便秘は女性のものと思いがちですが、実は男女関係なく起こるもの。ひどい場合には、便秘からさまざまな体調不良につながってしまうこともあるので注意が必要です。また、病気が隠れていることもあるので、単なる便秘だからと侮ることはできません。
この記事では、便秘になってしまう原因や解消法、隠れた病気のチェック方法などについて、詳しく解説していきます。
そもそも便秘とはどんな状態?
そもそも便秘とはどのような状態のことを指すのでしょうか。日本内科学会の定義では、「3日以上便が出ていない状態、または毎日排便があっても残便感がある状態」とされています。つまり、便通のあるなしだけでははかれないのが、便秘なのです。
便秘を引き起こす主な原因とは?
便秘の種類は大きく分けて、「機能性便秘」と「器質性便秘」の2つの種類があり、「機能性便秘」は、一時的に起こる「急性便秘」、日常的に便秘が続く「慢性便秘」、薬の副作用で起こる「医原性便秘」の3つの種類があります。
さらに細かく分類すると、「慢性便秘」は原因によって「弛緩性便秘」、「痙攣性便秘」、「直腸性便秘」の3つの種類があります。(参考:ファイザー株式会社 がんを学ぶ)
「弛緩(しかん)性便秘」は、大腸の運動が低下することによって起こります。大腸の蠕動(ぜんどう)運動が十分に行われなくなると、大腸内に便が長くとどまって水分が過剰に吸収され、便が硬くなって便秘を引き起こします。この便秘は、運動不足や水分不足、食物繊維の不足や腹筋力の低下、過剰なダイエットなどが主な原因で、女性や高齢者に多いと言われています。
「痙攣(けいれん)性便秘」は、環境の変化やストレス等によって、腸管の動きが乱れてしまうことで起こります。副交感神経の興奮によって腸管が緊張してしまい、便がうまく運ばれなくなってしまうのです。このタイプでは、便秘と下痢を交互に繰り返すことが多くあります。
「直腸性便秘」は、直腸の神経が鈍り、便意が生じなくなってしまうことで起こります。通常、便が直腸に到達すると排便反射が起こり、排便が行われるのですが、直腸性便秘ではこれが起こりません。そのため、直腸に便が停滞してしまうのです。便意があるのに、排便を我慢してしまうことが主な原因で、高齢者や寝たきりの人、痔を患っていて排便が辛く我慢してしまう人などに発症しやすい便秘です。
「器質(きしつ)性便秘」は、イレウスや大腸がん、腸管癒着といった器質的異常(臓器、組織の形態的異常)によって起こる便秘です。小腸や大腸で、物理的に便の通過障害が起こり、便秘になってしまうと考えられています。この便秘は、早めに専門機関での診察を受け、症状ごとに個別の治療を行う必要があります。
運動や生活習慣でできる便秘解消法
器質性便秘の場合は専門機関での治療が必要になりますが、機能性便秘の場合は生活習慣の見直しによって改善できる可能性があります。では、実際にどのような改善方法があるのか、詳しく解説していきます。
便秘解消法1:朝はできるだけゆったり過ごす
機能性便秘を改善するためにまず大切なのは、朝はできるだけ余裕をもち、ゆっくりと過ごすことです。通常の場合、便意は1日に1~2回程度しか起こりません。朝食をきっかけにして起こることが多いのですが、朝バタバタしていて余裕がない状況だと、その便意を逃してしまうのです。また、通勤や通学の時間などに迫られていると、ついつい排便を我慢してしまう人も多いでしょう。その結果、排便せずに1日を過ごすことになり、直腸性便秘の原因になります。
そこで、朝の便意を逃さないために、余裕を持った生活を心がけることが大切になります。食事を抜くことで便の材料が不足し、排便が起こりにくくなることもありますから、便秘に悩んでいるのなら朝食はしっかりと摂るようにしましょう。いつもよりも余裕をもって起きて、決まった時間に朝食を摂る、便意があってもなくてもトイレに入るといったように、生活のリズムを整えるようにすると効果的です。ただし、無理をして排便する必要はなく、大切なのは我慢しないことです。便意を感じたら我慢せず排便するように常に意識してみましょう。
便秘解消法2:運動やマッサージを行う
便秘を解消するためには、適度な運動やマッサージを行うことも効果的です。便秘が起こりやすい原因の1つに、腹筋力の低下が挙げられます。腹筋力が弱いと便をスムーズに押し出すことが難しくなるので、腹筋を鍛えることで便秘の改善が期待できます。
そこで、簡単にできる腹筋運動を紹介します。
① 仰向けになって両手を頭の後ろで組みます。
