子どもの学力と密接に関係していると言われるのが、自発的に学ぶ姿勢です。そこで、自立した子供に成長して欲しいと考えても、どう教育すればよいのか分からないと悩む親は多いのではないでしょうか。
この記事では、子どもが自発的に行動できるように育てるため、親が何に注意をして教育すればよいのかなど、具体的なポイントを説明していきます。また、近年注目されている「モンテッソーリ教育」についても紹介します。
多くの親が考える、教育費と学力の関係
子供の学力と自立心の関係について説明する前に、子供の学力に影響与える要素について見ていきましょう。まずは教育費です。
子どもの学力や学歴は、教育費にどれくらいのお金をかけられるのかによって変わってくると考えている方は多いのではないでしょうか。実際に、ソニー生命保険株式会社が、大学生以下の子どもがいる20~59歳の男女1000名に対して2017年に実施した「子どもの教育資金に関する調査」では、6割半の親が「子どもの学歴や学力は教育費次第で決まる」と答えており、多くの親が子どもの学力と教育費の関係を認める考えを示しています。
その理由の1つとして、文部科学省が過去に、「子どもの成績と教育費が比例する傾向にある」と発表したことが挙げられます。多くの親は子どもへの教育を真剣に考え、常にいろいろな情報を収集しているため、最終的に教育費こそが子どもの成長を支える重要な要素だと考える人が増えたのではないでしょうか。
また、前述した調査では7割強の親が「教育資金に不安を抱いている」と答えました。教育費が大切だと考えながらも、家庭の事情により十分な教育費をかけられず、悩んでいる親も多いことがわかります。
(参考:ソニー生命保険株式会社「子供の教育資金に関する調査2018」)
学力向上には「子どもに対する親の接し方」も重要
もちろん、子どものための教育費を重視することは大切であり、実際に教育費と子どもの学力の間に密接な関係があることは、様々な研究から明らかになっています。ただし、子どもの学力に影響を与える要素は、それだけではありません。親の習慣や家庭環境によって子どもの将来の学力が左右される可能性もあるのです。
ベネッセ教育総合研究所が報告した「教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書」では、親の子どもへの接し方や教育意識と子どもの学力水準の関係が示されています。
同調査では、学力水準がA層(正答率が高かった)の子どもの親は「子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした」「子どもが英語や外国の文化にふれるよう意識している」「毎日子どもに朝食を食べさせている」「ニュースや新聞記事について子どもと話す」「テレビゲームで遊ぶ時間は限定している」と回答した割合が高く、学力水準がD層(正答率が低かった)子どもの親と大きな差が見られました。
また、学力水準がA層の子どもの親は、「新聞の政治経済欄を読む」「クラシック音楽のコンサートへ行く」「美術館や美術の展覧会へ行く」傾向があり、学力水準がD層の子どもの親は、「テレビのバラエティ番組やワイドショーを好んで見ている」「よくカラオケに遊びに行く」「スポーツ新聞や女性週刊誌を読む」などの傾向があったと報告されています。
つまり、親の行動が子どもの学力に影響を与えるという結果も出ているのです。
(参考:ベネッセ教育総合研究所「教育格差の発生・解消に関する調査研究報告書」)
子供の自立は学力向上に効果あり
学力の高い子どもは、自発的に勉強をして自分で考える力が強いと言われています。したがって、子どもが自発的に行動したり、考えたりする力を育てれば、自然と学力は上がって行くでしょう。そのためには、子どもの自立心を育てることが何よりも重要です。
この自立心を養うためには、子どもが自ら考え、行動する機会を増やすことが大切だと言われています。親が何でもやってあげる状況では、子どもが自発的に行動する機会を奪ってしまいますから、子どものためにと思ってやっている事が、自立心を養う上では返って逆効果になるのです。
例えば、子どもが部屋を散らかしても、それを親が片付けるべきではありません。そうではなく、子どもに片付け方を教え、自分で整理整頓をさせるように習慣づけさせるようにしましょう。もし、子どもがやり方や順番を忘れた場合でも、すぐに教えるのではなく、その前に自分で考えさせることが大切です。
ただし、ただ子どもに何かをやらせるだけでは当然上手くいかないこともあるでしょう。子どもは、理由や意味も分からずに行動を強要されてしまうと、大きなストレスを感じ、自分で何もしたがらなくなってしまう可能性もあります。そこで、「どうしてその行動をするべきなのか」「それによってどんな結果が生まれるのか」など、行動させる前にその理由や目的、メリットについてきちんと説明しましょう。以上のポイントを意識して子どもに接すれば、自発的に考え行動する習慣が身につき、自然と自立心が養われていきます。
自立した子どもに育つとどうなる?
