馬の皮下脂肪から作られた馬油(ばあゆ)は、保湿やヘアケアだけなく、口内炎のケアに役立ったという声もあり、全身に使えるスキンケアクリームとして昔から重宝されてきました。そして、最近ではこの馬油を使った洗顔も話題を呼んでいます。この記事では、馬油洗顔の方法から、馬油の塗り方まで、馬油の具体的な使い方を徹底調査しました。
馬油ってどんなもの
馬油とは、そもそもどのようなものなのでしょうか。まずは原材料や用途などをご紹介します。
馬脂を精製した動物性油脂
馬油の原料は馬の腹部やたてがみ部分にある皮下脂肪。火にかけて精製することで、琥珀色に透き通った馬油になります。
馬油の歴史は古く、中国で5~6世紀に記された医術書『名医別録』には、すでに馬油が髪に効果的であるという内容が記されています。日本での馬油の歴史を明確に伝える文献は残っていないものの、奈良時代に伝わり、大宰府が置かれていた九州から広まっていったという説があるようです。
馬油を火傷のケアに使うといった民間療法は古くからありましたが、商品として売り出されたのは昭和後期に入ってからでした。昭和46年、株式会社薬師堂の前身となる筑紫野物産研究所は、膨大な時間を費やして馬油の研究を行い、日本で初めて馬油の商品化に成功します。しかし、当時は皮膚保護剤としての認可が厚生省から下りなかったため、やむなく食用油脂として販売されていました。正式に皮膚保護剤として認可が下りたのは昭和63年のことです(※)。
(参考:薬師堂|馬油の歴史)
牛脂、豚脂同様に食べても安全・無害
馬油の原料は前述したように馬の皮下脂肪です。そのため、牛脂や豚脂などと同じように、口に入れても無害だとされており、口内炎の治療にも使われることもあるほどです。また、脂肪酸の構成比率が人間の皮脂と似ているため、肌なじみのいい素材として重宝されています。
赤ちゃん(0歳~)の保湿にも使える
デリケートな赤ちゃんの肌にとって乾燥は大敵です。しかし、添加物が多く含まれているものが多い大人用の保湿クリームを塗ってしまうと、かえって肌荒れの原因となることもあります。
一方、無添加の馬油は年齢を問わず使うことが可能で、もちろんデリケートな赤ちゃんの肌に使っても安心です。こすらないように注意して、やさしく塗ってあげましょう。商品の中には「赤ちゃんでも使用可」と書かれているものがあるので、選ぶときのポイントにしてもいいかもしれません。
猫や犬が舐めに寄ってくる?
日本の怪談で化け猫が油を舐める光景は有名ですが、実際の猫も油を舐める習性があると言われています。江戸時代には、生きていくために必要な油分や脂肪を得るために、行灯に使われていた油を舐める猫がいたそうです。
食用油の中には猫や犬が舐めてはいけないものがありますが、馬油は少し舐める程度ならばあまり害はありません。ただし、摂取しすぎるとお腹がゆるくなることもあるので、ペットが取り出すことのできない棚の中にしまうなどして、気を配るようにしましょう。
(参考:かずのすけ『どんな敏感肌でも美肌になれる!オフスキンケア』KADOKAWA(2018)、薬師堂|馬油の歴史)
馬油の使い方
洗顔やヘアケア、保湿など、馬油の用途は多岐にわたります。具体的な使い方を見ていきましょう。
馬油洗顔
馬油を使った洗顔はTwitterなどのSNSで一躍有名になりました。
【話題】元鈴木さんの馬油マッサージ洗顔
ブームの火付け役となったのが元鈴木さんのツイート。洗顔の際、石鹸の代わりに馬油を使ったところ毛穴や乾燥のケアにつながったといいます。
洗顔の手順は以下の通り。
1. 馬油を手にとり、顔にくるくると円を描くように塗る。
