普段歩いていて、ふらっとよろけたり、左右にぶれたりと、安定感に不安を感じることはありませんか?これらの悩みは、お尻の筋肉である「中殿筋(ちゅうでんきん)」をしっかりトレーニング&ケアすることで改善できる可能性があります。
この記事では、そんな中殿筋の主な役割や鍛え方、ストレッチの方法などを詳しく紹介します!
中殿筋とは
中臀筋を鍛える方法を知る前に、まずは中殿筋の仕組みや役割について理解しておきましょう。
中殿筋の場所
中臀筋は、お尻の中央部に位置する大きな筋肉である「大殿筋」よりも身体の内側に位置している筋肉です。腰に手を当てた際、脇腹の下あたりに「腸骨」と呼ばれる骨盤の出っ張りを感じますが、中臀筋はその腸骨の後ろ部分から、太ももにある大きな骨「大腿骨」を結ぶように付着しています。
ちなみに、筋肉は身体の中心に近い部分を「起始部」、遠い部分を「停止部」と呼ぶため、中臀筋の場合は、腸骨部分が起始部で大腿骨の部分が停止部にあたります。
中殿筋の作用・役割
中殿筋は、ちょうど骨盤〜大腿骨をつなぐ股関節をまたぐ筋肉であるため、その作用の多くが股関節に関わっています。
(1)股関節の外転
立った姿勢から、片足をまっすぐ真横に上げてみてください。この動きを「股関節の外転(がいてん)」と呼び、主に中殿筋が働きます。外転の動作を大きく行うと、お尻の外側の筋肉がぎゅっと縮む感覚がありますが、そこに位置している筋肉が中殿筋です。
(2)股関節の屈曲&内旋
立った姿勢で、ひざを伸ばしたまま片足を前に出してください。そして、出した方の足のつま先を内側にひねってみましょう。このとき、足首だけでつま先をひねるのではなく、股関節を基準にして、太もも・すね・足をすべて内側にひねるように動きます。
前半の足を前にあげる動きが、「股関節の屈曲(くっきょく)」と呼ばれる動作。そして後半の足を内側にひねる動作が、「股関節の内旋(ないせん)」と呼ばれる動作です。この2つの動作に、中殿筋が関わっています。
(3)股関節の伸展&外旋
(2)で紹介した動作と逆に、立った姿勢でひざを伸ばしたまま片足を後ろに下げてください。これが「股関節の伸展(しんてん)」動作です。このとき、ひざや足首に力は入れず、お尻の筋肉がきゅっと締まるイメージで動かしましょう。
続いて、股関節を基準に、太もも・すね・つま先を身体の外側に向けます。これが「股関節の外旋(がいせん)」動作です。
これらの動作では、中殿筋の後方にある繊維が関わっています。
中殿筋のこり・痛みについて
中殿筋は、日常生活の様々な面で作用するため、凝りやすい筋肉だとされています。ここでは、中殿筋が痛む主な原因について見ていきましょう。
中殿筋が痛む原因
中臀筋が痛んでしまう原因は、日常的に行う動作にあります。
例えば、歩行の動作では、次の一歩を踏み出す時に片方の足を軸にしながら、もう片方の足を前に振り出します。つまり、わずかな時間ではあるものの歩行時には片足で全体重を支えることになりますが、この時にバランスが崩れて転倒しないように全身を支えるのが中臀筋の役目です。
また、「片足重心」で立っている状態や、身体が少しななめになっている状態でも、人は問題なくその姿勢を維持することができます。このとき、私たちの身体を支えているのも中殿筋の働きによるもの。そのため、日常の何気ない動作において、しらずしらずのうちに中殿筋が働き、負荷がかかっているのです。
特に、仕事や家事などで長時間歩いたり、立ったりする機会が多い人は、中臀筋に大きな負荷がかかり続けて凝り固まってしまうため、それが痛みにつながると考えられています。
(参考:日本ハウズイング株式会社 HOUSING NEWS ONLINE│第5回 腰の痛みを和らげる)
中殿筋のストレッチ
普段の生活で凝ってしまった中殿筋は、ストレッチでほぐすことができます。自宅でできる手軽な方法なので、ぜひ寝る前などに試してみてください。
道具なしでできる中殿筋のストレッチ方法
(1)あお向けの姿勢になります。
(2)左ひざを曲げて、左脚を右脚の上でクロスさせます。
(3)右手は左ひざに添えて、床に近づけるように左脚を押しましょう。
(4)左手を肩の高さで横に伸ばし、顔も左を向きます。左右のスペースがない場合は、左ひじをまげて行ってもかまいません。左肩が床から離れないように注意しましょう。
(5)(4)の姿勢で30〜60秒、ゆっくり呼吸をしながらお尻が伸びるのを感じてください。
(6)反対側も同じように行います。
この動作を左右1回ずつで1セットとし、5〜7セットを目安に行ってみてください。
(参考:Body Motion Lab│お尻の筋肉(大殿筋・中殿筋)のストレッチのまとめ)
中殿筋ストレッチによる効果
