
一般社団法人コノヒトカンは、「世界一あったかい缶詰」を通じてフードロスと貧困問題の解決を目指す活動を展開しています。その活動は、コロナ禍での飲食店支援から始まり、今や全国規模の社会貢献プロジェクトへと成長しています。コノヒトカンがどのような活動をしているのか、そしてなぜオンラインサロンを開設するに至ったのか、その背景と展望を代表の三好様と、コミュニティ担当の上田様に伺いました。
コノヒトカンの活動内容と設立のきっかけ
ーーまずコノヒトカン様がどういった取り組みをされているのか教えてください。
三好様: 一般社団法人コノヒトカンは、フードロスと貧困問題解決のため「世界一あったかい缶詰」を製造しています。きっかけは2020年4月のコロナ禍です。ネイリストである私は、客足が途絶え困っている飲食店のために、ネイルサロン前でお弁当販売を始めました。この経験から、様々な業種が協力すれば大きな力が生まれると実感し、社会にメッセージを伝えられるアイテムとして缶詰製造を考案しました。
岡山県内のホテルで余剰食材のヒアリングをする中で、フードロスの一方で食事に困っている人々の存在を初めて知り、大人として無知だったことを恥ずかしく思いました。自分にできることを協力してもらいながら缶詰作りを始め、多くのホテル料理長に協力いただき、高級食材を使った8種類の缶詰が完成しました。
しかし2020年11月頃、このまま缶詰屋になるのか、そもそもこの商品を売りたかったのかと自問自答し、人間関係にも疲れ、一度解散を決意しました。その際、協力してくれた料理人の方に謝罪に行くと、「コロナ禍で真っ暗だったホテルに、元気な君が来てくれたのが光だった」「料理人としても前向きな一歩だった」と励まされ、「今度は私たちが全面的に協力するから、最後までやろう」と言ってくださいました。
缶詰づくりをやめたくて仕方なかった私ですが、今までの料理人の仕事はお客様が来店するのを「待つこと」で、見えない誰かのために保存食を作ることは料理人にとって初めての挑戦だったと知りました。共に活動してくれた料理人のために何ができるかを考え直し、①フードロスを活かす、②一缶でおなかが一杯になる、③地域や社会の問題を考えるきっかけをつくるというコンセプトから、「コノヒトカン」が生まれました。
活動の広がり:企業連携と教育プログラム
ーーそこからコノヒトカンのプロジェクトが世の中に浸透していった経緯を教えてください。
三好様: 2020年からの失敗続きの中、周囲からは否定的な意見ばかりでした。しかし、コロナ禍で大量の食べ物が廃棄されているという新聞記事に目を向け、地元の精肉店や鮮魚店など、まだ食べられるのに捨てられる食材があることを知りました。仕事がなかった業者から食材を買い取って缶詰開発を再開しましたが、2021年9月に完成した缶詰は、フードロス削減のコンセプトゆえに高価になってしまいました。そこで、地域貢献やCSRを掲げる企業と連携し、その企業の代わりに私たちが子ども食堂や児童養護施設へ缶詰を届ける活動を考案したんです。2021年のこどもの日とクリスマスに年2回届ける仕組みを作り、同年12月から第1回を開始。コノヒトカンとしての活動はこうして徐々に広がっていきました。私たちが缶詰を直接販売しているわけではないんですよ。
ーー学生の皆さんが「コノヒトカン」の缶詰を使って社会課題を解決するアイデアを考え、発表するコンテストなども開催されていますが、そのプロジェクトが始まった経緯はどのようなものですか?