2. コットンに化粧水をつけ、馬油を拭きとる。コットンの代わりに濡らしたマイクロファイバーの洗顔パフを使ってもいい。
化粧水を使う場合は、拭きとり用の化粧水を使うときれいに馬油を拭うことができるようです。
【薬師堂】馬油石鹸で洗顔
馬油100%の化粧品「ソンバーユ」を販売する株式会社薬師堂も、馬油洗顔の方法を紹介しています。手順は以下の通りです。
1. 水かぬるま湯で顔を洗う。
2. 馬油石鹸を泡立て、顔全体を包み込むように洗う。
3. 水でやさしく泡をすすぐ。
4. 馬油を手のひらに広げ、顔全体にやさしく塗る。使用する量は小豆程度。
(参考:薬師堂|ソンバーユ美容法(美顔・洗顔))
続けてメイクをする場合は、手順4のあとに下地を塗っていきましょう。お風呂上りに上記の洗顔を行い、そのまま寝ても問題ないようです。
顔のスキンクリーム
馬油は肌の調子を整えるスキンクリームの代わりに使われることもあります。
日焼け後のシミ・ソバカスを予防
日焼け止めを塗っていても全ての紫外線を防げるわけではなく、そのまま放置しておくとシミやソバカスの原因になることもあります。
馬油は肌への浸透力が高いため、日焼け後のスキンケア用品としてもおすすめです。顔や腕など、日に焼けてヒリヒリしている箇所に塗ってみましょう。ただし、紫外線そのものを馬油で防ぐことは難しいため、外出時には日焼け止めによる紫外線対策を忘れないようにしましょう。
キメ細かい肌に整える(ハリ・ツヤ)
キメ細かい肌をつくるポイントは、毛穴を目立たせないことです。しかし、体調の乱れや乾燥などが原因で皮脂が過剰に分泌されると、毛穴が開いて汚れがたまりやすくなってしまいます。そのため、日ごろから肌に充分な水分と油分を与え、古い角質を除去することが大切になります。
馬油は人間の皮脂と成分が近いため、肌の奥までスッとなじみ、油分を与えることができるといわれています。そのうえ水分が入り込むすき間はしっかり確保してくれるので、馬油の後に化粧水を使うことで、より保湿効果を高めることができるでしょう。継続的にケアをしていくと、ハリやツヤのある、キメ細かい肌に近づいていくはずです。
乾燥した唇のケア・保湿
唇がガサガサになったときにも、馬油はとても役に立ちます。リップクリームの代わりに少量の馬油を唇に塗ってみましょう。また、口紅を使う前の下地として使う人もいるようです。
ヘアケア
馬油をそのまま使う場合は、洗髪前にしっかり頭皮になじませましょう。馬油が頭皮に馴染んだら20分ほど待ち、シャワーで余計な油分を洗い流します。
洗髪後のヘアケアに使用する場合は、タオルで髪の水分を取り除いてから髪全体に馬油をなじませ、その後ドライヤーで乾燥させます。
馬油シャンプーで洗髪
石油系シャンプーに比べ刺激が少ない馬油シャンプーは、敏感肌の人にも安心です。使い方はいつものシャンプーと同じで、濡れた髪に適量の馬油シャンプーをとり、髪によくなじませたら、流水で洗い流します。馬油シャンプーは、成分が髪に残ると重たい仕上がりになることがあるので、念入りにすすぐようにしましょう。また、馬油が含まれたコンディショナーを併用すると、よりツヤのある仕上がりが期待できます。
馬油で頭皮マッサージ
頭皮の血行をよくすることで、髪にも栄養が行きわたるようになるといわれています。馬油を使って、血行が滞りがちな頭皮をマッサージしてみましょう。
少量の馬油を手のひらに広げ、指の腹で頭皮をやさしく持ち上げるように揉みほぐしていきます。最初は首に近い部分から頭頂部に向かって指を動かしていくといいでしょう。頭頂部まで達したら、襟足やうなじに向かって再び揉みほぐします。