② その状態で息を吐きながら軽く頭を起こしましょう。このときに、つま先を見る意識で頭を起こすことがポイントです。
③ つま先を見るような状態で5秒キープしたら頭を下して最初の状態に戻ります。
④ ①〜③を10セット程度繰り返します。慣れてきたらさらに上体を起こすようにすると、より効果的です。
普段から運動を習慣付けておくことで、筋力の強化につながります。また、軽い運動はストレスの発散にもなりますから、ストレスからくる便秘の解消や予防にも効果的です。
また、腸もみも便秘改善に効果があるといわれています。そこで、簡単にできる「腸もみ運動」をご紹介します。
① 左手で左の肋骨の下あたりを、右手で右の腰骨のあたりをぎゅっと掴み、そのままゆっくりともみほぐしていきましょう。
② 手の位置を入替えて、同じようにゆっくりともみほぐします。合計で3分間程度行うのが基本です。
また、腸もみ運動の前に、鼻から息を吸い、口からゆっくりと息を吐くように、深い呼吸を10回程度行うとさらに効果的です。
腸のストレッチについては、以下の記事でも動画付きでわかりやすく解説しています。
便秘解消法3:冷えを防いで体を温める
便秘解消のためには、体が冷えないようにすることも大切です。寒さや冷えがストレスになることで交感神経が優位になり、腸の活動に悪影響を及ぼしてしまう可能性もあります。そのため、日ごろから体全体、とくにお腹を冷やさないように温めることが重要なのです。もし冷えを感じるなら、使い捨てカイロや湯たんぽなどを活用するといいでしょう。お腹に使い捨てカイロや小さめの湯たんぽなどを当てれば冷えを防ぐことができます。ただし、カイロや湯たんぽは、直接肌に触れたり長時間同じ場所に密着させていると、低温やけどの危険があるので注意が必要です。
また、入浴も効果的です。入浴は冷えを防げるだけではなく、リラックスすることで副交感神経が優位になり、腸の活動が活発になるので、便秘の改善が期待できます。そのため、便秘に悩んでいる場合はシャワーだけで済ませるのではなく、湯船につかるようにするといいでしょう。時間をかけて温めることが重要なので、あまり熱すぎないお湯を張ってゆっくりと湯船につかりましょう。夏なら38度程度、冬なら40度程度のぬるめのお湯がおすすめです。さらにリラックスするのなら、湯船で腹式呼吸を行うことも効果的だとされています。
本当に便秘?隠れた病気をチェックする方法
ただの便秘だからと思って放置していると、その裏に重大な病気が隠れていることもあります。ただの便秘なのか、それとも病気かどうかチェックするための基準を見ていきましょう。
すぐに専門機関で受診をすべき症状
激しい腹痛、吐き気や嘔吐を伴う便秘の場合には、夜間や休日を問わず早めの受診が求められます。特に、腹痛が激しくて日常生活に支障が出るような場合は直ちに専門機関で受診しましょう。また、お腹の特定の部位が痛む場合も同様です。お腹を押したときに、痛みが強まる部位があるような場合には、病気の可能性もありますので、早めに受診しましょう。そのほか、足の付け根やおへそ、手術痕などが腫れていたり、盛り上がって見える場合にも受診が必要です。
2~3日以内には受診したほうがいい症状
排便のリズムが崩れていてお腹にハリがあったり腹痛があったりする場合は、近日中に受診したほうがいいでしょう。3日以上排便がない場合も同様です。また、便の状況によっても受診が必要になるケースがあります。たとえば、便秘と下痢を繰り返している、便が硬くなり出血することがある、便が細くなってきたという場合には、単なる便秘ではなく、イレウスや大腸がんなどの可能性もあります。病院で診断してもらうことで、病気なのかそれとも便秘なのかを判断することができますから、悩まずに一度受診してみるといいでしょう。
ご紹介したのはあくまでも一例ですので、これらの症状に当てはまらなくても、受診が必要な場合があります。少しでも異変を感じた時は、適切な対処をするためにも、早めに受診することをお勧めします。
今日からできる解消法で便秘にさよなら!
便秘の原因はさまざまなものが考えられます。生活習慣を見直すことで便秘が解消するケースもありますから、記事でご紹介した方法も役立ててみてください。しかし、便秘には重大な病気が隠れている可能性もあります。単なる便秘と安心せず、少しでも不安に思うのなら早めに病院に行ってみることも大切です。
便秘のことをよく理解した上で、症状ごとに正しい対処を行い、便秘を解消していきましょう!