三好様: 元々、缶詰製造だけでなく、この活動を教材にしたいと考えていました。当時SDGsに関する授業はほとんどなかったため、フードロスや身近な地域の問題をテーマにしたSDGsの授業になるのではないかと思ったのです。教材化への想いから、岡山県のSDGsネットワークおかやまを通じて、出前授業の講師として登録させてもらいました。
2022年4月頃、初めて高校生に授業を行ったところ、学生の中から「自分たちもコノヒトカンに関わって何か活動させてください」「何ができますか?」という声が上がりました。その時、私だけが企業に支援いただき缶詰を届けるだけではもったいないと感じ、高校生たちの学びの一つとしてコノヒトカンを提供できないかと考え、半年後にアイデアコンテストを開催しました。企画会社も缶詰会社も経営した経験はありませんでしたが、上田さんのような仲間が集まってきてくれたおかげで、皆でコンテストを続け、今年度で第4回を迎えます。
ーー関わる人全員が幸せになる、皆がハッピーな形になっているのが素晴らしいですね。隣人を助けたいという普遍的な想いが、様々な輪のつながりを生んでいるのですね。
オンラインサロン開設のきっかけと目的
ーーそこから、コミュニティ(オンラインサロン)を開設しようと思われたきっかけはどのようなものですか?
三好様:私たちの活動は経験したことのないことが多く、実際にはぶっつけ本番でずっと続けています。しかし、どんな時でも必ず「缶詰から始まる物語」と伝えています。この缶詰から多くの物語が生まれたら良いなと、缶詰ができる前から考えていました。その物語をどう伝え、どう創っていくか。缶詰の中身よりも、そのようなことばかり考えていたのです。結果的に、私たちは多くの賞をいただくことができました。そしてさらに、受け取った人も届けた人も「物語の主人公になれる」と言ってくれる人が最近増えてきました。関わってくれた人達個々の物語もたくさん生まれ、大きな財産として残りつつあります。そのため今、コノヒトカンに関わった皆の物語を一か所にまとめ、語り合えるオンラインサロンができたら良いなと思ったのです。
ーー缶詰自体を良い商品にすることも重要ですが、多くの方に届けてきたからこそ、そのストーリーを集約する場所、受け取ることも伝えることもできる場所が必要だと感じられたのですね。
三好様: そうです。コノヒトカンを立ち上げてきて感じたのは、大人はどうしても子どもたちや周囲の人々の「できない理由」を探すのが得意だということです。できないことを探したり、言い訳をしたりすることで、子ども達にもその影響がでてしまうと思います。私は「できる方法」を考えてあげたいと思いました。応援し合える場所を作りたいと思ったのです。
上田様:コノヒトカンの缶詰は、コミュニケーションのツールであり、ストーリーや教育、双方向のコミュニケーションを生み出すものだと考えています。プレゼンの場、アドバイス、職業支援など、コノヒトカンがやっていること、これからやろうとすることは、全てが「お互いのコミュニケーションを取っていくこと」だと捉えています。コノヒトカンはその起点やきっかけであり、その成長の過程でオンラインサロンは不可欠なコミュニケーションツールだと思っています。
具体的には、現在、コノヒトカンは教育分野での「1000缶プロジェクト*」や教材作成、子ども食堂の支援、そして不登校の若者たちの居場所支援といった共創活動も開始しています。さらに、様々な人々に焦点を当てたセミナーやZoom対談形式での配信も行っています。DMMさんのオンラインサロンは、これら全ての活動を吸収できる基盤となる、非常に良いツールですし、良いタイミングで出会えたと感じています。
*1000缶プロジェクト:学生から、コノヒトカンの缶詰を使って社会課題を解決するアイデアを募る企画。社会のために行動するきっかけ作りとして2022年11月から実施。10チームが入賞し、各チームに100缶ずつ缶詰が贈られ、実際に学生自身がそのアイデアを実現、成果報告するまでをおこなう。
オンラインサロン「コノヒトカン ~ あったかい未来の設計図 ~」について
ーー実際に開設されたコミュニティはどのようなものですか?ターゲット層やコンテンツ内容について教えてください。
上田様: オンラインサロンで考えている主な対象は3つです。一つは「かっこいい大人」と定義し、子どもたちの活躍の場を共に支援・サポートできる大人の方々です。これはコノヒトカンの活動に賛同してくださることを前提としています。そもそもコノヒトカンが良い取り組みをしていると感じてくれている方も一定数いると考えていますし、社会のために何かしたいと思いながら、何かしらのきっかけを探している方もいるのではないかと考えています。先日までクラウドファンディングを実施していましたが、「こんな活動を初めて知りました」「素晴らしい活動です」と寄付してくださった方も多くいらっしゃいますので、これからもさらに広がっていくだろうと考えています。
2つ目は、教材や「1000缶プロジェクト」をきっかけに集まってくださる先生方も対象です。ここでは、普段言えない話も含め、様々な情報交換や、自分たちの生徒だけでなく他の学校の生徒の話を聞く中で気づきを得ていただくことを想定しています。併せて、高校生や大学生など、実際に「1000缶プロジェクト」に関わっている学生も対象です。現在のSNSの状況を鑑み、安全なコミュニケーションツールとして活用していただくことも含め、高校生にも利用してもらえればと考えています。
ーーコミュニティの運用体制はどのように想定されていますか?