中殿筋に疲労がたまった場合は、中殿筋に痛みを感じる前に、中殿筋の起始部である腸骨、つまり骨盤に負荷がかかるため、腰痛を引き起こしてしまうと考えられています。そのため、腰痛に悩んでいる方の中でも、特に日常的に長時間立ったり歩いたりする機会が多い方は、中殿筋をしっかりケアすることで、その痛みを改善できるかもしれません。
また、中殿筋をストレッチすることで、普段の歩行や立ち姿勢が疲れにくくなるという効果も期待できます。さらに、しっかり筋肉をほぐしてトレーニングすれば、ヒップアップ効果も期待できるでしょう。
テニスボールを使ったストレッチ
中殿筋のストレッチは、身近なアイテムで手軽に取り組むことができます。まずは「テニスボール」を使ってできるストレッチを紹介します。
床に置いたテニスボールが、ちょうどお尻の外側に位置するようにしてその上に座りましょう。そのまま、腰〜お尻とももの付け根までテニスボールを転がすように、ゆっくりと身体を前後に動かしてください。
この動きによって、中殿筋をピンポイントで刺激することができます。両手と両足でバランスを取りながらボールを押し込む強さを調整し、刺激が強くなりすぎないように注意しましょう。
ストレッチポールを使ったストレッチ
細長い円柱状をしたストレッチアイテムである「ストレッチポール」を活用することで、中殿筋はもちろん、お尻の筋肉を幅広くほぐすことができます。
まず、テニスボールと同様に、ストレッチポールを横にして、お尻の外側に圧がかかるようポールの上に座ります。
そして、両手両足でバランスを取りつつ、ストレッチポールを前後に転がして、お尻の上部から下部までをじっくり刺激していきましょう。座る角度を変えるだけで、お尻のさまざまな部位をほぐすことができます。
中殿筋のトレーニング
ストレッチによって中殿筋がほぐれた後は、しっかりトレーニングで鍛えていきましょう。ここからは、中殿筋を鍛えるメリットとおすすめのトレーニング方法を紹介します!
中殿筋を鍛えるメリット
中殿筋を鍛える大きなメリットは、中殿筋をストレッチするメリットと同じく「歩行が安定する」という点にあります。
また、中殿筋が原因の腰痛に悩まされがちな方は、腰が痛くならないように、つい姿勢が崩れてしまいがちです。そこで、中殿筋のストレッチ・トレーニングを行うことで腰痛の痛みが改善され、自然と姿勢がよくなったり、腰痛になりにくくなったりと、身体に良い変化が期待できるでしょう。
さらに、姿勢がよくなることで身体のラインも整い、ヒップラインのシェイプアップ効果も期待できます。
中殿筋のトレーニング方法
中殿筋は片足姿勢で身体を支える動作において強く作用する筋肉です。そのため、トレーニングをする際も片足立ちの状態で行うと、より高い効果が期待できます。
今回紹介するのは、片足立ちの状態で行うスクワットである、「ブルガリアンスクワット」です。
(1)立った姿勢で手を腕の前で組み、右足を自分の後方にあるベンチや椅子、ベッドなどに乗せます。このとき、重心は前足に集中させ、後ろ足に体重がかかりすぎないように注意しましょう。
(2)前足に体重が乗ったまま、ひざを曲げて腰を落とします。腰を落とすときは、次の点を意識してみてください。
・前足の足裏全体に全体重をかけるイメージで行います。
・腰を落とす時、上半身がまっすぐ過ぎる場合はひざに、逆に上半身が前に倒れすぎると腰に、それぞれ負担がかかってしまいます。足首・ひざ・股関節を同程度にまげ、腰を落としたときにすねと上半身のラインが平行になるようにしましょう。
・ももと床が平行になるまで、腰を落とす必要はありません。普段からスクワットをしている方は、普段よりやや浅めにしゃがんでみてください。
(3)(2)の状態から、前足に重心をかけながら身体をまっすぐ伸ばします。
この動作を左右10〜15回で1セットとし、2〜3セットを目安に行ってみましょう。片足ずつで行うため、通常のスクワットよりバランスが取りづらく、負荷も高めです。腰を落とす深さを少しずつ調節しながら、無理のない範囲でトレーニングしてみてください。
また、自体重だと余裕があるという方は、ダンベルや水を入れたペットボトルを持って、負荷を増やして見るのもおすすめです。
(参考:宏洲(ひろしま)整形外科医院 TOP│臀筋トレーニング)
普段あまり意識することがない中殿筋は、日常生活において欠かすことのできない「歩く動作」「立ち姿勢」を支えるという重要な役目を担っています。仕事帰りや家事の合間など、隙間時間にストレッチしてほぐすだけで、歩行が安定したり、腰痛が軽減したりする甲賀か期待できます。
中殿筋のケアを取り入れつつ、トレーニングでしっかり鍛えて、疲れにくく美しい身体を手に入れましょう!