噂になった馬油の使い方
馬油洗顔以外にも、噂になっている馬油の使い方があります。どんな使用方法があるのか、改めて確認してみましょう。
口内炎や口内火傷が和らいだ
炎症を抑える働きがあると考えられており、昔から火傷のケアに使われてきました。また、前述したように口内に入れても安全なので、口内炎や口内火傷に使っても良いでしょう。
まつ毛を伸ばす美容液に
馬油洗顔をしていたら、まつ毛の状態がよくなった、という人も見られます。馬油が皮膚を健康な状態にすることで、新陳代謝が活発になり、まつ毛の自然な育成を促してくれるようです。
傷口、傷跡など怪我に
傷口や傷跡の患部を清潔にしてから馬油を塗り、ガーゼなどで保護しておくと傷の治りが早くなると言われています。
耳の中の痒みを抑えた
耳の中が乾燥して痒いときには、馬油で保湿してみましょう。綿棒に少量の馬油を含ませ、軽くひと塗りしておきます。ただし、耳の奥まで綿棒を入れると内部を傷つけてしまうおそれがあるので注意してください。
爪の割れ防止、補強に
爪の割れを防ぎたいときは、爪全体に馬油を塗ると効果的だと言われています。手全体に塗ると保湿にもなるので、水仕事の前後は馬油でケアするのがおすすめです。
花粉症や鼻水を抑える
馬油は花粉症の症状を抑える効果も期待されているようです。特に、鼻水やくしゃみ防止に役立ったという声が多くあがっています。対処方法は綿棒に少量の馬油をつけ、鼻の入り口に塗るだけ。このとき上を向いておくと、体温で溶けた馬油が鼻の奥までスムーズに浸透していきます。馬油は保湿力が高いため、鼻の粘膜を保護するだけでなく、鼻の乾燥防止にもなるでしょう。
痔の予防
馬油はお尻に塗ることもできるため、痔の予防に使っている人もいるようです。また、お尻のかぶれにも効果があるとされ、赤ちゃんのおむつ交換後に使われることもあります。
(参考:かずのすけ『どんな敏感肌でも美肌になれる!オフスキンケア』KADOKAWA(2018)、薬師堂|よくある質問)
おすすめ馬油の紹介
薬師堂 ソンバーユ
「馬油といえばソンバーユ」というキャッチフレーズで有名な薬師堂の「ソンバーユ」。馬油を使った商品としては、日本で初めてスキンケア商品としての認可を受けた、まさに馬油製品のパイオニア的な存在です。馬油100%にこだわり続けているソンバーユは角質層への浸透性に優れ、顔や髪をはじめとして全身に使用することができます。また、無添加で安全性も高いため、妊娠中の方や赤ちゃんにも安心して使うことができます。
北海道純馬油本舗 北海道純馬油
馬油は動物性の油のため、独特の臭いが気になることがありますが、この商品は独自の製法で無香料化。また、徹底した衛生管理のもと、ひとつひとつ手作業での精製・充填を行っており、品質が非常に高いのも特徴です。保湿力に優れているため、乾燥肌、敏感肌、アトピーの方にもおすすめです。
ユウキ製薬 国産馬油100
無添加で馬油100%のこちらの商品に使用されている馬脂は熊本県産。製品自体も国内の指定工場で生産され、安心・安全に徹底的にこだわっています。浸透性も高く、馬油自体の気になる臭いも極力抑えられているため、洗顔後や入浴後に全身の肌に使用できます。
馬油は、大昔から火傷の治療や保湿などに用いられてきました。天然素材で作られた、安全性の高い馬油は、保湿だけでなく、洗顔、ネイルケアなど、様々なことに使うことができます。効果には個人差がありますが、ドラッグストアなどでは1500円程度のプチプラで購入することができるので、気になっている方は一度試してみてはいかがでしょうか。