上田様: 私自身は、きっかけ作りや入り口の部分を担当するイメージです。メインでは、キャリアコンサルタントの方が「自分がやりたいことって何だろう?」といったことを深掘りするサポートをしたり、メンバーには元教員の方もいらっしゃいますので、その方が教育現場の課題意識を持つ先生方と様々な話をする、といったことを考えており、それぞれの分野に長けた方々が、きちんと情報発信をしていく仕組みを整える予定です。
こういった専門家の方は、もともとコノヒトカンと関わりがあった方というよりは、今回のサロン開設をきっかけに三好さんが巻き込んでくれました。三好さんに集まった人々ですね。キャリアコンサルタントの方は三好さんと一緒に研修を受けたり、先生の方は教材プロジェクトに関わってくれたり、コノヒトカンのプロジェクトをきっかけに集まってくれています。
ーー企業の中でも、コミュニティや新しいことを始めようとする際に、他の方を巻き込むことに課題を感じる方が多いポイントだと思いますが、三好さん的に工夫されていることや心がけていることはありますか?もちろん三好様のパワフルなキャラクターがあってのことだとは思いますが。
三好様: 私と会うことは「交通事故」と言われていましたね。もう「被害者の会」ができそうな勢いで(笑)
上田様: 私自身はもともと保険会社に30年余り勤めており、早期退職をしたのタイミングで鳥取砂丘で複合アウトドア施設の経営にチャレンジしました。そして商材として缶詰を扱う中、缶詰繋がりでコノヒトカンを知りました。非常に良い取り組みだと感じ、その時から支援しています。おそらく、前提としての活動内容が良いのだと思います。それがまずあって、それに加えてこのパワフルな勢いで来られると、協力したくなるんですよ。
三好様: 皆一人ひとりが尊重し合える環境、コミュニティであれば良いなと考えています。私にはできないことばかりで、皆が助けてくれるんです。本当に得意・不得意は誰にでもありますよね。それをきちんと伝え合える仲間は良いなと思います。
オンラインサロンへの期待と今後の展望
ーーオンラインサロンを開始された今、期待することや、今後どのように発展していってほしいかについて教えてください。
上田様: やはり活性化してほしいと考えています。入会して良かったと感じてもらいたいですし、その「良かった」にも様々なレベルがあると思います。少なくとも、コノヒトカンに関わり、活動の中で主体的に発信できること自体が価値であると考えています。そのため、様々な話をしていただけるような、心地よい空間ができれば良いなと思っています。
三好様: 誰かを想う気持ちは目に見えませんよね。その目に見えない想いを、大人たちが一生懸命真剣に「なんとかしたい」と考えて形にしたのがコノヒトカンだと思うのです。そして、この形をどう届け、誰に届けるかを一生懸命考えるうちに、その想いが価値に変わっていったと感じています。本当に今の世の中では自分の想いを伝えることが非常に難しいと感じています。誰にどう思われるか、SNSでの批判も多いですし、「これを伝えて傷つくのではないか」と、他人の評価ばかり気にしてしまうところがあると思います。大人もそうですし、子どもたちもきっとそれを感じている子が多いでしょう。そうではなく、「自分はこうしたいんだ」「こうありたいんだ」という想いを受け入れてあげられる、そんな場所を作ってあげたいです。
ーーお二人とも、コミュニティの本質的な価値についてお話しされていると感じました。同じ想いのもとに集まる人たちだからこそ、できることや生まれるものがたくさんあり、それが実現できるのがオンラインサロンだと思いますので、コミュニティの活用に大きな期待を寄せられている点がとても素敵だと感じました。
ーー開設にあたってDMMを選ばれた理由をお聞かせいただけますでしょうか。
