が高いものの、扱いを間違えるとケガにもつながりやすくなります。バーベルは胸よりも肩や目線に近い位置で持つと、肩を痛めてしまう可能性があるので注意してください。また、トレーニング初心者の方は、チェストプレスなどのベンチプレスと同じ動きができるマシンを使用してみるのも有効です。
(参考:HEALTHLAB SPORTS|バーベルベンチプレスの効果と正しいフォームに欠かせない6つの注意点)
器具を使った筋トレ
胸筋のトレーニングに使う器具は、バーベルだけに限りません。ここでは胸の筋トレに最適な、2つのアイテムを使ったトレーニングを紹介します。
ダンベルプレス…筋トレ難易度☆☆☆
バーベルと同様に、筋トレで役立つ重りがダンベルです。バーベルよりも小型で場所を取らないため、自宅でも使いやすいというメリットがあります。ダンベルも多くのトレーニングに応用できますが、胸を鍛えるなら「ダンベルプレス」から取り組んでいきましょう。
(1)ベンチにあお向けになり、両手にダンベルを持ちます。
(2)背中、お尻、両足などで身体を支えつつ、上腕と床が平行になるまでダンベルを下ろしましょう。
(3)ダンベルを真上まで持ち上げて、元の位置に戻します。
一連の動作を8回〜12回で1セットとし、3セットできる負荷でチャレンジしてみてください。
ダンベルプレスは、バーベルベンチプレスとほぼ同じ動きです。しかし、バーベルは両手で持つのに対して、ダンベルは片手でそれぞれ重りを持つ状態になるため、よりバーベルより広い範囲で筋肉を伸ばすことができます。また、バーベル以上に腕が不安定になりやすく、肩や胸周りのインナーマッスルに、より効果的に刺激を与えることができるというメリットも。
一方で、肩周りのケガにも繋がりやすいので、高負荷でのトレーニングは避けましょう。
ゴムバンド(チューブ) …筋トレ難易度☆
ゴムバンド(チューブ)は非常に軽量で、ダンベルやバーベルと比べて、安全にトレーニングできるという特徴があります。ゴムバンドは様々なトレーニングに応用できますが、使い方の一例として「チェストプレス」という種目を紹介します。負荷が調整しやすく、自分の力に合わせて行えるためトレーニング初心者の方にもおすすめです。
(1)立った状態や座った状態でバンドを身体の後ろに通し、両手でバンドを握ります。
(2)プッシュアップの要領で、腕を前に押し出しましょう。
この動作を、10回を1セットとし、2セットを目安に取り組みましょう。慣れてきた方は、1セットあたりの回数やセット数を増やして、負荷を調整してみてください。
女性にもおすすめ !胸のたるみの予防・改善を目指す 筋トレメニュー
年齢とともに筋力が落ち、バストラインにもたるみが…。そうした悩みを少しでも予防・改善するには、胸筋のトレーニングがとても効果的です。ここでは、胸のたるみを予防・改善するトレーニングメニューをご紹介します。
1.ウォール・プッシュアップ…筋トレ難易度☆
(1)立ったまま肩と水平に伸ばした両手に壁をつき、少し前のめりになり体重を壁へ預けます。
(2)(1)の姿勢からひじを曲げ、プッシュアップのように壁へ身体を近づけます。
15回〜20回を1セットとし、2セットを目安にスタートしてみてください。負荷に慣れてきたら傾ける角度を大きくしていきましょう。
プッシュアップの注意点と同じで、腰が反ったり、くの字に曲がったりしないように注意してください。また、手の位置は肩よりもやや下でつくことで、肩の負担を減らすことができます。
2.合唱のポーズ…筋トレ難易度☆
やり方は簡単で、胸の前で両手を合わせて、お互いの手を押し込むようにグッと力を入れるだけ。この状態を10秒キープして、少し休んでというサイクルを5回ほど続けてみてください。
時間がないときでも、続けやすいのがこのトレーニングのいいところ。ほかの種目と組み合わせて取り組んでみるのも効果的です。
初心者におすすめのトレーニングメニュー
運動初心者の方は、まず自宅でできる種目をマスターしましょう。なかでも、もっともおすすめのトレーニング方法は「ニー・プッシュアップ(筋トレ難易度☆)」です。この種目は、膝をついて行う以外は、プッシュアップの動きと同じになります。
ひざの位置が上半身寄りにあると、土下座のようなフォームになり胸への刺激が減ってしまいます。そのため、ひざの位置を少しだけ下半身寄りにすると、より負荷を高めることができるでしょう。1セット15回〜20回の2セットを目安にスタートして、慣れてきたらひざをつかないプッシュアップにチャレンジしてみてください。
ニー・プッシュアップで胸筋を使う感覚を養うと、ほかの重りを使ったトレーニングにも応用できます。
胸と背中どちらが先?筋トレの順番
筋トレでは「大きな筋肉から先に鍛える」のが理想とされています。なぜなら、大きな筋肉を鍛える時は、より複数の筋肉を動かす場合が多いため、大きな筋肉と一緒に小さな筋肉を鍛えることができるためです。
では、胸と背中のようにどちらも大きな筋肉の場合、どちらを先に鍛えるのが適切なのでしょうか。結論から言うと、どちらから始めても大丈夫です。
胸と背中は、筋肉の付いている位置が逆にあるだけでなく、それぞれの作用も逆の「拮抗筋」と言われる存在です。たとえば、プッシュアップでは胸や二の腕の筋肉が使われますが、背中の種目である懸垂では、背中と力こぶの筋肉が主に使われます。このように、どちらかの筋肉を鍛える動作が、もう一方の筋肉の動きに影響を及ぼすことがありません。
そのため、同じ日にトレーニングをする場合は、よりエネルギーを発揮したいと感じている方を先に行いましょう。
(参考:glico|筋トレと有酸素運動はどっちが先?組み合わせ方は?)
胸の筋トレをすると痛い場合は?
胸の筋トレを行っている際に、身体に痛みを感じることがあるかもしれません。なかでも多いのが「肩の痛み」です。胸筋を鍛えるトレーニングは肩の動きと連動しているものが非常に多いため、正しいフォームで行わないと肩への痛みを誘発してしまう場合も。
さらに、筋肉が硬いと動かせる範囲が狭くなり、無理に動かそうとすると痛みにつながることもあります。
そのため、胸のトレーニング前は、肩や首、肩甲骨周りを入念にストレッチし、一つ一つの動作を丁寧に、正しいフォームで行うことを意識してみましょう。
胸筋を鍛える種目はオーソドックスなものが中心ですが、キレイなフォームで鍛えられている人は、それほど多くありません。正しいフォームを意識して、効果的なトレーニングを行いましょう。今回ご紹介したコツやポイントを参考にしつつ、自分の体力やコンディションに合わせたメニューにチャレンジしてみてください!