もし自立ができていないと、マニュアル通りにしか物事を考えられないようになり、困難な場面に陥ると何もできなくなってしまいます。そのため、社会に出てから困ってしまうことが多いのです。
このように、子どもの自立心を育むことは、単に学力の問題だけではなく、その後の人生にまで関わってきます。自立心は一朝一夕に養われるものではないため、子どものうちにきちんと育ててあげることが大切です。
モンテッソーリ教育とはどのようなものか
子どもの自立心を養うための方法論としてモンテッソーリ教育があります。これは、医師であり、教育家でもあったマリア・モンテッソーリ博士が考案した教育法であり、子どもが本来持っているとされる「自己教育力」に着目しています。例えば、誰かが教えなくても、自然と歩いたり、話したりするように、自分を育てるための力を持っているのが子どもであり、その力をしっかりと発揮できるように導くことがモンテッソーリ教育の目標なのです。現代でも支持されているこの教育法が考案されたのは、なんと100年以上も前のことで、いかにこの教育法が優れたものであるかがわかります。(参考:日本モンテッソーリ教育綜合研究所)
モンテッソーリ教育では、子どもの発達段階を「0~3歳まで」と「3~6歳まで」の大きく2つの期間に分け、それぞれの段階に合わせた教育内容を用意しています。発達段階に合わせた教育を行うことで、子どもに適切な接し方ができ、自然と子どもの力を伸ばしていけるのです。それでは、それぞれの期間における教育の特徴について詳しく見ていきましょう。
モンテッソーリ教育の特徴:0〜3歳まで
この時期は、人生の中でも特に物事を吸収する力が強く、子どもが社会に適応していくための期間です。この時期は、さまざまなことを達成しやすいため、モンテッソーリ教育では7つの教育環境を用意し、子どもに適応させていきます。
0~3歳の時期には、粗大運動の活動や微細運動の活動、言語教育、日常生活の練習、感覚教育、音楽、美術といった7つの教育環境を通して、子どもの自己教育力を伸ばします。
「粗大運動の活動」は、全身を用いた大きな動きを通して、ずり這いや歩行の獲得を促します。
「微細運動の活動」は、主に手や指を用いた運動のことであり、握ったり、落としたりする動きを獲得します。
「日常生活の練習」は、親の生活の一員として活動させることで、環境への適応力を育てます。
「言語教育」は、子どもの言葉の発達段階に応じて、言葉の量や質を調整し、豊かな語彙力を育てます。
「感覚教育」は、発達段階や興味に応じた感覚教具に触れることを通して、子どもの感覚を洗練していきます。
「音楽」は、子どもが音楽に触れる環境を用意することで、楽器を鳴らす、踊るなどを通して、表現力を育てます。
「美術」は、クレヨンで絵を描いたり、粘土をこねたりすることで、目と手先の動作獲得を促しながら、自由に表現する力を育てます。
モンテッソーリ教育の特徴:3〜6歳まで
モンテッソーリ教育では、この時期を意識の芽生えの時期と呼んでおり、これ以前に吸収した事柄を意識的に整理、秩序化していく時期としています。この時期では、日常生活の練習や感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育という5つの教育分野を用意しています。
「日常生活の練習」では、自分の身体を思い通りに制御する能力を身につけるために、はさみの使い方や洗濯、掃除など、実生活と大きく関わる活動を体験、練習させます。
「感覚教育」では、意識的に感覚器官を使えるようにするために、ピンクタワーや色板などの教具を使って、視覚や聴覚、嗅覚といった感覚を洗練させていきます。
「言語教育」は、絵カードや文字並べなどを通して、子どもの語彙力を豊かにし、正しい文法を身につけます。体を使って学べる工夫をすることで、子供は知らず知らずのうちに文字を書いたり読めるようになります。
「算数教育」は、金ビーズなどの教具を使って、数に対する感覚を育てるとともに、算数の基礎となる要素を学びます。数というものを具体物で表し、「言語教育」と同様に、手で扱えるようになっているのがポイントです。
「文化教育」は、言葉と算数以外の分野で、歴史や地理、地学など、子どもが興味をもつ幅広い分野を学びます。子どもの知りたいという要求に応え、様々な分野に対して自発的に興味を持つことを促します。
教育費以外にも大事なことはある!学力向上には子どもの自立心を育てよう
教育費が子どもの学力に影響を与えることは様々な調査から明らかになっており、国際的な常識といっても過言ではありません。しかし、常に意識しておきたいのは、単にお金をかければ子どもの学力が向上するわけではないということです。
自発的に学ぶことで子どもの学力は向上して行くと言われていますが、そのためには子ども自立心が欠かせません。より確実に子どもが自立した大人に成長できるように導くためにも、子どもの教育について短絡的に考えるのではなく、本当に子どものためになることをしてあげましょう。
記事内で紹介したモンテッソーリ教育は、子どもの自立心を養う上でとても効果的な教育法です。子どもの教育の仕方について悩んでいる人は、モンテッソーリ教育の理念に注目し、実践してみるのも良いでしょう。
子どもの自立心を育てることは、とても意味のあることです。記事でご紹介した内容を参考に、子どもの自立をサポートしてあげてください。