上田様:オンラインサロンはこれからさらに発展していく分野だと考えています。さらにDMMさんはやはり最大手なので安心感があります。有料のSNSに対して「なぜそこまでやる必要があるのか」という意見も当然あるでしょう。しかし、最大手であることの優位性は大きいと思います。また、DMMさんのオンラインサロンでは様々な機能が利用できるため、私たちが実現したいことの中で、できないことはほとんどないと考えています。その点で非常に良いと感じています。
立ち上げの際には、営業担当の方に本当に多くの助言をいただきました。運営側の方とこれほど密に連携しながら進めていくことはあまり想定していなかったので、大変ありがたいと感じています。一般的には「ここを見て勝手に作って」という形が多いと思うので。
ーーこれから本格的に集客を始められる段階かと思います。今後の展望について教えてください。
上田様: もともとは1000缶プロジェクトと同時期に募集を開始する予定でしたが、学生をオンラインサロンに加えることは見送ったため、一旦そこは停止しています。しかし一方で、これから1000缶プロジェクトの審査が終わり、プレゼンや成果報告会が始まるため、告知の機会が大きく広がっていきます。そのため、そこには必ずオンラインサロンへの動線を設けていきたいと考えています。併せて、現在様々な取り組みを進めていますので、多方面で露出を増やしていきたいと思っています。
ーーコミュニティ以外のことも含め、コノヒトカン様として今後目指していきたいことございましたら、ぜひ教えていただけますでしょうか。
上田様: 一つは先ほどお話しした教材です。教材は現在作成中ですので、実際に使っていただき、できれば販売まで軌道に乗せていきたいと考えています。また、現在いくつかの新しい取り組みを進めており、先ほど申し上げた若者の居場所を実際にリアルで創設しています。そこをリアルな場とし、オンラインはオンラインサロンで連携させるなど、非常に面白い展開ができるのではないかと考えています。さらに、先ほど触れた対談形式の配信もオンラインサロンで配信できれば良いなと思っています。やりたいことはたくさんありますので、着実に実現させていきたいと思います。
三好様: 私にはやりたいことばかりです。コノヒトカンとして、世界制覇しかないと考えています。それを「良いね」と言えるような、少し「バカな大人」をたくさん増やしたいですね。なぜなら、私たちはとても幸せだと感じているからです。仕事は生活のためという人もいますが、その先の不安よりも、今やりたいことをやった方が良いのではないかと。そうした「やりたいことをできている幸せ」を世の中にもっと伝え、世界制覇していきたいです。幸せやお金を稼ぐというあり方は、本当は自分でしか決められませんが、今後はそうしたことが問われてくるのではないでしょうか。だからコノヒトカンで世界制覇し、もっと心があったかい人々が増えていったら良いなと思います。
本当に、教育というのは「教えてあげる」のではなく、子どもたちから「教えてもらう」ことの方が多いと思います。子どもたちの方がはるかに深く考えているかもしれません。大人たちの方が教えられる立場なのかもしれないと、最近子どもたちと接していて感じます。例えば、不登校の子どもたちには特殊能力があるのです。不登校になったり外に出なかったりするだけで、その特殊能力を「良いんだよ」と肯定してあげられる場所になれれば良いなと。今はエネルギーを蓄えている時間帯なのかもしれないと思うのです。だから、大人も子どもから学びつつ、子どもにも伝えつつ、そのような場所ができたら良いですね。
ーー活動にきちんと賛同されている方々だからこそ、きっとそのような関係性が生まれてくると思います。素敵なお話をありがとうございました!